ゼルヤンツ錠5mg

添付文書情報2024年06月改定(第8版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 1.1. 〈効能共通〉本剤投与により、結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染等による重篤な感染症の新たな発現もしくは重篤な感染症悪化等や、悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、重篤な感染症の新たな発現もしくは悪化等や、悪性腫瘍の発現が報告されていることを患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
また、本剤投与により重篤な副作用が発現し、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師が使用し、本剤投与後に副作用が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること〔2.2、2.3、8.1-8.5、8.8、9.1.1-9.1.3、9.1.9、9.8高齢者の項、11.1.1、11.1.8、15.1.1、17.3.1参照〕。
1.2. 〈効能共通〉感染症1.2.1. 〈効能共通〉重篤な感染症:敗血症、肺炎、真菌感染症を含む日和見感染症等の致死的感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発症に注意すること〔2.2、8.1、8.5、8.8、9.1.1、9.1.3、9.8高齢者の項、11.1.1、15.1.1参照〕。
1.2.2. 〈効能共通〉結核:播種性結核(粟粒結核)及び肺外結核(脊椎結核、脳髄膜結核、胸膜結核、リンパ節結核等)を含む結核が報告されている。結核の既感染者では症状の顕在化及び悪化のおそれがあるため、本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する患者及び結核の感染が疑われる患者には、結核等の感染症について診療経験を有する医師と連携の下、原則として本剤の投与開始前に適切な抗結核薬を投与すること。
ツベルクリン反応等の検査が陰性の患者において、投与後活動性結核が認められた例も報告されている〔2.3、8.1、8.3、8.8、9.1.1-9.1.3、11.1.1参照〕。
1.3. 〈関節リウマチ〉本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること(また、本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用すること)。
1.4. 〈潰瘍性大腸炎〉本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の既存治療薬(ステロイド、免疫抑制剤又は生物製剤)の使用を十分勘案すること(また、本剤についての十分な知識と潰瘍性大腸炎治療の経験をもつ医師が使用すること)。
- 禁忌
- 2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 重篤な感染症(敗血症等)の患者[症状を悪化させるおそれがある]〔1.1、1.2.1、8.1、8.5、9.1.1、9.1.3、9.8高齢者の項、11.1.1、15.1.1参照〕。
2.3. 活動性結核の患者[症状を悪化させるおそれがある]〔1.1、1.2.2、8.1、8.3、9.1.1-9.1.3、11.1.1参照〕。
2.4. 重度肝機能障害を有する患者〔7.6、8.9、9.3肝機能障害患者の項、11.1.4、16.6.2参照〕。
2.5. 好中球数が500/mm3未満の患者〔8.6、9.1.5、11.1.3、15.2.1参照〕。
2.6. リンパ球数が500/mm3未満の患者〔8.6、9.1.6、11.1.3、15.2.1参照〕。
2.7. ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者〔8.6、9.1.7、11.1.3、15.2.1参照〕。
2.8. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。
- 効能・効果
- 1). 既存治療で効果不十分な関節リウマチ。
2). 中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 〈効能共通〉心血管系事象のリスク因子を有する患者に本剤を投与する際には、心筋梗塞等の心血管系事象、静脈血栓塞栓症があらわれるおそれがあるので、他の治療法を考慮すること〔9.1.10、11.1.6、11.1.7、17.3.1参照〕。
5.2. 〈関節リウマチ〉過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること。
5.3. 〈潰瘍性大腸炎〉過去の治療において、他の薬物療法(ステロイド、免疫抑制剤又は生物製剤)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与すること。
- 用法・用量
- 〈関節リウマチ〉
通常、トファシチニブとして1回5mgを1日2回経口投与する。
〈潰瘍性大腸炎〉
導入療法では、通常、成人にトファシチニブとして1回10mgを1日2回8週間経口投与する。なお、効果不十分な場合はさらに8週間投与することができる。
維持療法では、通常、成人にトファシチニブとして1回5mgを1日2回経口投与する。なお、維持療法中に効果が減弱した患者では、1回10mgの1日2回投与に増量することができる。また、過去の薬物治療において難治性の患者(TNF阻害剤無効例等)では、1回10mgを1日2回投与することができる。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈関節リウマチ〉中等度腎機能障害を有する関節リウマチ又は重度腎機能障害を有する関節リウマチ患者には、5mgを1日1回経口投与すること〔9.2腎機能障害患者の項、16.6.1参照〕。
7.2. 〈関節リウマチ〉中等度肝機能障害を有する関節リウマチ患者には、5mgを1日1回経口投与すること〔8.9、9.3肝機能障害患者の項、11.1.4、16.6.2参照〕。
7.3. 〈関節リウマチ〉免疫抑制作用が増強されると感染症のリスクが増加することが予想されるので、本剤とTNF阻害剤、IL-6阻害剤、T細胞選択的共刺激調節剤等の生物製剤<感染症のリスクが増加>や、タクロリムス<局所製剤以外>、アザチオプリン<局所製剤以外>、シクロスポリン<局所製剤以外>、ミゾリビン<局所製剤以外>等の強力な免疫抑制剤<局所製剤以外><感染症のリスクが増加>との併用はしないこと(なお、本剤とこれらの生物製剤及び免疫抑制剤との併用経験はない)。
7.4. 〈潰瘍性大腸炎〉本剤の導入療法の開始後16週時点で臨床症状や内視鏡所見等による治療反応が得られない場合は、他の治療法への切り替えを考慮すること。
7.5. 〈潰瘍性大腸炎〉本剤の維持療法中に本剤1回10mgを1日2回経口投与しても臨床症状の改善が認められない場合は、本剤の継続投与の必要性を慎重に検討し、他の治療法への切り替えを考慮すること。
7.6. 〈潰瘍性大腸炎〉中等度腎機能障害を有する潰瘍性大腸炎又は重度腎機能障害を有する潰瘍性大腸炎患者、中等度肝機能障害を有する潰瘍性大腸炎患者には、減量(1回投与量を減量、1回投与量を減量することができない場合は投与回数を減らす)し、本剤を慎重に投与すること〔2.4、8.9、9.2腎機能障害患者、9.3肝機能障害患者の項、11.1.4、16.6参照〕。
7.7. 〈潰瘍性大腸炎〉免疫抑制作用が増強されると感染症のリスクが増加することが予想されるので、本剤とTNF阻害剤等の生物製剤<感染症のリスクが増加>や、タクロリムス<局所製剤以外>、アザチオプリン<局所製剤以外>等の強力な免疫抑制剤<局所製剤以外><感染症のリスクが増加>との併用はしないこと(なお、本剤とこれらの生物製剤及び免疫抑制剤との併用経験はない)。
- 生殖能を有する者
