マーデュオックス軟膏
添付文書情報2023年04月改定(第2版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 禁忌
- 2.1. 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 細菌皮膚感染症・真菌皮膚感染症・スピロヘータ皮膚感染症・ウイルス皮膚感染症及び動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ等)[感染症及び動物性皮膚疾患症状を悪化させることがある]。
2.3. 潰瘍<ベーチェット病は除く>、第2度深在性以上の熱傷・第2度深在性以上の凍傷[皮膚の再生が抑制され、治癒が著しく遅れるおそれがあり、また、感染のおそれがある]。
- 効能・効果
- 尋常性乾癬。
- 用法・用量
- 通常、1日1回、適量を患部に塗布する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 1日の使用量は、10g(マキサカルシトールとして250μg)までとする。
7.2. 4週間を超えて本剤を使用した際の有効性及び安全性は確立していないため、本剤による治療にあたっては経過を十分に観察し、漫然と使用を継続しないこと〔17.1.1参照〕。
- 腎機能障害患者
- 8.1. 本剤はマキサカルシトールとベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルの配合剤であり、マキサカルシトールとベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル双方の副作用が発現するおそれがあるため、本剤の適切な使用を検討すること。
8.2. 本剤は活性型ビタミンD3誘導体を含有しており、血中カルシウム値上昇する可能性がある。また、マキサカルシトール外用製剤において高カルシウム血症に伴い、急性腎障害の報告があるため、本剤の使用に際しては、血中カルシウム値及び腎機能(血中クレアチニン、BUN等)の検査を定期的(開始2~4週後に1回、その後は適宜)に行うこと(なお、正常域を超えた場合には減量又は使用を中止すること)〔9.1.1、9.2腎機能障害患者の項、11.1.1、11.1.2参照〕。
8.3. 皮疹が広範囲にある場合や、皮疹重症度が高く皮膚のバリア機能が低下して本剤の経皮吸収が増加する可能性のある患者では、高カルシウム血症が発現しやすく、急性腎障害に至る可能性もあるため、本剤を少量から使用開始し、観察を十分に行い、血中カルシウム値及び腎機能の検査を定期的に行うこと〔9.1.1、9.2腎機能障害患者の項、11.1.1、11.1.2参照〕。
8.4. 皮膚萎縮、ステロイド潮紅等の局所的副作用が発現しやすいので、特に顔面、頸、陰部、間擦部位の皮疹への使用には、症状の程度を十分考慮すること。
8.5. 本剤は副腎皮質ホルモンを含有しており、大量又は長期にわたる広範囲の使用
(特に密封療法(ODT))により、副腎皮質ステロイド剤を全身投与した場合と同様の症状があらわれることがある〔9.5妊婦の項参照〕。
8.6. 本剤はマキサカルシトールを含有しており、密封療法(ODT)における安全性は確立していない。
9.1.1. 高カルシウム血症及びそのおそれのある患者:本剤の使用によりさらに血中カルシウム値を上昇させるおそれがある〔8.2、8.3、11.1.1、11.1.2参照〕。
腎機能障害患者:血中カルシウム値を上昇させるおそれがある〔8.2、8.3、11.1.1、11.1.2参照〕。
- 相互作用
- 10.2. 併用注意:1). ビタミンD及びビタミンD誘導体(アルファカルシドール、カルシトリオール、カルシポトリオール等)、PTH製剤(テリパラチド、アバロパラチド酢酸塩)[高カルシウム血症があらわれるおそれがある(相加作用)]。
2). カルシウム製剤<経口>(乳酸カルシウム水和物<経口>、炭酸カルシウム<経口>等)[高カルシウム血症があらわれるおそれがある(本剤は腸管でのカルシウムの吸収を促進させる)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には使用を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 高カルシウム血症(頻度不明):高カルシウム血症及び高カルシウム血症によると考えられる臨床症状(口渇、倦怠感、脱力感、食欲不振、嘔吐、腹痛、筋力低下等)があらわれることがあるので、異常が認められた場合には使用を中止し、血中カルシウム値、尿中カルシウム値等の生化学的検査を行い、必要に応じて輸液等の処置を行うこと〔8.2、8.3、9.1.1、9.2腎機能障害患者の項参照〕。
