オルミエント錠1mg
添付文書情報2024年08月改定(第10版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 1.1. 〈効能共通〉本剤投与により、結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染等による重篤な感染症の新たな発現もしくは重篤な感染症悪化等が報告されており、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現も報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、重篤な感染症の新たな発現もしくは悪化等が報告され、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現も報告されていることを患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
また、本剤投与により重篤な副作用が発現し、致死的な経過をたどった症例が報告されているので、緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師が使用すること。また、本剤投与後に有害事象が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること〔1.2.1、1.2.2、2.2、2.5、8.1、8.2、9.1.1-9.1.3、11.1.1、15.1.1-15.1.3参照〕。
1.2. 〈効能共通〉感染症1.2.1. 〈効能共通〉重篤な感染症:敗血症、肺炎、真菌感染症を含む日和見感染症等の致死的感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発現に注意すること〔1.1、2.5、8.1、9.1.1、9.1.3、11.1.1、15.1.1参照〕。
1.2.2. 〈効能共通〉結核:播種性結核(粟粒結核)及び肺外結核(脊椎結核、リンパ節結核等)を含む結核が報告されている。結核の既感染者では症状の顕在化及び悪化のおそれがあるため、本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する患者及び結核の感染が疑われる患者には、結核等の感染症について診療経験を有する医師と連携の下、原則として本剤投与前に適切な抗結核薬を投与すること。ツベルクリン反応検査等の検査が陰性の患者において、投与後活動性結核が認められた例も報告されている〔1.1、2.2、8.2、9.1.2、11.1.1参照〕。
1.3. 〈効能共通〉本剤についての十分な知識と適応疾患の治療の知識・経験をもつ医師が使用すること。
1.4. 〈関節リウマチ、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること。
- 禁忌
- 2.1. 〈効能共通〉本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 〈効能共通〉活動性結核の患者[症状が悪化するおそれがある]〔1.1、1.2.2、8.2、9.1.2、11.1.1参照〕。
2.3. 〈効能共通〉好中球数が500/mm3未満の患者〔8.3、9.1.9、11.1.3参照〕。
2.4. 〈効能共通〉妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。
2.5. 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、円形脱毛症〉関節リウマチで重篤な感染症、アトピー性皮膚炎で重篤な感染症、若年性特発性関節炎で重篤な感染症、円形脱毛症で重篤な感染症(関節リウマチで敗血症、アトピー性皮膚炎で敗血症、若年性特発性関節炎で敗血症、円形脱毛症で敗血症等)の患者[症状が悪化するおそれがある]〔1.1、1.2.1、8.1、9.1.1、9.1.3、11.1.1、15.1.1参照〕。
2.6. 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、円形脱毛症〉関節リウマチで重度腎機能障害、アトピー性皮膚炎で重度腎機能障害、若年性特発性関節炎で重度腎機能障害、円形脱毛症で重度腎機能障害を有する患者〔7.3、7.12、9.2.1、16.6.1参照〕。
2.7. 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、円形脱毛症〉関節リウマチでリンパ球数が500/mm3未満、アトピー性皮膚炎でリンパ球数が500/mm3未満、若年性特発性関節炎でリンパ球数が500/mm3未満、円形脱毛症でリンパ球数が500/mm3未満の患者〔8.3、9.1.10、11.1.3参照〕。
2.8. 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、円形脱毛症〉関節リウマチでヘモグロビン値が8g/dL未満、アトピー性皮膚炎でヘモグロビン値が8g/dL未満、若年性特発性関節炎でヘモグロビン値が8g/dL未満、円形脱毛症でヘモグロビン値が8g/dL未満の患者〔8.3、9.1.11、11.1.3参照〕。
2.9. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉SARS-CoV-2による肺炎で透析患者又はSARS-CoV-2による肺炎で末期腎不全(SARS-CoV-2による肺炎でeGFRが15mL/分/1.73㎡未満)の患者〔7.8、9.2.2、16.6.1参照〕。
2.10. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉SARS-CoV-2による肺炎でリンパ球数が200/mm3未満の患者〔8.3、9.1.10、11.1.3参照〕。
- 効能・効果
- 1). 既存治療で効果不十分な次記疾患:①関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、②*アトピー性皮膚炎、③多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎。
2). SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)。
3). 円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)。
*)最適使用推進ガイドライン対象。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 〈関節リウマチ〉過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること。
5.2. 〈アトピー性皮膚炎〉ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に用いること〔17.1.6-17.1.9参照〕。
5.3. 〈アトピー性皮膚炎〉原則として、本剤投与時にはアトピー性皮膚炎の病変部位の状態に応じて抗炎症外用剤を併用すること。
5.4. 〈アトピー性皮膚炎〉アトピー性皮膚炎の場合、本剤投与時も保湿外用剤を継続使用すること。
5.5. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉酸素吸入、人工呼吸管理又は体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと〔17.1.10参照〕。
5.6. 〈円形脱毛症〉本剤投与開始時に、頭部全体の概ね50%以上に脱毛が認められ、過去6ヵ月程度毛髪に自然再生が認められない患者に投与すること〔17.1.11、17.1.12参照〕。
5.7. 〈円形脱毛症〉円形脱毛症以外の脱毛症に対する適応はない。
5.8. 〈多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉過去の治療において、少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること。
5.9. 〈多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉若年性特発性関節炎のうち全身型若年性特発性関節炎に対する有効性及び安全性は確立していないため、投与しないこと。
- 用法・用量
- 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人)、円形脱毛症〉
通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。
〈アトピー性皮膚炎(小児)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉
通常、2歳以上の患者には体重に応じバリシチニブとして次の投与量を1日1回経口投与する。
・ 30kg以上:通常、4mgとし、患者の状態に応じて2mgに減量すること。
・ 30kg未満:通常、2mgとし、患者の状態に応じて1mgに減量すること。
