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カンサイダス点滴静注用70mg

販売名
カンサイダス点滴静注用70mg
薬価
70mg1瓶 23386.00円
製造メーカー
MSD

添付文書情報2022年11月改定(第2版)

商品情報

薬効分類名
その他の主としてカビに作用するもの
一般名
カスポファンギン酢酸塩注射用
規制区分
  • 特生
  • 特承
  • 覚原
禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
効能・効果
1). 真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症。
2). カンジダ属又はアスペルギルス属による次記の真菌感染症。
①. 食道カンジダ症。
②. 侵襲性カンジダ症。
③. アスペルギルス症(侵襲性アスペルギルス症、慢性壊死性肺アスペルギルス症、肺アスペルギローマ)。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 〈真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症〉本剤は次の3条件を満たす症例に投与すること:1回の検温で38℃以上又は1時間以上持続する37.5℃以上の発熱で、好中球数が500/mm3未満、又は1000/mm3未満で500/mm3未満に減少することが予測され、適切な抗菌薬投与を行っても解熱せず、抗真菌薬の投与が必要と考えられる場合に投与。
5.2. 〈真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症〉発熱性好中球減少症の患者への投与は、発熱性好中球減少症の治療に十分な経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ実施すること。
5.3. 〈真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症〉発熱性好中球減少症に投与する場合には、投与前に適切な培養検査等を行い、起炎菌を明らかにする努力を行うこと(起炎菌が判明した際には、本剤投与継続の必要性を検討すること)。
5.4. 〈侵襲性カンジダ症〉カンジダ血症、腹腔内膿瘍、腹膜炎、胸腔内感染以外における検討は行われていない〔17.1.1、17.1.2参照〕。
5.5. 〈侵襲性アスペルギルス症〉他の治療が無効あるいは忍容性に問題がある患者に本剤の使用を考慮すること。
用法・用量
〈成人〉
真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症
通常、カスポファンギンとして投与初日に70mgを、投与2日目以降は50mgを1日1回投与する。本剤は約1時間かけて緩徐に点滴静注する。
カンジダ属又はアスペルギルス属による次記の真菌感染症
・ 食道カンジダ症
通常、カスポファンギンとして50mgを1日1回投与する。本剤は約1時間かけて緩徐に点滴静注する。
・ 侵襲性カンジダ症、アスペルギルス症
通常、カスポファンギンとして投与初日に70mgを、投与2日目以降は50mgを1日1回投与する。本剤は約1時間かけて緩徐に点滴静注する。
〈小児〉
真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症、カンジダ属又はアスペルギルス属による食道カンジダ症、侵襲性カンジダ症、アスペルギルス症
通常、カスポファンギンとして投与初日に70mg/㎡(体表面積)を、投与2日目以降は50mg/㎡(体表面積)を1日1回投与する。本剤は約1時間かけて緩徐に点滴静注する。なお、1日1回50mg/㎡(体表面積)の投与で効果不十分の場合には、1日1回70mg/㎡(体表面積)まで増量することができる。いずれの場合も1日用量として70mgを超えないこと。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈成人〉中等度肝機能障害を伴う患者に対しては、次を目安に本剤の用量調節をすること〔16.6.1参照〕。
1). 〈成人〉中等度肝機能障害<Child-Pughスコア7~9>を伴う食道カンジダ症:35mgを1日1回。
