トルバプタンOD錠15mg「オーツカ」

添付文書情報2022年12月改定(第5版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 本剤投与により、急激な水利尿から脱水症状や高ナトリウム血症を来し、意識障害に至った症例が報告されており、また、急激な血清ナトリウム濃度の上昇による浸透圧性脱髄症候群を来すおそれがあることから、入院下で投与を開始又は再開すること(また、特に投与開始日又は再開日には血清ナトリウム濃度を頻回に測定すること)〔8.8、9.1.3、11.1.3、11.1.4参照〕。
- 禁忌
- 2.1. 本剤の成分又は類似化合物(トルバプタンリン酸エステルナトリウム等)に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 口渇を感じない又は水分摂取が困難な患者[循環血漿量の減少により高ナトリウム血症及び脱水のおそれがある]。
2.3. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。
2.4. 無尿の患者[本剤の効果が期待できない]。
2.5. 適切な水分補給が困難な肝性脳症の患者〔9.3.1参照〕。
2.6. 高ナトリウム血症の患者[本剤の水利尿作用により高ナトリウム血症が増悪するおそれがある]。
- 効能・効果
- ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留。
- 用法・用量
- 通常、成人にはトルバプタンとして15mgを1日1回経口投与する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. CYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、フルコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用は避けることが望ましい(やむを得ず併用する場合は、本剤の減量あるいは低用量からの開始などを考慮すること)〔10.2、16.7.1-16.7.3参照〕。
7.2. 夜間の排尿を避けるため、午前中に投与することが望ましい。
7.3. 本剤は水排泄を増加させるが、ナトリウム排泄を増加させないことから、他の利尿薬(ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、抗アルドステロン薬等)と併用して使用すること(なお、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドとの併用経験はない)。
7.4. 体液貯留所見が消失した際には投与を中止すること(症状消失後の維持に関する有効性は確認されていない)。
7.5. 血清ナトリウム濃度125mEq/L未満の患者、急激な循環血漿量減少が好ましくないと判断される患者、高齢者、血清ナトリウム濃度が正常域内で高値の患者に投与する場合は、半量(7.5mg)から開始することが望ましい〔9.1.1、9.1.3、9.8.1、9.8.3参照〕。
- 生殖能を有する者
- 8.1. 本剤の水利尿作用により循環血漿量の減少を来し、血清カリウム濃度上昇させ、心室細動、心室頻拍を誘発するおそれがあるので、本剤投与中は血清カリウム濃度を測定すること〔9.1.2参照〕。
8.2. 口渇感が持続する場合には、減量を考慮すること。
8.3. 本剤の投与初期は、過剰な利尿に伴う脱水、高ナトリウム血症などの副作用があらわれるおそれがあるので、口渇感等の患者の状態を観察し、適切な水分補給を行い、体重、血圧、脈拍数、尿量等を頻回に測定すること。
8.4. 本剤の利尿作用に伴い、口渇、脱水などの症状があらわれた場合には、水分補給を行うよう指導すること〔11.1.3、11.1.4参照〕。
8.5. 本剤の投与初期から重篤な肝機能障害があらわれることがあるため、本剤投与開始前に肝機能検査を実施し、少なくとも投与開始2週間は頻回に肝機能検査を行うこと。またやむを得ず、その後も投与を継続する場合には、適宜肝機能検査を行うこと〔11.1.5、15.1参照〕。
