タクロリムス錠1.5mg「あゆみ」
添付文書情報2024年06月改定(第3版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 1.1. 〈効能共通〉本剤の投与において、重篤な副作用(腎不全、心不全、感染症、全身痙攣、意識障害、脳梗塞、血栓性微小血管障害、汎血球減少症等)により、致死的経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び本剤についての十分な知識と経験を有する医師が使用すること。
1.2. 〈効能共通〉顆粒剤と本剤(錠剤)の生物学的同等性は検証されていないので、切り換え及び併用に際しては、血中濃度を測定することにより製剤による吸収の変動がないことを確認すること〔16.1.8参照〕。
1.3. 〈臓器移植〉本剤の投与は、免疫抑制療法及び移植患者の管理に精通している医師又はその指導のもとで行うこと。
1.4. 〈関節リウマチ〉関節リウマチ治療に精通している医師のみが使用するとともに、関節リウマチ患者に対して本剤の危険性や本剤の投与が長期にわたることなどを予め十分説明し、患者が理解したことを確認した上で投与すること。また、関節リウマチの場合、何らかの異常が認められた場合には、服用を中止するとともに、直ちに医師に連絡し、指示を仰ぐよう注意を与えること。
1.5. 〈ループス腎炎〉本剤の投与は、ループス腎炎の治療に十分精通している医師のもとで行うこと。
1.6. 〈多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎〉本剤の投与は、多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎の治療法に十分精通している医師のもとで行うこと。
- 禁忌
- 2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. シクロスポリン投与中又はボセンタン投与中の患者〔10.1参照〕。
2.3. カリウム保持性利尿剤投与中の患者〔8.2、10.1参照〕。
2.4. 生ワクチンを接種しないこと〔10.1参照〕。
- 効能・効果
- 1). 次記の臓器移植における拒絶反応の抑制:腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植。
2). 骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制。
3). 重症筋無力症。
4). 関節リウマチ(既存治療で効果不十分な場合に限る)。
5). ループス腎炎(ステロイド剤の投与が効果不十分、又は副作用により困難な場合)。
6). 難治性<ステロイド抵抗性>の活動期潰瘍性大腸炎<中等症~重症に限る>、難治性<ステロイド依存性>の活動期潰瘍性大腸炎<中等症~重症に限る>。
7). 多発性筋炎に合併する間質性肺炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 〈骨髄移植〉HLA適合同胞間移植では本剤を第一選択薬とはしないこと。
5.2. 〈重症筋無力症〉本剤を単独で使用した場合及びステロイド剤未治療例に使用した場合の有効性及び安全性は確立していない(本剤の単独使用及びステロイド剤未治療例における使用の経験は少ない)。
5.3. 〈関節リウマチ〉過去の治療において、非ステロイド性抗炎症剤及び他の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること。
5.4. 〈ループス腎炎〉急性期で疾患活動性の高い時期に使用した際の本剤の有効性及び安全性は確立されていない。
5.5. 〈潰瘍性大腸炎〉治療指針等を参考に、難治性(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)であることを確認すること。
5.6. 〈潰瘍性大腸炎〉本剤による維持療法の有効性及び安全性は確立していない。
- 用法・用量
- 〈腎移植の場合〉
通常、初期にはタクロリムスとして1回0.15mg/kgを1日2回経口投与し、以後、徐々に減量する。維持量は1回0.06mg/kg、1日2回経口投与を標準とするが、症状に応じて適宜増減する。
〈肝移植の場合〉
通常、初期にはタクロリムスとして1回0.15mg/kgを1日2回経口投与する。以後、徐々に減量し、維持量は1日量0.10mg/kgを標準とするが、症状に応じて適宜増減する。
〈心移植の場合〉
通常、初期にはタクロリムスとして1回0.03~0.15mg/kgを1日2回経口投与する。また、拒絶反応発現後に本剤の投与を開始する場合には、通常、タクロリムスとして1回0.075~0.15mg/kgを1日2回経口投与する。以後、症状に応じて適宜増減し、安定した状態が得られた後には、徐々に減量して有効最少量で維持する。
〈肺移植の場合〉
通常、初期にはタクロリムスとして1回0.05~0.15mg/kgを1日2回経口投与する。以後、症状に応じて適宜増減し、安定した状態が得られた後には、徐々に減量して有効最少量で維持する。
〈膵移植の場合〉
通常、初期にはタクロリムスとして1回0.15mg/kgを1日2回経口投与する。以後、徐々に減量して有効最少量で維持する。
〈小腸移植の場合〉
通常、初期にはタクロリムスとして1回0.15mg/kgを1日2回経口投与する。以後、徐々に減量して有効最少量で維持する。
〈骨髄移植の場合〉
通常、移植1日前よりタクロリムスとして1回0.06mg/kgを1日2回経口投与する。移植初期にはタクロリムスとして1回0.06mg/kgを1日2回経口投与し、以後、徐々に減量する。また、移植片対宿主病発現後に本剤の投与を開始する場合には、通常、タクロリムスとして1回0.15mg/kgを1日2回経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。
なお、本剤の経口投与時の吸収は一定しておらず、患者により個人差があるので、血中濃度の高い場合の副作用並びに血中濃度が低い場合の拒絶反応及び移植片対宿主病の発現を防ぐため、患者の状況に応じて血中濃度を測定し、トラフレベル(trough level)の血中濃度を参考にして投与量を調節すること。特に移植直後あるいは投与開始直後は頻回に血中濃度測定を行うことが望ましい。なお、血中トラフ濃度が20ng/mLを超える期間が長い場合、副作用が発現しやすくなるので注意すること。
〈重症筋無力症の場合〉
通常、成人にはタクロリムスとして3mgを1日1回夕食後に経口投与する。
〈関節リウマチの場合〉
通常、成人にはタクロリムスとして3mgを1日1回夕食後に経口投与する。なお、高齢者には1.5mgを1日1回夕食後経口投与から開始し、症状により1日1回3mgまで増量できる。
