ヒュンタラーゼ脳室内注射液15mg
添付文書情報2022年03月改定(第3版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 本剤の投与により重篤なアナフィラキシー、ショックが発現する可能性があるので、緊急時に十分な対応のできる準備をした上で投与を開始し、投与終了後も十分な観察を行うこと〔8.2参照〕。
- 禁忌
- 本剤の成分に対しアナフィラキシーショックの既往歴のある患者〔8.2、9.1.2参照〕。
- 効能・効果
- ムコ多糖症2型。
(効能又は効果に関連する注意)
中枢神経系症状の改善が必要とされるムコ多糖症2型患者に対して投与を検討すること。
- 用法・用量
- 通常、イデュルスルファーゼ ベータ(遺伝子組換え)として、1回30mgを4週間に1回、脳室内投与する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)が静脈内投与され、忍容性が確認されている患者に投与すること〔17.1.1参照〕。
7.2. 脳室内圧の変動を防ぐため、あらかじめ投与液と同容量の脳脊髄液(2mL)を採取した後、希釈せずに1分以上かけて投与すること。
7.3. 本剤は、脳室内投与の知識、経験がある医師が投与すること。
- 合併症・既往歴等のある患者
- 8.1. 医療機器関連合併症として、脳室炎、髄膜炎を含む感染症、頭蓋内圧の過度な低下又は頭蓋内圧の過度な亢進等の中枢神経系事象、医療機器の不具合等が起こる可能性があるので、次の点に注意すること〔9.1.1、14.3.2-14.3.3参照〕。
・ 医療機器の不具合等に対する適切な対応をとれるよう体制を整えておくこと。
・ 感染リスクを低減するため、本剤の投与は無菌的操作により行うこと。
・ 本剤の投与前に、毎回、医療機器の不具合、感染症の兆候の有無を確認するために、植込み部分の皮膚に異常がないか確認すること。
・ 医療機器関連合併症が認められた場合は、適切な処置を行うこと。医療機器の不具合等については、該当医療機器の添付文書も参照すること。
8.2. 本剤はタンパク質製剤であり、アナフィラキシーショックが起こる可能性が否定できないため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、このような症状の発現に備え、緊急処置をとれる準備をしておくこと〔1.警告、2.禁忌の項、9.1.2参照〕。
8.3. IgG抗体産生が予測されるため、定期的にイデュルスルファーゼ ベータ(遺伝子組換え)に対するIgG抗体検査を行うことが望ましい。
9.1.1. 脳室腹腔シャント実施中又は脳室心房シャント実施中の患者:脳内における本剤の曝露量が減少し、有効性が期待できない〔8.1参照〕。
9.1.2. 本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者〔2.禁忌の項、8.2参照〕。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 11.2. その他の副作用
1). 消化器:(10%以上)嘔吐、悪心。
2). 皮膚:(10%以上)蕁麻疹。
3). 代謝異常:(10%以上)血中ビリルビン増加。
4). 精神神経系:(10%以上)落ち着きのなさ。
5). その他:(10%以上)発熱。
- 高齢者
- 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下していることが多い)。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(母動物の妊娠、胚・胎仔及び出生仔への影響は検討されていない)。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(母乳への移行に関する試験は実施していない)。
- 小児等
- 1歳未満の患者を対象とした臨床試験は実施していない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 全般的な注意本剤の詳細な使用方法は、投与ガイドを確認すること。
14.2. 薬剤調製時の注意14.2.1. 開封後は速やかに使用すること(やむを得ず保管する場合は25℃以下で8時間以内に投与すること)。
14.2.2. 激しく振とうしないこと。
14.3. 薬剤投与時の注意14.3.1. 本剤の投与は無菌的操作により行うこと。
14.3.2. 本剤は外科的に留置した植込み型脳脊髄液リザーバを用いて投与すること(添付文書の図1)。該当医療機器の添付文書、取扱説明書等を熟読し、これらの注意に適切に対応すること〔8.1参照〕。