8.6. めまい等があらわれることがあるので、転倒に注意し、また、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
8.7. 体液貯留状態が改善しない場合は、漫然と投与を継続しないこと〔17.1.1参照〕。
8.8. 本剤投与開始後24時間以内に水利尿効果が強く発現するため、少なくとも投与開始4~6時間後並びに8~12時間後に血清ナトリウム濃度を測定し、投与開始翌日から1週間程度は血清ナトリウム濃度を毎日測定し、その後も投与を継続する場合には、適宜血清ナトリウム濃度を測定すること〔1.警告の項、11.1.3、11.1.4参照〕。
8.9. 目標体重(体液貯留状態が良好にコントロールされているときの体重)に戻った場合は、漫然と投与を継続しないこと(国内臨床試験において2週間を超える使用経験はない)。
9.1.1. 重篤な冠動脈疾患又は重篤な脳血管疾患のある患者:急激な利尿があらわれた場合、急速な循環血漿量減少、血液濃縮を来し、血栓塞栓症を誘発するおそれがある〔7.5、11.1.2参照〕。
9.1.2. 高カリウム血症の患者:本剤の水利尿作用により高カリウム血症が増悪するおそれがある〔8.1参照〕。
9.1.3. 血清ナトリウム濃度125mEq/L未満の患者:24時間以内に12mEq/Lを超える血清ナトリウム濃度上昇がみられた場合には、投与を中止すること(急激な血清ナトリウム濃度の上昇により、浸透圧性脱髄症候群を来すおそれがある)〔1.警告の項、7.5、11.1.4参照〕。
9.2.1. 重篤な腎障害のある患者:利尿に伴う腎血流量の減少により腎機能が更に悪化するおそれがある〔11.1.1参照〕。
9.3.1. 適切な水分補給が困難な肝性脳症の患者:投与しないこと(循環血漿量の減少により高ナトリウム血症及び脱水のおそれがある)〔2.5参照〕。
9.3.2. 肝性脳症を現有するかその既往のある患者:意識レベルが低下した場合、適切な水分補給に支障を来すおそれがある。
妊娠する可能性のある女性:妊娠する可能性のある女性には、適切な避妊を行うよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
- 相互作用
- 本剤は、主として肝代謝酵素CYP3A4によって代謝される。また、P糖蛋白の基質であるとともに、P糖蛋白への阻害作用を有する〔16.4参照〕。
10.2. 併用注意:1). CYP3A4阻害作用を有する薬剤(ケトコナゾール(経口剤:国内未発売)、イトラコナゾール、フルコナゾール、クラリスロマイシン等、グレープフルーツジュース)〔7.1、16.7.1-16.7.3参照〕[代謝酵素の阻害により、本剤の作用が増強するおそれがあるので、これらの薬剤との併用は避けることが望ましい(本剤の代謝酵素であるCYP3A4を阻害し、本剤の血漿中濃度を上昇させる)]。
2). CYP3A4誘導作用を有する薬剤(リファンピシン等、セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort))〔16.7.4参照〕[代謝酵素の誘導により、本剤の作用が減弱するおそれがあるので、本剤投与時はこれらの薬剤及び食品を摂取しないことが望ましい(本剤の代謝酵素であるCYP3A4を誘導し、本剤の血漿中濃度を低下させる)]。
3). ジゴキシン〔16.7.5参照〕[本剤によりジゴキシンの作用が増強されるおそれがある(本剤はP糖蛋白を阻害し、ジゴキシンの血漿中濃度を上昇させる)]。
4). P糖蛋白阻害作用を有する薬剤(シクロスポリン等)[本剤の作用が増強するおそれがある(これらの薬剤がP糖蛋白を阻害することにより、本剤の排出が抑制されるため血漿中濃度が上昇するおそれがある)]。
5). カリウム製剤、カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン、トリアムテレン等)、抗アルドステロン薬(エプレレノン等)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(エナラプリルマレイン酸塩等)、アンジオテンシン2受容体拮抗薬(ロサルタンカリウム等)、レニン阻害薬(アリスキレンフマル酸塩等)[これらの薬剤と併用する場合、血清カリウム濃度が上昇するおそれがある(本剤の水利尿作用により循環血漿量の減少を来し、相対的に血清カリウム濃度が上昇するおそれがある)]。
