オニバイド点滴静注43mg
添付文書情報2022年10月改定(第2版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 1.1. 従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤の代替として本剤を投与しないこと〔8.1参照〕。
1.2. 本剤の投与にあたっては、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
1.3. 投与に際しては、骨髄抑制、重度下痢等の重篤な副作用が起こることがあり、ときに致命的経過をたどることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること〔8.2、11.1.1、11.1.2参照〕。
- 禁忌
- 2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 骨髄機能抑制のある患者:骨髄機能抑制が増悪して重症感染症等を併発し、致命的となることがある。
2.3. 感染症を合併している患者:感染症が増悪し、致命的となることがある。
2.4. 重度下痢のある患者:下痢が増悪して脱水、電解質異常、循環不全を起こし、致命的となることがある。
2.5. 腸管麻痺、腸閉塞のある患者:腸管からの排泄が遅れ、重篤な副作用が発現し、致命的となることがある。
2.6. 間質性肺疾患又は肺線維症の患者:症状が増悪し、致命的となることがある。
2.7. 多量の腹水、多量の胸水のある患者:重篤な副作用が発現し、致命的となることがある。
2.8. 黄疸のある患者:重篤な副作用が発現し、致命的となることがある。
2.9. アタザナビル硫酸塩投与中の患者〔10.1参照〕。
- 効能・効果
- がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵癌。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 臨床試験に組み入れられた患者の病期、前治療歴、UGT1A1(イリノテカンの活性代謝物(SN-38)の主な代謝酵素)遺伝子多型等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
5.2. 本剤の一次治療における有効性及び安全性は確立していない。
5.3. 本剤の術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない。
- 用法・用量
- フルオロウラシル及びレボホリナートとの併用において、通常、成人にはイリノテカンとして1回70mg/㎡(体表面積)を90分かけて2週間間隔で点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 本剤を単独投与した場合の有効性及び安全性は確立していない。
7.2. UGT1A1*6のホモ接合体若しくはUGT1A1*28のホモ接合体を有する患者、又はUGT1A1*6及びUGT1A1*28のヘテロ接合体を有する患者では、イリノテカンとして1回50mg/㎡を開始用量とする(なお、忍容性が認められる場合には、イリノテカンとして1回70mg/㎡に増量することができる)〔9.1.2参照〕。
7.3. 本剤投与により副作用が発現した場合には、次記の基準を参考に、本剤及びフルオロウラシルの減量等を考慮すること〔8.2、11.1.1、11.1.2参照〕。
[投与可能条件]
投与予定日に確認し、当該条件を満たす状態へ回復するまで投与を延期する。
1). 好中球数:副作用が発現した場合、好中球数1500/mm3以上へ回復するまで投与を延期する。
2). 発熱性好中球減少症:好中球数1500/mm3以上かつ感染症から回復するまで投与を延期する。
3). 血小板数:副作用が発現した場合、血小板数100000/mm3以上へ回復するまで投与を延期する。
4). 下痢:Grade1又はベースラインへ回復するまで投与を延期する。
5). その他の副作用<無力症及びGrade3の食欲減退を除く>:Grade1又はベースラインへ回復するまで投与を延期する。
GradeはCTCAE version4.0に準じる。
[投与再開時の減量基準]
前回の投与後に次のいずれかの程度に該当する副作用が発現した場合は、該当するごとに、次の減量方法に従って減量する(「減量時の投与量」を参考にすること)。
