シクレスト舌下錠10mg

添付文書情報2024年10月改定(第4版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 禁忌
- 2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 昏睡状態の患者[昏睡状態を悪化させるおそれがある]。
2.3. バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制作用が増強されるおそれがある]。
2.4. アドレナリン投与中<アナフィラキシー救急治療・歯科浸潤又は伝達麻酔除く>の患者〔10.1、13.2参照〕。
2.5. 重度肝機能障害<Child-Pugh分類C>のある患者〔9.3.1、16.6.2参照〕。
- 効能・効果
- 統合失調症。
- 用法・用量
- 通常、成人にはアセナピンとして1回5mgを1日2回舌下投与から投与を開始する。維持用量は1回5mgを1日2回とし、年齢、症状に応じ適宜増減するが、最高用量は1回10mgを1日2回までとする。
- 肝機能障害患者
- 8.1. 投与初期、再投与時、増量時にα交感神経遮断作用に基づく起立性低血圧があらわれることがあるので、患者の状態を慎重に観察し、低血圧症状があらわれた場合は減量する等、適切な処置を行うこと〔9.1.1参照〕。
8.2. 本剤の投与により、高血糖悪化や糖尿病悪化があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡に至ることがあるので、本剤投与中は、口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状の発現に注意するとともに、特に糖尿病又はその既往歴あるいは糖尿病の危険因子を有する患者では、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと〔8.4、9.1.5、11.1.6参照〕。
8.3. 低血糖があらわれることがあるので、本剤投与中は、脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状に注意するとともに、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと〔8.4、11.1.7参照〕。
8.4. 本剤の投与に際し、あらかじめ高血糖や糖尿病の悪化があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡及び低血糖の副作用が発現する場合があることを、患者及びその家族に十分に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿、頻尿等)、低血糖症状(脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等)に注意し、このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中断し、医師の診察を受けるよう指導すること〔8.2、8.3、9.1.5、11.1.6、11.1.7参照〕。
8.5. 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.6. 本剤の投与により、体重変動(体重増加、体重減少)を来すことがあるので、本剤投与中は体重の推移を注意深く観察し、体重の変動が認められた場合には、必要に応じて適切な処置を行うこと。
9.1.1. 心・血管疾患、脳血管障害、低血圧又はこれらの既往歴のある患者:血圧降下があらわれることがある〔8.1参照〕。
9.1.2. てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者:痙攣閾値を低下させるおそれがある。
9.1.3. 不整脈の既往歴のある患者又は先天性QT延長症候群の患者:QT延長があらわれるおそれがある〔10.2参照〕。
9.1.4. 自殺企図の既往及び自殺念慮を有する患者:自殺念慮、自殺企図があらわれることがある。
9.1.5. 糖尿病又はその既往歴のある患者、あるいは糖尿病の家族歴、高血糖、肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者〔8.2、8.4、11.1.6参照〕。
9.1.6. パーキンソン病又はレビー小体型認知症のある患者:悪性症候群(Syndrome malin)が起こりやすくなり、また、錐体外路症状悪化に加えて、錯乱、意識レベル低下、転倒を伴う体位不安定等の症状が発現するおそれがある〔11.1.1参照〕。
9.1.7. 不動状態、長期臥床、肥満、脱水状態等の危険因子を有する患者〔11.1.10参照〕。
