エムパベリ皮下注1080mg
添付文書情報2023年09月改定(第3版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 1.1. 本剤は補体経路を阻害するため、髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌等の莢膜形成細菌による重篤な感染症を発症することがあり、特に髄膜炎菌感染症は急激に重症化し、死亡に至るおそれもあるため、次の点に十分注意すること〔5.2、11.1.1、11.1.2参照〕。
1.1.1. 本剤の投与に際しては、髄膜炎菌等による感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直等)に注意して観察を十分に行い、髄膜炎菌等の感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌剤の投与等の適切な処置を行うこと。
1.1.2. 髄膜炎菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型に対するワクチンの接種歴を確認し、未接種又は追加接種が必要な場合は、原則、本剤投与前にワクチンを接種すること(必要に応じて、本剤投与中のワクチンの追加接種を考慮すること)。
1.1.3. 髄膜炎菌感染症は致命的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び医師のもとで、あるいは髄膜炎菌感染症の診断及び治療が可能な医療施設との連携下で投与すること。
1.1.4. 髄膜炎菌等の感染症のリスクについて患者に説明し、感染症の初期徴候を確実に理解させ、感染症に関連する症状が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。
1.2. 発作性夜間ヘモグロビン尿症に十分な知識を持つ医師のもとで、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、本剤投与開始に先立ち、本剤は疾病を完治させる薬剤ではないことを含め、本剤の有効性及び危険性を患者又はその家族に十分説明し、同意を得てから投与すること。
- 禁忌
- 2.1. 髄膜炎菌感染症に罹患している患者[症状を悪化させるおそれがある]〔11.1.2参照〕。
2.2. 肺炎球菌感染症、インフルエンザ菌感染症等の重篤な莢膜形成細菌感染症に罹患している患者[症状を悪化させるおそれがある]〔11.1.1参照〕。
2.3. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者〔11.1.3参照〕。
- 効能・効果
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 補体(C5)阻害剤による適切な治療を行っても、十分な効果が得られない場合に投与すること。
5.2. 本剤は、補体C3及びC3bに結合し、補体経路を阻害するため、髄膜炎菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌をはじめとする莢膜形成細菌による感染症を発症しやすくなる可能性があることから、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤投与の是非を慎重に検討し、適切な対象患者に使用すること。また、本剤投与に際しては、髄膜炎菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型に対するワクチンの接種歴を確認し、未接種又は追加接種が必要な場合は、原則、本剤投与開始の少なくとも2週間前までにそれらのワクチンを接種すること〔1.1、11.1.1、11.1.2、17.1.1参照〕。
- 用法・用量
- 通常、成人には、ペグセタコプランとして1回1080mgを週2回皮下投与する。なお、十分な効果が得られない場合には、1回1080mgを3日に1回の間隔で皮下投与することができる。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 補体(C5)阻害剤から本剤に切り替える際は、補体(C5)阻害剤中止による溶血を抑えるため、本剤投与開始後4週間は補体(C5)阻害剤を併用すること。
7.2. 投与を忘れた場合は、気づいた時点で速やかに本剤を投与し、その後はあらかじめ定めた投与日に投与すること。
- 生殖能を有する者
- 8.1. 本剤を中止した場合に重篤な溶血があらわれるおそれがある(本剤の投与を中止した患者に対しては、最低8週間、溶血及びそれに付随する臨床症状の変化を注意深く観察し、必要に応じて適切な処置を行うこと)。
8.2. 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督の下で投与を行うこと。自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、投与方法等について十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導の下で実施すること。自己投与の適用後、感染症等の本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理下で慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、自己投与の適用後、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、医療施設へ連絡するよう患者に指導を行うこと。使用済みの注射器等を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導を行うと同時に、使用済みの注射器等を廃棄する容器を提供すること。