6). バソプレシン誘導体(デスモプレシン酢酸塩水和物等)[本剤によりバソプレシン誘導体の止血作用が減弱するおそれがある(本剤のバソプレシンV2-受容体拮抗作用
により、血管内皮細胞からのvon Willebrand因子の放出が抑制されるおそれがある)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 腎不全(1%未満):重度腎障害があらわれることがある〔9.2.1参照〕。
11.1.2. 血栓塞栓症(1%未満):急激な利尿により血液濃縮を来した場合、血栓症及び血栓塞栓症を誘発するおそれがある〔9.1.1、9.8.1参照〕。
11.1.3. 高ナトリウム血症(1~5%未満):本剤の水利尿作用により血液濃縮を来し、高ナトリウム血症があらわれることがあり、意識障害を伴うこともあるので、投与中は、飲水量、尿量、血清ナトリウム濃度及び口渇、脱水等の症状の観察を十分に行い、口渇感の持続、脱水等の症状がみられた場合には、本剤の投与を減量又は中止し、症状に応じて、輸液を含めた水分補給等の適切な処置を行うこと。また、正常域を超える血清ナトリウム濃度上昇がみられた場合には、直ちに本剤の投与を中止し、症状に応じて、輸液を含めた水分補給等の適切な処置を行うこと〔1.警告の項、8.4、8.8参照〕。
11.1.4. 急激な血清ナトリウム濃度上昇(1%未満):本剤の水利尿作用により、急激な血清ナトリウム濃度上昇があらわれることがあり、これにより麻痺、発作、昏睡等に至るような浸透圧性脱髄症候群を来すおそれがあるため、投与中は、血清ナトリウム濃度及び体液量の観察を十分に行うこと。本剤投与後24時間以内に12mEq/Lを超える血清ナトリウム濃度の急激な上昇等がみられた場合には、直ちに本剤の投与を中止し、症状に応じて、輸液を含めた水分補給等の適切な処置を行うこと〔1.警告の項、8.4、8.8、9.1.3参照〕。
11.1.5. 急性肝不全(頻度不明)、肝機能障害(5%以上):AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇、Al-P上昇、ビリルビン上昇等を伴う肝機能障害があらわれ、急性肝不全に至ることがある(また、肝機能障害が回復するまでは頻回に血液検査を実施するなど観察を十分に行うこと)〔8.5参照〕。
11.1.6. ショック、アナフィラキシー(頻度不明):ショック、アナフィラキシー(全身発赤、血圧低下、呼吸困難等)があらわれることがある。
11.1.7. 過度の血圧低下(頻度不明)、心室細動(頻度不明)、心室頻拍(1%未満)。
11.1.8. 肝性脳症(1%未満):肝硬変患者の場合、意識障害を伴う肝性脳症があらわれるおそれがある。なお、肝性脳症は、主に肝性浮腫患者において報告されているので、これらの患者に投与する場合は、意識障害等の臨床症状を十分に観察すること。
11.1.9. 汎血球減少、血小板減少(頻度不明)。
- 11.2. その他の副作用
1). 精神神経系:(5%以上)頭痛、めまい、(1~5%未満)不眠症、(1%未満)失神、意識消失、睡眠障害、嗜眠、傾眠、ナルコレプシー、注意力障害、感覚鈍麻、不随意性筋収縮、錯感覚、不安、うつ病、リビドー減退、神経過敏、パニック発作。
2). 消化器:(5%以上)口渇(56.9%)、便秘、(1~5%未満)食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、味覚異常、消化不良、腹痛、腹部膨満、(1%未満)胃食道逆流性疾患、食道炎、裂孔ヘルニア、腹部不快感、心窩部不快感、口唇乾燥、鼓腸、胃腸炎、胃炎、胃腸障害、憩室炎、結腸ポリープ、嚥下障害、消化管運動障害、舌痛、舌苔、舌変色、口唇炎、口内炎、口の感覚鈍麻、臍ヘルニア、食欲亢進、呼気臭、痔核、(頻度不明)過敏性腸症候群。
3). 循環器:(1~5%未満)血圧上昇、血圧低下、動悸、(1%未満)頻脈、期外収縮、不整脈、起立性低血圧、不安定血圧。
4). 血液:(1%未満)貧血、ヘモグロビン低下、平均赤血球容積増加、血小板減少、白血球増多、好酸球増多。