1). 好中球減少<Grade3以上>又は発熱性好中球減少症、白血球減少<Grade3以上>、血小板減少<Grade3以上>、下痢<Grade3以上>:本剤及びフルオロウラシルを1段階減量する(レボホリナートは減量しないことが望ましい)。
2). 悪心<Grade3以上で適切な制吐療法にもかかわらず発現した場合>/嘔吐<Grade3以上で適切な制吐療法にもかかわらず発現した場合>:本剤を1段階減量する(レボホリナートは減量しないことが望ましい)。
3). その他副作用<無力症及び食欲減退を除くGrade3以上>:本剤及びフルオロウラシルを1段階減量する(レボホリナートは減量しないことが望ましい)。
GradeはCTCAE version4.0に準じる。
[減量時の投与量]
1). 開始用量:本剤(イリノテカンとして)70mg/㎡、フルオロウラシル2400mg/㎡:
①. 1段階減量:本剤(イリノテカンとして)50mg/㎡、フルオロウラシル1800mg/㎡。
②. 2段階減量:本剤(イリノテカンとして)43mg/㎡、フルオロウラシル1350mg/㎡。
③. 3段階減量:本剤中止、フルオロウラシル中止。
2). 開始用量:本剤(イリノテカンとして)50mg/㎡、フルオロウラシル2400mg/㎡:
①. 1段階減量:本剤(イリノテカンとして)43mg/㎡、フルオロウラシル1800mg/㎡。
②. 2段階減量:本剤(イリノテカンとして)35mg/㎡、フルオロウラシル1350mg/㎡。
③. 3段階減量:本剤中止、フルオロウラシル中止。
- 生殖能を有する者
- 8.1. 本剤はイリノテカン塩酸塩水和物をリポソームに封入した製剤であることから、本剤の有効性、安全性、薬物動態等は従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤と異なる。
本剤を従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤の代替として使用しないこと。また、本剤を従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤と同様の用法・用量で投与しないこと〔1.1参照〕。
8.2. 骨髄機能抑制、重度下痢等の重篤な副作用があらわれることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること(投与後2週間は特に頻回に末梢血液検査を行うなど、極めて注意深く観察すること)。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延することがあるので、投与は慎重に行うこと〔1.3、7.3、11.1.1、11.1.2参照〕。
8.3. 間質性肺疾患があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認、及び定期的な胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うこと〔11.1.9参照〕。
9.1.1. グルクロン酸抱合異常の患者:Gilbert症候群のようなグルクロン酸抱合異常の患者においては、本剤の代謝が遅延することにより骨髄機能抑制等の重篤な副作用が発現する可能性が高いため、十分注意すること。
9.1.2. UGT1A1*6のホモ接合体若しくはUGT1A1*28のホモ接合体を有する患者、又はUGT1A1*6及びUGT1A1*28のヘテロ接合体を有する患者:本剤の活性代謝物(SN-38)の主な代謝酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によるSN-38の代謝が減少することにより、重篤な副作用
(特に好中球減少)が発現する可能性が高いため、十分注意すること〔7.2、17.1.3参照〕。
腎機能障害患者:腎障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の重度腎機能障害患者は臨床試験では除外されている。
肝機能障害患者:肝障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。血清総ビリルビン値が基準範囲上限値を超える患者、AST値が基準範囲上限値の2.5倍を超える及びALT値が基準範囲上限値の2.5倍を超える(肝転移がありAST値が基準範囲上限値の5倍を超える及び肝転移がありALT値が基準範囲上限値の5倍を超える)患者は臨床試験では除外されている。