〈SARS-CoV-2による肺炎〉
通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、SARS-CoV-2による肺炎の場合、総投与期間は14日間までとする。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎<成人>、SARS-CoV-2による肺炎、円形脱毛症〉プロベネシド併用時には本剤を2mg1日1回に減量するなど用量に注意すること〔10.2、16.7.1参照〕。
7.2. 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎<成人>、円形脱毛症〉本剤4mg1日1回投与で治療効果が認められた際には、本剤2mg1日1回投与への減量を検討すること〔17.1.3-17.1.8、17.1.11、17.1.12参照〕。
7.3. 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人)、円形脱毛症〉中等度の腎機能障害のある患者には、2mgを1日1回経口投与する〔2.6、9.2.1、9.2.4、9.2.6、16.6.1参照〕。
1). 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人)、円形脱毛症〉正常又は関節リウマチで軽度腎機能障害、アトピー性皮膚炎<成人>で軽度腎機能障害、円形脱毛症で軽度腎機能障害(関節リウマチでeGFR≧60mL/分/1.73㎡、アトピー性皮膚炎<成人>でeGFR≧60mL/分/1.73㎡、円形脱毛症でeGFR≧60mL/分/1.73㎡):4mgを1日1回投与。
2). 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人)、円形脱毛症〉関節リウマチで中等度腎機能障害、アトピー性皮膚炎<成人>で中等度腎機能障害、円形脱毛症で中等度腎機能障害(関節リウマチで30≦eGFR<60mL/分/1.73㎡、アトピー性皮膚炎<成人>で30≦eGFR<60mL/分/1.73㎡、円形脱毛症で30≦eGFR<60mL/分/1.73㎡):2mgを1日1回投与。
3). 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人)、円形脱毛症〉関節リウマチで重度腎機能障害、アトピー性皮膚炎で重度腎機能障害、円形脱毛症で重度腎機能障害(関節リウマチでeGFR<30mL/分/1.73㎡、アトピー性皮膚炎でeGFR<30mL/分/1.73㎡、円形脱毛症でeGFR<30mL/分/1.73㎡):投与しない。
eGFR:推算糸球体ろ過量。
7.4. 〈関節リウマチ、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉免疫抑制作用が増強されると感染症のリスクが増加することが予想されるので、本剤と抗リウマチ生物製剤や他の経口ヤヌスキナーゼ<JAK>阻害剤との併用はしないこと(本剤とこれらの薬剤との併用経験はない)。
7.5. 〈アトピー性皮膚炎、円形脱毛症〉免疫抑制作用が増強されると感染症のリスクが増加することが予想されるので、本剤と免疫調整生物製剤、他の経口JAK阻害剤、シクロスポリン等の強力な免疫抑制剤<感染症のリスクが増加>との併用はしないこと(本剤とこれらの薬剤との併用経験はない)。
7.6. 〈アトピー性皮膚炎〉本剤による治療反応は、通常投与開始から8週までには得られるため、8週までに治療反応が得られない場合は、投与中止を考慮すること。
7.7. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉SARS-CoV-2による肺炎に対するレムデシビル以外の薬剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
7.8. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉中等度の腎機能障害のある患者には、2mgを1日1回経口投与する。重度の腎機能障害(15≦eGFR<30mL/分/1.73㎡)がある患者に対して治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、次を参考に投与することができる〔2.9、9.2.2-9.2.4、9.2.6、16.6.1参照〕。
1). 〈SARS-CoV-2による肺炎〉正常又はSARS-CoV-2による肺炎で軽度腎機能障害(SARS-CoV-2による肺炎でeGFR≧60mL/分/1.73㎡):4mgを1日1回投与。
2). 〈SARS-CoV-2による肺炎〉SARS-CoV-2による肺炎で中等度腎機能障害(SARS-CoV-2による肺炎で30≦eGFR<60mL/分/1.73㎡):2mgを1日1回投与。
3). 〈SARS-CoV-2による肺炎〉重度腎機能障害
①. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉SARS-CoV-2による肺炎で15≦eGFR<30mL/分/1.73㎡:2mgを48時間ごとに1回投与(投与回数は最大7回)。
②. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉SARS-CoV-2による肺炎でeGFR<15mL/分/1.73㎡:投与しない。
eGFR:推算糸球体ろ過量。
7.9. 〈円形脱毛症〉本剤による治療反応は、通常投与開始から36週までには得られるため、36週までに治療反応が得られない場合は、投与中止を考慮すること。
7.10. 〈アトピー性皮膚炎<小児>、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉体重30kg以上の場合に本剤4mg1日1回、体重30kg未満の場合に本剤2mg1日1回投与で治療効果が認められた際には、体重30kg以上の場合は本剤2mg1日1回、体重30kg未満の場合は本剤1mg1日1回投与への減量を検討すること。
7.11. 〈アトピー性皮膚炎<小児>、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉プロベネシド併用時には体重30kg以上の場合は本剤を2mg1日1回に、体重30kg未満の場合は本剤を1mg1日1回に減量するなど用量に注意すること〔10.2、16.7.1参照〕。
7.12. 〈アトピー性皮膚炎(小児)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉中等度の腎機能障害のある患者には、体重30kg以上の場合は2mgを、体重30kg未満の場合は1mgを1日1回経口投与する〔2.6、9.2.1、9.2.5、9.2.6、16.6.1参照〕。
1). 〈アトピー性皮膚炎(小児)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉正常又はアトピー性皮膚炎<小児>で軽度腎機能障害、若年性特発性関節炎で軽度腎機能障害(アトピー性皮膚炎<小児>でeGFR≧60mL/分/1.73㎡、若年性特発性関節炎でeGFR≧60mL/分/1.73㎡);体重30kg以上:4mgを1日1回投与、体重30kg未満:2mgを1日1回投与。
2). 〈アトピー性皮膚炎(小児)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉アトピー性皮膚炎<小児>で中等度腎機能障害、若年性特発性関節炎で中等度腎機能障害(アトピー性皮膚炎<小児>で30≦eGFR<60mL/分/1.73㎡、若年性特発性関節炎で30≦eGFR<60mL/分/1.73㎡);体重30kg以上:2mgを1日1回投与、体重30kg未満:1mgを1日1回投与。
3). 〈アトピー性皮膚炎(小児)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉アトピー性皮膚炎で重度腎機能障害、若年性特発性関節炎で重度腎機能障害(アトピー性皮膚炎でeGFR<30mL/分/1.73㎡、若年性特発性関節炎でeGFR<30mL/分/1.73㎡):投与しない。
eGFR:推算糸球体ろ過量。
- 生殖能を有する者
- 8.1. 〈効能共通〉本剤は、免疫反応に関与するJAKファミリーを阻害するので、感染症に対する宿主免疫能に影響を及ぼす可能性があり、本剤の投与に際しては十分な観察を行い、感染症の発現や感染症増悪に注意すること。また、患者に対し、発熱、倦怠感等があらわれた場合には、速やかに主治医に相談するよう指導すること〔1.1、1.2.1、2.5、9.1.1、9.1.3参照〕。
8.2. 〈効能共通〉本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。本剤投与中は胸部X線検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核の発現には十分に注意すること。患者に対し、結核を疑う症状が発現した場合(持続する咳、発熱等)には速やかに主治医に連絡するよう説明すること〔1.1、1.2.2、2.2、9.1.2参照〕。