2). 〈成人〉中等度肝機能障害<Child-Pughスコア7~9>を伴う発熱性好中球減少症、侵襲性カンジダ症、アスペルギルス症:投与初日に70mg、投与2日目以降は35mgを1日1回。
〈成人〉軽度肝機能障害<Child-Pughスコア5~6>を伴う患者に対しては通常の用量を投与する。
〈成人〉重度肝機能障害<Child-Pughスコア10以上>を伴う患者に対しては本剤の投与経験がない。
7.2. 〈成人〉エファビレンツ、ネビラピン、リファンピシン、デキサメタゾン、フェニトイン、カルバマゼピンと本剤を併用する場合、成人は本剤70mgの1日1回投与を検討すること〔10.2、16.7.3、16.7.4参照〕。
7.3. 〈小児〉3ヵ月未満の患者では血中濃度が高くなる可能性があるので、3ヵ月未満の患者に投与する際は減量を考慮すること〔16.1.2参照〕。
7.4. 〈小児〉小児の肝機能障害患者に対する検討は行われていない。
7.5. 〈小児〉エファビレンツ、ネビラピン、リファンピシン、デキサメタゾン、フェニトイン、カルバマゼピンと本剤を併用する場合、小児は本剤70mg/㎡(体表面積)の1日1回投与を検討すること(なお、1日用量として70mgを超えないこと)〔10.2、16.7.3、16.7.4参照〕。
合併症・既往歴等のある患者
8.1. 本剤の投与期間は患者の臨床症状、効果等に基づき決定し、治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること〔17.1.1、17.1.2参照〕。
8.2. 肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分観察すること〔11.1.2参照〕。
9.1.1. 薬物過敏症<本剤の成分に対する過敏症を除く>の既往歴のある患者:特に他のキャンディン系抗真菌剤に対し過敏症の既往歴のある患者には注意すること。
相互作用
10.2. 併用注意:1). シクロスポリン〔16.7.1参照〕[本剤をシクロスポリンと併用した際、シクロスポリンの血中濃度に変化はみられなかったが、本剤のAUCは増加し、また、両薬剤の併用により一過性のALT及びAST増加が認められたため、シクロスポリンが投与されている患者への本剤の投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみとし、両薬剤を併用する場合は、肝酵素の綿密なモニタリングの実施を考慮すること(併用による本剤のAUCの増加には、トランスポーター(OATP1B1)を介した本剤の肝取り込みの阻害が関与していると考えられる)]。
2). タクロリムス〔16.7.2参照〕[本剤をタクロリムスと併用した際、タクロリムスの投与後12時間血中濃度<C12hr>を減少させたが、本剤の血中濃度に有意な変化はみられなかったため、本剤とタクロリムスを併用する場合は、タクロリムスの血中濃度のモニタリング及びタクロリムスの用量調節が推奨される(機序不明)]。
3). リファンピシン:①. リファンピシン〔7.2、7.5、16.7.3参照〕[本剤をリファンピシン単回投与と併用した際、本剤のAUCが増加し、リファンピシンの血中濃度に有意な変化はみられなかった(リファンピシンの併用による本剤のクリアランス誘導には代謝過程よりも肝取り込みトランスポーター(OATP1B1)を介した輸送過程が影響すると考えられる)]。
②. リファンピシン〔7.2、7.5、16.7.3参照〕[リファンピシンの誘導作用が定常状態下で本剤を併用した際、本剤のトラフ濃度が減少し、リファンピシンの血中濃度に有意な変化はみられなかった(リファンピシンの併用による本剤のクリアランス誘導には代謝過程よりも肝取り込みトランスポーター(OATP1B1)を介した輸送過程が影響すると考えられる)]。
4). エファビレンツ、ネビラピン、フェニトイン、デキサメタゾン、カルバマゼピン〔7.2、7.5、16.7.4参照〕[これらの薬剤と本剤の併用により、臨床的に有意な本剤の血中濃度の低下が生じるおそれがある(これらの薬剤の併用による本剤のクリアランス誘導には代謝過程よりも取り込み輸送過程が影響すると考えられる)]。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. アナフィラキシー(頻度不明):発疹、顔面腫脹、血管浮腫、そう痒症、熱感、気管支痙攣、呼吸困難、潮紅等の異常があらわれることがある。