9.3.1. 重度肝機能障害<Child-Pugh分類C>のある患者:投与しないこと(血中濃度が上昇することがある)〔2.5、16.6.2参照〕。
9.3.2. 中等度肝機能障害<Child-Pugh分類B>のある患者:血中濃度が上昇するおそれがある〔16.6.2参照〕。
- 相互作用
- 本剤は肝薬物代謝酵素CYP1A2の基質である。また、本剤はCYP2D6を軽度に阻害する〔16.4参照〕。
10.1. 併用禁忌:アドレナリン<アナフィラキシー救急治療・歯科浸潤又は伝達麻酔除く><ボスミン>〔2.4、13.2参照〕[アドレナリンの作用を逆転させ重篤な血圧降下を起こすことがある(アドレナリンはアドレナリン作動性α、β受容体の刺激剤であり、本剤のα受容体遮断作用によりβ受容体刺激作用が優位となり、血圧降下作用が増強される)]。
10.2. 併用注意:1). 中枢神経抑制剤(バルビツール酸誘導体等)、アルコール[中枢神経抑制作用があるので、減量するなど注意すること(本剤及びこれらの薬剤は中枢神経抑制作用を有する)]。
2). ドパミン作動薬[相互に作用を減弱することがある(本剤はドパミン遮断作用を有していることから、ドパミン作動性神経において作用が拮抗する可能性がある)]。
3). 降圧剤[降圧作用が増強するおそれがある(本剤のα受容体遮断作用により降圧剤の作用を増強する可能性がある)]。
4). 抗コリン作用を有する薬剤[抗コリン作用を増強させるおそれがある(併用により抗コリン作用が強くあらわれる可能性がある)]。
5). CYP1A2を阻害する薬剤(フルボキサミン等)〔16.7.1参照〕[本剤の血中濃度が増加し作用を増強するおそれがある(これらの薬剤はCYP1A2を阻害することから本剤の代謝が阻害される可能性がある)]。
6). パロキセチン〔16.7.2参照〕[本剤投与中に、パロキセチンを単回投与した際に、パロキセチンのCmax及びAUCがそれぞれ82%及び92%増加したとの報告があるので、本剤投与中に、パロキセチンの投与を開始する場合には、パロキセチンの投与開始量を適宜減量するなど慎重に投与し、観察を十分に行うこと(パロキセチンはCYP2D6で代謝され、CYP2D6阻害作用を有し、本剤はパロキセチンのCYP2D6阻害作用を増強する可能性がある)]。
7). QT延長を起こすことが知られている薬剤〔9.1.3参照〕[QT延長があらわれるおそれがある(併用によりQT延長作用が相加的に増加するおそれがある)]。
8). アドレナリン含有歯科麻酔剤(リドカイン・アドレナリン歯科麻酔剤)[重篤な血圧降下を起こすことがある(アドレナリンはアドレナリン作動性α、β受容体の刺激剤であり、本剤のα受容体遮断作用によりβ受容体刺激作用が優位となり、血圧降下作用が増強されるおそれがある)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 悪性症候群(Syndrome malin)(1%未満):発熱、無動緘黙、強度筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧変動、発汗、白血球数増加、血清CK上昇等の異常が認められた場合には、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理と共に適切な処置を行うこと(また、ミオグロビン尿を伴う腎機能低下がみられ、急性腎障害に至ることがあるので注意すること)〔9.1.6参照〕。
11.1.2. 遅発性ジスキネジア(1%未満):口周部不随意運動等の不随意運動があらわれ、投与中止後も持続することがある。
11.1.3. 肝機能障害(頻度不明):AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇、Al-P上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがある。
11.1.4. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)。
11.1.5. 舌腫脹(1%未満)、咽頭浮腫(頻度不明):嚥下障害、呼吸困難等を伴うことがあるので注意すること。
11.1.6. 高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡(いずれも頻度不明):高血糖悪化や糖尿病悪化があらわれた場合、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡に至ることがあるので、血糖値の測定や、口渇、多飲、多尿、頻尿等の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、インスリン製剤の投与を行うなど、適切な処置を行うこと〔8.2、8.4、9.1.5参照〕。