- 8.1. 本剤は、免疫反応に関与するヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーを阻害するので、感染症に対する宿主免疫能に影響を及ぼす可能性があり、本剤の投与に際しては十分な観察を行い、感染症の発現や感染症増悪に注意すること。患者に対し、発熱、倦怠感等があらわれた場合には、速やかに主治医に相談するよう指導すること。関節リウマチ患者において、本剤投与時に発現する重篤な感染症は、本剤単独投与時と比較して抗リウマチ薬(メトトレキサートを含むDMARD)併用投与時では発現率が高い傾向が認められているため、特に注意すること〔1.1、1.2、2.2、2.3、9.1.1-9.1.3、9.1.9、11.1.1、15.1.1参照〕。
8.2. 悪性リンパ腫、固形癌等の悪性腫瘍の発現が報告されている。また、海外臨床試験において悪性腫瘍の発現頻度がTNF阻害剤に比較し本剤で高い傾向が認められたとの報告もあることから、悪性腫瘍の発現には注意すること〔1.1、11.1.8、17.3.1参照〕。
8.3. 本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。
また、本剤投与中も胸部レントゲン検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核の発現には十分に注意し、患者に対し、結核を疑う症状が発現した場合(持続する咳、発熱等)には速やかに主治医に連絡するよう説明すること〔1.1、1.2.2、2.3、9.1.1-9.1.3、11.1.1参照〕。
8.4. 本剤投与によりB型肝炎ウイルス再活性化が報告されているので、本剤投与に先立って、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること〔1.1、9.1.1、9.1.3、9.1.9参照〕。
8.5. ヘルペスウイルス再活性化等(帯状疱疹等)が報告されている。また、日本人患者で認められた重篤な日和見感染症のうち多くが重篤な帯状疱疹であったこと、播種性帯状疱疹も認められていることから、ヘルペスウイルス再活性化等の徴候や症状の発現に注意すること。ヘルペスウイルス等の再活性化の徴候や症状の発現が認められた場合には、患者に受診するよう説明し、速やかに適切な処置を行うこと。また、ヘルペスウイルス以外のウイルス再活性化にも注意すること〔1.1、1.2.1、2.2、9.1.1、9.1.3、9.1.9、11.1.1、15.1.1参照〕。
8.6. 本剤投与により、好中球減少、リンパ球減少及びヘモグロビン減少があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に好中球数、リンパ球数及びヘモグロビン値を確認すること〔2.5-2.7、9.1.5-9.1.7、11.1.3、15.2.1参照〕。
8.7. 総コレステロール増加、LDLコレステロール増加及びHDLコレステロール増加等の脂質検査値異常があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に脂質検査値を確認すること(臨床上必要と認められた場合には、高脂血症治療薬の投与等の適切な処置を考慮すること)。
8.8. 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと〔1.1、1.2、9.1.1-9.1.3、9.1.9、11.1.1参照〕。
8.9. 肝機能障害があらわれることがあるので、トランスアミナーゼ値上昇に注意するなど観察を十分に行うこと〔2.4、7.2、7.6、9.3肝機能障害患者の項、11.1.4、16.6.2参照〕。
9.1.1. 感染症<敗血症等の重篤な感染症又は活動性結核を除く>の患者又は感染症が疑われる患者:感染症が増悪する可能性がある〔1.1、1.2、2.2、2.3、8.1、8.3-8.5、8.8、11.1.1、15.1.1参照〕。
9.1.2. 結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)及び結核感染が疑われる患者〔1.1、1.2.2、2.3、8.1、8.3、8.8、11.1.1参照〕。
(1). 結核の既感染者では、結核を活動化させるおそれがある。
(2). 結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。次のいずれかの患者には、原則として本剤の開始前に適切な抗結核薬を投与すること[1)胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者、2)結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者、3)インターフェロン-γ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により、結核既感染が強く疑われる患者、4)結核患者との濃厚接触歴を有する患者]。
9.1.3. 易感染性の状態にある患者:感染症を発現するリスクが増加する〔1.1、1.2、2.2、2.3、8.1、8.3-8.5、8.8、11.1.1、15.1.1参照〕。
9.1.4. 腸管憩室のある患者:消化管穿孔があらわれるおそれがある〔11.1.2参照〕。
9.1.5. 好中球減少(好中球数500/mm3未満を除く)のある患者:好中球数が低い<好中球数500/mm3未満を除く1000/mm3未満>患者については、本剤投与を開始しないことが望ましい(好中球減少が更に悪化するおそれがある)〔2.5、8.6、11.1.3、15.2.1参照〕。
9.1.6. リンパ球減少<リンパ球数500/mm3未満を除く>のある患者:リンパ球減少が更に悪化するおそれがある〔2.6、8.6、11.1.3、15.2.1参照〕。
9.1.7. ヘモグロビン値減少(ヘモグロビン値8g/dL未満を除く)のある患者:ヘモグロビン値が9g/dL未満<ヘモグロビン値8g/dL未満を除く>の患者については、本剤投与を開始しないことが望ましい(ヘモグロビン減少が更に悪化するおそれがある)〔2.7、8.6、11.1.3、15.2.1参照〕。
9.1.8. 間質性肺炎の既往歴のある患者:定期的に問診を行うなど、注意すること(間質性肺炎が増悪又は再発することがある)〔11.1.5参照〕。
9.1.9. B型肝炎ウイルスキャリアの患者又はB型肝炎既往感染者(HBs抗原陰性かつHBc抗体陽性又はHBs抗原陰性かつHBs抗体陽性):肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。本剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている〔1.1、8.1、8.4、8.5、8.8参照〕。
9.1.10. 心血管系事象のリスク因子を有する患者:他の治療法を考慮し、特に10mg1日2回投与の必要性については慎重に判断すること(本剤を投与する場合は、心筋梗塞等の心血管系事象、静脈血栓塞栓症の徴候及び症状の発現について十分に観察すること)。
心血管系事象のリスク因子を有する関節リウマチ(喫煙中の関節リウマチ、高血圧を有する関節リウマチ、糖尿病を有する関節リウマチ、冠動脈疾患の既往を有する関節リウマチ等)患者を対象とした海外臨床試験において、心筋梗塞等の心血管系事象の発現頻度はTNF阻害剤群に比較し、本剤群で高い傾向が認められており、また、静脈血栓塞栓症の発現頻度は本剤群で用量依存的に高くなる傾向が認められており、死亡の発現頻度は本剤10mg1日2回群で高い傾向であったことが報告されている〔5.1、11.1.6、11.1.7、17.3.1参照〕。
〔7.1、7.6、16.6.1参照〕。
9.2.1. 中等度腎機能障害又は重度腎機能障害患者:減量し、慎重に投与すること(腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し、副作用が強くあらわれるおそれがある)。
9.2.2. 軽度腎機能障害患者:腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し、副作用が強くあらわれるおそれがある。