11.1.2. 肝機能障害(頻度不明):AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇や肝機能障害があらわれることがある〔8.2参照〕。
11.1.3. 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)。
11.2. その他の副作用
1). 眼障害:(1~5%未満)眼そう痒症。
2). 胃腸障害:(1~5%未満)悪心、腹部圧痛、下痢、血便排泄、下部消化管出血、口の感覚鈍麻、(頻度不明)嘔吐。
3). 全身障害及び投与局所様態:(1~5%未満)悪寒、発熱、血管穿刺部位炎症、(頻度不明)腫脹、末梢性浮腫。
4). 肝胆道系障害:(5%以上)肝機能異常。
5). 臨床検査:(5%以上)ALT増加、AST増加、γ-GTP増加、(1~5%未満)血中Al-P増加、血中カリウム減少、プロトロンビン時間延長、活性化部分トロンボプラスチン時間延長、血中ビリルビン増加、血中カルシウム減少、血中クロール増加、血中ブドウ糖減少、血中カリウム増加、CRP増加、ヘマトクリット減少、血小板数減少、総蛋白減少、白血球数減少、尿中ビリルビン増加、好酸球数増加、LDH増加、(頻度不明)ヘモグロビン減少、抱合ビリルビン増加、血中アルブミン減少、血中クレアチニン増加、血中マグネシウム減少。
6). 代謝及び栄養障害:(1~5%未満)糖尿病、(頻度不明)低カリウム血症、高カルシウム血症。
7). 神経系障害:(1~5%未満)浮動性めまい、頭痛、失神。
8). 皮膚及び皮下組織障害:(1~5%未満)発疹、(頻度不明)皮膚そう痒症、多汗症。
9). 血管障害:(1~5%未満)静脈炎、高血圧、血管障害、(頻度不明)潮紅。
10). 呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(1~5%未満)肺水腫、(頻度不明)呼吸困難。
11). 血液及びリンパ系障害:(1~5%未満)貧血。
12). 腎及び尿路障害:(1~5%未満)腎機能障害。
授乳婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(ラットでは母動物に毒性があらわれる用量(5mg/kg/日)で、胎仔体重減少並びに胎仔頭蓋不完全骨化及び胎仔体躯不完全骨化発現率の増加が認められており、さらに、同用量で胎仔頸肋の発現率増加がみられており、動物試験(ラット、ウサギ)で、胎盤通過が認められている)。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ヒトの母乳中に移行するか否かは不明であるが、ラットでは乳汁移行が認められている)。
小児等
投与に際しては観察を十分に行うこと。小児の臨床試験では、成人と比べALT増加、AST増加、肝機能異常の発現頻度が高いことが報告されている。低出生体重児、新生児及び3ヵ月未満の乳児を対象とした国内臨床試験は実施していない。
適用上の注意
14.1. 薬剤調製時の注意14.1.1. 〈成人〉バイアル中の本剤の溶解:バイアルを常温に戻し、本品1バイアル(70mgバイアル又は50mgバイアル)に、生理食塩液あるいは注射用水10.5mLを注入し、ゆっくりと振り混ぜて粉末状の本剤を完全に溶解させる。バイアル中に溶解した本剤の溶液が混濁又は沈殿している場合はその溶液を使用しないこと。本剤の溶解後の濃度は、7.2mg/mL(70mgバイアル)又は5.2mg/mL(50mgバイアル)とそれぞれ異なるので希釈する時は注意すること。
14.1.2. 〈成人〉本剤投与時の調製方法:希釈液は、生理食塩液又は乳酸リンゲル液を用いる。通常、バイアル中で溶解した本剤の溶液の必要量(次参照)を、250mLの希釈液の入った点滴静注用バッグ又はボトルに添加して希釈し、点滴静注液とする。
調製後の点滴静注液が混濁又は沈殿している場合はその静注液を使用しないこと。1日1回用量が50mg又は35mgの場合には、必要に応じて希釈液を100mLに減じて用
いることができる。