11.1.2. 急性腎障害(頻度不明):血中カルシウム増加を伴った急性腎障害があらわれることがあるので、血中カルシウム値及び腎機能を定期的に観察し、異常が認められた場合には使用を中止し、適切な処置を行うこと〔8.2、8.3、9.1.1、9.2腎機能障害患者の項参照〕。
- 11.2. その他の副作用
1). 過敏症:(頻度不明)皮膚刺激感、発疹。
2). 皮膚:①. 皮膚感染症:(1%未満)毛包炎、(頻度不明)皮膚ウイルス感染症、皮膚真菌症(皮膚カンジダ症、皮膚白癬等)、皮膚細菌感染症(伝染性膿痂疹、せつ等)[このような症状があらわれた場合には、適切な抗真菌剤、抗菌剤等を併用し、症状が速やかに改善しない場合には本剤の使用を中止すること(密封療法(ODT)の場合に起こりやすい)]。
②. その他の皮膚症状:(頻度不明)皮膚そう痒、湿疹(発赤、苔癬化、皮膚腫脹、皮膚びらん等)、接触皮膚炎、皮膚水疱、皮膚腫脹、皮膚疼痛、皮膚剥脱、皮膚乾燥、皮膚びらん、皮膚浮腫、皮膚熱感、*紅斑、*皮膚色素沈着、*魚鱗癬様皮膚変化、*ざ瘡(*ざ瘡様発疹、*ステロイドざ瘡等)、*ステロイド皮膚(*皮膚萎縮、*毛細血管拡張、*ステロイド潮紅等)、*ステロイド酒さ・*口囲皮膚炎(*口囲紅斑、*顔面全体紅斑、*丘疹、*毛細血管拡張、*痂皮、*鱗屑を生じる)、*紫斑、*多毛、*皮膚色素脱失[*:このような症状があらわれた場合には、徐々にその使用を差し控え、副腎皮質ステロイドを含有しない薬剤に切り替えること(特に長期連用に際しては注意すること)]。
3). 腎臓:(1%未満)血中クレアチニン増加、(頻度不明)尿路結石、尿中蛋白陽性、BUN増加、増殖性糸球体腎炎。
4). 代謝:(1%未満)血中カルシウム増加、(頻度不明)血中リン減少、血中リン増加、Al-P増加、CK増加、尿中ブドウ糖陽性、血中アルブミン減少、血中カリウム減少。
5). 消化器:(頻度不明)口渇、食欲不振、びらん性胃炎。
6). 肝臓:(1%未満)肝機能異常、(頻度不明)γ-GTP増加、AST増加、ALT増加、血中ビリルビン増加、尿中ウロビリン陽性。
7). 血液:(1%未満)白血球数減少、(頻度不明)白血球数増加、血小板数減少。
8). 下垂体・副腎皮質系:(1%以上)血中コルチゾール減少、(頻度不明)*下垂体・副腎皮質系機能抑制[*:ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル外用製剤において、大量又は長期にわたる広範囲の使用、密封療法(ODT)により、発現することがあるので注意すること]。
9). 筋・骨格系:(頻度不明)背部痛。
- 高齢者
- 使用が過度にならないように注意すること(一般に生理機能が低下している)。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には使用しないことが望ましい。大量又は長期にわたる広範囲の使用を避けること。マキサカルシトールは動物実験(ラット)で胎盤を通じて胎仔へ移行することが認められており、また、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルでは動物実験(ラット、ウサギ)で催奇形作用が報告されている〔8.5参照〕。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(マキサカルシトールは周産期及び授乳期の静脈内投与試験(ラット)において、1.1μg/kg/日投与で出生仔体重増加抑制が認められており、また、分娩後哺乳中のラットに静脈内投与したとき、乳汁中への移行を示唆する報告がある)。
- 小児等
- 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
- 適用上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意誤用(内服等)防止のため、薬剤の保管に十分注意させること。特に、小児の手のとどかない所に保管させること。万一、誤って内服した場合には、高カルシウム血症等の全身性の副作用があらわれることがあるので、医療機関を受診するなど、適切な処置を受けるよう指導すること〔13.1参照〕。
14.2. 薬剤使用時の注意14.2.1. 使用部位(1). 本剤は患部にのみ使用し、正常皮膚部位には使用しないこと。
(2). 皮膚以外の部位<眼・粘膜>には使用しないこと。
14.2.2. 使用時:本剤に触れた手で傷口等に触れないように注意すること。
14.2.3. 使用後:本剤塗布後は手をよく洗うこと。
- その他の注意
- 15.2. 非臨床試験に基づく情報15.2.1. 光苛酷試験において、本剤は紫外線(太陽光線を含む)により分解された。