8.3. 〈効能共通〉好中球減少、リンパ球減少及びヘモグロビン減少があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に好中球数、リンパ球数及びヘモグロビン値を確認すること〔2.3、2.7、2.8、2.10、9.1.9-9.1.11、11.1.3参照〕。
8.4. 〈効能共通〉ヘルペスウイルス再活性化を含むウイルス再活性化(帯状疱疹等)が報告されている。また、日本人関節リウマチ患者で認められた重篤な感染症のうち多くが重篤な帯状疱疹であったこと、播種性帯状疱疹も認められていることから、ヘルペスウイルス再活性化等の徴候や症状の発現に注意すること(ヘルペスウイルス等の再活性化の徴候や症状の発現が認められた場合には、患者に受診するよう説明し、本剤の投与を中断し速やかに適切な処置を行うこと)。また、ヘルペスウイルス以外のウイルス再活性化にも注意すること〔11.1.1参照〕。
8.5. 〈効能共通〉抗リウマチ生物製剤によるB型肝炎ウイルス再活性化が報告されているので、本剤投与に先立って、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること〔9.1.7参照〕。
8.6. 〈効能共通〉感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと。
8.7. 〈効能共通〉総コレステロール上昇、LDLコレステロール上昇、HDLコレステロール上昇及びトリグリセリド上昇等の脂質検査値異常があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に脂質検査値を確認すること(臨床上必要と認められた場合には、脂質異常症治療薬の投与等の適切な処置を考慮すること)。
8.8. 〈効能共通〉トランスアミナーゼ値上昇があらわれることがあるので、本剤投与中は、観察を十分に行うこと。トランスアミナーゼ値が基準値上限の5~10倍以上に上昇した症例も報告されている〔9.3肝機能障害患者の項、11.1.4参照〕。
8.9. 〈効能共通〉悪性リンパ腫、固形癌等の悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤との因果関係は明らかではないが、悪性腫瘍の発現には注意すること〔15.1.2、15.1.3参照〕。
8.10. 〈アトピー性皮膚炎〉アトピー性皮膚炎の場合、本剤が疾病を完治させる薬剤でなく、本剤投与中も保湿外用剤等を併用する必要があることを患者に対して説明し、患者が理解したことを確認したうえで投与すること。
8.11. 〈アトピー性皮膚炎〉本剤は免疫抑制作用を有することから、皮膚バリア機能が低下しているアトピー性皮膚炎患者への投与に際しては十分な観察を行い、皮膚感染症の発現に注意すること(アトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験において重篤な皮膚感染症が報告されている)。
8.12. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉本剤投与時には、やむを得ない場合を除き、抗凝固薬の投与等による血栓塞栓予防を行うこと〔11.1.6参照〕。
8.13. 〈円形脱毛症〉円形脱毛症の場合、本剤が疾病を完治させる薬剤でないことを患者に対して説明し、患者が理解したことを確認したうえで投与すること。
9.1.1. 感染症<重篤な感染症・SARS-CoV-2による肺炎を除く>(関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎又は円形脱毛症の場合は重篤な感染症、SARS-CoV-2による肺炎の場合はSARS-CoV-2による肺炎を除く)の患者又は感染症が疑われる患者〔1.1、1.2.1、2.5、8.1、11.1.1参照〕。
9.1.2. 結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)又は結核感染が疑われる患者。
(1). 結核の既感染者では、結核を活動化させるおそれがある〔1.1、1.2.2、2.2、8.2、11.1.1参照〕。
(2). 結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。次のいずれかの患者には、原則として本剤投与前に適切な抗結核薬を投与すること〔1.1、1.2.2、2.2、8.2、11.1.1参照〕[1)胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者、2)結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者、3)インターフェロンγ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により、結核既感染が強く疑われる患者、4)結核患者との濃厚接触歴を有する患者]。
9.1.3. 易感染性の状態にある患者:感染症を発現するリスクが高い〔1.1、1.2.1、2.5、8.1、11.1.1参照〕。
9.1.4. 腸管憩室のある患者:消化管穿孔があらわれるおそれがある〔11.1.2参照〕。
9.1.5. 間質性肺炎の既往歴のある患者:定期的に問診を行うなど、注意すること(間質性肺炎があらわれるおそれがある)〔11.1.5参照〕。
9.1.6. 静脈血栓塞栓症のリスクを有する患者〔11.1.6参照〕。
9.1.7. B型肝炎ウイルスキャリアの患者又はB型肝炎既往感染者(HBs抗原陰性かつHBc抗体陽性又はHBs抗原陰性かつHBs抗体陽性):肝機能検査値やHBVDNAのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。抗リウマチ生物製剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている。なお、活動性B型肝炎の患者は臨床試験では除外されている〔8.5参照〕。
9.1.8. C型肝炎患者:臨床試験では除外されている。
9.1.9. 好中球減少(好中球数500/mm3未満を除く)のある患者:好中球数が低い<好中球数500/mm3未満を除く1000/mm3未満>患者については投与を開始しないことが望ましい(好中球減少が更に悪化するおそれがある)〔2.3、8.3、11.1.3、17.1.10参照〕。
9.1.10. 関節リウマチでリンパ球減少<500/mm3未満を除く>、アトピー性皮膚炎でリンパ球減少<500/mm3未満を除く>、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎でリンパ球減少<500/mm3未満を除く>又は円形脱毛症でリンパ球減少<500/mm3未満を除く>、SARS-CoV-2による肺炎でリンパ球減少<200/mm3未満を除く>のある患者:リンパ球減少が更に悪化するおそれがある〔2.7、2.10、8.3、11.1.3、17.1.10参照〕。
9.1.11. 関節リウマチでヘモグロビン値減少<8g/dL未満を除く>、アトピー性皮膚炎でヘモグロビン値減少<8g/dL未満を除く>、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎でヘモグロビン値減少<8g/dL未満を除く>又は円形脱毛症でヘモグロビン値減少<8g/dL未満を除く>のある患者:ヘモグロビン減少が更に悪化するおそれがある〔2.8、8.3、11.1.3参照〕。
9.2.1. 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、円形脱毛症〉関節リウマチで重度腎機能障害、アトピー性皮膚炎で重度腎機能障害、若年性特発性関節炎で重度腎機能障害、円形脱毛症で重度腎機能障害患者:投与しないこと(腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加するため、副作用が強くあらわれるおそれがある)〔2.6、7.3、7.12、16.6.1参照〕。
9.2.2. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉SARS-CoV-2による肺炎で透析患者又はSARS-CoV-2による肺炎で末期腎不全(SARS-CoV-2による肺炎でeGFRが15mL/分/1.73㎡未満)の患者:投与しないこと(腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加するため、副作用が強くあらわれるおそれがある)〔2.9、7.8、16.6.1参照〕。
9.2.3. 〈SARS-CoV-2による肺炎〉SARS-CoV-2による肺炎で重度腎機能障害<透析・末期腎不全を除く>患者:重度の腎機能障害(SARS-CoV-2による肺炎で15≦eGFR<30mL/分/1.73㎡)がある患者に対して治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、2mgを48時間ごとに投与することができる(本剤投与中は、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与すること、腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加するため、副作用が強くあらわれるおそれがある)〔7.8、16.6.1参照〕。