[点滴静注液の調製法]1). 1日1回用量70mg(70mgバイアル1本):点滴静注用バッグ又はボトルへ添加する本剤の溶液量10mL、通常の調製法(250mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度0.28mg/mL、希釈液を減量した調製法(100mLの希釈液に本剤溶液を添加)は推奨しない*。
2). 1日1回用量70mg(50mgバイアル2本)[70mgバイアルが利用できない場合には、50mgバイアル2本を用いて1日1回用量70mgの点滴静注液を調製することができる]:点滴静注用バッグ又はボトルへ添加する本剤の溶液量14mL、通常の調製法(250mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度0.28mg/mL、希釈液を減量した調製法(100mLの希釈液に本剤溶液を添加)は推奨しない*。
3). 1日1回用量50mg(70mgバイアル1本)[50mgバイアルが利用できない場合には、70mgバイアル1本を用いて1日1回用量50mgの点滴静注液を調製することができる]:点滴静注用バッグ又はボトルへ添加する本剤の溶液量7mL、通常の調製法(250mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度0.20mg/mL、希釈液を減量した調製法(100mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度0.47mg/mL。
4). 1日1回用量50mg(50mgバイアル1本):点滴静注用バッグ又はボトルへ添加する本剤の溶液量10mL、通常の調製法(250mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度は0.20mg/mL、希釈液を減量した調製法(100mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度0.47mg/mL。
5). 1日1回用量35mg(中等度肝機能障害用)(70mgバイアル1本):点滴静注用バッグ又はボトルへ添加する本剤の溶液量5mL、通常の調製法(250mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度0.14mg/mL、希釈液を減量した調製法(100mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度0.34mg/mL。
6). 1日1回用量35mg(中等度肝機能障害用)(50mgバイアル1本):点滴静注用バッグ又はボトルへ添加する本剤の溶液量7mL、通常の調製法(250mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度0.14mg/mL、希釈液を減量した調製法(100mLの希釈液に本剤溶液を添加)で希釈後の本剤の濃度0.34mg/mL。
70mgバイアル、50mgバイアルのいずれを用いる際も、バイアル中の本剤の溶解には生理食塩液あるいは注射用水を10.5mL用いること。
*100mLの希釈液を用いた調製法は推奨しない。調製後の最終濃度が0.5mg/mLを超えないこと。
14.1.3. 〈小児〉患者の体表面積(BSA)に基づく1日1回の用量の計算:本剤投与前に患者の体表面積(BSA)※に基づいて用量を計算する。
投与初日の用量(mg)は、BSA(㎡)×70mg/㎡で計算し、投与2日目以降の用
量(mg)は、BSA(㎡)×50mg/㎡で計算する。
ただし、投与初日及び投与2日目以降の1日用量は、患者毎に計算された用量に関わらず、70mgを超えないこと。
14.1.4. 〈小児〉バイアル中の本剤の溶解:バイアルを常温に戻し、本品1バイアル(70mgバイアル又は50mgバイアル)に、生理食塩液あるいは注射用水10.5mLを注入し、ゆっくりと振り混ぜて粉末状の本剤を完全に溶解させる。バイアル中に溶解した本剤の溶液が混濁又は沈殿している場合はその溶液を使用しないこと。本剤の溶解後の濃度は、7.2mg/mL(70mgバイアル)又は5.2mg/mL(50mgバイアル)とそれぞれ異なるので希釈する時は注意すること。