〈ループス腎炎の場合〉
通常、成人にはタクロリムスとして3mgを1日1回夕食後に経口投与する。
〈潰瘍性大腸炎の場合〉
通常、成人には、初期にはタクロリムスとして1回0.025mg/kgを1日2回朝食後及び夕食後に経口投与する。潰瘍性大腸炎の場合、血中トラフ濃度をモニタリングしながら投与開始後2週間、目標血中トラフ濃度を10~15ng/mLとし、投与量を調節し、投与開始後2週以降は、目標血中トラフ濃度を5~10ng/mLとし投与量を調節する。
〈多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎の場合〉
通常、成人には、初期にはタクロリムスとして1回0.0375mg/kgを1日2回朝食後及び夕食後に経口投与する。多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎の場合、血中トラフ濃度をモニタリングしながら投与開始後、目標血中トラフ濃度を5~10ng/mLとし、投与量を調節する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈効能共通〉血液中のタクロリムスの多くは赤血球画分に分布するため、本剤の投与量を調節する際には全血中濃度を測定すること。
7.2. 〈効能共通〉本剤(錠剤)を使用するに当たっては、次の点に留意すること。
7.2.1. 〈効能共通〉顆粒剤と本剤(錠剤)の生物学的同等性は検証されていない[顆粒のカプセルに対するCmax比及びAUC比の平均値はそれぞれ1.18及び1.08]〔16.1.8参照〕。
7.2.2. 〈効能共通〉本剤(錠剤)と顆粒剤の切り換え及び併用に際しては、血中濃度を測定することにより製剤による吸収の変動がないことを確認すること(なお、切り換えあるいは併用に伴う吸収変動がみられた場合には、必要に応じて投与量を調節すること)。
7.3. 〈効能共通〉高い血中濃度が持続する場合に腎障害が認められているので、血中濃度(およそ投与12時間後)をできるだけ20ng/mL以下に維持すること〔11.1.1参照〕。
7.4. 〈効能共通〉他の免疫抑制剤との併用により、過度の免疫抑制の可能性がある。特に、臓器移植において3剤あるいは4剤の免疫抑制剤を組み合わせた多剤免疫抑制療法を行う場合には、本剤の初期投与量を低く設定することが可能な場合もあるが、移植患者の状態及び併用される他の免疫抑制剤の種類・投与量等を考慮して調節すること。
7.5. 〈肝移植、腎移植及び骨髄移植〉市販後の調査において、承認された用量に比べ低用量を投与した成績が得られているので、投与量設定の際に考慮すること〔17.2.1、17.2.5参照〕。
7.6. 〈骨髄移植〉クレアチニン値が投与前の25%以上上昇した場合には、本剤の25%以上の減量又は休薬等の適切な処置を考慮すること〔11.1.1参照〕。
7.7. 〈骨髄移植〉血中濃度が低い場合に移植片対宿主病が認められているので、移植片対宿主病好発時期には血中濃度をできるだけ10~20ng/mLとすること。
7.8. 〈重症筋無力症〉副作用の発現を防ぐため、投与開始3カ月間は1カ月に1回、以後は定期的におよそ投与12時間後の血中濃度を測定し、投与量を調節することが望ましく、また、本剤により十分な効果が得られた場合には、その効果が維持できる用量まで減量することが望ましい。
7.9. 〈関節リウマチ〉関節リウマチの高齢者には、投与開始4週後まで1日1.5mg投与として安全性を確認した上で、効果不十分例には、1日3mgに増量することが望ましく、また、増量する場合には、副作用の発現を防ぐため、およそ投与12時間後の血中濃度を測定し、投与量を調節することが望ましい〔9.8高齢者の項参照〕。
7.10. 〈ループス腎炎〉副作用の発現を防ぐため、投与開始3カ月間は1カ月に1回、以後は定期的におよそ投与12時間後の血中濃度を測定し、投与量を調節することが望ましい。また、ループス腎炎の場合、本剤を2カ月以上継続投与しても、尿蛋白などの腎炎臨床所見及び免疫学的所見で効果があらわれない場合には、投与を中止するか、他の治療法に変更することが望ましく、一方、本剤により十分な効果が得られた場合には、その効果が維持できる用量まで減量することが望ましい。
7.11. 〈潰瘍性大腸炎〉治療初期は頻回に血中トラフ濃度を測定し投与量を調節するため、入院又はそれに準じた管理の下で投与することが望ましい。
7.12. 〈潰瘍性大腸炎〉原則、1日あたりの投与量の上限を0.3mg/kgとし、特に次の点に注意して用量を調節すること〔17.1.12参照〕。
7.12.1. 〈潰瘍性大腸炎〉初回投与から2週間まで[1)初回投与後12時間及び24時間の血中トラフ濃度に基づき、1回目の用量調節を実施する、2)1回目の用量調節後少なくとも2日以上経過後に測定された2点の血中トラフ濃度に基づき、2回目の用量調節を実施する、3)2回目の用量調節から1.5日以上経過後に測定された1点の血中トラフ濃度に基づき、2週時(3回目)の用量調節を実施する]。
7.12.2. 〈潰瘍性大腸炎〉2週以降[投与開始後2週時(3回目)の用量調節から1週間程度後に血中トラフ濃度を測定し、用量調節を実施する。また、潰瘍性大腸炎の場合、投与開始4週以降は4週間に1回を目安とし、定期的に血中トラフ濃度を測定することが望ましい]。
7.12.3. 〈潰瘍性大腸炎〉用量調節にあたっては服薬時の食事条件(食後投与/空腹時投与)が同じ血中トラフ濃度を用いる。
7.13. 〈潰瘍性大腸炎〉0.5mg刻みの投与量を決定すること。
7.14. 〈潰瘍性大腸炎〉2週間投与しても臨床症状の改善が認められない場合は、投与を中止すること。
7.15. 〈潰瘍性大腸炎〉通常、3カ月までの投与とすること。
7.16. 〈多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎〉1日あたりの投与量の上限を0.3mg/kgとし、血中トラフ濃度に基づき投与量を調節すること。
7.17. 〈多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎〉0.5mg刻みの投与量を決定すること。
7.18. 〈多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎〉投与開始時は原則としてステロイド剤を併用し、また、症状が安定した後にはステロイド剤の漸減を考慮すること〔17.1.13参照〕。
- 肝機能障害患者
- 8.1. 〈効能共通〉腎障害の発現頻度が高いので、頻回に臨床検査(クレアチニン、BUN、クレアチニンクリアランス、尿中NAG、尿中β2ミクログロブリン等)を行うなど患者の状態を十分に観察すること(特に投与初期にはその発現に十分注意すること)〔8.11、8.12、11.1.1参照〕。