9.2.4. 〈関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人)、SARS-CoV-2による肺炎、円形脱毛症〉関節リウマチで中等度腎機能障害、アトピー性皮膚炎<成人>で中等度腎機能障害、SARS-CoV-2による肺炎で中等度腎機能障害、円形脱毛症で中等度腎機能障害患者:2mg1日1回投与に減量し、慎重に投与すること(腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加するため、副作用が強くあらわれるおそれがある)〔7.3、7.8、16.6.1参照〕。
9.2.5. 〈アトピー性皮膚炎(小児)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉アトピー性皮膚炎<小児>で中等度腎機能障害、若年性特発性関節炎で中等度腎機能障害患者:体重30kg以上の場合は2mg1日1回に、体重30kg未満の場合は1mg1日1回に減量し、慎重に投与すること(腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加するため、副作用が強くあらわれるおそれがある)〔7.12、16.6.1参照〕。
9.2.6. 〈効能共通〉軽度腎機能障害患者:腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加するため、副作用が強くあらわれるおそれがある〔7.3、7.8、7.12、16.6.1参照〕。
肝機能障害患者:副作用が強くあらわれるおそれがある。重度肝機能障害を有する患者は臨床試験で除外されている〔8.8、11.1.4参照〕。
妊娠可能な女性:妊娠可能な女性には、本剤投与中及び本剤投与終了後少なくとも1月経周期は適切な避妊を行うよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
- 相互作用
- 10.2. 併用注意:プロベネシド〔7.1、7.11、16.7.1参照〕[本剤の血中濃度が上昇する可能性があり、本剤とプロベネシド併用時に本剤のAUCが2倍に増加したので、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人)、SARS-CoV-2による肺炎及び円形脱毛症患者では2mg1日1回投与、アトピー性皮膚炎(小児)及び多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者では体重に応じて規定された投与量を半量に減量するなど、用量に注意すること(OAT3を阻害することにより本剤の血中濃度が上昇する可能性がある)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 感染症:帯状疱疹(2.6%)、肺炎(0.6%)、ニューモシスティス肺炎(0.1%未満)、敗血症(0.1%未満)、結核(0.1%未満)等の重篤な感染症(日和見感染症を含む)があらわれ、致死的経過をたどることがあるので、本剤投与中に重篤な感染症を発現した場合は、感染症がコントロールできるようになるまでは投与を中止すること〔1.1、1.2.1、1.2.2、2.2、2.5、8.4、9.1.1-9.1.3参照〕。
11.1.2. 消化管穿孔(0.1%未満):異常が認められた場合には投与を中止するとともに、腹部X線、CT等の検査を実施するなど十分に観察し、適切な処置を行うこと〔9.1.4参照〕。
11.1.3. 好中球減少(0.9%)、リンパ球減少(1.1%)、ヘモグロビン減少(0.1%)。
好中球数:本剤投与開始後、好中球数が継続して500~1000/mm3である場合は、1000/mm3を超えるまでは本剤の投与を中断すること。
リンパ球数:本剤投与開始後、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎又は円形脱毛症患者ではリンパ球数が500/mm3未満、SARS-CoV-2による肺炎患者ではリンパ球数が200/mm3未満になった場合には、本剤の投与を中断すること。
ヘモグロビン値:関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎又は円形脱毛症患者において、本剤投与開始後、ヘモグロビン値が8g/dL未満になった場合には、正常化するまで本剤の投与を中断すること。
〔2.3、2.7、2.8、2.10、8.3、9.1.9-9.1.11参照〕。
11.1.4. 肝機能障害、黄疸:AST上昇(0.7%)、ALT上昇(0.9%)等を伴う肝機能障害、黄疸(頻度不明)があらわれることがある〔8.8、9.3肝機能障害患者の項参照〕。
11.1.5. 間質性肺炎(0.1%未満):発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意し、異常が認められた場合には、速やかに胸部X線検査、速やかに胸部CT検査及び速やかに血液ガス検査等を実施し、本剤の投与を中止するとともにニューモシスティス肺炎との鑑別診断(β-Dグルカンの測定等)を考慮に入れ適切な処置を行うこと〔9.1.5参照〕。
11.1.6. 静脈血栓塞栓症(0.2%*、1.0%※):肺塞栓症及び深部静脈血栓症があらわれることがある〔8.12、9.1.6参照〕。
*)関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎及び円形脱毛症患者を対象とした臨床試験における発現割合。
※)SARS-CoV-2による肺炎患者を対象とした臨床試験における発現割合。
- 11.2. その他の副作用
1). 胃腸障害:(1~10%未満)悪心、腹痛。
2). 感染症及び寄生虫症:(1~10%未満)上気道感染(鼻炎、上咽頭炎、副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、口腔咽頭痛、咽頭炎、咽頭扁桃炎、扁桃炎、喉頭炎、喉頭蓋炎、気管炎を含む)、帯状疱疹、単純ヘルペス(ヘルペス性状湿疹、性器ヘルペス、カポジ水痘様発疹、眼部単純ヘルペス、口腔ヘルペスを含む)、尿路感染。
3). 精神神経系:(1~10%未満)頭痛。
4). 皮膚及び皮下組織障害:(1~10%未満)ざ瘡、(頻度不明)発疹、顔面腫脹、蕁麻疹。
5). 臨床検査:(10%以上)LDLコレステロール上昇、(1~10%未満)ALT上昇、AST上昇、血小板増加症、トリグリセリド上昇、CK上昇。
6). その他:(0.1~1%未満)体重増加。
- 高齢者
- 用量に留意して、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること(重篤な有害事象の発現率の上昇が認められている、また、本剤は主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下している場合が多い)〔16.5参照〕。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験では催奇形性が報告されており、ヒトに本剤を投与したときの血漿中濃度と比較したとき、催奇形性に関する安全域はラット及びウサギでそれぞれ2.3倍及び6.3倍であり、また、ラットで受胎能への影響、胎仔発達への影響、出生仔体重への影響が報告されている。雌ラットの受胎能及び初期胚発生に関する安全域は4.1倍、出生前及び出生後の発生に関する安全域は1.8倍であった)〔2.4、9.4生殖能を有する者の項参照〕。
本剤投与中は授乳しないことが望ましい(ラットで乳汁中へ移行することが報告されている)。
- 小児等
- 9.7.1. 〈関節リウマチ、SARS-CoV-2による肺炎、円形脱毛症〉小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.2. 〈アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉低出生体重児、新生児、乳児又は2歳未満の幼児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.3. 〈アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉アトピー性皮膚炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎の場合、本剤を適切に経口投与できると判断された場合にのみ投与すること。
- 適用上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意〈効能共通〉PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