14.1.5. 〈小児〉本剤投与時の調製方法:希釈液は、生理食塩液又は乳酸リンゲル液を用いる。バイアル中で溶解した本剤の溶液から計算した用量に相当する必要量を、点滴静注用バッグ又はボトルに添加して希釈し、点滴静注液とする。調製後の点滴静注液が混濁又は沈殿している場合はその静注液を使用しないこと。調製後の最終濃度が0.5mg/mLを超えないこと。
14.1.6. 〈共通〉本剤の調製に際しては、ブドウ糖を含む希釈液を使用しないこと(本剤はブドウ糖を含む希釈液中では不安定である)。
14.1.7. 〈共通〉調製後は速やかに使用すること(やむを得ず保存を必要とする場合でも、バイアル中で溶解した本剤の溶液は、25℃以下で24時間以内に使用すること)。また、希釈した点滴静注液は、25℃以下では24時間以内、冷所(2~8℃)では48時間以内に使用すること。
14.2. 薬剤投与時の注意本剤の投与に際しては、他の薬物<生理食塩液・注射用水・乳酸リンゲル液を除く>と混合しない、また、他剤と同じラインで同時に点滴静注を行わないこと(他剤と連続注入する場合には、本剤の投与前後にラインを生理食塩水又は乳酸リンゲル液でフラッシュすること)、他の薬物と混合した場合及び他剤と同じラインで同時に点滴静注を行った場合のデータはない。
※)患者の体表面積(BSA)は次に示すMosteller式により算出する。
BSA(㎡)=√(身長(cm)×体重(kg)÷3600)。

16.1 血中濃度
16.1.1 成人
(1)単回投与
日本人健康成人男性(各用量8名)にカスポファンギン20、40、70、100、150及び210mgを約60分間かけて単回静脈内投与注1)したとき、血漿中カスポファンギン濃度は静脈内投与終了時にピークに達した。また静脈内投与終了後から血漿中カスポファンギン濃度推移は多相性の消失を示し、β相の消失半減期(t1/2β)は9.62~10.37時間、γ相の消失半減期(t1/2γ)(150及び210mgのみ算出した)は41.64~41.93時間であった。投与後1時間の血漿中濃度(C1hr)、投与後24時間の血漿中濃度(C24hr)及びカスポファンギンの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)は、用量比例性を示した。当該用量範囲における血漿クリアランス(CLp)は、8.72~9.24mL/minであり、ほぼ一定であった。
(2)反復投与
日本人健康成人男性にカスポファンギン50及び100mgを1日1回14日間又は投与初日に70mg、第2日~第14日に50mgを1日1回反復静脈内投与したときの平均薬物動態パラメータを表1に、また平均血漿中濃度推移を添付文書の図に示す。
表1 日本人健康成人にカスポファンギンを1日1回14日間反復静脈内投与したときの平均薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)

図 日本人健康成人にカスポファンギンを1日1回14日間反復静脈内投与したときの平均血漿中濃度推移
†第3日~第12日は投与前の血漿中濃度を示す

日本人健康成人男性に投与初日にカスポファンギン70mg、第2日~第14日に40又は50mgを1日1回14日間反復静脈内投与注1)したとき、50mg投与では第2日までに定常状態に達した。
16.1.2 小児
日本人及び外国人小児患者にカスポファンギンを投与初日に70mg/m2(体表面積注2))、投与2日目以降50mg/m2(ただし1日用量として70mgを超えない)、1日1回約60分間かけて静脈内投与したときの薬物動態パラメータを表2に示す。なお、3ヵ月未満の小児患者の本薬の投与量は1日1回25mg/m2で、アムホテリシンB製剤と併用投与した。[7.3参照]
表2 日本人及び外国人小児患者にカスポファンギンを1日1回反復静脈内投与したときの定常状態における平均薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)

16.3 分布
16.3.1 カスポファンギンはヒト血漿蛋白と高度に結合した(約97%)。また、ヒトで赤血球移行性は低かった。
16.3.2 健康成人男性に[3H]‐カスポファンギンを単回静脈内投与したとき、マスバランスの結果から、組織中放射能は投与後36~48時間で投与量の約92%であった(外国人データ)。