5). 代謝:(5%以上)血中尿酸上昇、(1~5%未満)脱水、高カリウム血症、糖尿病、高血糖、脂質異常症、痛風、(1%未満)血液浸透圧上昇、血液量減少症、低カリウム血症、高カルシウム血症、低ナトリウム血症、低血糖、低リン酸血症、CK上昇、(頻度不明)血中抗利尿ホルモン増加。
6). 腎臓・泌尿器:(5%以上)頻尿(38.8%)、多尿(26.2%)、血中クレアチニン上昇、(1~5%未満)腎臓痛、BUN上昇、腎機能障害、血尿、(1%未満)尿浸透圧低下、尿失禁、尿意切迫、排尿困難、尿閉、乏尿、尿路感染、膀胱痛、腎結石、シスタチンC上昇。
7). 過敏症:(1~5%未満)発疹、そう痒、(1%未満)蕁麻疹。
8). 皮膚:(1~5%未満)皮膚乾燥、(1%未満)脱毛、ざ瘡、皮膚炎、皮膚色素沈着障害、爪障害、多汗、乏汗、寝汗。
9). 呼吸器:(1~5%未満)咳嗽、呼吸困難、(1%未満)鼻咽頭炎、上気道感染、扁桃炎、副鼻腔炎、喘息、気管支炎、口腔咽頭痛、咽喉乾燥、鼻乾燥、鼻出血、発声障害。
10). 眼:(1%未満)眼乾燥、緑内障、霧視、結膜出血。
11). その他:(5%以上)疲労、多飲症、(1~5%未満)体重変動(体重増加、体重減少)、無力症、倦怠感、浮腫、筋骨格痛、筋痙縮、胸痛、(1%未満)背部痛、関節痛、四肢痛、疼痛、側腹部痛、冷感、発熱、ほてり、熱感、粘膜乾燥、ウイルス感染、カンジダ症、真菌感染、筋硬直、関節腫脹、勃起不全、月経過多、不規則月経、乳房嚢胞、易刺激性、LDH上昇、耳鳴、(頻度不明)不正子宮出血。
- 高齢者
- 9.8.1. 急激な利尿があらわれた場合、急速な循環血漿量減少、血液濃縮を来し、血栓塞栓症を誘発するおそれがある〔7.5、11.1.2参照〕。
9.8.2. 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下しており、また、脱水症状を起こしやすいとされている)。
9.8.3. 高ナトリウム血症発現のおそれがある〔7.5参照〕。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験(ウサギ)で催奇形性及び胚死亡・胎仔死亡が報告されており、また、動物実験(ウサギ、ラット)で胚移行あるいは胎仔移行が報告されている)〔2.3、9.4生殖能を有する者の項参照〕。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている)。
- 小児等
- 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意14.1.1. PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
14.1.2. 本剤は舌の上にのせて唾液を浸潤させると速やかに崩壊するため、水なしで服用可能である(また、水で服用することもできる)。
14.1.3. 本剤は寝たままの状態では、水なしで服用させないこと。
アルミピロー開封後は湿気を避けて保存すること。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報適応外であるが常染色体優性多発性のう胞腎患者を対象とした第3相二重盲検比較試験(国際共同試験)において、本剤60~120mg/日又はプラセボを3年間投与した結果、基準値上限の2倍を超える総ビリルビン上昇、かつ基準値上限の3倍を超える血清ALT上昇又は基準値上限の3倍を超える血清AST上昇が、本剤投与群の2例に認められ、また、基準値上限の2.5倍を超えるALT上昇の発現頻度が、プラセボ群と比較して本剤投与群で高かった(本剤投与群960例中47例(4.9%)、プラセボ群483例中6例(1.2%))。なお、適応外であるが常染色体優性多発性のう胞腎患者において、本剤投与群における基準値上限の3倍を超えるALT上昇の多くは、投与開始3~14ヵ月の間に認められた〔8.5参照〕。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人にトルバプタン15~120注)mgを空腹時単回経口投与した時の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータを添付文書の図16‐1及び表16‐1に示す。