14.2. 薬剤投与時の注意〈SARS-CoV-2による肺炎〉SARS-CoV-2による肺炎で本剤の経口投与が困難な場合、懸濁させた上で経口、胃瘻、経鼻又は経口胃管での投与を考慮できる。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報15.1.1. 関節リウマチ患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験4試験及び長期試験の併合解析において、100人・年あたりの重篤な感染症の発現率(95%信頼区間)は、本剤2mg投与群で3.55(2.07,5.68)、4mg投与群で5.77(3.77,8.45)であった。アトピー性皮膚炎患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験6試験の16週時以降の長期試験を含む併合解析において、各試験の被験者数で調整した100人・年あたりの重篤な感染症の調整済み発現率(発現率:95%信頼区間)は、本剤2mg投与群で1.21(1.48:0.6,2.9)、4mg群で3.1(3.0:1.8,4.8)であった。円形脱毛症患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験2試験の36週時以降のデータを含む併合解析において、100人・年あたりの重篤な感染症の発現率(95%信頼区間)は、本剤2mg投与群で0.5(0.1,1.7)、4mg群で0.7(0.2,1.6)であった〔1.1、1.2.1、2.5参照〕。
15.1.2. 関節リウマチ患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験4試験の24週時以降の長期試験を含む併合解析において、100人・年あたりの悪性腫瘍の発現率は、本剤2mg投与群で0.41(95%信頼区間:0.05,1.47、発現割合:0.4%、2/479例)、4mg投与群で0.87(95%信頼区間:0.24,2.22、発現割合:0.8%、4/479例)であった。
関節リウマチ患者を対象とした長期試験を含む臨床試験9試験の併合解析において、本剤投与群での年齢・性別で調整して算出した悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)のSIR(標準化罹患比)は0.96(95%信頼区間:0.67,1.35)であった。既存の抗リウマチ薬投与下の関節リウマチ患者で報告されている悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)のSIR1.05(95%信頼区間:1.01,1.09)と比較し、大きな違いは認められなかった。
また投与期間別の発現状況は次の通りであった〔1.1、8.9参照〕。
[投与期間別の悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率(関節リウマチ患者を対象とした試験の併合解析)]1). 投与期間全体(評価対象例数3492例・曝露期間5233.3人・年):1.1%(例数38);発現率0.73/100人・年(95%信頼区間:0.51,1.00)。
2). 投与期間0~24週(評価対象例数3492例・曝露期間1530.7人・年):0.2%(例数7);発現率0.46/100人・年(95%信頼区間:0.18,0.94)。
3). 投与期間24~48週(評価対象例数3114例・曝露期間1289.2人・年):0.3%(例数10);発現率0.78/100人・年(95%信頼区間:0.37,1.43)。
4). 投与期間48~72週(評価対象例数2583例・曝露期間1051.9人・年):0.5%(例数12);発現率1.14/100人・年(95%信頼区間:0.59,1.99)。
5). 投与期間72~96週(評価対象例数1940例・曝露期間716.0人・年):0.3%(例数5);発現率0.70/100人・年(95%信頼区間:0.23,1.63)。
6). 投与期間96週~(評価対象例数1167例・曝露期間645.4人・年):0.3%(例数4);発現率0.62/100人・年(95%信頼区間:0.17,1.59)。
アトピー性皮膚炎患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験6試験の16週時以降の長期試験を含む併合解析において、悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現は認められなかった。また、各試験の被験者数で調整した100人・年あたりの非黒色腫皮膚癌の調整済み発現率は、本剤2mg投与群で0.14(発現率:0.18、95%信頼区間:0.0,1.0、調整済み発現割合:0.1%、1/584例)、4mg投与群で0(0/497例)であった。
アトピー性皮膚炎患者を対象とした長期試験を含む臨床試験8試験の併合解析において、本剤群での100人・年あたり悪性腫瘍<非黒色腫皮膚癌を除く>の発現率は、0.21(95%信頼区間:0.1,0.5、発現割合:0.2%、6/2562例)であり、非黒色腫皮膚癌の発現率は、0.24(95%信頼区間:0.1,0.5、発現割合:0.3%、7/2562例)であった。
円形脱毛症患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験2試験の36週時以降のデータを含む併合解析において、100人・年あたりの悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率は、本剤4mg投与群で0.3(95%信頼区間:0.0,1.0、発現割合:0.4%、2/540例)であり、本剤2mg投与群で発現は認められなかった。非黒色腫皮膚癌の発現率は、本剤2mg投与群で0.2(95%信頼区間:0.0,1.3、発現割合:0.3%、1/365例)であり、本剤4mg投与群で発現は認められなかった。
円形脱毛症患者を対象とした臨床試験2試験の併合解析において、本剤投与群での100人・年あたりの悪性腫瘍<非黒色腫皮膚癌を除く>の発現率は、0.2(95%信頼区間:0.0,0.5、発現割合:0.2%、3/1244例)であり、非黒色腫皮膚癌の発現率は、0.1(95%信頼区間:0.0,0.4、発現割合:0.2%、2/1244例)であった〔1.1、8.9参照〕。
15.1.3. 心血管系事象のリスク因子を有する関節リウマチ患者を対象としたJAK阻害剤トファシチニブクエン酸塩の海外臨床試験の結果、主要評価項目である主要な心血管系事象(Major Adverse Cardiovascular Events:MACE)及び悪性腫瘍<非黒色腫皮膚癌を除く>の発現率について、TNF阻害剤群に対するハザード比(95%信頼区間)はそれぞれ1.33(0.91,1.94)及び1.48(1.04,2.09)であり、95%信頼区間上限は予め設定していた非劣性マージン1.8を超え、TNF阻害剤群に対する非劣性が検証されなかったことが報告されている。また、本剤でも、国内市販後の自発報告において、心血管系事象の発現が認められている〔1.1、8.9参照〕。
15.2. 非臨床試験に基づく情報本剤はJAK阻害作用を有することから免疫系及び造血系へ影響を及ぼす可能性があり、非臨床試験ではリンパ球数減少及び赤血球数減少等に加え、免疫抑制に起因する二次的な作用(毛包虫症並びに細菌感染、原虫感染及び酵母感染)がみられた。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人健康被験者16例にバリシチニブ4及び8mg注7)を空腹時単回投与したときのバリシチニブの血漿中濃度は投与後約1時間でピークに達した。消失半減期は約6~7時間であった。
表1)健康被験者にバリシチニブ4及び8mg注7)を単回投与したときのバリシチニブの薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
図1)健康被験者にバリシチニブ4及び8mg注7)を単回投与したときの血漿中バリシチニブ濃度推移(平均±標準偏差)
注7)本剤の承認された用法・用量は、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人)、SARS‐CoV‐2による肺炎及び円形脱毛症には通常4mg、アトピー性皮膚炎(小児)及び多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎には通常、体重30kg以上の患者には4mg、30kg未満の患者には2mgである。
16.1.2 反復投与
〈関節リウマチ〉
第II相試験及び第III相試験のデータを用いて母集団薬物動態解析を実施した。日本人関節リウマチ患者に本剤4mgを1日1回反復投与したときの定常状態における薬物動態パラメータ[幾何平均値(変動係数%)]は、Cmax,ssが58.1ng/mL(21%)、Cmin,ssが3.55ng/mL(73%)、AUCτ,ssが414ng・h/mL(30%)、消失半減期が10.9時間(15%)と推定された。
〈アトピー性皮膚炎〉
(1)成人
第II相試験及び第III相試験のデータを用いて母集団薬物動態解析を実施した。日本人アトピー性皮膚炎患者に本剤4mgを1日1回反復投与したときの定常状態における薬物動態パラメータ[幾何平均値(変動係数%)]は、Cmax,ssが47.2ng/mL(16%)、Cmin,ssが3.54ng/mL(79%)、AUCτ,ssが368ng・h/mL(31%)、消失半減期が11.4時間(21%)と推定された。