16.4 代謝
カスポファンギンは加水分解及びN‐アセチル化によって緩徐に代謝される。カスポファンギンから開環ペプチド体が非酵素的に生成されるほか、環状ペプチドを構成するアミノ酸への加水分解及びその誘導体への代謝によってジヒドロキシホモチロシン及びN‐アセチルジヒドロキシホモチロシンなどが生成された(外国人データ)。
16.5 排泄
健康成人男性に[3H]‐カスポファンギンを単回静脈内投与したとき、投与後27日で、投与放射能の約41%が尿中、約34%が糞中に排泄された。未変化体の尿中排泄量はわずかであった(投与量の約1.4%)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者
(1)軽度肝機能障害患者(Child‐Pughスコア5~6)にカスポファンギン70mgを単回静脈内投与したとき、健康成人と比べてカスポファンギンのAUCは約55%増加した。投与初日にカスポファンギン70mg、第2日~第14日に50mgを反復静脈内投与したとき、健康成人と比べて、第7日及び第14日のカスポファンギンのAUCの増加はわずかであった(21~26%)(外国人データ)。
(2)中等度肝機能障害患者(Child‐Pughスコア7~9)に投与初日にカスポファンギン70mg、第2日~第14日に35mgを反復静脈内投与したとき、第7日及び第14日のカスポファンギンのAUCは健康成人(第1日:70mg、第2日~第14日:50mgを投与)と同程度であった(外国人データ)。[7.1参照]
16.6.2 高齢者
(1)健康高齢者(65歳以上)にカスポファンギン70mgを単回静脈内投与したとき、カスポファンギンのAUCは、健康若年成人と比較してわずかに増加した(約28%)(外国人データ)。
(2)真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症患者又は侵襲性カンジダ症患者でも同様に、若年成人患者と比較して高齢患者でわずかな年齢の影響が認められた(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
In vitro試験の結果からカスポファンギンは、肝取り込みトランスポーター(OATP1B1)の低親和性の基質であることが明らかとなった。また、チトクロームP450(CYP)系薬物代謝酵素の阻害剤ではないことが示された。臨床試験では、カスポファンギンは他の薬剤のCYP3A4代謝を誘導しなかった。カスポファンギンはP‐gpの基質ではなく、またCYPによりほとんど代謝されなかった。
16.7.1 シクロスポリンとの併用
健康成人にカスポファンギン70mgを1日1回反復静脈内投与時にシクロスポリン4mg/kgを単回又は3mg/kgを12時間間隔で2回経口投与したとき、カスポファンギンのAUCは約35%増加した。カスポファンギンはシクロスポリンの薬物動態に影響を及ぼさなかった(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.2 タクロリムスとの併用
健康成人にカスポファンギン70mgを1日1回反復静脈内投与時にタクロリムス0.1mg/kgを12時間間隔で2回経口投与したとき、タクロリムスの投与後12時間の血中濃度は26%減少した。一方、タクロリムスはカスポファンギンの薬物動態に影響を及ぼさなかった(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.3 リファンピシンとの併用
健康成人にカスポファンギン50mg(静脈内投与)及びリファンピシン600mg(経口投与)を1日1回14日間反復併用投与したとき、第1日にカスポファンギンのAUCは約60%増加した。リファンピシンの定常状態でカスポファンギンと併用した際は、カスポファンギンのC24hrは約30%減少したものの、AUC及びC1hrはほとんど変化しなかった。一方、カスポファンギンはリファンピシンの薬物動態に影響を及ぼさなかった(外国人データ)。[7.2、7.5、10.2参照]
16.7.4 薬物クリアランスの誘導作用を有する薬剤との併用