11.1.7. 低血糖(頻度不明):脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと〔8.3、8.4参照〕。
11.1.8. 横紋筋融解症(頻度不明):筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中ミオグロビン上昇及び尿中ミオグロビン上昇等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。
11.1.9. 無顆粒球症(頻度不明)、白血球減少(1%未満)。
11.1.10. 肺塞栓症、深部静脈血栓症(いずれも頻度不明):肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されているので、観察を十分に行い、息切れ、胸痛、四肢疼痛、浮腫等が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと〔9.1.7参照〕。
11.1.11. 痙攣(1%未満)。
11.1.12. 麻痺性イレウス(頻度不明):腸管麻痺(食欲不振、悪心・嘔吐、著しい便秘、腹部膨満あるいは腹部弛緩及び腸内容物うっ滞等の症状)を来し、麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 11.2. その他の副作用
1). 血液及びリンパ系障害:(頻度不明)好中球減少症。
2). 内分泌障害:(1~5%未満)高プロラクチン血症。
3). 代謝及び栄養障害:(1%未満)食欲亢進、脂質異常症、食欲減退、高脂血症、(頻度不明)体液貯留。
4). 精神障害:(1~5%未満)激越、不眠症、(1%未満)攻撃性、不安、易刺激性、気分動揺、パニック発作、落ち着きのなさ、睡眠障害、自殺念慮、(頻度不明)錯乱状態、精神病性障害、悪夢、躁病、うつ病。
5). 神経系障害:(5%以上)アカシジア、浮動性めまい、錐体外路障害、傾眠(12.9%)、(1~5%未満)味覚異常、頭痛、パーキンソニズム、鎮静、振戦、(1%未満)運動緩慢、構語障害、ジスキネジア、ジストニア、感覚鈍麻、失神、舌麻痺、口下顎ジストニア、(頻度不明)下肢静止不能症候群。
6). 眼障害:(1%未満)眼調節障害、眼痛、眼球回転発作、霧視。
7). 心臓障害:(1%未満)動悸、洞性徐脈、頻脈、(頻度不明)洞性頻脈、脚ブロック。
8). 血管障害:(1%未満)高血圧、低血圧、(頻度不明)起立性低血圧。
9). 呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(1%未満)呼吸困難、(頻度不明)咽喉絞扼感、咽頭感覚鈍麻。
10). 胃腸障害:(5%以上)口の感覚鈍麻(10.1%)、(1~5%未満)便秘、悪心、口腔内不快感、流涎過多、嘔吐、口の錯感覚、(1%未満)口腔内潰瘍形成、腹部不快感、嚥下障害、舌痛、(頻度不明)変色歯、口内炎、口腔粘膜水疱形成。
11). 肝胆道系障害:(1~5%未満)肝機能異常。
12). 皮膚及び皮下組織障害:(1%未満)異汗性湿疹、皮膚そう痒症、小水疱性湿疹、多汗症、発疹、脱毛症、(頻度不明)顔面腫脹、蕁麻疹、血管性浮腫、全身性皮疹。
13). 筋骨格系及び結合組織障害:(1%未満)筋固縮、筋緊張、筋骨格硬直、四肢痛、筋肉痛、関節痛、(頻度不明)筋痙縮、筋攣縮、関節腫脹、筋力低下。
14). 腎及び尿路障害:(頻度不明)遺尿、尿失禁。
15). 生殖系及び乳房障害:(1%未満)不規則月経、(頻度不明)乳汁漏出症、無月経。
16). 免疫系障害:(頻度不明)過敏症。
17). 一般・全身障害及び投与部位の状態:(1~5%未満)口渇、倦怠感、(1%未満)無力症、胸部不快感、疲労、歩行障害、末梢性浮腫、浮腫、(頻度不明)異常感、局所腫脹。
18). 臨床検査:(5%以上)体重増加、(1~5%未満)ALT増加、AST増加、血中CK増加、血中プロラクチン増加、γ-GTP増加、体重減少、(1%未満)血中コレステロール増加、血中ブドウ糖増加、血中インスリン増加、血中トリグリセリド増加、心電図QT延長、好酸球数増加、グリコヘモグロビン増加、低比重リポ蛋白増加、尿中蛋白陽性、血中ALP増加、(頻度不明)心拍数増加、血圧上昇。
19). その他:(1%未満)転倒。
- 高齢者
- 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(高齢者の薬物動態試験で曝露量増加が認められている)〔16.6.3参照〕。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠後期に抗精神病薬が投与されている場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性等の離脱症状や錐体外路症状があらわれたとの報告がある。動物実験(ウサギ、ラット)では、生殖発生毒性試験において催奇形性は認められなかったが、着床後胚損失率増加・出生仔死亡数増加(ラット)、胎仔体重増加抑制・出生仔体重増加抑制(ウサギ、ラット)、出生仔身体発達への影響・出生仔機能発達への影響(ラット)が認められた。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている)。