9.4.1. 生殖能を有する者:性腺に対する影響を考慮すること〔15.2.1参照〕。
9.4.2. 妊娠可能な女性患者:妊娠可能な女性患者には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
9.4.3. パートナーが妊娠する可能性のある男性患者:パートナーが妊娠する可能性のある男性患者には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること〔15.2.2参照〕。
- 相互作用
- イリノテカンは、主にカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に変換されるが、CYP3A4により一部無毒化される。イリノテカンの活性代謝物(SN-38)は、主に肝のUDP-グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合体(SN-38G)となる〔16.4参照〕。
10.1. 併用禁忌:アタザナビル硫酸塩<レイアタッツ>〔2.9参照〕[骨髄機能抑制・下痢等の副作用が増強するおそれがある(UGT1A1阻害作用のあるアタザナビル硫酸塩との併用により、イリノテカンの代謝が遅延することが考えられる)]。
10.2. 併用注意:1). 他の抗悪性腫瘍剤、放射線照射[骨髄機能抑制・下痢等の副作用が増強するおそれがあるので、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する(併用により殺細胞作用が増強される)]。
2). 末梢性筋弛緩剤(スキサメトニウム塩化物水和物、ベクロニウム臭化物、ロクロニウム臭化物等)[末梢性筋弛緩剤の作用が減弱するおそれがある(イリノテカン塩酸塩水和物の動物実験で筋収縮増強作用が認められている)]。
3). CYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル等)、グレープフルーツジュース[骨髄機能抑制・下痢等の副作用が増強するおそれがあるので、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する(CYP3Aを阻害するこれらの薬剤等との併用により、CYP3A4による無毒化が阻害されるため、カルボキシルエステラーゼによるSN-38の生成がその分増加し、SN-38の血中濃度が上昇する可能性がある)]。
4). CYP3A誘導剤(カルバマゼピン、フェノバルビタール、リファンピシン等)、セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’sWort)[作用が減弱するおそれがあるので、本剤投与期間中はこれらの薬剤・食品との併用を避けることが望ましい(CYP3Aを誘導するこれらの薬剤等との併用により、CYP3A4による無毒化が促進されるため、カルボキシルエステラーゼによるSN-38の生成がその分減少し、SN-38の血中濃度が低下する可能性がある)]。
5). ソラフェニブトシル酸塩、レゴラフェニブ水和物[骨髄機能抑制・下痢等の副作用が増強するおそれがあるので、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する(UGT1A1阻害作用のあるこれらの薬剤との併用により、イリノテカン及びSN-38の血中濃度が上昇する可能性がある)]。
6). ラパチニブトシル酸塩水和物[骨髄機能抑制・下痢等の副作用が増強するおそれがあるので、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する(機序は不明だが、ラパチニブトシル酸塩水和物との併用により、SN-38の血中濃度が上昇する可能性がある)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 骨髄機能抑制:好中球減少(44.8%)、白血球減少(35.0%)、貧血(17.8%)、血小板減少(9.2%)、発熱性好中球減少症(2.5%)、無顆粒球症(0.6%)、汎血球減少症(0.6%)等があらわれることがある〔1.3、7.3、8.2参照〕。
11.1.2. 下痢(49.7%):重度下痢の持続により、脱水、電解質異常及びショック(循環不全)等をきたすことがあり、特に重篤な白血球減少・重篤な好中球減少を伴った場合には、致命的経過をたどることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、ロペラミド塩酸塩等の止瀉剤の投与等の適切な処置を行うこと。なお、本剤による重度の下痢として次の2つの機序が考えられている〔1.3、7.3、8.2参照〕。