母集団薬物動態解析の結果から、成人患者では薬物クリアランスの誘導作用を有する薬剤(エファビレンツ、ネビラピン、デキサメタゾン、フェニトイン及びカルバマゼピン)とカスポファンギンとの併用により、カスポファンギンの血中濃度は臨床的に有意に低下する可能性が示唆された。また、小児患者でも薬物クリアランスの誘導作用を有する薬剤(デキサメタゾン)との併用により、成人患者と同様、カスポファンギンの血中濃度は臨床的に有意に低下する可能性が示唆された。[7.2、7.5、10.2参照]
16.7.5 その他の薬剤との併用
健康成人でイトラコナゾール、アムホテリシンB、ミコフェノール酸モフェチル又はネルフィナビルとカスポファンギンを併用した際、カスポファンギンの薬物動態はこれらの薬剤の影響を受けなかった。また、カスポファンギンはイトラコナゾール、アムホテリシンB及びミコフェノール酸(ミコフェノール酸モフェチルの活性代謝物)の活性代謝物の薬物動態に影響しなかった(外国人データ)。
注1)本剤の承認された用量は、通常、成人にはカスポファンギンとして投与初日は70mg又は50mgを1日1回、投与2日目以降は50mgを1日1回である。
注2)患者の体表面積(BSA)は、Mosteller式により算出した。

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床成績
(1)国内第III相試験(成人)
カンジダ属又はアスペルギルス属による真菌感染症の成人患者を対象とした第III相実薬対照二重盲検比較試験を実施した。食道カンジダ症に対しては本剤50mgを、侵襲性カンジダ症及びアスペルギルス症に対しては本剤50mg(投与初日のみ70mg)を1日1回投与した。本剤の投与期間(中央値及び範囲)は、食道カンジダ症では14日間(7~28日)、侵襲性カンジダ症では14日間(2~36日)、アスペルギルス症では29日間(8~84日)であり、臨床試験成績の概要は表1のとおりであった。
表1 疾患別臨床総合効果†(Per Protocol Set)
→図表を見る(PDF)

本剤を投与された60例中23例(38.3%)に副作用が認められた。その主なものはAST増加6例(10.0%)、ALT増加5例(8.3%)、高血圧3例(5.0%)、好酸球数増加3例(5.0%)、悪心2例(3.3%)、静脈炎2例(3.3%)、血中Al‐P増加2例(3.3%)、血中カリウム減少2例(3.3%)、γ‐GTP増加2例(3.3%)、プロトロンビン時間延長2例(3.3%)であった。[5.4、8.1参照]
(2)国内第II相試験(小児)
カンジダ属又はアスペルギルス属による真菌感染症の小児患者(3ヵ月~17歳)を対象とした第II相非盲検試験を実施した。侵襲性カンジダ症及びアスペルギルス症に対して本剤50mg/m2(投与初日のみ70mg/m2、ただし1日用量として70mgを超えない)を1日1回投与した。本剤の投与期間(中央値及び範囲)は、侵襲性カンジダ症では14日間(2~31日)、アスペルギルス症では10.5日間(3~57日)であり、臨床試験成績の概要は、表2のとおりであった。
表2 疾患別臨床総合効果(Full Analysis Set)
→図表を見る(PDF)

本剤を投与された20例中10例(50.0%)に副作用が認められた。その主なものはALT増加5例(25.0%)、AST増加4例(20.0%)、肝機能異常3例(15.0%)、LDH増加2例(10.0%)、γ‐GTP増加2例(10.0%)であった。[5.4、8.1参照]
17.1.2 外国臨床成績
(1)外国第II/III相試験(成人)
〈真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症〉
真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症患者を対象とした本剤50mg(投与初日のみ70mg)の1日1回投与とアムホテリシンBリポソーム製剤(3.0mg/kg)の1日1回投与との二重盲検比較試験を実施した。忍容性は良好であるが十分な臨床効果が得られない場合には本剤又はアムホテリシンBリポソーム製剤の増量を可能とした(それぞれ70mg又は5.0mg/kg)。投与期間(中央値及び範囲)は、本剤では11日間(1~90日)、アムホテリシンBリポソーム製剤では10日間(1~91日)であり、総合効果の有効率は本剤33.9%(190/556例)、アムホテリシンBリポソーム製剤33.7%(181/539例)であった。[8.1参照]