14.3.3. 本剤の投与に用いる植込み型脳脊髄液リザーバは、本剤との適合性が確認されたものを用いること〔8.1参照〕。
凍結を避けること。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報ムコ多糖症2型はX連鎖劣性遺伝疾患であるが、稀に女性患者の報告がある。臨床試験に女性患者の参加はなく、女性における本剤の安全性は確立していない。
16.1 血中濃度
重症型ムコ多糖症II型患者を対象に、本剤3、10、30mgを低用量から漸増し、その後30mgの用量で4週間に1回、1分以上かけて反復脳室内投与したときの血清中ヒトイデュルスルファーゼ濃度注)の平均値は、投与開始前では45.9ng/mL、投与8週時では42.6ng/mL、投与24週時では39.3ng/mL、投与52週時では56.3ng/mL、投与100週時では48.8ng/mLであった。なお、イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)の静脈内投与も実施されていた。本剤投与後の脳脊髄液(CSF)中ヒトイデュルスルファーゼ濃度注)は6例のすべての測定時点(8週、24週、52週及び100週時)で検出下限未満であった。
注)本剤投与直前に採取した検体を用いて測定
サルに本薬3、10、30mgを単回脳室内投与したとき、CSF中及び血清中の薬物動態パラメータは表1のとおりであった。
表1 単回投与時のCSF中及び血清中の薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
16.3 分布
サルに本薬の125I標識体30mgを単回脳室内投与したとき、組織中放射能濃度は、CSF中では投与0.25時間後、ほとんどの脳組織及び脊髄では投与1~2時間後に最高値を示した。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験
重症型ムコ多糖症II型患者(6例、23~64ヵ月)を対象とした非盲検非対照試験(BHP001試験)を実施した。あらかじめ患者の頭部に植込み型CSFリザーバを装着し、本剤を4週間に1回の間隔で1分以上かけて脳室内投与した。1回あたりの投与量は1、10、30mgとし、低用量から投与を開始して各用量をそれぞれ2、2、3回ずつ投与した後、CSF中ヘパラン硫酸(HS)濃度及び安全性の評価結果から患者毎に用量が選択され、すべての患者において30mgの投与が継続された。なお、本試験ではイデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)の静脈内投与が試験開始24週間以上前からなされている患者を対象とし、本剤投与開始後もイデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)の静脈内投与は継続することとし、本剤とイデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)の投与は24時間以上の間隔を設けることとされた。本剤を100週間以上投与した結果、被験者ごとのCSF中HS濃度の結果は表2のとおりであった。
表2 本剤投与後のCSF中HS濃度の推移
→図表を見る(PDF)
副作用発現頻度は、100%(6/6例)であった。副作用は、嘔吐100%(6/6例)、発熱50.0%(3/6例)、悪心33.3%(2/6例)、蕁麻疹16.7%(1/6例)、血中ビリルビン増加16.7%(1/6例)であった。[7.1参照]
18.1 作用機序
ムコ多糖症II型は、リソソーム酵素であるイズロン酸‐2‐スルファターゼ(IDS)が不足することで生じるX染色体劣性遺伝病である。この酵素はグリコサミノグリカン(GAG)のデルマタン硫酸及びヘパラン硫酸(HS)を加水分解するが、ムコ多糖症II型ではIDSが欠損あるいは欠乏しているため、GAGが種々の臓器、組織に蓄積し、重症型患者では知能障害、顔貌異常、低身長、骨変形、関節拘縮等の症状を呈する。
遺伝子組換えIDS製剤である本剤をムコ多糖症II型患者に投与すると、オリゴ糖鎖上にあるマンノース‐6‐リン酸(M6P)部分を介して、酵素が細胞表面のM6P受容体と特異的に結合して細胞内に取り込まれ、蓄積したGAGを分解する。また本剤は脳室内投与することにより脳脊髄中に分布し、脳神経に蓄積したGAGを分解する。
18.2 脳内HS分解作用
雄性IDSノックアウトマウスに本剤30μgを月1回、6ヵ月反復脳室内投与した結果、脳内及びCSF中HS濃度は減少した。オープンフィールド試験で本剤の投与がIKOマウスの多動性及び危険感知の低下を改善することが確認された。
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