(2)小児
第III相試験のデータを用いて母集団薬物動態解析を実施した。日本人アトピー性皮膚炎小児患者に体重30kg以上の場合はバリシチニブ4mgを、体重30kg未満の場合は2mgを1日1回反復投与したときの定常状態における薬物動態パラメータ[幾何平均値(変動係数%)]は、Cmax,ssがそれぞれ52.6ng/mL(32%)及び51.1ng/mL(20%)、AUCτ,ssがそれぞれ333ng・h/mL(51%)及び228ng・h/mL(30%)、消失半減期がそれぞれ13.4時間(48%)及び10.5時間(50%)と推定された。
〈円形脱毛症〉
第II/III相試験のデータを用いて母集団薬物動態解析を実施した。日本人円形脱毛症患者に本剤4mgを1日1回反復投与したときの定常状態における薬物動態パラメータ[幾何平均値(変動係数%)]は、Cmax,ssが52.2ng/mL(16%)、Cmin,ssが2.63ng/mL(77%)、AUCτ,ssが356ng・h/mL(30%)、消失半減期が12.9時間(24%)と推定された。
〈多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉
第III相試験のデータを用いて母集団薬物動態解析を実施した。多関節に活動性を有する日本人若年性特発性関節炎患者に体重30kg以上の場合はバリシチニブ4mgを、体重30kg未満の場合は2mgを1日1回反復投与したときの定常状態における薬物動態パラメータ[幾何平均値(変動係数%)]は、Cmax,ssがそれぞれ54.3ng/mL(21%)及び58.9ng/mL(33%)、AUCτ,ssがそれぞれ295ng・h/mL(15%)及び302ng・h/mL(81%)、消失半減期がそれぞれ6.31時間(34%)及び8.97時間(51%)と推定された。
16.2 吸収
16.2.1 バイオアベイラビリティ
外国人健康被験者8例にバリシチニブ4mgを単回経口投与及び4μgを単回静脈内投与注7)したとき、バリシチニブ経口投与時の絶対的バイオアベイラビリティは約80%であった。
16.2.2 食事の影響
日本人健康被験者16例にバリシチニブ4mgを空腹時及び低脂肪食摂取後に単回経口投与した。低脂肪食摂取後に投与したとき、空腹時に比べAUC0-∞及びCmaxはそれぞれ14%及び11%低下した。
外国人健康被験者15例にバリシチニブ8mg注7)を空腹時及び高脂肪・高カロリー食摂取後に単回経口投与した。高脂肪・高カロリー食摂取後に投与したとき、空腹時に比べAUC0-∞及びCmaxはそれぞれ11%及び18%低下した。
16.3 分布
外国人健康被験者8例にバリシチニブ4μgを単回静脈内投与注7)したときの分布容積は76Lであった。バリシチニブの血漿タンパク結合率は約50%であった(in vitro)。
16.4 代謝
In vitro試験の結果、バリシチニブの代謝にCYP3A4が関与することが示された。外国人健康被験者6例に14Cで標識したバリシチニブ10mg注7)(100μCi)を単回投与したとき、血漿中総放射能のうち未変化体の占める割合は95%以上であった。血漿中にバリシチニブの代謝物は認められなかった。尿中に投与量の約5%に相当する3種類の酸化代謝物が検出され、糞中には投与量の約1%に相当する1種類の酸化代謝物が検出された。
16.5 排泄
外国人健康被験者6例に14Cで標識したバリシチニブ10mg注7)(100μCi)を単回投与したとき、バリシチニブは75%(未変化体69%)が尿中に、20%(未変化体15%)が糞中に排泄された。また、健康被験者を対象とした薬物動態試験において、本剤40mgを単回投与したところ、投与量の90%以上は24時間以内に排泄されることが示唆された。[9.8参照]
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
正常な腎機能を有する被験者(10例)、軽度(10例)及び中等度(10例)の腎機能障害を有する被験者にバリシチニブ10mg注7)を、重度の腎機能障害を有する被験者(8例)にバリシチニブ5mg注7)を単回投与したとき、腎機能障害の重症度の悪化に伴いAUC0-∞は増加し、バリシチニブの薬物動態に対する腎機能障害の影響が認められた。投与量で補正したAUC0-∞は正常な腎機能を有する被験者に比べ、軽度、中等度及び重度の腎機能障害を有する被験者でそれぞれ41%、122%、305%増加し、Cmaxはそれぞれ16%、46%、40%増加した(外国人データ)。[2.6、2.9、7.3、7.8、7.12、9.2.1-9.2.6参照]
16.6.2 肝機能障害患者
正常な肝機能を有する被験者8例及びChild‐Pugh分類Bの中等度肝機能障害を有する被験者8例にバリシチニブ4mgを単回投与したとき、正常な肝機能を有する被験者に比べ、中等度の肝機能障害を有する被験者でバリシチニブのAUC0-∞は2%低下し、Cmaxは8%増加した(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 併用薬がバリシチニブの薬物動態に及ぼす影響
In vitro試験の結果、バリシチニブはCYP3Aの基質であった。また、in vitro試験の結果、バリシチニブはOAT3、P‐gp、BCRP及びMATE2‐Kトランスポーターの基質であった。薬物相互作用を検討した臨床試験の結果、OAT3阻害剤であるプロベネシドの併用によりバリシチニブのAUC0-∞は約2倍に増加した(外国人データ)。[7.1、7.11、10.2参照]
表2)併用薬がバリシチニブの薬物動態に及ぼす影響
→図表を見る(PDF)
16.7.2 バリシチニブが併用薬の薬物動態に及ぼす影響
In vitro試験の結果、バリシチニブはCYP3A、1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6においてIC50が算出可能な程度の代謝阻害は認められず(IC50>20μmol/L)、またCYP3A、1A2、2B6を50μmol/Lまで誘導しなかった。In vitro試験の結果、バリシチニブはP‐gp、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1に対してそれぞれ50μmol/L、100μmol/Lまで阻害しなかった。また、バリシチニブはOAT1(IC50>100μmol/L)、OAT2(IC50=99.1μmol/L)、OAT3(IC50=8.4μmol/L)、有機カチオントランスポーター(OCT)1(IC50=6.9μmol/L)、OCT2(IC50=11.6μmol/L)、OATP1B3(IC50=49.4μmol/L)、BCRP(IC50=50.3μmol/L)、MATE1(IC50=76.7μmol/L)、MATE2‐K(IC50=13.7μmol/L)を阻害した。
表3)バリシチニブが併用薬の薬物動態に及ぼす影響
→図表を見る(PDF)
注7)本剤の承認された用法・用量は、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(成人)、SARS‐CoV‐2による肺炎及び円形脱毛症には通常4mg、アトピー性皮膚炎(小児)及び多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎には通常、体重30kg以上の患者には4mg、30kg未満の患者には2mgである。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
〈関節リウマチ〉
17.1.1 国際共同第III相無作為化比較試験[RA‐BEAM(JADV)試験]
メトトレキサート(MTX)で効果不十分な中等度から重度の活動性関節リウマチ患者1305例(日本人249例を含む)を対象としたプラセボ及び実薬(アダリムマブ)対照二重盲検比較試験を実施した。MTX併用下、本剤4mgを1日1回経口投与、アダリムマブ40mgを2週間に1回皮下投与、又はプラセボを投与した。本剤投与群における12週時のACR20改善率(主要評価項目)は、プラセボ投与群に比べて高く、統計学的な有意差が認められた。
表1)投与12週時のACR20、50、70改善率(mITT集団)
→図表を見る(PDF)
また、24週時の関節破壊進展を手及び足のX線スコア(modified Total Sharp Score、mTSS)で評価した結果、プラセボ投与群に比べ、本剤投与群での増加が小さく、統計学的な有意差が認められた。
表2)投与24週時のmTSSのベースラインからの変化量(mITT集団)
→図表を見る(PDF)
また、投与24週時又は本剤4mg投与への変更前までの各群における有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の発現頻度は次の通りであった。主な副作用は本剤4mgにおいて、上咽頭炎9例(1.8%)、血中クレアチンホスホキナーゼ増加8例(1.6%)であった。
表3)投与24週時又は本剤4mg投与への変更前までの有害事象
→図表を見る(PDF)