〔2.4、7.2、7.6、8.9、11.1.4、16.6.2参照〕。
9.3.1. 重度肝機能障害患者:投与しないこと(国内外で実施された臨床試験において重度の肝機能障害を有する患者は除外されており、また、中等度又は軽度の肝機能障害を有する患者に投与した場合に本剤の曝露量が増加するとの臨床試験成績があり、副作用が強くあらわれるおそれがある)。
9.3.2. 中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスB):減量し、慎重に投与すること(肝機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し副作用が強くあらわれるおそれがある)。
9.3.3. 軽度肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスA):肝機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し副作用が強くあらわれるおそれがある。
妊娠する可能性のある女性:妊娠する可能性のある女性に投与する場合は、投与中及び投与終了後少なくとも1月経周期は、妊娠を避けるよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
- 相互作用
- 本剤は主としてCYP3A4及び一部CYP2C19により代謝される〔16.4参照〕。
10.2. 併用注意:1). CYP3A4阻害剤(マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン、エリスロマイシン等)、ノルフロキサシン等、アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール等)、カルシウム拮抗剤(ジルチアゼム、ベラパミル)、アミオダロン、シメチジン、フルボキサミン、抗HIV剤(リトナビル、アタザナビル、ネルフィナビル)、ニルマトレルビル・リトナビル)、グレープフルーツ〔16.7.2参照〕[トファシチニブの曝露量が増加するおそれがあるので、併用時には本剤を減量(1回投与量を減量、1回投与量を減量することができない場合は投与回数を減らす)するなど用量に注意すること(これらの薬剤等はCYP3A4による本剤の代謝を阻害するため、トファシチニブの血中濃度が上昇する可能性がある)]。
2). フルコナゾール〔16.7.3参照〕[トファシチニブの曝露量が増加するおそれがあるので、併用時には本剤を減量(1回投与量を減量、1回投与量を減量することができない場合は投与回数を減らす)するなど用量に注意すること(フルコナゾールはCYP3A4及びCYP2C19の代謝活性を阻害するため、トファシチニブの血中濃度が上昇する可能性がある)]。
3). CYP3A4誘導剤(抗てんかん剤(バルビツール酸誘導体、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン等)、リファンピシン、リファブチン、モダフィニル)、セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort)〔16.7.5参照〕[トファシチニブの血漿中濃度が低下し本剤の効果が減弱する可能性があるので、CYP3A4誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること(これらの薬剤等はCYP3A4を誘導するため、本剤の効果が減弱する可能性がある)]。
4). 肝機能障害を起こす可能性のある薬剤[関節リウマチ患者において、メトトレキサートを含むDMARD等併用時に本剤単独投与時と比較して肝機能障害の発現割合上昇が認められている(機序は不明である)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 感染症:帯状疱疹(3.6%)、肺炎(ニューモシスチス肺炎等を含む)(1.0%)、敗血症(0.1%)、結核(0.1%)等の重篤な感染症(日和見感染症を含む)があらわれ、致命的経過をたどることがあるので、本剤投与中に重篤な感染症を発現した場合には、感染症がコントロールできるようになるまでは投与を中止すること〔1.1、1.2、2.2、2.3、8.1、8.3、8.5、8.8、9.1.1-9.1.3、9.8高齢者の項、15.1.1参照〕。
11.1.2. 消化管穿孔(0.1%):異常が認められた場合には投与を中止するとともに、腹部レントゲン、CT等の検査を実施するなど十分に観察し、適切な処置を行うこと〔9.1.4参照〕。
11.1.3. リンパ球減少(0.5%)、好中球減少(0.4%)、ヘモグロビン減少(0.3%)。
リンパ球数:本剤投与開始後、リンパ球数が500/mm3未満の場合には、投与を中止すること。
好中球数:本剤投与開始後、好中球数が継続して500~1000/mm3である場合は、好中球数が1000/mm3を超えるまで本剤の投与を中断すること。
ヘモグロビン値:本剤投与開始後、ヘモグロビン値が8g/dL未満である患者又はヘモグロビン値が2g/dLを超える低下を示した患者については、正常化するまで本剤を投与しないこと〔2.5-2.7、8.6、9.1.5-9.1.7、15.2.1参照〕。
11.1.4. 肝機能障害、黄疸:ALT上昇(1.2%)、AST上昇(0.9%)等を伴う肝機能障害、黄疸(0.1%未満)があらわれることがある〔2.4、7.2、7.6、8.9、9.3肝機能障害患者の項、16.6.2参照〕。
11.1.5. 間質性肺炎(0.1%):発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意し、異常が認められた場合には、速やかに胸部レントゲン検査、速やかに胸部CT検査及び速やかに血液ガス検査等を実施し、本剤の投与を中止するとともにニューモシスチス肺炎との鑑別診断(β-Dグルカンの測定等)を考慮に入れ適切な処置を行うこと〔9.1.8参照〕。
11.1.6. 静脈血栓塞栓症(頻度不明):肺塞栓症及び深部静脈血栓症があらわれることがある〔5.1、9.1.10、17.3.1参照〕。
11.1.7. 心血管系事象(頻度不明):心筋梗塞等の心血管系事象があらわれることがある〔5.1、9.1.10、17.3.1参照〕。
11.1.8. 悪性腫瘍(頻度不明)〔1.1、8.2、17.3.1参照〕。
- 11.2. その他の副作用
1). 感染症及び寄生虫症:(5%以上)鼻咽頭炎、(1%以上5%未満)気管支炎、尿路感染、インフルエンザ、膀胱炎、咽頭炎、副鼻腔炎、肺炎、(0.1%以上1%未満)単純ヘルペス、蜂巣炎、ウイルス性胃腸炎、腎盂腎炎、ウイルス感染、細菌性関節炎、サイトメガロウイルス感染、細菌性肺炎、肺炎球菌性肺炎、(0.1%未満)脳炎(BKウイルス脳炎を含む)、クリプトコッカス性髄膜炎、マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス感染、壊死性筋膜炎、ニューモシスチス肺炎、(頻度不明)非定型マイコバクテリア感染、菌血症、ブドウ球菌性菌血症。
2). 血液及びリンパ系障害:(1%以上5%未満)貧血、(0.1%以上1%未満)白血球減少。
3). 免疫系障害:(頻度不明)過敏症(蕁麻疹、血管浮腫等)。
4). 代謝及び栄養障害:(1%以上5%未満)高脂血症、(0.1%以上1%未満)脂質異常症、(0.1%未満)脱水。
5). 精神障害:(0.1%以上1%未満)不眠症。
6). 神経系障害:(5%以上)頭痛、(1%以上5%未満)錯感覚。
7). 血管障害:(1%以上5%未満)高血圧。
8). 呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(1%以上5%未満)咳嗽、(0.1%以上1%未満)呼吸困難、副鼻腔うっ血。
9). 胃腸障害:(1%以上5%未満)悪心、下痢、腹痛、消化不良、嘔吐、(0.1%以上1%未満)胃炎。
10). 肝胆道系障害:(0.1%以上1%未満)脂肪肝。
11). 皮膚及び皮下組織障害:(1%以上5%未満)発疹、(0.1%以上1%未満)皮膚そう痒症、紅斑、(頻度不明)ざ瘡。
12). 筋骨格系及び結合組織障害:(1%以上5%未満)関節痛、(0.1%以上1%未満)筋骨格痛、関節腫脹、腱炎。
