ボルベン輸液6%
添付文書情報2023年01月改定(第1版)
商品情報
- 警告
- 重症患者管理における相対的な循環血液量低下で本剤を使用した場合には、患者の状態を悪化させるおそれがあるため、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与すること〔15.1.1参照〕。
- 禁忌
- 2.1. 本剤及び本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 重度高ナトリウム血症あるいは重度高クロール血症を有する患者[本剤は塩化ナトリウムを含有するため症状を悪化させるおそれがある]。
2.3. 肺水腫、うっ血性心不全など水分過負荷のある患者[循環血液量を増加させるため症状を悪化させるおそれがある]。
2.4. 頭蓋内出血中の患者[頭蓋内出血を悪化させるおそれがある]。
2.5. 乏尿を伴う腎不全あるいは無尿を伴う腎不全の患者〔9.2.1参照〕。
2.6. 透析治療を受けている患者[本剤の排泄が遅れるおそれがある]。
2.7. 重症敗血症の患者[患者の状態を悪化させるおそれがある]〔9.1.4、15.1.1参照〕。
- 効能・効果
- 循環血液量の維持。
- 用法・用量
- 持続的に静脈内投与する。投与量及び投与速度は、症状に応じ適宜調節するが、1日50mL/kgを上限とする。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 投与に際しては、通常成人では本剤500mL当たり、小児では10mL/kg当たり30分以上かけて点滴静注することが望ましい。
- 腎機能障害患者
- 8.1. アナフィラキシーが起こることがあるため、最初の10~20mLは患者をよく観察しながらゆっくりと投与すること。
8.2. 組織残留性を考慮して投与は必要最小限にとどめること。
8.3. 本剤の高用量投与により、凝固因子及びその他の血漿蛋白などの血液成分の希釈が起きることがある。さらに、血液成分の希釈のみによらない凝固異常が生じることがあることから、患者の状態に応じて本剤の用量を適宜調節した上で、必要に応じて血液製剤を投与するなど適切な処置を行うこと〔9.1.3参照〕。
8.4. 腎機能及び体液バランスについてモニタリングするなど、患者の状態を十分に観察しながら適切な量を投与すること。
8.5. 急性腎障害等の腎機能障害があらわれ腎代替療法が必要となるおそれがあるので、腎機能を定期的に観察すること。
8.6. 血清電解質をモニターすること。
8.7. 投与期間は、循環血液量減少、血行動態及び血液希釈の程度に応じて調節すること。
9.1.1. 心不全のある患者:水分過負荷となるおそれがある。
9.1.2. 出血性素因のある患者:出血傾向が助長されるおそれがある。
9.1.3. 外傷性大出血の患者:本剤の高用量投与により血液成分の過度の希釈が起こり出血を助長するおそれがある〔8.3参照〕。
9.1.4. 敗血症<重症敗血症を除く>の患者:重症化した場合に、患者の状態を悪化させるおそれがある〔2.7、15.1.1参照〕。
9.2.1. 乏尿を伴う腎不全あるいは無尿を伴う腎不全の患者:投与しないこと(腎不全の患者では本剤の排泄が遅れるおそれがある)〔2.5参照〕。
9.2.2. 重度腎機能障害のある患者:水分過負荷となるおそれ及び腎機能が悪化するおそれがある。
- 相互作用
- 10.2. 併用注意:アミノ糖系抗生物質(カナマイシン、ゲンタマイシン等)[併用薬の腎毒性を増強させるおそれがあるので、腎障害が発生した場合には、適切な処置を行うこと(機序不明)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)。
11.1.2. 腎機能障害(頻度不明):急性腎障害等の腎機能障害があらわれ腎代替療法が必要となるおそれがある。
- 11.2. その他の副作用
1). 血液:(1%未満)貧血、赤血球減少。
2). 臨床検査:(10%以上)血清アミラーゼ増加、(1~10%未満)血中クロール増加、血中ナトリウム増加、(1%未満)活性化部分トロンボプラスチン時間延長、プロトロンビン時間延長、血中ナトリウム減少、血中カリウム減少、血中クレアチニン増加。
3). 皮膚:(1%未満)皮膚そう痒症。
4). 呼吸器:(1%未満)呼吸不全。
5). その他:(1%未満)処置後出血、創傷出血。
- 高齢者
- 減量するなど注意すること(一般に生理機能が低下している)。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(なお、本剤の母乳中への移行は不明である)。