・ 重度下痢<早発型>:本剤投与中あるいは投与直後に発現する(コリン作動性と考えられ、高度である場合もあるが多くは一過性であり、副交感神経遮断剤の投与により緩和することがある)。
・ 重度下痢<遅発型>:本剤投与後24時間以降に発現する(主に本剤の活性代謝物(SN-38)による腸管粘膜傷害に基づくものと考えられ、持続することがある)。
11.1.3. 感染症(10.4%):敗血症(1.8%)、肺炎(0.6%)等の感染症があらわれることがある。
11.1.4. 肝機能障害(11.0%)、黄疸(頻度不明)。
11.1.5. Infusion reaction(4.9%):アナフィラキシー、発疹、蕁麻疹、過敏症等を含むinfusion reactionがあらわれることがある。
11.1.6. 血栓塞栓症(1.2%)。
11.1.7. 腸炎(1.2%)、腸閉塞(0.6%)、消化管出血(頻度不明)。
11.1.8. 播種性血管内凝固(頻度不明)。
11.1.9. 間質性肺疾患(頻度不明)〔8.3参照〕。
11.1.10. 急性腎障害(1.8%)。
11.1.11. 心筋梗塞・狭心症(頻度不明)。
11.1.12. 心室性期外収縮(頻度不明)。
- 11.2. その他の副作用
1). 心臓障害:(5%未満)頻脈、心電図QT延長。
2). 耳および迷路障害:(5%未満)回転性めまい。
3). 眼障害:(5%未満)眼脂、眼刺激。
4). 胃腸障害:(50%以上)悪心、(5~50%未満)嘔吐、口内炎、便秘、腹痛、(5%未満)口内乾燥、腹部膨満、胃食道逆流性疾患、膵炎、腹部不快感、消化不良、白色便、痔核、脂肪便、地図状舌。
5). 一般・全身障害および投与部位の状態:(5~50%未満)無力症、発熱、(5%未満)悪寒、末梢性浮腫、易刺激性。
6). 代謝および栄養障害:(5~50%未満)食欲減退、低カリウム血症、(5%未満)脱水、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、高血糖、低クロール血症、低リン酸血症、高ナトリウム血症、低タンパク血症。
7). 筋骨格系および結合組織障害:(5%未満)筋肉痛、関節痛、筋痙縮、筋力低下、筋骨格硬直。
8). 神経系障害:(5~50%未満)味覚異常、(5%未満)浮動性めまい、末梢性ニューロパチー、頭痛、灼熱感、異常感覚、傾眠。
9). 精神障害:(5%未満)不安、うつ病、不眠症。
10). 腎および尿路障害:(5%未満)頻尿。
11). 呼吸器、胸郭および縦隔障害:(5%未満)しゃっくり、呼吸困難、発声障害、鼻出血。
12). 皮膚および皮下組織障害:(5~50%未満)脱毛症、(5%未満)皮膚色素過剰、手掌・足底発赤知覚不全症候群、皮膚乾燥、爪異常、多汗症、紅斑、光線過敏性反応。
13). 血管障害:(5%未満)ほてり、静脈炎、高血圧、低血圧。
14). その他:(5~50%未満)体重減少、(5%未満)C-反応性蛋白増加。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(イリノテカン塩酸塩水和物の動物実験(ラット・ウサギ)で催奇形性作用が報告されている)〔9.4.2参照〕。
授乳しないことが望ましい(イリノテカン塩酸塩水和物の動物実験(ラット)で乳汁移行が報告されている)。
- 小児等
- 小児を対象とした臨床試験は実施していない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤調製時の注意14.1.1. 本剤は細胞毒性を有するため、取り扱う際には手袋、ゴーグル及び防護服を着用することが望ましい。薬液が皮膚に付着した場合は直ちに石鹸及び流水でよく洗い流し、薬液が粘膜に付着した場合は、流水でよく洗い流すこと。
14.1.2. 無菌的にバイアルから本剤の必要量を採取し、500mLの生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈し、穏やかに反転させて混和する。
14.1.3. 本剤は、混和後速やかに投与すること(やむをえず保存する場合は、遮光した上で、室温で保存する場合には6時間以内、2~8℃(凍結させないこと)で保存する場合には24時間以内に投与すること)。また、未使用残液は廃棄すること。