- 小児等
- 小児等を対象とした国内臨床試験は実施していない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤調剤時の注意通常の錠剤に比べてやわらかいため、自動分包機には適さない。
14.2. 薬剤交付時の注意次の点について、患者等に指導すること。
・ ブリスターシートから取り出して舌下投与すること(シートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
・ ブリスターシートから取り出す際には、裏面のシートを剥がした後、錠剤をゆっくりつまんで取り出す(錠剤をつぶさない)。欠けや割れが生じた場合は全量を舌下に入れる(本剤は通常の錠剤に比べてやわらかいため、シートを剥がさずに押し出そうとしたり、シートを切ったり、破ったりすると割れることがある)。
・ 吸湿性であるため、使用直前に乾いた手でブリスターシートから取り出し、直ちに舌下に入れること〔20.取扱い上の注意の項参照〕。
・ 本剤は舌下の口腔粘膜より吸収されて効果を発現するため、飲み込まないこと。
・ 水なしで投与し、舌下投与後10分間は飲食を避けること〔16.2.1参照〕。
凍結乾燥製剤であり吸湿性を有するのでブリスター包装のまま保存すること〔14.2参照〕。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報15.1.1. 本剤による治療中、原因不明の死亡が報告されている。
15.1.2. 外国で実施された高齢認知症患者を対象とした17の臨床試験において、類薬の非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群と比較して死亡率が1.6~1.7倍高かったとの報告があり、また、外国での疫学調査において、定型抗精神病薬も非定型抗精神病薬と同様に死亡率上昇に関与するとの報告がある。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人健康成人にアセナピン5mgを単回舌下投与したときの薬物動態学的パラメータは次のとおりであった。
表1 日本人健康成人における単回舌下投与時のアセナピンの薬物動態学的パラメータ
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16.1.2 反復投与
日本人健康成人にアセナピン5mg及び10mgを1日2回6日間反復舌下投与したとき、最終投与後の血漿中アセナピン濃度推移及びその際の薬物動態パラメータは次のとおりであった。10mgを1日2回反復舌下投与したとき、3日以内に定常状態に到達した。
図 日本人健康成人における反復舌下投与時の定常状態における血漿中アセナピン濃度推移(最終投与後)
表2 日本人健康成人における反復舌下投与時のアセナピンの薬物動態学的パラメータ(最終投与後)
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16.2 吸収
16.2.1 食事及び飲水の影響
健康成人にアセナピン5mgを絶食時及び高脂肪朝食摂取直後に単回舌下投与したとき、絶食時に比べ高脂肪食摂取直後のアセナピンのAUC0-∞は21%減少した。また、投与4時間後に食事を摂取したところ、アセナピンのAUC0-∞は13%減少した(外国人データ)。
健康成人にアセナピン10mgを1日1回舌下投与したとき、10分経過後に水を摂取しても薬物動態に影響を及ぼさなかった。一方、投与後5分又は2分時点で水を摂取したとき、アセナピンのAUC0-24hrがそれぞれ10%及び19%低下した(外国人データ)。[14.2参照]
16.3 分布
in vitro試験において、本剤はヒト血漿蛋白への結合率が高く、1~500ng/mLの濃度範囲で平均97.3%であった(外国人データ)。
16.4 代謝
アセナピンは広範に代謝され、血漿中の主要代謝物はN+‐グルクロン酸抱合体であり、他にN‐脱メチル体、N‐脱メチル‐N‐カルバモイル体のグルクロン酸抱合体、未変化体が少量確認されている(外国人データ)。
ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro試験では、本剤はUGT1A4を介したグルクロン酸抱合及びCYP1A2を介した酸化代謝を受け、一部はCYP2D6及びCYP3A4によっても代謝されることが示唆された。[10.参照]