13). 一般・全身障害及び投与部位の状態:(1%以上5%未満)疲労、発熱、(0.1%以上1%未満)末梢性浮腫。
14). 臨床検査:(5%以上)血中クレアチンホスホキナーゼ増加、(1%以上5%未満)血中コレステロール増加、γ-GTP増加、(0.1%以上1%未満)低比重リポ蛋白増加、体重増加、肝酵素上昇、血中クレアチニン増加、高比重リポ蛋白増加、トランスアミナーゼ上昇、肝機能検査異常。
15). 傷害、中毒及び処置合併症:(0.1%以上1%未満)靱帯捻挫、(頻度不明)肉離れ。
- 高齢者
- 減量するなど注意すること(重篤な感染症の発現頻度の上昇が認められており、一般に生理機能が低下している、また、肝機能及び腎機能の低下により本剤の血中濃度の増加が認められている)〔1.1、1.2.1、2.2、11.1.1参照〕。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験では催奇形性が報告されており、日本人関節リウマチ患者に本剤5mg1日2回投与したときの血漿中濃度と比較したとき、催奇形性に関する安全域はラット及びウサギでそれぞれ78倍(無毒性量:30mg/kg/日)及び2.8倍(無毒性量:10mg/kg/日)、日本人を含む潰瘍性大腸炎患者に本剤10mg1日2回投与したときの血漿中濃度と比較したとき、催奇形性に関する安全域はラット及びウサギでそれぞれ51倍及び1.8倍であり、また、ラットで受胎能への影響、出産への影響、胎仔発達への影響が報告されており、雌ラットの受胎能及び初期胚発生に関する安全域は、日本人関節リウマチ患者に本剤5mg1日2回投与したときの血漿中濃度と比較したとき5.7倍(無毒性量:1mg/kg/日)、日本人を含む潰瘍性大腸炎患者に本剤10mg1日2回投与したときの血漿中濃度と比較したとき4.0倍であった)〔2.8、9.4生殖能を有する者の項参照〕。
本剤投与中は授乳しないことが望ましい(ラットで乳汁中へ移行することが報告されている)。
- 小児等
- 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
- 適用上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報15.1.1. 〈関節リウマチ〉関節リウマチ患者を対象とした本剤の単剤投与での6ヵ月間の二重盲検比較試験において、100人・年あたりの重篤な感染症の発現率はプラセボ群では0であったのに対し、本剤5mg1日2回投与群及び10mg1日2回投与群[本剤の関節リウマチにおける承認用法・用量は、トファシチニブとして5mg1日2回経口投与である]でそれぞれ0.85及び3.5であった。
本剤のDMARD併用投与での6ヵ月間又は12ヵ月間投与の二重盲検比較試験において、100人・年あたりの重篤な感染症の発現率はプラセボ群では1.7であったのに対し、本剤5mg1日2回投与群及び10mg1日2回投与群[本剤の関節リウマチにおける承認用法・用量は、トファシチニブとして5mg1日2回経口投与である]でそれぞれ3.6及び2.9であった。
また、本剤の長期間投与を受けた関節リウマチ患者における100人・年あたりの重篤な感染症の発現率は、本剤5mg1日2回投与群及び10mg1日2回投与群[本剤の関節リウマチにおける承認用法・用量は、トファシチニブとして5mg1日2回経口投与である]でそれぞれ2.3及び4.9であった〔1.1、1.2.1、2.2、8.1、8.5、9.1.1、9.1.3、11.1.1参照〕。
15.1.2. 〈関節リウマチ〉関節リウマチ患者を対象とした海外臨床試験において、本剤とメトトレキサート併用群では、プラセボ群及び本剤単剤投与群と比較して、肺炎球菌ワクチンに対する免疫応答を減弱させることが示唆されている。
15.1.3. 〈潰瘍性大腸炎〉日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者を対象に、本剤を8週間(最長9週間)投与した国際共同第3相寛解導入試験において、本剤10mg1日2回群及びプラセボ群における重篤な感染症の発現割合は、それぞれ0.4%(476例中2例)及び0.0%(122例中0例)であった。
日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者を対象に、本剤を52週間(最長53週間)投与した国際共同第3相寛解維持試験において、100人・年あたりの重篤な感染症の発現率は、プラセボ群では1.94であったのに対し、本剤5mg1日2回群及び10mg1日2回群では、それぞれ1.35及び0.64であった。
日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者への本剤の投与群全体での100人・年あたりの重篤な感染症の発現率は、2.05であった。
15.2. 非臨床試験に基づく情報15.2.1. 本剤はJAK阻害作用を有することから免疫系及び造血系へ影響を及ぼす可能性があり、非臨床試験ではリンパ球数減少及び赤血球数減少などに加え、免疫抑制(IFN-α/β、IFN-γ、TNF-α等のサイトカインの抑制等)に起因する二次的な作用(細菌感染及びウイルス感染並びにリンパ腫)がみられ、また、その他に肝臓への影響や消化管への影響(トランスアミナーゼ上昇や胃腸拡張など)もみられた〔2.5-2.7、8.6、9.1.5-9.1.7、11.1.3参照〕。
15.2.2. ラットのがん原性試験(24ヵ月投与)において、良性ライディッヒ細胞腫(75mg/kg/日の雄)、褐色脂肪腫(30mg/kg/日以上の雌)、良性胸腺腫(75mg/kg/日の雌)、良性血管腫(10mg/kg/日の雄)の発現頻度の上昇が認められた。
15.2.3. サル39週間投与試験では10mg/kg/日で8例中3例に、サル腎同種片移植試験ではミコフェノール酸モフェチルを併用投与した動物8例中1例でリンパ腫が認められた。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人健康被験者6例に、本剤1及び5mgを空腹時単回経口投与注)したとき、トファシチニブの全身曝露量は、ほぼ用量比例的に増加した。
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16.1.2 反復投与
日本人健康被験者6例に本剤を5日間15mg1日2回反復経口投与注)したとき、反復投与開始後24時間以内に定常状態に到達し、累積係数(単回投与時のAUC0-12に対する反復投与5日目のAUC0-12の比)は1.15であった。
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国内外で実施した第II相試験5試験についてポピュレーションPK解析を実施し、日本人関節リウマチ患者(男性、70kg、55歳、ベースラインのクレアチニンクリアランス≧80mL/min)のポピュレーションPKパラメータを推定したところ、見かけのクリアランス(CL/F)は18.4L/h、見かけの分布容積(V/F)は96.0Lであった。また推定値より本剤5mg1日2回経口反復投与したときの定常状態における各患者の薬物動態パラメータ[幾何平均値(変動係数%)]は、最高血漿中濃度(Cmax,ss)60.4(17)ng/mL、トラフ濃度(Cmin,ss)4.39(51)ng/mL及び投与間隔における血漿中濃度時間曲線下面積(AUCτ)262(20)ng・h/mLと推定された。
日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者に、本剤10mgを1日2回9週間反復経口投与したときの投与2週目及び8週目の血漿中トラフ(投与前)濃度が得られている。