14.2. 薬剤投与時の注意静脈内投与に際し、投与部位の炎症の徴候をモニタリングし、薬液が血管外に漏れないように慎重に投与すること(薬液が血管外に漏れた場合は、生理食塩液や滅菌水で洗い流し、患部を氷で冷やすこと)。
凍結しないこと。外箱開封後は遮光して保存すること。
- その他の注意
- 15.2. 非臨床試験に基づく情報15.2.1. イヌを用いた反復投与毒性試験において、雌雄生殖器萎縮が認められている〔9.4.1参照〕。
15.2.2. イリノテカン塩酸塩水和物は、ほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験及びマウス骨髄細胞を用いた小核試験において、遺伝毒性が報告されている〔9.4.3参照〕。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
ゲムシタビン治療後に増悪した日本人膵癌患者を対象にレボホリナート及びフルオロウラシルとの併用下で、本剤70mg/m2を点滴静注したときのイリノテカン(リポソーム型及び従来の型)及びSN‐38の血漿中濃度推移を添付文書の図1に、薬物動態パラメータを表1及び表2に示す。
図1 ゲムシタビン治療後に増悪した日本人膵癌患者を対象にレボホリナート及びフルオロウラシルとの併用下で、本剤70mg/m2を点滴静注したときのイリノテカン(A)の血漿中濃度推移(平均値±標準誤差)
図1 ゲムシタビン治療後に増悪した日本人膵癌患者を対象にレボホリナート及びフルオロウラシルとの併用下で、本剤70mg/m2を点滴静注したときのSN‐38(B)の血漿中濃度推移(平均値±標準誤差)
表1 ゲムシタビン治療後に増悪した日本人膵癌患者に本剤70mg/m2を投与したときのイリノテカンの薬物動態パラメータ[平均値(標準偏差)]
→図表を見る(PDF)
表2 ゲムシタビン治療後に増悪した日本人膵癌患者に本剤70mg/m2を投与したときのSN‐38の薬物動態パラメータ[平均値(標準偏差)]
→図表を見る(PDF)
16.3 分布
固形癌患者に本剤を静脈内投与したとき、投与169.5時間後までの血漿中イリノテカンに対するリポソーム型イリノテカンの割合は86%以上であり、経時的な変化は認められなかった(外国人データ)。本剤の血漿タンパク結合率は0.44%未満であった(in vitro)。
16.4 代謝
本剤の代謝に関する試験は実施していない。イリノテカンはカルボキシルエステラーゼによって活性代謝物であるSN‐38に、その後UGT1A1によってSN‐38からグルクロン酸抱合体であるSN‐38Gに代謝される。また、イリノテカンはCYP3A4によって酸化代謝物に代謝されたあと、さらにカルボキシルエステラーゼによってSN‐38に代謝される。[10.参照]
16.5 排泄
本剤の排泄に関する試験は実施していない。固形癌患者8例に[14C]‐標識イリノテカン塩酸塩水和物125mg/m2を単回静脈内投与したとき、投与168及び192時間後までに投与放射能の約32及び64%がそれぞれ尿及び糞中に排泄された。尿中に排泄された未変化体及びSN‐38は投与量の約22及び0.43%、糞中に排泄された未変化体及びSN‐38は投与量の約32及び8.2%であった(外国人データ)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験
ゲムシタビンを含む化学療法後に増悪した遠隔転移を有する膵癌患者注1)を対象として、本剤(イリノテカンとして70mg/m2)注2)とフルオロウラシル及びレボホリナートの併用投与(本剤+5‐FU/l‐LV)と5‐FU/l‐LVの有効性及び安全性を比較する第II相臨床試験を実施した注3)。主要評価項目とされた独立中央判定委員会の評価による無増悪生存期間(PFS)の結果(2017年5月4日データカットオフ)は表3及び添付文書の図2のとおりであった。
注1)組織学的又は細胞学的に膵外分泌腺癌と確認された、Karnofsky Performance Status 70以上の患者が対象とされた。
注2)UGT1A1*6若しくはUGT1A1*28のホモ接合体を有する患者、又はUGT1A1*6及びUGT1A1*28のヘテロ接合体を有する患者ではイリノテカンとして50mg/m2で開始された。