図16‐1 健康成人におけるトルバプタン投与時の血漿中濃度推移(平均値、6例、30mg注)群のみ12例)
注)本剤の承認された1日用量は、心不全における体液貯留15mg及び肝硬変における体液貯留7.5mgである。
表16‐1 トルバプタン単回投与時の薬物動態パラメータ
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16.1.2 反復投与
健康成人にトルバプタン30注)~120注)mgを空腹時1日1回7日間反復経口投与した時のトルバプタンの血漿中濃度に累積はみられなかった。
〈心不全における体液貯留〉
心性浮腫患者にトルバプタン15mgを1日1回7日間反復経口投与した時のトルバプタンの薬物動態パラメータを表16‐2に示す。
表16‐2 心性浮腫患者にトルバプタン15mgを7日間反復投与時の薬物動態パラメータ
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〈肝硬変における体液貯留〉
肝性浮腫患者にトルバプタン7.5mgを1日1回7日間反復経口投与した時のトルバプタンの薬物動態パラメータを表16‐3に示す。
表16‐3 肝性浮腫患者にトルバプタン7.5mgを7日間反復投与時の薬物動態パラメータ
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16.1.3 生物学的同等性
健康成人にトルバプタン15mg(OD錠又は普通錠)を、クロスオーバー法により空腹時単回経口投与した時の薬物動態パラメータを表16‐4に示す。Cmax及びAUCtの幾何平均値の比の90%信頼区間はいずれも0.80~1.25の範囲内であり、OD錠と普通錠は生物学的に同等であった。また、トルバプタン7.5mgOD錠は「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性ガイドライン」に基づき、標準製剤をトルバプタン15mgOD錠とした時、溶出挙動は同等と判定され、生物学的に同等とみなされた。
表16‐4 トルバプタン15mg単回投与時の薬物動態パラメータ
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16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人にトルバプタン15mgを単回経口投与した時、空腹時投与に比べ食後投与ではCmax及びAUCはそれぞれ1.3倍及び1.1倍であった。
16.2.2 絶対的バイオアベイラビリティ
健康成人における経口投与時の絶対的バイオアベイラビリティは56%であった(外国人データ)。
16.3 分布
ヒト血漿蛋白結合率は、98.0%以上であった(in vitro、限外ろ過法)。
16.4 代謝
トルバプタンは、ヒト肝ミクロゾームチトクロームP450の分子種のうち、主としてCYP3A4により代謝される(in vitro)。[10.参照]
16.5 排泄
健康成人に、14C‐トルバプタン60mg注)を空腹時に単回経口投与した時、糞中及び尿中にそれぞれ投与した放射能の58.7%及び40.2%が排泄された。未変化体の糞中及び尿中の回収率は、それぞれ投与量の18.7%及び1%未満であった(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
腎機能の程度の異なる被験者(クレアチニンクリアランス<30mL/min、クレアチニンクリアランス=30~60mL/min及びクレアチニンクリアランス>60mL/min)にトルバプタン60mg注)を投与した時のAUCは、それぞれ7,360ng・h/mL、6,980ng・h/mL及び3,890ng・h/mLであった。また、血漿中遊離型分率は、それぞれ1.2%、0.6%及び1.0%であった。血漿中遊離型分率を用いて算出した血漿中遊離型濃度のAUCは、クレアチニンクリアランス<30mL/min、クレアチニンクリアランス=30~60mL/min及びクレアチニンクリアランス>60mL/minでそれぞれ71.8ng・h/mL、36.4ng・h/mL及び37.5ng・h/mLであった(外国人データ)。