8.2. 〈効能共通〉高カリウム血症が発現することがあるので、頻回に血清カリウムの測定を行うこと(なお、カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトン、カンレノ酸カリウム、トリアムテレン)の併用あるいはカリウムの過剰摂取を行わないこと)〔2.3、10.1参照〕。
8.3. 〈効能共通〉高血糖、尿糖等の膵機能障害の発現頻度が高いので、頻回に臨床検査(血液検査、空腹時血糖、アミラーゼ、尿糖等)を行うなど患者の状態を十分に観察すること(特に投与初期にはその発現に十分注意すること)〔11.1.14、11.1.15参照〕。
8.4. 〈効能共通〉本剤投与中に心不全、不整脈、心筋梗塞、狭心症、心筋障害(心機能低下、心壁肥厚を含む)等が認められているので、使用に際しては心電図、心エコー、胸部X線検査を行うなど患者の状態をよく観察すること〔8.13、11.1.2参照〕。
8.5. 〈効能共通〉高血圧が発現することがあるので、定期的に血圧測定を行い、血圧上昇があらわれた場合には、降圧剤治療を行うなど適切な処置を行うこと。
8.6. 〈効能共通〉感染症の発現又は感染症増悪に十分注意すること〔9.1.1、11.1.10参照〕。
8.7. 〈効能共通〉過度の免疫抑制により感染に対する感受性上昇、リンパ腫等の悪性腫瘍発生の可能性があるので、十分注意すること〔10.2、11.1.13参照〕。
8.8. 〈効能共通〉本剤の投与により副腎皮質ホルモン剤維持量の減量が可能であるが、副腎皮質ホルモン剤の副作用の発現についても引き続き観察を十分行うこと。
8.9. 〈骨髄移植〉移植片対宿主病が発症した場合は速やかに治療を開始することが望ましく、また、シクロスポリンが既に投与されている症例では継続治療が可能かどうかを早期に見極め、困難と判断されれば速やかにシクロスポリンを中止し、本剤に切り換えること。
8.10. 〈重症筋無力症〉重症筋無力症で胸腺非摘除例に使用する場合、本剤の投与開始前及び投与開始後において、定期的に胸腺腫の有無を確認すること。重症筋無力症で胸腺腫が確認された場合には、胸腺摘除等の胸腺腫の治療を適切に実施するとともに、治療上の有益性と危険性を慎重に評価した上で本剤を投与すること(本剤の胸腺腫への影響は明らかになっていない)。
8.11. 〈関節リウマチ〉少数例ながら非ステロイド性抗炎症剤を2剤以上併用した症例でクレアチニン上昇発現率が高かったので腎障害の発現に注意すること〔8.1参照〕。
8.12. 〈ループス腎炎〉病態の進行による腎障害の悪化がみられるので特に注意すること〔8.1参照〕。
8.13. 〈ループス腎炎〉基礎疾患である全身性エリテマトーデスにおいて冠動脈疾患の危険因子とされている高脂血症、高血圧症等の疾患を合併する場合が多いことから、高脂血症、高血圧症等の疾患の適切な治療を進めながら本剤を投与すること〔8.4参照〕。
8.14. 〈潰瘍性大腸炎〉本剤の投与は、潰瘍性大腸炎の治療法に十分精通している医師のもとで行うこと。
8.15. 〈多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎〉本剤によりニューモシスティス肺炎発現のおそれがあるので、適切な予防措置を考慮すること。
9.1.1. 感染症のある患者:感染症が悪化する可能性がある〔8.6、11.1.10参照〕。
9.1.2. 関節リウマチに間質性肺炎を合併している患者:間質性肺炎が悪化する可能性がある〔11.1.18参照〕。
9.1.3. 肝炎ウイルスキャリアの患者:肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス再活性化やC型肝炎悪化の徴候や症状の発現に注意すること。免疫抑制剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルス再活性化による肝炎があらわれることがある。また、HBs抗原陰性の患者において、免疫抑制剤の投与開始後にB型肝炎ウイルス再活性化による肝炎を発症した症例が報告されている。また、C型肝炎ウイルスキャリアの患者において、免疫抑制剤の投与開始後にC型肝炎悪化がみられることがある〔11.1.10参照〕。
9.1.4. C型肝炎直接型抗ウイルス薬投与中の患者:C型肝炎直接型抗ウイルス薬を投与開始後、本剤の増量が必要となった症例が報告されており、C型肝炎直接型抗ウイルス薬による抗ウイルス治療に伴い、使用中の本剤の用量調節が必要になる可能性があるので、本剤を使用している患者にC型肝炎直接型抗ウイルス薬を開始する場合には、原則、処方医に連絡するとともに、頻回に本剤血中濃度のモニタリングを行うなど患者の状態を十分に観察すること。
腎機能障害患者:腎障害が悪化する可能性がある(副作用の発現を防ぐため、定期的に血中濃度を測定し、投与量を調節することが望ましい)。
肝機能障害患者:薬物代謝能が低下し、本剤血中濃度が上昇する可能性がある(副作用の発現を防ぐため、定期的に血中濃度を測定し、投与量を調節することが望ましい)。
- 相互作用
- 本剤は主として薬物代謝酵素CYP3A4及びCYP3A5で代謝される〔16.4.1参照〕。
10.1. 併用禁忌:1). 生ワクチン(乾燥弱毒生麻しんワクチン、乾燥弱毒生風しんワクチン、経口生ポリオワクチン等)〔2.4参照〕[類薬による免疫抑制下で生ワクチン接種により発症したとの報告がある(免疫抑制作用により発症の可能性が増加する)]。
2). シクロスポリン<サンディミュン、ネオーラル>〔2.2参照〕[副作用が増強されたとの報告がある;なお、シクロスポリンより本剤に切り換える場合はシクロスポリンの最終投与から24時間以上経過後に本剤の投与を開始することが望ましい(本剤との併用によりシクロスポリンの血中濃度が上昇したとの報告があり、シクロスポリンはCYP3A4で代謝されるため、併用した場合、競合的に拮抗しシクロスポリンの代謝が阻害される)]。
3). ボセンタン<トラクリア>〔2.2参照〕[ボセンタンの副作用が発現する可能性がある(本剤との併用によりボセンタンの血中濃度が上昇する可能性があり、また、ボセンタンはCYP3A4で代謝されるとともにCYP3A4誘導作用も有するため、併用
により本剤の血中濃度が変動する可能性がある)]。
4). カリウム保持性利尿剤<エプレレノン以外>(スピロノラクトン<アルダクトンA>、カンレノ酸カリウム<ソルダクトン>、トリアムテレン<トリテレン>)〔2.3、8.2参照〕[高カリウム血症が発現することがある(本剤と相手薬の副作用が相互に増強される)]。