- 小児等
- 9.7.1. 低出生体重児、新生児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.7.2. 海外臨床試験において、41例の非心臓外科手術を受けた新生児を含む2歳未満の小児での本剤の平均投与量は16±9mL/kgであった。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 全般的な注意14.1.1. 使用時には、感染に対する配慮をすること。
14.1.2. 注射針や輸液セットのびん針は、ゴム栓の刻印部(○印)に垂直にゆっくりと刺すこと(斜めに刺した場合、削り片の混入及び液漏れの原因となるおそれがある)、また、針は同一箇所に繰り返し刺さないこと。
14.2. 薬剤調製時の注意薬剤を配合する場合には、配合変化に注意すること。
14.3. 薬剤投与時の注意14.3.1. 原則として、連結管を用いたタンデム方式による投与は行わないこと(輸液セット内に空気が流入するおそれがある)。
14.3.2. 容器の目盛りは目安として使用すること。
14.3.3. 残液は使用しないこと。
20.1. 液漏れの原因となるので、強い衝撃や鋭利なものとの接触等を避けること。
20.2. 次の場合には使用しないこと。
・ 外袋内や容器表面に水滴や結晶が認められる場合には使用しないこと。
・ 容器から薬液が漏れている場合には使用しないこと。
・ 性状その他薬液に異状が認められる場合には使用しないこと。
・ ゴム栓部のキャップがはずれている場合には使用しないこと。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報15.1.1. 海外臨床試験において、重症敗血症<感染が確認されかつSIRS基準を有し少なくとも1つ臓器不全>(=SOFAスコア3以上)患者にHES製剤を使用した場合、酢酸リンゲル液を使用した場合と比較して投与後90日時点での死亡のリスクが増加し腎代替療法を要した患者の割合が高かったとの報告がある(SIRS:全身性炎症反応症候群)。
また、敗血症患者を含むICU入院患者にHES製剤を使用した場合、生理食塩液を使用
した場合と比較して投与後90日までの死亡のリスクは増加しなかったが、腎代替療法を要した患者の割合が高かったとの報告がある〔1.警告の項、2.7、9.1.4参照〕。
15.1.2. 海外臨床試験において、成人の人工心肺を使用した心臓手術時の輸液管理にHES製剤を使用した場合、アルブミンを使用した場合と比較して輸血が必要となる術後出血及び出血による再手術のリスクが高かったとの報告がある。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人健康成人男性12例に、本剤500mLを30分かけて単回静脈内投与した。本剤の血漿中濃度は点滴静注開始30分後にピークとなり、4例は48時間後に、8例は72時間後に投与前値となった。AUC(0-inf)は26.72hr・mg/mL、Cmaxは5.5mg/mL、消失半減期(t1/2,z)は10.9hr、総血漿クリアランス(CL)は1.14L/hr、定常状態時の分布容積(Vss)は12.9L、消失速度定数(kz)は0.066/hrであった。
本剤投与後の血漿中HES濃度の推移を添付文書の図に示す。
HES130000投与後の血漿中HES濃度の推移
(12例、算術平均値±標準偏差)
16.5 排泄
日本人健康成人男性12例に、本剤500mLを30分かけて単回静脈内投与した結果、投与開始72時間後までの尿中排泄率は59.4%であった。本剤は全腎排泄の95%以上が投与後24時間に行われ、速やかに腎排泄されることが認められた。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
軽度から高度の腎機能障害患者を含む19例を対象とし、本剤500mLを30分間で点滴静注した。血液サンプルを投与前から投与開始72時間後まで採取したときの本剤の薬物動態パラメータ幾何平均値を表に示す(外国人のデータ)。
単回投与時の腎機能障害患者及び腎機能正常者での薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
尿中排泄率は、CLcrが30mL/min以上の患者では59%であったのに対し、CLcrが15mL/min以上30mL/min未満の患者では51%であった。
16.8 その他