16.5 排泄
健康成人に[14C]で標識したアセナピン10mgを舌下投与したとき、投与後11日以内に投与した放射能の88%が尿及び糞中に排泄された(尿中に49%、糞中に39%)。尿中では、N+‐グルクロン酸抱合体が主要代謝物であり(投与量の10~21%)、糞中には未変化体が最も多く排泄された(投与量の5~16%)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害時の血漿中濃度
種々の程度の腎機能障害者(非透析者)にアセナピン5mgを単回舌下投与したとき、腎機能障害者では腎機能正常者に比べてアセナピンのAUC0-∞は1.03~1.31倍であった(外国人データ)。
16.6.2 肝機能障害時の血漿中濃度
肝機能障害者(Child‐Pugh分類A~C)にアセナピン5mgを単回舌下投与したとき、重度の肝機能障害者群(Child‐Pugh分類C)では肝機能正常者群に比べてアセナピンのAUC0-∞が5.5倍大きかったが、軽度もしくは中等度の肝機能障害者群(Child‐Pugh分類A、B)では、肝機能正常者群と同様であった。血漿蛋白非結合形のAUC0-∞は重度の肝機能障害者群では肝機能正常者群に比べて7.7倍大きかったが、軽度もしくは中等度の肝機能障害者群では、肝機能正常者群と同様であった(外国人データ)。
肝機能障害者(Child‐Pugh分類A~C)にアセナピン0.3mgを単回舌下投与したとき、中等度もしくは重度の肝機能障害者群(Child‐Pugh分類B、C)では肝機能正常者群に比べてアセナピンのAUC0-∞がそれぞれ2.2倍及び2.1倍大きかった。一方、軽度の肝機能障害者群(Child‐Pugh分類A)では、肝機能正常者群と同様であった。血漿蛋白非結合形のAUC0-∞は中等度もしくは重度の肝機能障害者群では肝機能正常者群に比べてそれぞれ2.89倍及び2.72倍大きかったが、軽度の肝機能障害者群では、肝機能正常者群と同様であった(外国人データ)。[2.5、9.3.1、9.3.2参照]
※本剤の承認された1回用量はアセナピンとして5mg又は10mgである。
16.6.3 高齢者の血漿中濃度
精神疾患を有する高齢の患者にアセナピン10mgを1日2回舌下投与したとき、アセナピンのCmax及びAUC0-12hrの平均値はそれぞれ10.3ng/mL及び70.3ng・hr/mLであった(外国人データ)。[9.8参照]
16.7 薬物相互作用
16.7.1 フルボキサミン
健康成人にアセナピン(5mg、単回舌下)とCYP1A2阻害作用を有するフルボキサミン(25mg、1日2回反復経口)を併用投与したとき、アセナピンのCmax及びAUC0-∞はアセナピン単独投与時と比べそれぞれ13%及び29%増加した(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.2 パロキセチン
健康成人にCYP2D6阻害作用を有するパロキセチン(20mg、1日1回経口)を反復投与下、アセナピン(5mg、舌下)を単回併用投与したとき、アセナピンのCmaxはアセナピン単独投与時と比べ13%減少した。また、アセナピン(5mg、1日2回舌下)反復投与下、パロキセチン(20mg、経口)を単回併用投与したとき、パロキセチンのCmax及びAUC0-∞はパロキセチン単独投与時と比べそれぞれ82%及び92%増加した(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.3 イミプラミン
健康成人にアセナピン(5mg、単回舌下)とCYP1A2、CYP2D6、CYP2C19及びCYP3A4の基質であるイミプラミン(75mg、単回経口)を併用投与したとき、アセナピンのCmaxはアセナピン単独投与時と比べ17%増加した。一方、イミプラミンの薬物動態パラメータはアセナピン併用により影響を受けなかった(外国人データ)。
16.7.4 シメチジン
健康成人にアセナピン(5mg、単回舌下)とCYP1A2、CYP2D6及びCYP3A4阻害作用を有するシメチジン(800mg、1日2回)を併用投与したとき、アセナピンのCmaxはアセナピン単独投与時と比べ13%減少した(外国人データ)。
16.7.5 カルバマゼピン
健康成人にアセナピン(5mg、単回舌下)とCYP3A4誘導作用を有するカルバマゼピン(400mg、1日2回経口)を併用投与したとき、アセナピンのCmax及びAUC0-∞はアセナピン単独投与時と比べともに16%低下した(外国人データ)。
16.7.6 バルプロ酸
健康成人にアセナピン(5mg、単回舌下)とUGT阻害作用を有するバルプロ酸(500mg、1日2回経口)を併用投与したとき、アセナピンの薬物動態に影響は認められなかった(外国人データ)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第III相試験