10.2. 併用注意:1). 抗生物質(エリスロマイシン、ジョサマイシン、クラリスロマイシン)、アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール等)、カルシウム拮抗剤(ニフェジピン、*ニルバジピン、ニカルジピン、ジルチアゼム等)、HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル)、その他の薬剤(ブロモクリプチン、ダナゾール、エチニルエストラジオール、オメプラゾール、ランソプラゾール、トフィソパム、アミオダロン)、飲食物(グレープフルーツジュース)[腎障害・不整脈等の副作用が発現することがあり、併用開始後数日以内に本剤血中濃度が上昇し副作用が発現した症例も報告されていることから、患者の状態を十分に観察するとともに、本剤血中濃度のモニターを行い、必要に応じ減量・休薬等の処置を行う(CYP3A4で代謝される薬剤又はCYP3A4の阻害作用を有する薬剤やCYP3A4の阻害作用を有する飲食物との併用により、本剤の代謝が阻害され、本剤の血中濃度が上昇する)](*:併用により相互に代謝が阻害され、ニルバジピンも血中濃度が上昇する可能性がある)。
2). レテルモビル[腎障害・不整脈等の副作用が発現することがあり、併用開始後数日以内に本剤血中濃度が上昇し副作用が発現した症例も報告されていることから、患者の状態を十分に観察するとともに、本剤血中濃度のモニターを行い、必要に応じ減量・休薬等の処置を行う(CYP3A阻害作用により、本剤の代謝が阻害され、本剤の血中濃度が上昇する)]。
3). 抗てんかん剤(カルバマゼピン、フェノバルビタール、※フェニトイン)、抗生物質(リファンピシン、リファブチン)[拒絶反応出現の可能性があるので、本剤血中濃度のモニターを行い、必要に応じ増量等の処置を行う(薬物代謝酵素が誘導され、本剤の代謝が促進されるため、本剤の血中濃度が低下する)](※:併用によりフェニトインの血中濃度が上昇したとの報告がある(機序不明))。
4). 飲食物(セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort))[本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないよう注意すること(CYP3A4が誘導され、本剤の代謝が促進されるため、本剤の血中濃度が低下するおそれがある)]。
5). 腎毒性のある薬剤(アムホテリシンB、アミノ糖系抗生物質、スルファメトキサゾール・トリメトプリム、非ステロイド性抗炎症剤等)[腎障害が発現することがあるので、併用が必要な場合には、腎機能と本剤の血中濃度を継続的にモニターし、必要に応じ減量・休薬等の処置を行う(本剤と相手薬の腎毒性が相互に増強される)]。
6). カスポファンギン[本剤の血中濃度が低下したとの報告があるので、本剤血中濃度のモニターを行い、必要に応じ用量調節等の処置を行う(機序不明)]。
7). mTOR阻害剤〔11.1.5参照〕[移植患者において、mTOR阻害剤との併用は、血栓性微小血管障害の発現リスクを高める可能性があるとの報告がある(機序不明)]。
8). 不活化ワクチン(インフルエンザHAワクチン等)[ワクチンの効果を減弱させることがある(本剤の免疫抑制作用により、接種されたワクチンに対する抗体産生が抑制される)]。
9). 免疫抑制作用を有する薬剤(免疫抑制剤(副腎皮質ホルモン剤等)、抗リウマチ薬<DMARD>(メトトレキサート等))〔8.7参照〕[過度の免疫抑制が起こることがある(ともに免疫抑制作用を有する)]。
10). エプレレノン[血清カリウム値が上昇する可能性があるので、血清カリウム値を定期的に観察するなど十分に注意すること(本剤と相手薬の副作用が相互に増強される)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 〈効能共通〉急性腎障害(0.1~5%未満)、ネフローゼ症候群(0.1%未満)〔7.3、7.6、8.1参照〕。
11.1.2. 〈効能共通〉心不全、不整脈、心筋梗塞、狭心症、心膜液貯留、心筋障害(各0.1~5%未満):心筋障害(ST-T変化、心機能低下、心内腔拡大、心壁肥厚等)、心不全、心室性不整脈あるいは上室性不整脈、心筋梗塞、狭心症、心膜液貯留があらわれることがある〔8.4参照〕。
11.1.3. 〈効能共通〉中枢神経系障害(0.1~5%未満):可逆性後白質脳症症候群、高血圧性脳症等の中枢神経系障害があらわれることがあるので、全身痙攣、意識障害、錯乱、言語障害、視覚障害、麻痺等の症状があらわれた場合には、神経学的検査やCT、MRIによる画像診断を行うとともに、本剤を減量又は中止し、血圧のコントロール、抗痙攣薬の投与等適切な処置を行うこと。
11.1.4. 〈効能共通〉脳血管障害(0.1~5%未満):脳梗塞、脳出血等の脳血管障害があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、神経学的検査やCT、MRIによる画像診断を行うこと。
11.1.5. 〈効能共通〉血栓性微小血管障害(0.1~5%未満):溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少性紫斑病等の血栓性微小血管障害があらわれることがある〔10.2参照〕。
11.1.6. 〈効能共通〉汎血球減少症、血小板減少性紫斑病(各0.1~5%未満)、無顆粒球症、溶血性貧血、赤芽球癆(いずれも頻度不明)。
11.1.7. 〈効能共通〉イレウス(0.1~5%未満)。
11.1.8. 〈効能共通〉皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)。
11.1.9. 〈効能共通〉呼吸困難、急性呼吸窮迫症候群(各0.1~5%未満)。
11.1.10. 〈効能共通〉感染症(15%以上):細菌性感染症が発現又は細菌性感染症増悪、ウイルス性感染症が発現又はウイルス性感染症増悪、真菌性感染症が発現又は真菌性感染症増悪あるいは原虫性感染症が発現又は原虫性感染症増悪することがあり、また、B型肝炎ウイルス再活性化による肝炎やC型肝炎悪化があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、減量・休薬、抗生物質の投与等を行うこと〔8.6、9.1.1、9.1.3参照〕。
11.1.11. 〈効能共通〉進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明):本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.12. 〈効能共通〉BKウイルス腎症(頻度不明)。