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日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者を対象に実施した国際共同第III相試験2試験並びに外国人潰瘍性大腸炎患者を対象に実施した海外第II相試験1試験及び第III相試験1試験についてポピュレーションPK解析を実施し、日本人を含む潰瘍性大腸炎患者(仮定した基準となる患者は、アジア人以外、男性、体重72kg、年齢40歳、ベースラインのクレアチニンクリアランスが109mL/min)のポピュレーションPKパラメータを推定したところ、CL/Fは26.3L/h、V/Fは116Lであった。また本剤5及び10mgを1日2回経口反復投与したときの定常状態における各患者の薬物動態パラメータ[幾何平均値(変動係数%)]はそれぞれ、Cmax,ss46.9(19)及び90.8(20)ng/mL、AUCτ211(23)及び404(25)ng・h/mLと推定された。
16.2 吸収
16.2.1 外国人健康被験者12例に本剤及び静脈注射用製剤10mgを単回経口及び静脈内(IV)投与注)しトファシチニブの絶対的バイオアベイラビリティを評価した。本剤10mg経口投与時の絶対的バイオアベイラビリティは74.14%(90%信頼区間:70.32~78.16%)であった(外国人データ)。
16.2.2 食事の影響
外国人健康被験者16例に、本剤10mgを単回経口投与注)しPKに対する食事の影響を評価した。AUC0-∞を指標としたトファシチニブ平均曝露量は、摂食下では約6%(90%信頼区間:3~10%)増大したのに対し、Cmaxは約32%(90%信頼区間:20~42%)減少した(外国人データ)。
16.3 分布
静脈内投与後、トファシチニブの定常状態における見かけの分布容積(Vss)は87Lと推定された。トファシチニブのヒト血漿蛋白結合率は0.39であった。トファシチニブの血液-血漿濃度比は1μM(312ng/mL)において1.2であった。
16.4 代謝
トファシチニブのクリアランスの機序に対する代謝経路の寄与は、未変化体の肝代謝が約70%、腎排泄が30%である。主に薬物代謝酵素チトクロムP450(CYP)3A4を介して代謝され、CYP2C19によってもわずかに代謝されると考えられる。マスバランス試験では、循環中総放射能の65%以上をトファシチニブの未変化体が占めた。血漿中における残りの放射能は8種類の代謝物によるものであり、それぞれは総放射能の8%未満であった。
in vitro試験により、トファシチニブは日本人関節リウマチ患者に10mg1日2回投与注)したときの定常状態における非結合型Cmax(0.24μM)の125倍の濃度(IC50>30μM)で、ヒトの主要な薬物代謝酵素CYP450(CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4)の活性を有意に阻害又は誘導しないことが示されている。
in vitro試験により、トファシチニブは日本人関節リウマチ患者に10mg1日2回投与注)したときの定常状態における非結合型Cmax(0.24μM)の417倍の濃度(IC50>100μM)で、ヒトの主要な薬物代謝酵素UGT(UGT1A1、UGT1A4、UGT1A6、UGT1A9及びUGT2B7)の活性を有意に阻害しないことが示されている。[10.参照]
16.5 排泄
ヒトのマスバランス試験から、放射能の約29%が未変化体として、約51%が代謝物として、それぞれ尿中に排泄されることが示された。糞便中には、放射能の約1%が未変化体として、約13%が代謝物として、それぞれ排泄された。総回収率は約94%であった。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
軽度、中等度、重度の腎機能障害患者各6例、腎機能正常被験者6例に本剤10mgを単回経口投与注)したとき、全被験者でCmaxの平均値は類似していた。腎機能正常被験者と比べ、軽度、中等度及び重度の腎機能障害被験者におけるAUC0-∞の平均値の比は、それぞれ137%(90%信頼区間:97~195%)、143%(90%信頼区間:101~202%)及び223%(90%信頼区間:157~316%)であった。t1/2の平均値は、腎機能正常被験者における2.4時間から重度の腎機能障害被験者における3.8時間まで延長した(外国人データ)。
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血液透析を受けている末期腎疾患患者12例に本剤10mgを単回経口投与注)したとき、透析クリアランス/血液流量で算出される透析効率の平均値(標準偏差)は0.73(0.15)であった。しかしながら、トファシチニブは腎外クリアランスが大きいことから、血液透析による除去の総排泄に対する割合は小さい。[7.1、7.6、9.2参照]
16.6.2 肝機能障害患者
軽度及び中等度の肝機能障害患者各6例、肝機能正常被験者6例に本剤10mgを単回経口投与注)したとき、軽度肝障害群のCmaxの幾何平均値は肝機能正常群よりも0.6%低く、AUC0-∞の幾何平均値は3.2%高かった。中等度肝障害群のCmaxの幾何平均値は肝機能正常群よりも49%高く、AUC0-∞の幾何平均値は65%高かった。t1/2の平均値については、肝機能正常群の4.1時間から中等度肝障害群の5.4時間まで延長した(外国人データ)。[2.4、7.2、7.6、8.9、9.3、11.1.4参照]
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16.7 薬物相互作用
16.7.1 メトトレキサート
本剤とメトトレキサート(15~25mg週1回投与)の併用投与によるトファシチニブのAUCの増加は3%(90%信頼区間:-1~7%)、Cmaxの増加は3%(90%信頼区間:-6~12%)であり、トファシチニブの薬物動態に対する影響は認められなかった。
また、本剤とメトトレキサートの併用投与により、メトトレキサートのAUCが10%(90%信頼区間:-4~23%)減少し、Cmaxが13%(90%信頼区間:-0.1~24%)減少した(外国人データ)。
16.7.2 ケトコナゾール
CYP3A4の阻害薬であるケトコナゾール(経口剤:国内未承認)との併用投与により、トファシチニブのAUC及びCmaxは、本剤単独投与時と比較して、それぞれ103%(90%信頼区間:91~116%)及び16%(90%信頼区間:5~29%)増加した(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.3 フルコナゾール
CYP3A4及びCYP2C19の阻害薬であるフルコナゾールとの併用投与により、トファシチニブのAUC及びCmaxは、本剤単独投与時と比較して、それぞれ79%(90%信頼区間:64~96%)及び27%(90%信頼区間:12~44%)増加した(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.4 タクロリムス及びシクロスポリン
CYP3A4の阻害薬であるタクロリムスとの併用投与により、本剤単独投与時と比較して、本剤を単回投与したときのAUCは21%(90%信頼区間:13~30%)増加し、Cmaxは9%(90%信頼区間:1~17%)低下した。CYP3A4の阻害薬であるシクロスポリンとの併用投与により、本剤単独投与時と比較して、本剤を単回投与したときのAUCは73%(90%信頼区間:62~85%)増加し、Cmaxは17%(90%信頼区間:3~29%)低下した(外国人データ)。
16.7.5 リファンピシン
CYP3A4の誘導薬であるリファンピシンとの併用投与により、トファシチニブのAUC及びCmaxは、本剤単独投与時と比較して、それぞれ84%(90%信頼区間:82~86%)及び74%(90%信頼区間:69~77%)低下した(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.6 ミダゾラム
本剤(30mg1日2回投与注))とミダゾラムの併用投与によるミダゾラムのAUCの増加は4%(90%信頼区間:-4~13%)、Cmaxの増加は2%(90%信頼区間:-4~9%)であり、ミダゾラムのCmax又はAUCに影響は認められなかった(外国人データ)。
16.7.7 経口避妊薬