9.1.1. 髄膜炎菌感染症の既往のある患者:髄膜炎菌感染症に罹患しやすくなるおそれがある。
9.1.2. 感染症の患者又は感染症が疑われる患者:特に莢膜形成細菌(髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌等)による感染症に罹患しやすくなるおそれがある。
妊娠可能な女性:妊娠可能な女性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 感染症(頻度不明):肺炎球菌感染、インフルエンザ菌感染等の重篤な莢膜形成細菌感染症があらわれることがある〔1.1、2.2、5.2参照〕。
11.1.2. 髄膜炎菌感染症(頻度不明):髄膜炎又は敗血症を発症し、急速に生命を脅かす、あるいは死亡に至るおそれがあるので、本剤の投与に際しては、当該感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直、羞明、精神状態変化、痙攣、悪心・嘔吐、紫斑、点状出血等)等の観察を十分に行うこと(髄膜炎菌感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌剤の投与等の適切な処置を行うこと)〔1.1、2.1、5.2参照〕。
11.1.3. 過敏症(2.5%):アナフィラキシー等の重度過敏症があらわれることがある〔2.3参照〕。
- 11.2. その他の副作用
1). 胃腸障害:(5%未満)下痢。
2). 一般・全身障害および投与部位の状態:(10%以上)注射部位紅斑、(5-10%)注射部位硬結、注射部位そう痒感、注射部位腫脹、注射部位反応、(5%未満)注射部位疼痛、注射部位内出血。
3). 免疫系障害:(5%未満)過敏症[紅斑、機械性蕁麻疹、そう痒症]。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(妊娠カニクイザルに本剤28mg/kg/日(ヒトの定常状態におけるCmaxの2.5倍)を皮下投与したとき、流産増加及び死産増加し、サルで胎仔への移行が認められている)〔9.4生殖能を有する者の項参照〕。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(サルで乳汁移行が認められている)。
- 小児等
- 小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤調製時の注意14.1.1. 投与前に、微粒子、変色がないか目視にて確認し、異常が認められた場合は使用しないこと。
14.2. 薬剤投与時の注意14.2.1. 注入部位は、腹部、大腿部、臀部、上腕部とし、順次変更すること。皮膚が敏感な部位、皮膚に異常のある部位<傷・発赤・硬結等>には注射しないこと。
14.2.2. 注入部位が2ヵ所の場合は、注入部位の間隔を8cm以上あけること。
14.2.3. シリンジポンプを用いて、約15~30分(注入部位が2ヵ所の場合)又は約30~60分(注入部位が1ヵ所の場合)かけて注入すること。シリンジに本剤を充填後、直ちに注入を開始し、薬剤の調製開始後2時間以内に投与を完了すること。
14.3. 薬剤交付時の注意14.3.1. 患者が家庭で保存する場合においては、冷蔵庫内(2~8℃)で保存し、使用期限を超えない範囲で使用するよう指導すること。
外箱開封後は遮光して保存すること。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報国際共同第3相試験において、本剤に対する抗体産生が報告されている〔17.3.1参照〕。
15.2. 非臨床試験に基づく情報ウサギ及びカニクイザルを用いた反復投与毒性試験において、本剤の臨床最大用量投与時の0.06倍及び1.27倍の曝露量で、全身の器官・組織のマクロファージ空胞化、脳脈絡叢上皮細胞空胞化及び滑膜上皮細胞空胞化、並びに腎臓の尿細管変性が認められた(これらの空胞化形成は、長鎖ポリエチレングリコール(PEG)の蓄積に関連した変化と考えられ、回復性があり機能障害は認められなかった)。また、腎臓の尿細管変性について、腎機能障害の徴候は認められず、臨床的意義及び機能的影響は不明である。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人健康被験者16例に本剤180~1440mg注)を単回皮下投与したときのペグセタコプランの血清中濃度推移及び薬物動態パラメータは次のとおりであった。また、曝露量は概ね用量比例的に増加した。
単回皮下投与時の血清中濃度推移(健康成人)
定量限界未満の値(<5μg/mL)は5μg/mLとした。
単回皮下投与時の薬物動態パラメータ(健康成人)
→図表を見る(PDF)
16.1.2 反復投与
(1)健康成人
外国人健康被験者16例に本剤30~270mg注)を1日1回皮下投与したときのペグセタコプランの薬物動態パラメータは次のとおりであった(外国人データ)。
1日1回反復皮下投与時の薬物動態パラメータ(健康成人)
→図表を見る(PDF)
(2)発作性夜間ヘモグロビン尿症患者
エクリズマブ(遺伝子組換え)の効果が不十分な発作性夜間ヘモグロビン尿症患者80例(日本人患者10例を含む)に本剤1080mgを週2回皮下投与したときのペグセタコプランの血清中トラフ濃度は次のとおりであり、初回投与から約4~6週間後に定常状態に達し、48週目まで維持された。