11.1.13. 〈効能共通〉リンパ腫等の悪性腫瘍(0.1~5%未満):Epstein-Barrウイルスに関連したリンパ増殖性疾患あるいはリンパ腫(初期症状:発熱、リンパ節腫大等)があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、減量・休薬等の適切な処置を行うこと(特に抗リンパ球抗体の併用例において、発現の可能性が高い)。また、過度の免疫抑制により、悪性腫瘍発現の可能性が高まることがある〔8.7、9.7小児等の項参照〕。
11.1.14. 〈効能共通〉膵炎(0.1~5%未満)〔8.3参照〕。
11.1.15. 〈効能共通〉糖尿病及び糖尿病悪化(0.1~5%未満)、高血糖(15%以上)〔8.3参照〕。
11.1.16. 〈効能共通〉肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明):著しいAST上昇、著しいALT上昇、著しいγ-GTP上昇、著しいAl-P上昇、著しいLDH上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.17. 〈重症筋無力症〉クリーゼ(頻度不明):症状があらわれた場合には、人工呼吸等を行うこと。
11.1.18. 〈関節リウマチ〉間質性肺炎(頻度不明):発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状が認められた場合には、本剤の投与を中止するとともに、速やかに胸部レントゲン検査、速やかに胸部CT検査及び速やかに血液検査等を実施し、感染症との鑑別診断を考慮に入れて、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと〔9.1.2参照〕。
- 11.2. その他の副作用
1). 腎臓:(5%以上)腎障害(BUN上昇、クレアチニン上昇、クレアチニンクリアランス低下、尿蛋白)(23.1%)、(0.1~5%未満)尿量減少、血尿、多尿、(0.1%未満)頻尿、残尿感。
2). 代謝異常:(5%以上)高カリウム血症、高尿酸血症、低マグネシウム血症、(0.1~5%未満)アシドーシス、高コレステロール血症、高リン酸血症、低リン酸血症、高クロール血症、高カルシウム血症、低カルシウム血症、低蛋白血症、低ナトリウム血症、低カリウム血症、高トリグリセリド血症、尿糖、(頻度不明)CK上昇。
3). 循環器:(5%以上)血圧上昇、(0.1~5%未満)浮腫、頻脈、動悸、心電図異常、血圧低下、(0.1%未満)徐脈。
4). 精神神経系:(5%以上)振戦、(0.1~5%未満)しびれ、不眠、失見当識、せん妄、不安、頭痛、感覚異常、(0.1%未満)めまい、眼振、外転神経麻痺、四肢硬直、傾眠、意識混濁、うつ病、興奮、(頻度不明)運動失調、幻覚。
5). 消化器:(0.1~5%未満)腸管運動障害、食欲不振、下痢、腹痛、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸炎、口内炎、悪心、嘔吐、腹部膨満感、(0.1%未満)下血、(頻度不明)胸やけ、消化管出血。
6). 膵臓:(0.1~5%未満)アミラーゼ上昇。
7). 肝臓:(5%以上)肝機能異常(AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇)。
8). 血液:(0.1~5%未満)貧血、血小板増多、血小板減少、白血球増多、白血球減少、(0.1%未満)リンパ球減少、(頻度不明)好中球減少。
9). 皮膚:(0.1~5%未満)発疹、紅斑、皮膚そう痒、脱毛。
10). その他:(0.1~5%未満)胸水、腹水、喘息、発熱、全身倦怠感、体重減少、ほてり、月経過多、(0.1%未満)咽喉頭異和感、筋肉痛、関節痛、味覚異常、(頻度不明)疼痛、発赤、眼痛、多汗、口渇、冷感、胸痛。
発現頻度は本剤の肝移植、骨髄移植及び腎移植での臨床試験及び市販後の調査成績に基づいている。
- 高齢者
- 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能(腎機能、肝機能、免疫機能等)が低下している)〔7.9参照〕。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(ウサギ)で催奇形作用、胎仔毒性が報告されており、ヒトで胎盤を通過することが報告されている(妊娠中に本剤を投与された女性において、早産及び児への影響(低出生体重、先天奇形、高カリウム血症、腎機能障害)の報告がある))。
本剤投与中は授乳しないことが望ましい(母乳中へ移行することが報告されている)〔16.3.2参照〕。
- 小児等
- 特に2歳未満の乳幼児例において、リンパ腫等の悪性腫瘍の発現の可能性が高い〔11.1.13参照〕。骨髄移植、腎移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植、重症筋無力症、関節リウマチ、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎及び多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎では小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
アルミピロー開封後は湿気、光を避けて保存すること。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報15.1.1. 〈効能共通〉免疫抑制剤による治療を受けた患者では、悪性腫瘍(特にリンパ腫、皮膚癌等)の発生率が高いとする報告がある。
15.1.2. 〈関節リウマチ〉本剤とメトトレキサートを併用、他の抗リウマチ薬を併用あるいは抗TNFα製剤を併用した際の有効性及び安全性は確立していない。
15.1.3. 〈関節リウマチ〉人工関節置換術等の手術時における本剤の安全性は確立していない。
15.1.4. 〈ループス腎炎〉承認時までの臨床試験において、28週投与によりクレアチニンクリアランス低下がみられている。なお、ループス腎炎の場合、市販後の調査(1355例)において、5年観察終了時のクレアチニン上昇の発現率は2.9%であった。
15.2. 非臨床試験に基づく情報15.2.1. ラット(1.0~3.0mg/kg、皮下投与)で、精子数減少及び精子運動能低下が、また高用量群では軽度の繁殖能低下が認められた。
16.1 血中濃度
16.1.1 腎移植
承認時までの臨床試験において、成人腎移植患者9例にタクロリムスカプセル0.16mg/kgを経口投与したときの薬物動態パラメータは次のとおりであった。
→図表を見る(PDF)
16.1.2 肝移植