健康女性被験者において、本剤(30mg1日2回投与注))の併用投与により、経口避妊薬(レボノルゲストレル及びエチニルエストラジオール)の薬物動態に影響は認められなかった。本剤との併用時のレボノルゲストレルのAUCは1%(90%信頼区間:-5~7%)増加し、Cmaxは12%(90%信頼区間:5~20%)増加した。本剤との併用時のエチニルエストラジオールのAUCは7%(90%信頼区間:-1~15%)増加し、Cmaxは10%(90%信頼区間:2~18%)減少した(外国人データ)。
16.7.8 メトホルミン
本剤(30mg1日2回投与注))とOCTの典型的基質であるメトホルミン(500mg単回投与)の併用投与によるメトホルミンのAUCの減少は2%(90%信頼区間:-3~3%)、Cmaxの減少は7%(90%信頼区間:-13~-1%)、腎クリアランスの増加は0.2%(90%信頼区間:-3~4%)であり、メトホルミンのAUC、Cmax又は腎クリアランスに影響は認められなかった(外国人データ)。
16.7.9 P糖蛋白質
in vitro試験により、トファシチニブはP糖蛋白質の基質であることが示された。また、P糖蛋白質によるジゴキシンの輸送に対するトファシチニブの阻害作用も認められた(IC50:311μM;日本人関節リウマチ患者に本剤10mg1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの1300倍)。
16.7.10 ヒト有機カチオントランスポーター(hOCT1又はhOCT2)
in vitro試験により、トファシチニブはhOCT2によるクレアチニンの取り込みを用量依存的に阻害し、その阻害活性はキニジンと同等で、シメチジンよりも高いことが示唆された(IC50:150μM;日本人関節リウマチ患者に本剤10mg1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの625倍)。また、in vitro試験により、300μM(日本人関節リウマチ患者に本剤10mg1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの1250倍)までの濃度で、トファシチニブはhOCT1及びhOCT2の基質とはならないことが示唆された。
16.7.11 ヒト有機アニオン輸送ポリペプチド(hOATP1B1又は1B3)
in vitro試験により、hOATP1B1を介した輸送に対するトファシチニブの阻害作用が認められた(IC50:55.3μM;日本人関節リウマチ患者に本剤10mg1日2回投与注)したときのCmaxにおける血漿中非結合トファシチニブ濃度の平均値の230倍及び肝臓中の推定トファシチニブ最高濃度の83倍)。hOATP1B3を介した輸送は、トファシチニブ濃度100μMで阻害されなかった。また、in vitro試験により、900μM(日本人関節リウマチ患者に本剤10mg1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの3750倍)までの濃度で、トファシチニブはhOATP1B1及びhOATP1B3の基質とはならないことが示唆された。
16.7.12 サンドイッチ培養ヒト肝細胞への取り込み
サンドイッチ培養ヒト肝細胞を用いたin vitro試験(1μM及び20μM:日本人関節リウマチ患者に本剤10mg1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの4.17及び83.3倍)により、トファシチニブの肝取り込みにおいて、取り込みトランスポーターが主要な役割を担う可能性は低いことが示唆された。
注)本剤の関節リウマチにおける承認用法・用量は、トファシチニブとして5mg1日2回経口投与である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
〈関節リウマチ〉
17.1.1 国内第II相二重盲検比較試験(メトトレキサート併用、A3921039試験)
メトトレキサートで効果不十分な日本人活動性関節リウマチ患者136例を対象に、3ヵ月間のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(本剤1、3、5、10mg1日2回投与注1)もしくはプラセボ:メトトレキサート併用下)を実施した。主要評価時点である投与後3ヵ月時のACR20%改善率(ACR20)、ACR50%改善率(ACR50)及びACR70%改善率(ACR70)は次のとおりであった。本剤5mg群はプラセボ群と比較して、症状・徴候の改善効果の指標であるACR20について統計的な有意差が認められた(p<0.05)。
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安全性解析対象136例において、少なくとも1件以上の有害事象が発現した被験者は、5mgBID群:19/27例(70.4%)、10mgBID群:20/26例(76.9%)、プラセボ群:11/28例(39.3%)で、そのうち因果関係を否定できない有害事象(副作用)と判断されたのは、それぞれ17例(63.0%)、19例(73.1%)、8例(28.6%)であった。本剤群において高頻度で発現した有害事象は、アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加、鼻咽頭炎、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、血中コレステロール増加、血中トリグリセリド増加、低比重リポ蛋白増加で、ほとんどが軽度又は中等度であった。
17.1.2 国内第II相二重盲検比較試験(単剤、A3921040試験)
1剤以上のDMARDで効果不十分な日本人活動性関節リウマチ患者317例を対象に、3ヵ月間のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(本剤1、3、5、10、15mg1日2回投与注1)もしくはプラセボ)を実施した。主要評価時点である投与後3ヵ月時のACR20、ACR50及びACR70は次のとおりであった。本剤5mg群はプラセボ群と比較して、ACR20について統計的な有意差が認められた(p<0.05)。
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安全性解析対象317例において、少なくとも1件以上の有害事象が発現した被験者は、1mgBID群:21/53例(39.6%)、3mgBID群:23/53例(43.4%)、5mgBID群:29/52例(55.8%)、10mgBID群:32/53例(60.4%)、15mgBID群:28/54例(51.9%)、プラセボ群:23/52例(44.2%)で、そのうち副作用と判断されたのは、それぞれ18例(34.0%)、19例(35.8%)、24例(46.2%)、28例(52.8%)、25例(46.3%)、20例(38.5%)であった。本剤群で多く認められた副作用は器官別大分類では、「感染症および寄生虫症」及び「胃腸障害」に分類されるもので、また高頻度(発現割合10%以上)にみられた副作用は鼻咽頭炎、高脂血症であった。
17.1.3 外国第II相二重盲検比較試験(単剤、A3921035試験)
1剤以上のDMARDで効果不十分な外国人活動性関節リウマチ患者384例を対象に、6ヵ月間のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(本剤1、3、5、10、15mg1日2回投与注1)、アダリムマブ40mg隔週投与もしくはプラセボ)を実施した。主要評価時点である投与後3ヵ月時のACR20、ACR50及びACR70は次のとおりであった。本剤5mg群はプラセボ群と比較して、ACR20について統計的な有意差が認められた(p<0.05)。
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安全性解析対象384例において、投与開始から3ヵ月時までに発現した有害事象及び副作用の発現率は10及び15mgBID群で最も高く、他の投与群の有害事象発現率はプラセボ群と同程度であった。本剤群で認められた副作用は、器官別大分類では「胃腸障害」(下痢など)及び「感染症および寄生虫症」(気管支炎、尿路感染など)に分類されるものが最も多かった。
17.1.4 外国第III相二重盲検比較試験(メトトレキサート併用、A3921032試験)