16.6.2 肝機能障害患者
肝性浮腫患者にトルバプタン15mgを投与した時のAUCは、中等度肝障害患者(Child‐Pugh分類A又はB)で1,618ng・h/mL、重度肝障害患者(Child‐Pugh分類C)で2,172ng・h/mLであった(母集団解析)。
16.6.3 高齢者(65歳以上)、性別
トルバプタンの薬物動態には年齢及び性別による影響は認められなかった。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 ケトコナゾール
健康成人において、強力なCYP3A4の阻害作用を有するケトコナゾール200mgとトルバプタン30mg注)の併用により、トルバプタンのCmax及びAUCはそれぞれ3.5倍及び5.4倍になった(外国人データ)。[7.1、10.2参照]
16.7.2 フルコナゾール
健康成人において、中等度のCYP3A4の阻害作用を有するフルコナゾール200mgとトルバプタン30mg注)の併用により、トルバプタンのCmax及びAUCはそれぞれ1.8倍及び3.0倍になった(外国人データ)。[7.1、10.2参照]
16.7.3 グレープフルーツジュース
健康成人において、トルバプタン60mg注)をCYP3A4の阻害作用を有するグレープフルーツジュースにより服用した時、トルバプタンのCmax及びAUCはそれぞれ1.9倍及び1.6倍になった(外国人データ)。[7.1、10.2参照]
16.7.4 リファンピシン
健康成人において、CYP3A4の誘導作用を有するリファンピシン600mgとトルバプタン240mg注)の併用により、トルバプタンのCmax及びAUCはそれぞれ1/6及び1/8になった(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.5 ジゴキシン
健康成人において、P糖蛋白の基質であるジゴキシン0.25mgとトルバプタン60mg注)の併用により、ジゴキシンのCmax及びAUCは、それぞれ1.3倍及び1.2倍になった。トルバプタンのCmaxとAUCは、いずれも1.1倍になった(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.6 その他の薬剤
・健康成人において、CYP3A4の基質であるロバスタチン80mgとトルバプタン90mg注)の併用により、ロバスタチンのCmax及びAUCはそれぞれ1.3倍及び1.4倍になった。
ロバスタチン80mgとトルバプタン60mg注)の併用によりトルバプタンのCmaxとAUCはいずれも1.2倍になった(外国人データ)。
・不整脈患者において、CYP3A4の基質であるアミオダロン200mgとトルバプタン90mgの併用によるアミオダロンの薬物動態の変化は5%未満であった(外国人データ)。
・健康成人において、CYP2C9の基質であるワルファリン25mgとトルバプタン60mgの併用により、R‐ワルファリンとS‐ワルファリンの薬物動態は影響を受けなかった(外国人データ)。
・健康成人において、トルバプタン30mg注)とフロセミド80mgとの併用により、トルバプタンのCmax及びAUCはいずれも1.2倍になった。ヒドロクロロチアジド100mgとの併用により、トルバプタンのCmax及びAUCは変化しなかった。トルバプタンはフロセミド及びヒドロクロロチアジドの薬物動態に影響を与えなかった(外国人データ)。
注)本剤の承認された1日用量は、心不全における体液貯留15mg及び肝硬変における体液貯留7.5mgである。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
トルバプタン錠の成績を次に示す。
〈心不全における体液貯留〉
17.1.1 国内第III相試験
他の利尿薬を投与しても体液貯留が認められるうっ血性心不全患者を対象とした二重盲検比較試験において、トルバプタン15mg又はプラセボを1日1回7日間経口投与した。