小児肝移植患者(平均年齢5.3歳)においては、成人に比べ体重換算で2.7~4.4倍の経口投与量で同程度の血清中濃度が得られた(外国人でのタクロリムスカプセル投与時のデータ)。
16.1.3 小腸移植
小児小腸移植患者(平均年齢2.9歳)においては、成人に比べ体重換算で1.3~2.5倍の経口投与量で同程度の血漿中濃度が得られた(外国人でのタクロリムスカプセル投与時のデータ)。
16.1.4 関節リウマチ
成人関節リウマチ患者12例にタクロリムスカプセル3mgを経口投与したときの薬物動態パラメータは次のとおりであった(外国人データ)。
→図表を見る(PDF)
また、国内の成人関節リウマチ患者にタクロリムスカプセル1.5及び3mgを経口投与したときの血中濃度は用量の増加に伴い増加した。
なお、国内の成人関節リウマチ患者での臨床試験において血中濃度を測定した326例中、タクロリムス投与8~16時間後の平均血中濃度が10ng/mL以上を示した患者は8例のみであった。クレアチニン上昇等の副作用は血中濃度が高い場合に多く認められる傾向にあった。
16.1.5 ループス腎炎
成人ループス腎炎患者25例にタクロリムスカプセル3mgを経口投与したときの投与8~16時間後の平均血中濃度は4.35ng/mL(1.70~7.30ng/mL)であった。
16.1.6 潰瘍性大腸炎
成人潰瘍性大腸炎患者8例にタクロリムスカプセル0.05mg/kgを経口投与したときの薬物動態パラメータは次のとおりであった。
→図表を見る(PDF)
16.1.7 多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎
成人多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎患者25例にタクロリムスカプセルを1日2回経口投与したときの平均血中トラフ濃度は6.55ng/mL(2.52~11.40ng/mL)であった。その時の平均投与量は0.0721mg/kg/日(0.030~0.156mg/kg/日)であった。なお、平均血中トラフ濃度が10ng/mL以上を示した患者は3例であった。
16.1.8 タクロリムスカプセルとタクロリムス顆粒の比較
成人腎移植患者9例にタクロリムスカプセル及びタクロリムス顆粒を同用量投与したときの薬物動態パラメータは次のとおりであった。[1.2、7.2.1参照]
→図表を見る(PDF)
16.1.9 生物学的同等性試験
〈タクロリムス錠0.5mg「あゆみ」〉
タクロリムス錠0.5mg「あゆみ」1錠とプログラフカプセル0.5mg1カプセル(タクロリムスとして0.5mg)を、クロスオーバー法により健康成人男子に絶食単回経口投与して全血中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された。
→図表を見る(PDF)
全血中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
〈タクロリムス錠1mg「あゆみ」〉
タクロリムス錠1mg「あゆみ」1錠とプログラフカプセル1mg1カプセル(タクロリムスとして1mg)を、クロスオーバー法により健康成人男子に絶食単回経口投与して全血中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された。
→図表を見る(PDF)
全血中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
16.2.1 健康成人にて食事によるタクロリムス薬物動態パラメータへの影響を検討したところ、食直後及び食後1.5時間に経口投与した場合は空腹時に比べ有意にCmax及びAUCの低下がみられ、Tmaxは延長した(外国人データ)。
16.2.2 成人潰瘍性大腸炎患者におけるトラフ濃度を用いた母集団薬物動態解析から、タクロリムスを食後投与時の経口吸収性は、平均的に絶食下服薬時の62%と推定された。
16.3 分布
16.3.1 タクロリムスの血漿蛋白結合率は98.8%以上であった。
16.3.2 肝移植後の授乳婦6例にてタクロリムスの乳汁中移行を検討したところ、平均血漿中濃度の約半分の移行が認められた(外国人データ)。[9.6参照]
16.3.3 ラットに14C標識タクロリムス0.32mg/kgを静注したところ、5分後には放射能はほとんどの組織に移行し、特に副腎、肺、心臓、甲状腺に高かった。移行した放射能は血中濃度の低下とともに消失した。なお、大脳、小脳へは低濃度の移行が認められ、放射能の消失は遅かった。
16.4 代謝
16.4.1 タクロリムスは主として薬物代謝酵素CYP3A4及びCYP3A5で代謝される。[10.参照]
16.4.2 肝移植患者での血中、尿中及び胆汁中代謝物は主として脱メチル体及び水酸化体であった(外国人データ)。
16.5 排泄
代謝物の大部分は胆汁中に排泄され、未変化体の尿中排泄率は1%以下であった(外国人データ)。なお、タクロリムスの血中濃度は腎機能あるいは透析による影響を受けない。
16.7 薬物相互作用
タクロリムスは主として薬物代謝酵素CYP3A4で代謝されるため、CYP3A4で代謝される他の薬物との併用によりタクロリムスの血中濃度が上昇する可能性がある。また、CYP3A4を誘導する薬物との併用によりタクロリムスの血中濃度が低下する可能性がある。一方、タクロリムスがCYP3A4での代謝を阻害することにより、CYP3A4で代謝される他の薬物の血中濃度を上昇させる可能性がある。また、タクロリムスの血漿蛋白結合率は98.8%以上と高いので、血漿蛋白との親和性が強い薬剤との相互作用の可能性がある。
16.8 その他
〈タクロリムス錠1.5mg「あゆみ」〉
タクロリムス錠1.5mg「あゆみ」は、タクロリムス錠0.5mg「あゆみ」を標準製剤としたとき、溶出挙動が同等と判断され、生物学的に同等とみなされた。
〈タクロリムス錠2mg「あゆみ」、タクロリムス錠3mg「あゆみ」〉
タクロリムス錠2mg「あゆみ」及びタクロリムス錠3mg「あゆみ」は、タクロリムス錠1mg「あゆみ」を標準製剤としたとき、溶出挙動が同等と判断され、生物学的に同等とみなされた。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
〈移植領域〉
17.1.1 腎移植における拒絶反応の抑制
(1)国内前期第II相試験(35例)、国内後期第II相試験(69例)、国内第III相比較試験(82例)
承認時までの臨床試験(1990~1994年)において、腎移植後の一次治療効果は、186例で検討され、1年累積生存率及び1年累積生着率はそれぞれ97.3%及び93.0%であった。拒絶反応は74/186例(39.8%)で延べ101回みられた。
(2)国内第III相試験