17.1.2 国際共同第III相無作為化比較試験[RA‐BEGIN(JADZ)試験]
抗リウマチ薬の使用経験のない中等度から重度の活動性関節リウマチ患者584例(日本人104例を含む)を対象とした実薬対照二重盲検比較試験を実施した。本剤単独投与群には本剤4mgを1日1回、本剤+MTX併用投与群には本剤4mgを1日1回及びMTXを1週間に1回、MTX単独投与群にはMTXを1週間に1回経口投与した。本剤単独投与群における24週時のACR20改善率(主要評価項目)は、MTX単独投与群に比べて高く、非劣性が検証された。
表4)投与24週時のACR20、50、70改善率(mITT集団)
→図表を見る(PDF)
また、24週時の関節破壊進展を手及び足のX線スコア(mTSS)で評価した結果、MTX単独投与群に比べ、本剤+MTX併用投与群での増加が小さく、統計学的な有意差が認められた。
表5)投与24週時のmTSSのベースラインからの変化量(mITT集団)
→図表を見る(PDF)
また、投与52週時又は本剤4mg/MTX併用投与への変更前までの各群における有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の発現頻度は次の通りであった。主な副作用は、本剤4mg単独群では上咽頭炎6例(3.8%)、帯状疱疹、血中クレアチンホスホキナーゼ増加各4例(2.5%)、本剤4mg/MTX併用群では悪心11例(5.1%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加10例(4.7%)であった。
表6)投与52週時又は本剤4mg/MTX併用投与への変更前までの有害事象
→図表を見る(PDF)
17.1.3 国際共同第III相無作為化比較試験[RA‐BUILD(JADX)試験]
MTXを含む従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(cDMARD)に対して効果不十分な中等度から重度の活動性関節リウマチ患者684例(日本人21例を含む)を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験を実施した。cDMARD併用下、プラセボ又は本剤(4又は2mg)を1日1回経口投与した。12週時のACR20改善率(主要評価項目)は、本剤4及び2mg投与群においてプラセボ投与群に比べて高く、統計学的な有意差が認められた。
表7)投与12週時のACR20、50、70改善率(mITT集団)
→図表を見る(PDF)
また、24週時の関節破壊進展を手及び足のX線スコア(mTSS)を評価した結果は次の通りであった。[7.2参照]
表8)投与24週時のmTSSのベースラインからの変化量(mITT集団)
→図表を見る(PDF)
また、投与24週時又は本剤4mg投与への変更前までの各群における有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の発現頻度は次の通りであった。主な副作用は、本剤2mg群では上気道感染6例(2.6%)、帯状疱疹、血中クレアチンホスホキナーゼ増加各4例(1.7%)、本剤4mg群では血中クレアチンホスホキナーゼ増加10例(4.4%)、上気道感染8例(3.5%)であった。
表9)投与24週時又は本剤4mg投与への変更前までの有害事象
→図表を見る(PDF)
17.1.4 国際共同第III相無作為化比較試験[RA‐BEACON(JADW)試験]
腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤に対して効果不十分な中等度から重度の活動性関節リウマチ患者527例(日本人20例を含む)を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験を実施した。cDMARD併用下、プラセボ又は本剤(4又は2mg)を1日1回経口投与した。本剤4mg投与群における12週時のACR20改善率(主要評価項目)は、プラセボ投与群に比べて高く、統計学的な有意差が認められた。[7.2参照]
表10)投与12週時のACR20、50、70改善率(mITT集団)
→図表を見る(PDF)
また、投与24週時又は本剤4mg投与への変更前までの各群における有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の発現頻度は次の通りであった。主な副作用は、本剤2mg群では上咽頭炎5例(2.9%)、上気道感染、悪心各4例(2.3%)、本剤4mg群では帯状疱疹7例(4.0%)、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、上気道感染、上咽頭炎各4例(2.3%)であった。
表11)投与24週時又は本剤4mg投与への変更前までの有害事象
→図表を見る(PDF)
17.1.5 国際共同第III相継続投与試験[RA‐BEYOND(JADY)試験]
継続投与試験として、本剤の長期の安全性及び忍容性を検討した。本試験に組み入れられた症例のうち、先行試験又は本試験において効果不十分と判定されず、本剤4mgの1日1回投与を15ヵ月以上継続され、低疾患活動性(Clinical disease activity index(CDAI)≦10)又は寛解(CDAI≦2.8)を維持していた患者を対象に、二重盲検下で本剤4mg継続投与又は本剤2mgへの減量投与のいずれかに再割付し、低疾患活動性又は寛解が維持されるかを評価した。再割付後24週時のCDAIに基づく低疾患活動性、寛解を達成した患者割合は次の通りであった。[7.2参照]
主な副作用は、帯状疱疹68例(2.6%)、上咽頭炎49例(1.8%)であった注27)。
表12)再割付後24週時のCDAIに基づく低疾患活動性、寛解達成率注27)
→図表を見る(PDF)
注27)2016年1月1日データカットオフ
〈アトピー性皮膚炎(成人)〉
17.1.6 国際共同第III相試験[BREEZE‐AD7(JAIY)試験]
日本の分類でミディアム~ストロングクラス以上に相当するステロイド外用薬に対して効果不十分であった中等症から重症注28)のアトピー性皮膚炎患者329例(日本人63例を含む)を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験を実施した。ステロイド外用薬併用下、プラセボ又は本剤(4又は2mg)を1日1回経口投与した注29)。本剤4mg投与群における16週時に治験担当医師による総合評価(Investigator’s Global Assessment:IGA注30))スコアが0又は1、かつ、ベースラインから2ポイント以上の改善(IGA(0、1))を達成した被験者の割合及び16週時にEczema Area and Severity Index(EASI)スコアでベースラインからの75%以上の改善(EASI‐75)を達成した被験者の割合(いずれも主要評価項目)は、プラセボ投与群に比べて高く、統計学的な有意差が認められた。[5.2、7.2参照]
注28)IGAスコアが3以上、EASIスコアが16以上、及び体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上
注29)投与期間中は保湿剤の併用を必須とし、経口シクロスポリン、経口ステロイド等の全身療法及び光線療法の併用を禁止した。
注30)vIGA‐AD scale(International Eczema Council 2017)
表13)投与16週時の有効性成績(ITT集団)
→図表を見る(PDF)
投与16週時までの各群における有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の発現頻度は次の通りであった。主な副作用は、本剤2mg群では上咽頭炎5例(4.6%)、上気道感染3例(2.8%)、本剤4mg群では上咽頭炎4例(3.6%)、口腔ヘルペス3例(2.7%)であった。
表14)投与16週時までの有害事象
→図表を見る(PDF)
17.1.7 国際共同第III相試験[BREEZE‐AD1(JAHL)試験]
日本の分類でミディアム~ストロングクラス以上に相当するステロイド外用薬に対して効果不十分又は不耐であった中等症から重症注37)のアトピー性皮膚炎患者624例(日本人111例を含む)を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験を実施した。単剤でプラセボ又は本剤(4、2又は1mg)を1日1回経口投与した注38)。本剤4及び2mg投与群における16週時にIGA(0、1)を達成した被験者の割合及び16週時にEASI‐75を達成した被験者の割合(いずれも主要評価項目)は、プラセボ投与群に比べて高く、統計学的な有意差が認められた。[5.2、7.2参照]
注37)IGAスコアが3以上、EASIスコアが16以上、及び体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上
注38)投与期間中は保湿剤の併用を必須とし、経口シクロスポリン、経口ステロイド等の全身療法及び光線療法の併用を禁止した。
表15)投与16週時の有効性成績(ITT集団)
→図表を見る(PDF)