15.2.2. がん原性試験においてラット(F344/DuCrj)にマキサカルシトールを1日1回24カ月間経皮投与した結果、副腎において褐色細胞腫の発生頻度が増加した。一部、副腎被膜への浸潤を示す例が認められたが、副腎近隣組織への浸潤や遠隔転移を示すものはなかった。また、マウスでは1日1回18カ月間経皮投与で発がん性は認められなかった。
16.1 血中濃度
尋常性乾癬患者166例に本剤1回適量(10gまで)を1日1回4週間塗布したところ、1例に血漿中ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(54.30pg/mL、塗布4週後)を検出したが、他は定量下限(50pg/mL)未満であった。また、血漿中マキサカルシトールは塗布2週後に25例、塗布4週後には15例に検出され(最大値43.43pg/mL、塗布2週後)、他は定量下限(10pg/mL)未満であった。
16.2 吸収
ラット(雄)に本剤、マキサカルシトール軟膏(本剤基剤)及びベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏(本剤基剤)を単回経皮投与した際のマキサカルシトール、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル及びBM‐17・B(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル代謝物)の皮膚中濃度推移は、マキサカルシトール軟膏及びベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏(市販薬)を投与した際のマキサカルシトール、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル及びBM‐17・Bの皮膚中濃度推移と類似していた。
16.3 分布
16.3.1 マキサカルシトール
ラット(雄)に[26‐3H]マキサカルシトール軟膏1μg/kgを単回経皮投与したときの皮膚のミクロオートラジオグラムでは、放射能は角質層に最も高濃度に分布し、次に顆粒層、有棘層、基底層に高く分布していた。さらに顆粒層、有棘層、基底層では細胞核内に放射能分布が認められ、これらの組織の細胞核に分布して薬効を発揮するものと推察された。また、ラット(雄)に[2β‐3H]マキサカルシトール3μg/kgを単回経皮投与したとき、投与部位皮膚以外の組織においては回腸下部ならびに肝臓に比較的高濃度に分布していた。
16.3.2 ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル
ラット(雄)に3H‐ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏0.25mg/kgを経皮投与したときの皮膚ミクロオートラジオグラムでは、投与後1時間の銀粒子は表皮部(特に角質層)及び毛包に多数認められ、ついで皮脂腺に認められた。投与後6時間では1時間と同様の分布傾向を示したが、毛包及び皮脂腺を除く真皮部にもわずかに銀粒子が認められた。投与後24時間の銀粒子は表皮部(特に角質層)に多数認められたが、真皮部の銀粒子はバックグラウンドレベルであった。また、ラット(雄)に3H‐ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏0.25mg/kgを経皮投与したとき、組織内放射能濃度は投与後8時間あるいは24時間に最高濃度を示し、特に塗布部皮膚では血漿中濃度の約3000~3500倍の極めて高い濃度であった。塗布部皮膚以外では、肝臓、腎臓、副腎、膀胱及び貯精嚢に高い分布が認められた。
16.4 代謝
16.4.1 マキサカルシトール
ラット腎ミトコンドリアを用いた代謝試験において、マキサカルシトールは活性型ビタミンD3の代謝酵素であるCYP24により代謝されると考えられた(in vitro)。ヒトP450発現系を用いた代謝試験において、マキサカルシトールはCYP3A4によって代謝された(in vitro)。
16.4.2 ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル
ヒト肝ミクロソームにおけるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルの代謝に関与する分子種の推定試験の結果、ヒトチトクロームP450(CYP)の13分子種の関与は認められず、カルボキシエステラーゼの2分子種の関与もほとんど認められなかった(in vitro)。
16.5 排泄