救済的治療試験では既存薬による継続治療が困難な症例104例にタクロリムス(注射液・カプセル)が投与され、55例(52.9%)で「有効」以上の成績が得られた。
タクロリムス顆粒を17例に12週間投与して検討した結果(1996~1998年)、生着率は94.1%(16/17例)、拒絶反応が発現した症例は2/17例(11.8%)であった。タクロリムスカプセルからの切り換え例(19例)での検討では、全例で移植腎は生着が維持され、拒絶反応は発現しなかった。
(3)国内第III相試験(移植前投与期間延長)
抗ドナー抗体陽性・抗HLA抗体陽性の生体腎移植患者に、移植28~7日前から移植1日前までタクロリムスカプセル又はタクロリムス徐放性カプセルを投与した結果、腎移植実施率は91.7%(22/24例)であった。
17.1.2 肝移植における拒絶反応の抑制
(1)国内試験
承認時までの臨床試験において、国内で生体部分肝移植手術を受け、タクロリムス(注射液・カプセル)が投与された24例の6カ月累積生存率は65.6%であった。このうち8例は救済的治療であった。拒絶反応は4/24例(16.7%)で延べ7回みられたが、いずれも軽度でそのうちの1回を除きステロイドパルス療法により消失ないし軽快した。また、1990~1995年に国内で生体部分肝移植を受け、タクロリムス(注射液・カプセル)が投与された120例の6カ月生存率は81.7%であった。
タクロリムス顆粒を7例に12週間投与して検討した結果(1997~1998年)、生着率は100%、拒絶反応が発現した症例は4/7例(57.1%)であった。タクロリムスカプセルからの切り換え例(10例)での検討では、全例で移植肝の生着が維持され、拒絶反応が発現した症例は1/10例(10.0%)であった。
17.1.3 心移植における拒絶反応の抑制
心移植におけるタクロリムス(注射液・カプセル)の拒絶反応の抑制効果が確認されている(外国人データ)。
17.1.4 肺移植における拒絶反応の抑制
肺移植におけるタクロリムス(注射液・カプセル)の拒絶反応の抑制効果が確認されている(外国人データ)。
17.1.5 膵移植における拒絶反応の抑制
膵移植におけるタクロリムス(注射液・カプセル)の拒絶反応の抑制効果が確認されている(外国人データ)。
17.1.6 小腸移植における拒絶反応の抑制
小腸移植におけるタクロリムス(注射液・カプセル)の拒絶反応の抑制効果が確認されている(外国人データ)。
17.1.7 骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制
[予防投与]
(1)国内前期第II相試験(21例)、国内後期第II相試験(38例)、国内第III相比較試験(66例)
承認時までの臨床試験(1991~1996年)において、骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)の予防を目的にタクロリムス(注射液・カプセル)を投与した125例中、予後に影響を及ぼし、治療が必要となるgradeII以上のGVHDの発症は22例(17.6%)であった。
タクロリムス顆粒を9例に投与して検討した結果(1996~1998年)、gradeII以上のGVHDの発現率は33.3%(3/9例)であった。
[治療投与]
(2)国内試験
承認時までの臨床試験(1990~1993年)において、骨髄移植後のGVHD39例に対しタクロリムス(注射液・カプセル)を投与し、急性GVHD7/13例(53.8%)及び慢性GVHD12/26例(46.2%)が有効以上の効果を示した。
〈重症筋無力症〉
17.1.8 国内前期第II相試験及び国内第III相比較試験
胸腺摘除後の治療において、ステロイド剤の投与によっても効果不十分、又は副作用によりステロイド剤での治療が困難な全身型重症筋無力症14例に既存薬剤(ステロイド剤、抗コリンエステラーゼ剤等)に加え、タクロリムスカプセルを投与した結果、10例で筋力等の改善を認めた。また、易疲労感の改善や入院治療を余儀なくされていた症例で職場復帰が可能となった例もみられた。
ステロイド剤で症状の安定が得られている胸腺摘除後もしくは胸腺非摘除の重症筋無力症患者を対象とした第III相試験では、タクロリムスカプセルを28週間投与し、併用ステロイド剤の投与量をプラセボ群と比較した。本試験では、5mg/隔日/4週の割合でステロイド剤を減量し、症状の安定が維持できない場合には、ステロイド剤の増量を行った。その結果、タクロリムス群では、症状の安定を維持したままステロイド剤の減量を認め、投与終了前12週間及び投与終了前4週間のステロイド平均投与量(プレドニゾロン換算量)は、それぞれ4.91mg/日及び3.81mg/日であった。
ステロイド平均投与量※(mg/日)の推移
→図表を見る(PDF)
17.1.9 国内第III相非盲検試験
ステロイド剤の投与によっても効果不十分で、胸腺非摘除の重症筋無力症患者10例に、タクロリムスカプセルを28週間投与した第III相試験において、8例で筋力(合計QMGスコア)の改善を認め、9例で併用ステロイド剤が減量された(中間成績)。
合計QMGスコアの推移
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〈関節リウマチ〉
17.1.10 国内後期第II相高齢者試験及び国内第III相比較試験
過去の治療において抗リウマチ薬の少なくとも1剤により十分な効果が得られなかった関節リウマチ患者に、タクロリムスカプセルを後期第II相試験では16週間、第III相試験では28週間投与した。その結果、タクロリムスカプセルの第III相試験における米国リウマチ学会(ACR)の有効性評価方法での20%改善例の割合(ACR20改善率)は、非高齢者では49.0%(50/102例)、高齢者は50.0%(27/54例)であった。
ACR20改善率(非高齢者)
→図表を見る(PDF)
ACR20改善率(高齢者)
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〈ループス腎炎〉
17.1.11 国内第III相比較試験
ステロイド剤だけでは治療困難で持続性腎炎臨床所見及び免疫学的活動性を有するループス腎炎患者63例を対象とし、タクロリムスカプセル群28例、プラセボ群35例に28週間投与した。タクロリムスカプセル群における最終時の疾患活動性合計スコア※の変化率は-32.9%であり、持続性腎炎所見、免疫学的活動性の指標である1日尿蛋白量、補体(C3)の実測値の変化率は各々-60.8%、16.4%であった。なお、クレアチニンクリアランス(Ccr)の変化率は-22.0%であった。
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〈潰瘍性大腸炎〉