注3)本剤+5‐FU/l‐LV群では、1サイクルを2週間として、第1日目に①本剤(イリノテカンとして70mg/m2)を90分かけて静脈内投与、②レボホリナート200mg/m2を2時間かけて静脈内投与、③フルオロウラシル2,400mg/m2を46時間かけて静脈内投与した。5‐FU/l‐LV群では、1サイクルを2週間として、第1日目に①レボホリナート200mg/m2を2時間かけて静脈内投与、②フルオロウラシル2,400mg/m2を46時間かけて静脈内投与した。
表3 独立中央判定委員会の評価によるPFS
→図表を見る(PDF)
図2 独立中央判定委員会の評価によるPFS
副作用発現頻度(本剤+5‐FU/l‐LV群)は、100%(46/46例)であった。主な副作用は悪心78.3%(36/46例)、好中球数減少63.0%(29/46例)、食欲減退及び白血球数減少が各60.9%(28/46例)並びに下痢56.5%(26/46例)であった。
17.1.2 海外第III相試験
ゲムシタビンを含む化学療法後に増悪した遠隔転移を有する膵癌患者注1)を対象として、本剤(イリノテカンとして70mg/m2注4))と5‐FU及びホリナートの併用投与(本剤+5‐FU/LV)、本剤(イリノテカンとして100mg/m2注5))単独投与と5‐FU/LVの有効性及び安全性を比較する3群比較、第III相臨床試験を実施した注6)。主要評価項目とされた全生存期間(OS)の結果(2014年2月14日データカットオフ)は表4及び添付文書の図3のとおりであり、5‐FU/LV群に対して本剤+5‐FU/LV群は統計学的に有意なOSの延長を示した。一方、5‐FU/LV群に対する本剤単独群の統計学的に有意なOSの延長は認められなかった。
注4)UGT1A1*28ホモ接合体を有する患者ではイリノテカンとして50mg/m2で開始された。
注5)UGT1A1*28ホモ接合体を有する患者ではイリノテカンとして70mg/m2で開始された。
注6)本剤+5‐FU/LV群では、1サイクルを2週間として、第1日目に①本剤(イリノテカンとして70mg/m2)を90分かけて静脈内投与、②ホリナート400mg/m2(レボホリナート200mg/m2に相当)を30分かけて静脈内投与、③フルオロウラシル2,400mg/m2を46時間かけて静脈内投与した。本剤単独群では、1サイクルを3週間として、第1日目に本剤(イリノテカンとして100mg/m2)を90分かけて静脈内投与した。5‐FU/LV群では、1サイクルを6週間として、第1、8、15及び22日目に①ホリナート200mg/m2を30分かけて静脈内投与、②フルオロウラシル2,000mg/m2を24時間かけて静脈内投与した。
表4 OS(本剤+5‐FU/LV群及び5‐FU/LV群、本剤単独群及び5‐FU/LV群)
→図表を見る(PDF)
図3 OS(本剤+5‐FU/LV群及び5‐FU/LV群)
副作用発現頻度(本剤+5‐FU/LV群)は91.5%(107/117例)であった。内訳として主な副作用(20%以上)は下痢47.0%(55/117例)、悪心45.3%(53/117例)、嘔吐42.7%(50/117例)、疲労30.8%(36/117例)、食欲減退27.4%(32/117例)及び好中球減少症21.4%(25/117例)であった。
17.1.3 本剤の臨床試験におけるUGT1A1遺伝子多型と副作用発現率
国内第II相試験(331501試験)及び海外第III相試験(NAPOLI‐1試験)において、UGT1A1遺伝子多型検査が実施された。本剤+5‐FU/l‐LV(又はLV)群におけるGrade3以上の好中球減少及び下痢の発現率は表5のとおりであった。[9.1.2参照]
表5 UGT1A1遺伝子多型と副作用発現率
→図表を見る(PDF)
18.1 作用機序
イリノテカンはI型トポイソメラーゼを阻害し、DNA合成を阻害することにより細胞増殖抑制作用を発現すると考えられる。本剤は、イリノテカンを封入したリポソーム製剤である。本剤が貪食作用等によりマクロファージに取り込まれると、イリノテカンが細胞外に放出される。放出されたイリノテカンは腫瘍組織において活性化代謝物であるSN‐38に変換され、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられる。
18.2 抗腫瘍作用
本剤は、ヒト膵癌由来細胞株(PANC‐1、MIA PaCa‐2、BxPC‐3等)を皮下移植した非肥満型糖尿病/重症複合型免疫不全マウス及びヒト膵癌患者由来腫瘍組織片を皮下移植した重症免疫不全マウス等において、腫瘍増殖抑制作用を示した。
- 製造販売会社
- 日本セルヴィエ
- 販売会社
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