投与16週時までの各群における有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の発現頻度は次の通りであった。主な副作用は、本剤2mg群では頭痛4例(3.3%)、上咽頭炎3例(2.4%)、本剤4mg群では単純ヘルペス、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、頭痛各3例(2.4%)であった。
表16)投与16週時までの有害事象
→図表を見る(PDF)
17.1.8 国際共同第III相試験[BREEZE‐AD2(JAHM)試験]
日本の分類でミディアム~ストロングクラス以上に相当するステロイド外用薬に対して効果不十分又は不耐であった中等症から重症注45)のアトピー性皮膚炎患者615例(日本人112例を含む)を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験を実施した。単剤でプラセボ又は本剤(4、2又は1mg)を1日1回経口投与した注46)。本剤4及び2mg投与群における16週時にIGA(0、1)を達成した被験者の割合及び16週時にEASI‐75を達成した被験者の割合(いずれも主要評価項目)は、プラセボ投与群に比べて高く、統計学的な有意差が認められた。[5.2、7.2参照]
注45)IGAスコアが3以上、EASIスコアが16以上、及び体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上
注46)投与期間中は保湿剤の併用を必須とし、経口シクロスポリン、経口ステロイド等の全身療法及び光線療法の併用を禁止した。
表17)投与16週時の有効性成績(ITT集団)
→図表を見る(PDF)
投与16週時までの各群における有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の発現頻度は次の通りであった。主な副作用は、本剤2mg群では単純ヘルペス4例(3.3%)、上咽頭炎3例(2.4%)、本剤4mg群では上咽頭炎、血中クレアチンホスホキナーゼ増加各4例(3.3%)、頭痛3例(2.4%)であった。
表18)投与16週時までの有害事象
→図表を見る(PDF)
〈アトピー性皮膚炎(小児)〉
17.1.9 国際共同第III相試験[BREEZE‐AD‐PEDS(JAIP)試験]
日本の分類でミディアム~ストロングクラス以上に相当するステロイド外用薬に対して効果不十分、及び外用カルシニューリン阻害剤に対して効果不十分又は不耐であった中等症から重症注53)の2歳以上18歳未満のアトピー性皮膚炎患者483例(日本人38例を含む)を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験を実施した。プラセボ、バリシチニブ高用量(10歳以上18歳未満は4mg、2歳以上10歳未満は2mg)注54)又はバリシチニブ中用量(10歳以上18歳未満は2mg、2歳以上10歳未満は1mg)注54)をステロイド外用薬併用下、1日1回経口投与した注55)。バリシチニブ高用量投与群における16週時にIGA(0、1)を達成した被験者の割合(主要評価項目)及び16週時にEASI‐75を達成した被験者の割合は、プラセボ投与群に比べて高く、統計学的な有意差が認められた。[5.2参照]
注53)IGAスコアが3以上、EASIスコアが16以上、及び体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上
注54)本剤の承認された用法・用量は、通常、体重30kg以上の患者には4mg、30kg未満の患者には2mgである。
注55)投与期間中は保湿剤の併用を必須とし、経口シクロスポリン、経口ステロイド等の全身療法及び光線療法の併用を禁止した。
表19)投与16週時の有効性成績(ITT集団)
→図表を見る(PDF)
投与16週時までの各群における有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の発現頻度は次の通りであった。主な副作用は、バリシチニブ高用量投与群ではざ瘡5例(4.2%)、頭痛3例(2.5%)、バリシチニブ中用量投与群では頭痛5例(4.2%)、ざ瘡3例(2.5%)であった。
表20)投与16週時までの有害事象
→図表を見る(PDF)
〈SARS‐CoV‐2による肺炎〉
17.1.10 国際共同第III相試験[ACTT‐2試験]
18歳以上のSARS‐CoV‐2による肺炎患者1033例(日本人1例を含む)を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験を実施した。レムデシビル併用下、プラセボ又は本剤4mgを1日1回最長14日間経口投与した。レムデシビルは投与初日に200mg、2~10日目は100mgを1日1回静脈内投与した。なお、退院した場合には治験薬及びレムデシビルの投与を中止することとした。
また、本試験では静脈血栓塞栓症の予防の実施が推奨され、本剤群94.3%、プラセボ群94.5%の患者においてヘパリン(低分子ヘパリンを含む)が併用投与されていた。
本試験の主な選択・除外基準は次表の通りであった。
表21)ACTT‐2試験の主な選択・除外基準
→図表を見る(PDF)
主要評価項目は、無作為化後28日時点での回復(8段階の順序尺度注60)のOS‐1~3に該当)までの期間とされた。回復までの期間の中央値[95%CI]は、本剤群で7[6、8]日、プラセボ群で8[7、9]日であり、プラセボ群に対する本剤群の優越性が検証された(ハザード比[95%CI]:1.15[1.00~1.31]、層別Log‐rank検定、p〔両側〕=0.047、有意水準〔両側〕0.05、添付文書の図1参照)。
図1)無作為化後28日時点での回復までの期間のKaplan‐Meier曲線(ITT集団)
副次評価項目である無作為化後14日時点での8段階の順序尺度に基づく臨床状態の比例オッズ比[95%CI]は1.26[1.01、1.57]であった。
また、ベースラインにおける8段階の順序尺度別の主要評価項目、副次評価項目の結果は次表のとおりであった。[5.5、9.1.9、9.1.10参照]
表22)ベースラインにおける8段階の順序尺度別の主要評価項目及び副次評価項目の結果
--------------------------表開始
18.1 作用機序
造血、炎症、免疫機能に関与する各種サイトカインや成長因子が受容体に結合する際にJAKが介在した細胞内シグナル伝達が行われる。細胞内シグナル伝達経路の中でJAK自体のリン酸化とともに対応するシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)がリン酸化される。リン酸化されたSTATは核内に移行し、サイトカインに反応する遺伝子群の転写を亢進する。バリシチニブはJAK1及びJAK2活性を阻害し、STATのリン酸化及び活性化を抑制することによりシグナル伝達を阻害する。
18.2 JAK阻害活性
バリシチニブはJAK1/JAK2の選択的かつ可逆的阻害剤であり、酵素阻害試験でJAK1、JAK2、TYK2及びJAK3活性を阻害し、その阻害作用のIC50はそれぞれ、5.9、5.7、53及び>400nMである(in vitro)。
18.3 IL‐6により誘導されるSTAT3リン酸化の阻害作用
バリシチニブを投与した健康被験者の全血を用いたアッセイにおいて、IL‐6により誘導されるSTAT3リン酸化を用量依存的に阻害した。その阻害作用はバリシチニブ投与2時間後に最大になり、STAT3リン酸化レベルは24時間後にほぼベースラインに戻った。IL‐6(JAK1/JAK2を介したシグナル伝達)又はトロンボポエチン(JAK2/JAK2を介したシグナル伝達)のどちらで刺激した場合にも同様の阻害効果が認められた(in vitro)。
- 一包可:不可
- 分割:不可
- 粉砕:不明
分割・粉砕した際の有効性および安定性に関するデータはない。また、本剤を粉砕・分割した際に錠剤内部の粉末が発生する。この粉末を繰り返し吸い込むと、人体に有害な影響が出る可能性があるため、本剤を粉砕しない。@懸濁しやすくするために錠剤を粉砕する場合は、内容物に曝露するリスクがあるため、換気付き装置や防護具など適切な対処を行う。
- 製造販売会社
- 日本イーライリリー
- 販売会社
おくすりのQ&A
保険審査の内容で恐縮ですが、先日の業界紙において、「社会保険診療報酬支払基金は31日、高血圧症に対して初回から第一選択薬として「配合剤」を投与することは、...
Cost of Concerta (methylphenidate)?
I am curious to find the cost of a month's supply of methylphenidate for ADHD...
わからないことがあったら、
気軽にすぐ質問しよう!
このコミュニティは、各種法令・通達が実務の現場で実際にはどう運用されているのか情報共有に使われることもあります。解釈に幅があるものや、関係機関や担当者によって対応が異なる可能性のあることを、唯一の正解であるかのように断言するのはお控えください。「しろぼんねっと」編集部は、投稿者の了承を得ることなく回答や質問を削除する場合があります。