17.1.12 国内第III相比較試験及び国内第III相非盲検試験[7.12参照]
中等度又は重症の難治性潰瘍性大腸炎患者62例を対象とし、タクロリムスカプセル群32例、プラセボ群30例に2週間投与した(比較試験)。タクロリムスカプセル群における改善率(DAIスコアによる改善度)は表1のとおりであった。また、重症の難治性潰瘍性大腸炎患者11例に、タクロリムスカプセルを2週間投与した(非盲検試験)。改善率(DAIスコアによる改善度)は45.5%(5/11例)であった。両試験とも用量は1回0.025mg/kg1日2回を初回用量とし、その後目標トラフ濃度(10~15ng/mL)となるよう用量調節した注)。
また、第III相比較試験のタクロリムス群患者及び重症の難治性潰瘍性大腸炎患者に、2週以降の目標トラフ濃度を5~10ng/mLとしてタクロリムスカプセルを最長12週間投与した結果、最終投与時における改善率(DAIスコアによる改善度)は、それぞれ61.9%(13/21例)及び66.7%(6/9例)であった。
表1 DAIスコア改善率
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注)第III相試験での用量調節法
次のとおり用量を規定し、少なくとも投与開始日から2週間は服薬時の食事条件(経口食/絶食)は変えず、入院管理下で投与した。全期間を通じ、1日投与量の上限は目標トラフ濃度が得られなくとも0.3mg/kg/日相当とした。
→図表を見る(PDF)
投与開始時の投与量
→図表を見る(PDF)
投与2週までの投与量調節・標準スケジュール
〈多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎〉
17.1.13 国内多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎に対する医師主導治験(単群の多施設共同オープン試験)[7.18参照]
多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎患者25例に、ステロイド剤との併用下でタクロリムスカプセルを52週間投与した。その結果、投与52週後における全生存率及び無増悪生存率はそれぞれ88.0%及び76.4%であった。
17.2 製造販売後調査等
〈移植領域〉
17.2.1 腎移植における拒絶反応の抑制[7.5参照]
(1)使用成績調査
市販後の調査(1996~2002年)における1年累積生存率及び1年累積生着率は、成人(1,233例)ではそれぞれ98.6%及び95.8%であった。
17.2.2 心移植における拒絶反応の抑制
(1)使用成績調査・長期特別調査
市販後の調査における心移植一次治療症例(10例)の12週累積生存率及び12週累積生着率はいずれも100%、12週累積拒絶反応発現率は40.0%であった。また、3年累積生存率及び3年累積生着率はいずれも100%、3年累積拒絶反応発現率は50.0%であった。
17.2.3 肺移植における拒絶反応の抑制
(1)特定使用成績調査
市販後の調査における肺移植一次治療症例(12例)の3年累積生存率及び3年累積生着率はいずれも82.5%、3年累積拒絶反応発現率は75.0%であった。
17.2.4 膵移植における拒絶反応の抑制
(1)特定使用成績調査
市販後の調査における膵移植一次治療症例(35例)の4年累積生存率は100%、4年累積生着率は78.3%、4年累積拒絶反応発現率は37.7%、4年累積インスリン離脱率は95.5%であった。
17.2.5 骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制[7.5参照]
(1)使用成績調査・小児特別調査
[予防投与]
市販後の調査におけるgradeII以上のGVHDの累積発現率(移植後100日時点)は、成人(215例)では44.1%、小児(117例)では40.8%であった。
[治療投与]
市販後の調査における急性GVHDに対する有効率は、56.8%(42/74例)であった。
18.1 作用機序
タクロリムスは、T細胞受容体等からのシグナル伝達を介した免疫亢進作用に重要な酵素であるカルシニューリンを阻害することで、サイトカイン産生抑制及びそれに伴う免疫抑制作用を示す。
18.2 In vitro作用
18.2.1 T細胞刺激によるT細胞からのインターロイキン(IL)‐2及びインターフェロン(IFN)‐γのみならず、腫瘍壊死因子α、IL‐1β及びIL‐6等の産生も抑制する。
18.2.2 免疫系以外の骨髄細胞等の増殖に対する抑制作用は弱く、免疫系細胞に対する選択性が示されている。
18.3 移植に対する作用
18.3.1 同所性肝移植モデル(カニクイザル、イヌ、ラット)における移植臓器拒絶反応を抑制し、生存期間を延長させる。
18.3.2 ラット再生肝の促進及びイヌ門脈結紮による細胞萎縮の回復、分裂細胞数の増加等肝臓に対する増殖促進効果を有する。
18.3.3 移植片対宿主病モデル(マウス、ラット)において、移植片対宿主反応を抑制し、生存期間を延長させる。
18.3.4 腎移植モデル(ヒヒ、イヌ、ラット)、心移植モデル(ラット)、肺移植モデル(イヌ)及び膵移植モデル(イヌ)における移植臓器拒絶反応を抑制し、生存期間を延長させる。
18.4 関節炎に対する作用
関節炎モデル(ラット)における炎症性サイトカイン産生を抑制し、関節炎症及び骨・軟骨病変を改善する。
18.5 腎炎に対する作用
腎炎モデル(マウス)における抗二重鎖DNA抗体産生及び血中の補体成分の低下を抑制し、糸球体腎炎病変の悪化及び尿蛋白の上昇を抑制する。
18.6 大腸炎に対する作用
炎症性腸疾患モデル(マウス)において、大腸粘膜の活性化T細胞からのIFN‐γの産生を抑制し、大腸炎病態を軽減する。
18.7 間質性肺炎に対する作用
間質性肺炎モデル(マウス)の肺胞におけるT細胞に起因する炎症反応及び線維化を抑制する。また、肺傷害モデル(マウス、イヌ)の生存率を改善する。
18.8 重症筋無力症に対する作用
重症筋無力症モデル(ラット)において、抗アセチルコリン受容体抗体の産生を抑制し、自発性微小終板電位の振幅を改善する。
- 一包可:条件付可
無包装状態試験:温度条件→硬度上昇、湿度条件→硬度低下、光条件→外観若干の退色
- 分割:条件付可
- 粉砕:条件付可
粉砕後試験:判定不明@粉砕しての投与は、承認された剤形での投与ではなく、体内動態や安全性及び有効性の検討を実施していない。@粉砕する場合には飛散による暴露による健康への影響に注意し、慎重に取り扱う。
- 製造販売会社
- あゆみ製薬
- 販売会社
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