主要評価項目である最終投与時の体重変化量は、トルバプタン15mg群-1.54±1.61kg(ベースライン:59.42±12.30kg、53例)(平均値±標準偏差、以下同様)、プラセボ群-0.45±0.93kg(ベースライン:55.68±12.60kg、57例)であり、トルバプタン群では、プラセボ群に比較して有意な体重減少が認められた(p<0.0001、t検定)。体重減少は投与翌日よりみられ投与期間を通じて継続した(添付文書の図17‐1)。また、最終投与時における心性浮腫に伴う所見(頚静脈怒張、肝腫大、下肢浮腫)が改善した(表17‐1)。
図17‐1 心性浮腫患者における体重のベースラインからの変化量(プラセボとの二重盲検比較試験)
表17‐1 心性浮腫に伴う所見の変化(プラセボとの二重盲検比較試験)
→図表を見る(PDF)
副作用発現頻度は、53例中29例(54.7%)であった。主な副作用は、口渇9例(17.0%)、便秘6例(11.3%)、頻尿5例(9.4%)及び倦怠感3例(5.7%)であった。[8.7参照]
〈肝硬変における体液貯留〉
17.1.2 国内第III相試験
他の利尿薬を投与しても体液貯留が認められる肝硬変患者を対象とした二重盲検比較試験において、トルバプタン7.5mg又はプラセボを1日1回7日間経口投与した。
主要評価項目である最終投与時の体重変化量は、トルバプタン7.5mg群-1.95±1.77kg(ベースライン:59.35±12.69kg、82例)(平均値±標準偏差、以下同様)、プラセボ群-0.44±1.93kg(ベースライン:59.15±13.15kg、80例)であり、トルバプタン群では、プラセボ群に比較して有意な体重減少が認められた(p<0.0001、t検定)。体重減少は投与翌日よりみられ投与期間を通じて継続した(添付文書の図17‐2)。最終投与時における肝性浮腫に伴う所見(腹水量、腹囲、下肢浮腫)が改善した(表17‐2)。また、臨床症状(腹部膨満感、倦怠感、臥位での圧迫感、呼吸困難感、全身状態)も改善した。
図17‐2 肝性浮腫患者における体重のベースラインからの変化量(プラセボとの二重盲検比較試験)
表17‐2 肝性浮腫に伴う所見の変化(プラセボとの二重盲検比較試験)
→図表を見る(PDF)
副作用発現頻度は、82例中37例(45.1%)であった。主な副作用は、口渇11例(13.4%)、頻尿6例(7.3%)、便秘3例(3.7%)及び不眠症3例(3.7%)であった。[8.7参照]
18.1 作用機序
トルバプタンは、バソプレシンV2‐受容体拮抗作用を薬理学的特徴とする薬剤であり、腎集合管でのバソプレシンによる水再吸収を阻害することにより、選択的に水を排泄し、電解質排泄の増加を伴わない利尿作用(水利尿作用)を示す。
18.2 バソプレシンV2‐受容体拮抗作用
トルバプタンは、ヒトバソプレシンV2‐受容体発現細胞及びラット、イヌ腎臓膜標本において、標識バソプレシンのV2‐受容体への結合を濃度依存的に阻害した。また、ヒトバソプレシンV2‐受容体発現細胞において、それ自身ではcAMPの産生増加を示さず、バソプレシンによるcAMPの産生を抑制したことから、バソプレシンV2‐受容体拮抗作用を有していることが示された。ヒトバソプレシンV2‐受容体に対する阻害定数は、0.43±0.06nmol/Lであった(in vitro)。
18.3 利尿作用
トルバプタンは、覚醒ラット及びイヌにおいて、用量依存的に尿量を増加させ、尿浸透圧を低下させた。このとき、ループ利尿薬とは異なり、自由水クリアランスが正の値となり、自由水の排泄を増加させた(水利尿作用)。
18.4 抗浮腫作用
トルバプタンは、ラット浮腫モデルにおいて、カラゲニン誘発足浮腫及びヒスタミン誘発毛細血管透過性の亢進を用量依存的に抑制した。また、覚醒心不全犬において水利尿作用を示し、前負荷を軽減させた。
18.5 腹水減少作用
トルバプタンは、ラット肝硬変腹水モデルにおいて、腹水の指標である体重及び腹囲を減少させた。
- 一包可:条件付可
- 分割:条件付可
- 粉砕:条件付可
粉砕して投与する方法は承認された用法及び用量外の使用方法であり推奨しない。また、粉砕した製品での薬物動態等のデータはない。
- 製造販売会社
- 大塚製薬工場
- 販売会社
おくすりのQ&A
自費で接種された、風疹ワクチンが申請により
補助が受けれることになり、母子手帳記載以外に、予診票の控えがいるとのこと
保管中の予診票の控えを渡したら...
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