16.5.1 マキサカルシトール
尋常性乾癬患者4例に[3H]マキサカルシトールを用いた試験では、塗擦6時間後に拭き取った軟膏中に42.6%の放射能が検出され、また、塗擦168時間までに排泄された放射能は、尿中に投与量の15.2%、糞中に11.4%であった。血清中には未変化体及びO‐脱アルキル体が認められたが、尿及び糞中には未変化体は認められなかった(外国人データ)。
16.5.2 ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル
ラットに3H‐ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルを1mg/kgを皮下投与した試験において、投与後168時間までに排泄された放射能は、雄性ラットでは尿中に13.0%、糞中に88.0%であった。雌性ラットでは尿中に26.1%、糞中に66.5%であった。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相臨床試験
日本人尋常性乾癬患者475例を対象に、マキサカルシトール外用製剤(1日2回塗布)及びベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル外用製剤(1日1回塗布)を対照薬として二重盲検比較試験を実施した。その結果、本剤塗布(1日1回)4週後のPSI(Psoriasis Severity Index)合計スコアにおいて、本剤と対照薬との差の最小二乗平均は次のとおりであり、いずれも統計学的に有意であった(p<0.001、反復測定分散分析)。
本剤群166例中9例(5.4%)で9件の副作用が認められた。副作用の内訳は、血中コルチゾール減少4件(2.4%)、血中カルシウム増加、血中クレアチニン増加、白血球数減少、肝機能異常、毛包炎各1件(0.6%)であった。[7.2参照]
表 PSI合計スコアの要約統計量及び本剤との差の最小二乗平均
→図表を見る(PDF)
18.1 作用機序
18.1.1 マキサカルシトール
ビタミンD受容体に結合し、表皮角化細胞に対する分化誘導作用や異常増殖抑制作用、IL‐6の分泌抑制作用を示すことにより、尋常性乾癬に対して有効性を発揮する。
18.1.2 ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル
標的細胞のグルココルチコイド受容体と結合し、炎症・免疫反応に関わる標的遺伝子の転写の活性化やNF‐κB等の転写調節因子の活性化を直接阻害することで、炎症性サイトカインの産生抑制作用やT細胞等の増殖抑制作用を示す。
18.2 薬理作用
18.2.1 マキサカルシトール
(1)受容体親和性
マキサカルシトールは、ヒト表皮角化細胞のビタミンD受容体に対して親和性を示した(in vitro)。また、ヒト・ビタミンD結合蛋白との親和性はカルシトリオールより低く、表皮角化細胞の細胞核内により多く移行することが認められた(in vitro)。
(2)表皮角化細胞に対する増殖抑制作用
マキサカルシトールは、ヒト表皮角化細胞の増殖を抑制した(in vitro)。さらに、尋常性乾癬患者の皮膚を用いた器官培養系においても、表皮角化細胞の増殖を抑制し、表皮肥厚を改善した(in vitro)。また、尋常性乾癬患者への外用により表皮におけるDNA合成ならびに核分裂を低下させ、細胞増殖の異常亢進を抑制することが示唆された。
(3)表皮角化細胞に対する分化誘導作用
マキサカルシトールは、表皮角化細胞の分化マーカーであるインボルクリンmRNAの発現を促進した(in vitro)。また、尋常性乾癬患者への外用により、有棘層より上位で発現する分化型ケラチンを増加させるとともに表皮細胞分化マーカーであるロリクリンの発現を誘導した。
(4)サイトカイン、リンパ球等に対する作用
マキサカルシトールは、IL‐1α刺激によるヒト表皮角化細胞のIL‐6の分泌を濃度依存的に抑制し、サクシニル・コンカナバリンAで刺激したマウスの脾臓リンパ球の増殖を濃度依存的に抑制した(in vitro)。また、尋常性乾癬患者への外用により多形核白血球やTリンパ球等の炎症細胞の浸潤を減少させた。
18.2.2 ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル
(1)抗炎症作用
ラットカラゲニン足浮腫、ラットクロトン油耳浮腫、ラット受身皮膚アナフィラキシー反応等の炎症モデルにおいて、抗炎症作用を示した。
(2)免疫応答抑制作用
マウス遅延型アレルギー性皮膚反応に対し抑制作用を示した。
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