TNF阻害剤で効果不十分な外国人活動性関節リウマチ患者399例を対象に、6ヵ月間のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(本剤5、10mg1日2回投与注1)もしくはプラセボ:メトトレキサート併用下)を実施した。主要評価時点である投与後3ヵ月時のACR20、ACR50及びACR70は次のとおりであった。本剤5mg群はプラセボ群と比較して、ACR20について統計的な有意差が認められた(p<0.05)。
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投与開始から3ヵ月時までに発現した有害事象は本剤5mgBID群で53.4%(71/133例)、10mgBID群56.7%(76/134例)、プラセボ群で56.8%(75/132例)で、そのうち因果関係を否定できない有害事象(副作用)の発現割合は本剤5mgBID群で25.6%(34/133例)、10mgBID群で32.8%(44/134例)、プラセボ群で19.7%(26/132例)であった。本剤群で高頻度で発現した有害事象は器官別大分類で「感染症および寄生虫症」、「胃腸障害」及び「筋骨格系および結合組織障害」に分類されるもので、投与群間で発現割合は同程度であった。副作用では「感染症および寄生虫症」、「胃腸障害」に分類されるものであった。
17.1.5 外国第III相二重盲検比較試験(単剤、A3921045試験)
1剤以上のDMARDで効果不十分な外国人活動性関節リウマチ患者610例を対象に、6ヵ月間のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(本剤5、10mg1日2回投与注1)もしくはプラセボ)を実施した。主要評価時点である投与後3ヵ月時のACR20、ACR50及びACR70は次のとおりであった。本剤5mg群はプラセボ群と比較して、ACR20について統計的な有意差が認められた(p<0.05)。
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投与開始から3ヵ月時までに発現した有害事象は本剤5mgBID群で51.0%(124/243例)、10mgBID群56.7%(139/245例)、プラセボ群で54.9%(67/122例)で、そのうち因果関係を否定できない有害事象(副作用)の発現割合は本剤5mgBID群で25.9%(63/243例)、10mgBID群で31.4%(77/245例)、プラセボ群で27.0%(33/122例)であった。本剤群で高頻度で発現した有害事象及び副作用とも、器官別大分類で「胃腸障害」、「感染症および寄生虫症」及び「神経系障害」に分類されるもので、そのうち発現割合が5%を超える有害事象は5mgBID群の頭痛のみであった。
17.1.6 外国第III相二重盲検比較試験(DMARD併用、A3921046試験)
1剤以上のDMARDで効果不十分な外国人活動性関節リウマチ患者792例を対象に、12ヵ月間のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(本剤5、10mg1日2回投与注1)もしくはプラセボ:DMARD併用下)を実施した。主要評価時点である投与後6ヵ月時のACR20、ACR50及びACR70は次のとおりであった。本剤5mg群はプラセボ群と比較して、ACR20について統計的な有意差が認められた(p<0.05)。
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投与開始から3ヵ月時までに発現した有害事象は本剤5mgBID群で52.7%(166/315例)、10mgBID群54.4%(173/318例)、プラセボ群で61.0%(97/159例)で、そのうち因果関係を否定できない有害事象(副作用)の発現割合は本剤5mgBID群で35.2%(111/315例)、10mgBID群で35.8%(114/318例)、プラセボ群で31.4%(50/159例)であった。本剤群で高頻度で発現した副作用は器官別大分類で「胃腸障害」及び「感染症および寄生虫症」であった。高頻度で発現した有害事象は、本剤5mgBID群では上気道感染(315例中19例、6.0%)、鼻咽頭炎(315例中16例、5.1%)及び下痢(315例中14例、4.4%)で、本剤10mgBID群では上気道感染(318例中23例、7.2%)、頭痛及び下痢(各318例中10例、3.1%)であった。
17.1.7 外国第III相二重盲検比較試験(メトトレキサート併用、A3921064試験)
メトトレキサートで効果不十分な外国人活動性関節リウマチ患者717例を対象に、12ヵ月間のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(本剤5、10mg1日2回投与注1)、アダリムマブ40mg隔週投与もしくはプラセボ:メトトレキサート併用下)を実施した。主要評価時点である投与後6ヵ月時のACR20、ACR50及びACR70は次のとおりであった。本剤5mg群はプラセボ群と比較して、ACR20について統計的な有意差が認められた(p<0.05)。
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投与開始から3ヵ月時までに発現した有害事象は本剤5mgBID群で52.0%(106/204例)、10mgBID群46.8%(94/201例)、プラセボ群47.2%(51/108例)、アダリムマブ群51.5%(105/204例)で、そのうち因果関係を否定できない有害事象(副作用)の発現割合は本剤5mgBID群で32.4%(66/204例)、10mgBID群26.4%(53/201例)、プラセボ群17.6%(19/108例)、アダリムマブ群26.5%(54/204例)であった。本剤群で高頻度で発現した副作用は器官別大分類で「胃腸障害」及び「感染症および寄生虫症」であり、本剤5mgBID群では、上気道感染、頭痛、鼻咽頭炎、下痢及び尿路感染(いずれも5%未満)、本剤10mgBID群では上気道感染(3.5%)、頭痛、帯状疱疹及び高血圧(いずれも3.0%)であった。
17.1.8 国際共同試験
メトトレキサートで効果不十分な活動性関節リウマチ患者(全集団797例、うち日本人118例を含む)を対象に、2年間のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(本剤5、10mg1日2回投与注1)もしくはプラセボ:メトトレキサート併用下)を実施した。全体及び日本人集団の本剤5mg1日2回投与群及びプラセボ群における投与後6ヵ月時のACR20、ACR50、ACR70及び手足のX線スコア(van der Heijde Modified Total Sharp Score;mTSS)のベースラインからの平均変化量を表に示す。試験全体集団の本剤5mg1日2回投与群はプラセボ群と比較して、ACR20について統計的な有意差が認められ(p<0.0001)、関節破壊進展防止効果の指標であるmTSSのベースラインからの平均変化量については統計的な有意差は認められなかった(p=0.0792)。
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安全性解析対象797例(日本人118例を含む)において、投与開始から3ヵ月時までに少なくとも1件以上の有害事象が発現した被験者は、本剤5mgBID群:157/321例(48.9%)、10mgBID群:171/316例(54.1%)、プラセボ群:73/160例(45.6%)であった。そのうち副作用と判断されたのは、それぞれ98例(30.5%)、105例(33.2%)、41例(25.6%)であった。本剤群で多く認められた有害事象は器官別大分類では「感染症および寄生虫症」、「胃腸障害」、「臨床検査」及び「神経系障害」で、高頻度にみられた有害事象は5mgBID群では頭痛5.6%(18/321例)及び鼻咽頭炎4.4%(14/321例)、10mgBID群では鼻咽頭炎4.1%(13/316例)及び咳嗽2.8%(9/316例)であった。