急性増悪期の統合失調症患者(525例、日本人患者273例を含む)を対象に実施したプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤5mg又は10mgを1日2回6週間舌下投与したとき、最終評価時におけるPositive and Negative Syndrome Scale(PANSS)合計スコア及びベースラインからの変化量は次のとおりであった。本剤5mg投与群及び10mg投与群のいずれの群でも、PANSS合計スコアはベースラインから減少し、その変化量はプラセボ投与群と比較して有意に大きかった。
表1 PANSS合計スコアの最終評価時点でのベースラインからの変化量
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図 PANSS合計スコアのベースラインからの変化量の推移図(経時推移は繰り返し測定による混合効果モデル、最終評価時は共分散分析モデルによる最小二乗平均±標準誤差)
副作用発現頻度及び主な副作用は次のとおりであった。
表2 副作用発現頻度
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17.1.2 国際共同第III相長期継続投与試験
国際共同第III相試験(先行試験)を終了した患者(197例、日本人患者108例含む)を対象に継続して実施した非盲検長期継続投与試験において、本剤(5mg~10mg)を1日2回52週間(先行試験がプラセボ投与群の患者は投与1~2週はプラセボを投与)舌下投与したとき、PANSS合計スコアの推移は次のとおりであった。
表3 PANSS合計スコアの推移
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副作用発現頻度は、58.2%(117/201例)であった。主な副作用は、傾眠10.4%(21/201例)、体重増加7.5%(15/201例)、アカシジア6.5%(13/201例)であった。
17.1.3 国内第III相長期投与試験
残遺型統合失調症、抗精神病薬の多剤あるいは多量投与、治療抵抗性、高齢者の患者(153例)を対象に実施した非盲検長期投与試験において、本剤(5mg~10mg)を1日2回52週間舌下投与したとき、最終評価時におけるPANSS合計スコアのベースラインからの変化量(Mean±S.D.)は次のとおりであり、ベースラインより減少した。
表4 PANSS合計スコアの最終評価時点でのベースラインからの変化量
→図表を見る(PDF)
副作用発現頻度は、58.0%(91/157例)であった。主な副作用は、傾眠11.5%(18/157例)、口の感覚鈍麻10.2%(16/157例)、体重増加8.3%(13/157例)であった。
18.1 作用機序
アセナピンは、in vitro受容体結合試験においてセロトニン受容体の幅広いサブタイプ(5‐HT1A、5‐HT1B、5‐HT2A、5‐HT2B、5‐HT2C、5‐HT6、5‐HT7)に加え、ドパミン受容体(D1、D2、D3)、アドレナリン受容体(α1A、α2A、α2B、α2C)及びヒスタミン受容体(H1、H2)に対して高い親和性を示す。一方で、ムスカリン受容体及びβ受容体への親和性は低い。アセナピンはこれらの受容体に対してin vitroで拮抗作用を示したが、in vivoでは5‐HT1A受容体に対して刺激作用を有することが示唆された。これらの受容体に対する作用が、アセナピンの主要な作用機序と考えられる。
18.2 薬理作用
18.2.1 行動薬理
アセナピンは、ラットにおいて条件回避反応とd‐アンフェタミンが誘発する運動亢進を抑制し、アポモルヒネが誘発するプレパルス抑制障害を改善した。アセナピンのラットにおけるカタレプシー誘発作用は弱かった。また、アセナピンはラットとサルの各種認知障害を改善し、ストレス負荷によるラットのアンヘドニアを改善した。
18.2.2 神経伝達物質遊離
アセナピンは、ラットの内側前頭前皮質と海馬においてドパミン、ノルアドレナリン並びにアセチルコリンの遊離を促進した。
- 一包可:不可
通常の錠剤に比べてやわらかいため、自動分包機には適さない。@吸湿性であるため、使用直前に乾いた手でブリスターシートから取り出し、直ちに舌下に入れる。@凍結乾燥製剤であり吸湿性を有するのでブリスター包装のまま保存する。
- 分割:不可
- 粉砕:不可
吸湿性であるため、使用直前に乾いた手でブリスターシートから取り出し、直ちに舌下に入れる。@凍結乾燥製剤であり吸湿性を有するのでブリスター包装のまま保存する。
- 製造販売会社
- MeijiSeikaファルマ
- 販売会社
おくすりのQ&A
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