週2回反復皮下投与時の血清中トラフ濃度(μg/mL)(発作性夜間ヘモグロビン尿症患者)
→図表を見る(PDF)
16.1.3 母集団薬物動態解析
外国人及び日本人の健康成人、外国人腎機能障害患者並びに外国人及び日本人の発作性夜間ヘモグロビン尿症患者239例から得られた血清中ペグセタコプラン濃度データ(3,734時点)を用いて母集団薬物動態解析を行った。健康成人及び発作性夜間ヘモグロビン尿症患者に本剤を1日1回、週に2回又は3日に1回反復皮下投与したときのペグセタコプランの血清中薬物動態パラメータは次のとおりであった。
反復皮下投与時の血清中薬物動態パラメータ(推定値)(健康成人及び発作性夜間ヘモグロビン尿症患者)
→図表を見る(PDF)
16.3 分布
母集団薬物動態解析の結果、発作性夜間ヘモグロビン尿症患者におけるペグセタコプランの分布容積の平均値(幾何変動係数%)は約3.9L(35%)であった。
16.4 代謝
ペグセタコプランは、そのPEG化ペプチド構造により異化経路を介してペプチドやアミノ酸に分解されると考えられる。
16.5 排泄
母集団薬物動態解析の結果、発作性夜間ヘモグロビン尿症患者に本剤を反復皮下投与したとき、クリアランスの推定平均値(幾何変動係数%)は0.015L/時間(28%)、消失の有効半減期(t1/2)の中央値は8.0日であった。また、カニクイザルを用いた放射性標識体試験の結果から、標識ペプチド部分の排泄の主要経路は尿中排泄であることが示唆された。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
重度の腎機能障害患者8例(クレアチニンクリアランスが30mL/分未満)に本剤270mg注)を単回皮下投与したときのペグセタコプランのCmax及びAUC0-infは対照被験者(クレアチニンクリアランスが60mL/分以上等)と概ね同様であった(外国人データ)。
16.6.2 肝機能障害患者
肝機能障害患者におけるペグセタコプランの薬物動態に関する検討は行っていない。ペグセタコプランは主に異化経路を介して消失することから、肝機能障害がペグセタコプランのクリアランスに影響しないと考えられる。
16.7 薬物相互作用
薬物相互作用を検討した臨床試験は実施されていない。ペグセタコプランはCYP450の阻害及び誘導を引き起こさないことが示された(in vitro)。また、ペグセタコプランはP糖タンパク質(P‐gp)及び乳がん耐性蛋白質(BCRP)の基質や阻害剤ではないことが示された(in vitro)。
注)本剤の用法及び用量は、ペグセタコプランとして1回1080mgを週2回皮下投与である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第III相試験(APL2‐302試験)
エクリズマブ(遺伝子組換え)による治療を行ってもへモグロビン(Hb)値が10.5g/dL未満である発作性夜間ヘモグロビン尿症患者(総症例80例、日本人10例を含む)を対象とした多施設共同無作為化非盲検実薬対照並行群間比較試験が実施された。なお、髄膜炎菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型に対するワクチンの接種(いずれも1回0.5mL)を必須とした。また、医師の判断で抗菌薬の予防投与も可能とされた。[5.2参照]
本剤の用法・用量は、1回1080mgを週2回皮下投与し、乳酸脱水素酵素(LDH)値が正常値上限の2倍超の場合は投与間隔を3日に1回とすることが可能とされた。
試験は4週間の導入投与期間(本剤とエクリズマブ(遺伝子組換え)を併用投与)、16週間の無作為化投与期間(本剤又はエクリズマブ(遺伝子組換え)を投与)及び32週間の非盲検投与期間(本剤を投与、ただし、無作為化投与期間でエクリズマブ(遺伝子組換え)が投与されていた症例は4週間は投与を継続)で構成された。
主要評価項目である無作為化投与期間の16週時点のHb値のベースラインからの変化量は次のとおりであり、本剤群のエクリズマブ(遺伝子組換え)群に対する優越性が示された。
→図表を見る(PDF)
副作用は、導入投与期間で53.8%(43/80例)、無作為化投与期間の本剤群で34.1%(14/41例)、非盲検投与期間で46.8%(36/77例)に認められ、主な副作用は、注射部位紅斑(導入投与期間、無作為化投与期間の本剤群、非盲検投与期間でそれぞれ27.5%、14.6%、13.0%)、注射部位腫脹(同11.3%、9.8%、1.3%)、注射部位そう痒感(同11.3%、2.4%、6.5%)であった。
17.3 その他
17.3.1 免疫原性
発作性夜間ヘモグロビン尿症患者を対象とした国際共同第III相試験(APL2‐302試験)において、本剤が投与された患者(総症例80例、日本人10例を含む)のうち、抗ペグセタコプラン ペプチド抗体産生が検出された患者の割合は2.5%(2/80例、日本人は0例)であった。[15.1参照]
18.1 作用機序
ペグセタコプランは、補体C3タンパク質及びC3bに高親和性で結合し、C3の開裂、補体活性化の下流エフェクターの生成及び膜侵襲複合体(MAC)生成を阻害する。その結果、ペグセタコプランは発作性夜間ヘモグロビン尿症患者における血管外溶血及び血管内溶血を抑制する。
18.2 薬力学的作用
発作性夜間ヘモグロビン尿症患者に本剤1080mgを週2回投与した結果、血中C3濃度は増加し、Hb値の改善、網状赤血球数及びLDH値の低下が認められた。
- 製造販売会社
- Sobi Japan
- 販売会社
- 旭化成ファーマ
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