注1)本剤の関節リウマチにおける承認用法・用量は、トファシチニブとして5mg1日2回経口投与である。
〈潰瘍性大腸炎〉
17.1.9 国際共同試験(寛解導入試験:A3921094試験)
前治療(ステロイド、アザチオプリン又は6‐メルカプトプリン、あるいはTNF阻害剤)の少なくとも1つの治療に対して効果不十分又は忍容性不良の中等症から重症の活動期にある日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者注2)(全体598例、うち日本人62例を含む)を対象として実施された比較試験において、主要評価項目である8週時の寛解率は、試験全体で本剤1回10mg、1日2回投与群がプラセボ投与群と比較して有意に高かった。また、日本人においても全体と同様の傾向がみられた。
表 8週時の寛解率(中央読影機関による読影)
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有害事象(治験薬と関連あり)の発現割合について、全体では本剤10mgBID群で30.3%(144/476例)、プラセボ群全体で26.2%(32/122例)であった。有害事象の重症度は主に軽度又は中等度であった。
本剤群で最も多くみられた有害事象は、器官別大分類で「感染症および寄生虫症」及び「胃腸障害」であった。
着目すべき有害事象(重篤な感染症、帯状疱疹、主要な心血管系事象、悪性腫瘍、消化管穿孔)については、本剤10mgBID群の6例(1.3%)に、重篤な感染症(肛門膿瘍、蜂巣炎、クロストリジウム・ディフィシレ感染、熱性感染症外耳炎及び肺炎)が認められた。このうち、日和見感染と判定された事象はなかった。本試験期間中に、帯状疱疹が認められ、本剤10mgBID群は3例(0.6%)であった。
注2)本剤1回15mg、1日2回投与群の16例(日本人3例を含む)は有効性の解析から除外した。
17.1.10 国際共同試験(寛解維持試験:A3921096試験)
寛解導入試験(A3921094試験又はA3921095試験)のいずれか1試験を完了し、臨床反応(ベースライン時に比べMayoスコアの3点以上かつ30%以上の低下があり、Mayoスコアの直腸出血サブスコアの1点以上の低下又はMayoスコアの直腸出血サブスコアの絶対値が0点又は1点と定義した)が認められた日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者(全体は、本剤1回5mg、1日2回投与群198例、1回10mg、1日2回投与群197例、プラセボ投与群198例であり、うち日本人は、本剤1回5mg、1日2回投与群16例、1回10mg、1日2回投与群12例、プラセボ投与群11例を含む)を対象として実施された比較試験において、主要評価項目である52週時の寛解率は、全体の結果において、本剤1回5mg、1日2回投与群、1回10mg、1日2回投与群ともにプラセボ投与群と比較して、統計的に有意に高かった。また、日本人においても全体と同様の傾向がみられた。
表 52週時の寛解率(中央読影機関による読影)
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寛解維持試験(A3921096試験)の52週時の寛解率について、TNF阻害剤無効例以外の被験者において、本剤1回5mg、1日2回投与群及び1回10mg、1日2回投与群で同様であった。一方、TNF阻害剤無効例において、本剤1回10mg、1日2回投与群の治療効果は1回5mg、1日2回投与群に比べ高かった。
表 52週時の寛解率(TNF阻害剤無効の有無別、中央読影機関による読影)
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有害事象の発現割合は、全体では、本剤5mgBID群で72.2%(143/198例)、10mgBID群で79.6%(156/196例注3))、プラセボ群で75.3%(149/198例)であった。本剤群で発現割合の高かった有害事象は、器官別大分類で「感染症および寄生虫症」及び「胃腸障害」であった。
注3)本剤10mgBID群に組み入れられた197例中1例は治験薬の投与を受けなかったため、安全性の解析から除外した。
17.3 その他
17.3.1 外国市販後臨床試験(A3921133試験)
心血管系事象のリスク因子(喫煙、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の既往等)を1つ以上有する50歳以上の外国人関節リウマチ患者4362例を対象に、本剤(5、10mg1日2回投与注1))又はTNF阻害剤投与後の安全性を検討する非盲検無作為化並行群間比較試験を実施した。
主要評価項目である主要な心血管系事象注2)(Major Adverse Cardiovascular Events :MACE)及び悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率は、いずれもTNF阻害剤群に対する非劣性が検証されなかった。
表 主要な心血管系事象(MACE)の発現率
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表 悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率
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また、肺塞栓症、深部静脈血栓症及び総死亡の発現率は、次のとおりであった。[1.1、5.1、8.2、9.1.10、11.1.6-11.1.8参照]
表 肺塞栓症及び深部静脈血栓症の発現率
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表 総死亡の発現率
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注1)本剤の関節リウマチにおける承認用法・用量は、トファシチニブとして5mg1日2回経口投与である。
注2)本試験のMACEの定義は次のとおりであった。
・心血管死:致死的な急性心筋梗塞、心突然死、致死的な心不全、致死的な脳卒中、致死的な心血管処置、致死的な心血管出血、その他の心血管関連死(末梢動脈疾患)
・非致死的な心筋梗塞
・非致死的な脳卒中(虚血又は出血性の新たな画像所見が認められる可逆的な限局性神経欠損を含む)
18.1 作用機序
トファシチニブは、JAKファミリーの強力な阻害薬であり、ヒトのキナーゼ群の中で高い選択性を示す。トファシチニブは、キナーゼアッセイでJAK1、JAK2、JAK3を阻害し、TyK2も軽度に阻害する。細胞内では2分子のJAKが介在してシグナル伝達が行われるが、トファシチニブはJAK3又はJAK1に会合するヘテロ二量体受容体によるシグナル伝達を強力に阻害し、その機能的選択性はJAK2に会合するホモ二量体受容体によるシグナル伝達に対する阻害よりも高い。JAK1及びJAK3の阻害により、IL‐2、IL‐4、IL‐7、IL‐9、IL‐15及びIL‐21を含む数種類の共通のγ鎖を有するサイトカイン受容体を介したシグナル伝達が遮断される。これらのサイトカインは、リンパ球の活性化、増殖及び機能発現に不可欠であることから、これらのシグナル伝達の阻害により免疫反応を様々な形で抑制できると考えられる。また、JAK1に対する阻害作用により、IL‐6やI型IFNなど他の炎症誘発性サイトカインを介したシグナル伝達も抑制すると考えられる。より高用量では、JAK2ホモ二量体シグナル伝達の抑制を介したエリスロポエチンのシグナル伝達の抑制が生じる可能性がある。
- 一包可:不可
- 分割:不可
- 粉砕:不明
- 製造販売会社
- ファイザー
- 販売会社
おくすりのQ&A
当該製品の添付文書では、効能又は効果として、『次の疾患で、他の緑内障治療薬が効果不十分又は使用できない場合:緑内障、高眼圧症』と記載されています。...
添付文書内の「有効性安全性」の正確な意味を教えてください。どのような条件ならば有効性があるとするのか、安全性があるというのかをその基準を教えて欲しいのです
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