ヒドロキシエチルデンプン(HES)の薬物動態は、分子量、また主にモル置換度に依存する。本剤(6%HES130000)の血漿中におけるin vivoの平均分子量は、投与直後において70,000~80,000ダルトンであり、血漿α‐アミラーゼによって代謝されてから、腎より排泄される。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相試験
(1)二重盲検試験
300mL以上の出血が予想される整形外科手術患者(成人)を対象に、本剤と対照薬(HES70000)の同等性の検証を目的として、本剤又は対照薬を最大1000mL投与する多施設共同二重盲検比較試験を実施した。主要評価項目とした手術開始から終了までに投与された膠質液量の最小二乗平均値は、本剤群(30例)で984mL、対照薬群(29例)で815mL、本剤群と対照薬群の膠質液量の差の95%信頼区間は[-96.3mL;434.6mL]であり、[-250mL;250mL]とした同等性の範囲内を超え、本剤の対照薬に対する統計的な同等性は示されなかった。臨床検査値異常を含む副作用は、本剤群に32.3%(10/31例)認められた。主な副作用は血清アミラーゼ増加であり、22.6%(7/31例)に認められた。
(2)非盲検試験
1000mL以上(成人)の出血又は15mL/kg以上の出血(小児)が予想される外科大手術患者20例(成人15例及び小児5例)を対象に、多施設共同非盲検試験を実施した。手術中の血行動態の維持あるいは回復を目的として本剤が50mL/kgまでの投与量で投与された。主要評価項目は本剤の血漿増量効果であり、アルブミン製剤の削減量及び血行動態の安定性が評価された。アルブミン製剤の削減量は、手術中に投与された本剤の1000mL(成人)又は10mL/kg(小児)を超えた分の本剤の投与量とした。本剤の投与量の平均値は、成人で1794mL(32.0mL/kg、範囲7.5~50mL/kg)、小児で816mL(49.9mL/kg、範囲49.7~50.0mL/kg)であった。アルブミン製剤の削減量は、成人患者(12例)で平均1034mL、小児患者で平均40mL/kgであった。大部分の成人患者と全ての小児患者で、いずれの測定時点においても血行動態は安定であった。成人及び小児のいずれにおいても本剤の血漿増量効果が認められた。また本剤の50mL/kgまでの投与は有効であり忍容性が認められた。臨床検査値異常を含む副作用は、成人患者46.7%(7/15例)、小児患者全例(5/5例)に認められた。主な副作用は、成人患者で血清アミラーゼ増加が46.7%(7/15例)、小児患者で血中クロール増加が100.0%(5/5例)であった。
17.1.2 海外第III相試験
米国において、500mL以上の出血が予想される整形外科大手術患者を対象に、本剤と対照薬(HES670000)の同等性の検証を目的として、多施設共同二重盲検比較試験を実施した。主要評価項目とした手術中に投与された膠質液量の平均値は、本剤群(49例)で1613mL、対照薬群(51例)で1584mL、本剤群と対照薬群の膠質液量の比は1.024(95%信頼区間は[0.84;1.25])と同等性の範囲[0.55;1.82]内であり、本剤の対照薬に対する統計的な同等性が示された。臨床検査値異常を含む副作用は、本剤群で6.1%(3/49例)5件に認められた。その副作用の内訳は、活性化部分トロンボプラスチン時間延長、プロトロンビン時間延長、創傷出血、貧血及びそう痒症が各2.0%(1/49例)であった。
フランスにおいて、2000mL以上の出血が予想される整形外科大手術患者を対象に、本剤と対照薬(HES200000)の同等性の検証を目的として、多施設共同二重盲検比較試験を実施した。主要評価項目とした手術中に投与された膠質液量の平均値は、本剤群(52例)で1960mL、対照薬群(48例)で1928mL、本剤群と対照薬群の膠質液量の差の95%信頼区間は[-330mL;284mL]と同等性の範囲[-500mL;500mL]内であり、本剤の対照薬に対する統計的な同等性が示された。臨床検査値異常を含む副作用は、本剤群では認められなかった。
18.1 作用機序
ヒドロキシエチルデンプン130000の膠質浸透圧作用による水分保持機能に基づいた循環血液量の維持
18.2 脱血時の生存率に及ぼす作用
ラットの全血量を67%又は50%脱血し、本剤同量又は乳酸リンゲル液3倍量を投与したところ、本剤群の生存率は乳酸リンゲル液群よりも高かった。
18.3 血圧安定化作用
イヌに対し、脱血と同時に同量の本剤を投与する等容量血液希釈を行ったところ、試験中に平均血圧動脈圧の変化は認められず、血圧は安定していた。
- 製造販売会社
- フレゼニウス カービ ジャパン
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