〈食道カンジダ症〉
食道カンジダ症患者を対象とした本剤50mgの1日1回投与とフルコナゾール200mgの1日1回投与との二重盲検比較試験を実施した。投与期間(中央値及び範囲)は、本剤では8日間(1~20日)、フルコナゾールでは7日間(1~26日)であり、総合効果の有効率は本剤81.5%(66/81例)、フルコナゾール85.1%(80/94例)であった。[8.1参照]
〈侵襲性カンジダ症〉
侵襲性カンジダ症患者を対象とした本剤50mg(投与初日のみ70mg)の1日1回投与とアムホテリシンB(非好中球減少患者に0.6~0.7mg/kg、好中球減少患者に0.7~1.0mg/kg)の1日1回投与との二重盲検比較試験を実施した。投与期間(中央値及び範囲)は、本剤では11日間(1~28日)、アムホテリシンBでは10日間(1~28日)であり、総合効果の有効率は本剤73.4%(80/109例)、アムホテリシンB61.7%(71/115例)であった。[5.4、8.1参照]
〈侵襲性アスペルギルス症〉
他の抗真菌薬治療が無効又は不耐の侵襲性アスペルギルス症患者を対象とした本剤50mg(投与初日のみ70mg)の1日1回投与の非盲検試験を実施した。本剤の投与期間(中央値及び範囲)は25日間(1~162日)であり、総合効果の有効率は、44.6%(37/83例)であった。[8.1参照]
(2)外国第II相試験(小児)
〈真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症〉
真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症患者(2~17歳)を対象とした本剤50mg/m2(投与初日のみ70mg/m2)の1日1回投与(ただし1日用量として70mgを超えない)とアムホテリシンBリポソーム製剤(3.0mg/kg)の1日1回投与との二重盲検比較試験を実施した。忍容性は良好であるが十分な臨床効果が得られない場合には本剤又はアムホテリシンBリポソーム製剤の増量を可能とした(それぞれ70mg/m2又は5.0mg/kg)。投与期間(中央値及び範囲)は、本剤では9日間(3~36日)、アムホテリシンBリポソーム製剤では9日間(1~55日)であり、総合効果の有効率は本剤46.4%(26/56例)、アムホテリシンBリポソーム製剤32.0%(8/25例)であった。[8.1参照]
〈食道カンジダ症、侵襲性カンジダ症、侵襲性アスペルギルス症〉
食道カンジダ症、侵襲性カンジダ症及び他の抗真菌薬治療が無効又は不耐の侵襲性アスペルギルス症患者(3ヵ月~17歳)を対象とした本剤50mg/m2(投与初日のみ70mg/m2)の1日1回投与(ただし1日用量として70mgを超えない)の非盲検試験を実施した。本剤の投与期間(中央値及び範囲)は、食道カンジダ症では32日間(-)、侵襲性カンジダ症では10日間(2~42日)、アスペルギルス症では38日間(6~87日)であった。総合効果の有効率は、食道カンジダ症に対して本剤100%(1/1例)、侵襲性カンジダ症に対して本剤81.1%(30/37例)、侵襲性アスペルギルス症に対して本剤50.0%(5/10例)であった。[5.4、8.1参照]

18.1 作用機序
真菌(アスペルギルス属及びカンジダ属)細胞壁の主要構成成分である1,3‐β‐D‐グルカンの生合成を阻害する。なお、哺乳類の細胞は、1,3‐β‐D‐グルカンを合成しない。
18.2 抗真菌作用
カスポファンギンは、アスペルギルス属(A.fumigatus、A.flavus、A.nidulans、A.niger、A.terreusを含む)及びカンジダ属[C.albicans、C.glabrata、C.guilliermondii、C.kefyr(旧名C.pseudotropicalis)、C.krusei、C.lusitaniae、C.parapsilosis、C.tropicalisを含む]に対して幅広いin vitro抗真菌作用を示す。カンジダ属に対しては殺菌的に作用し、アスペルギルス属には菌糸の伸長抑制作用を示す。
In vivoでは、アスペルギルス属(A.fumigatus)の播種性感染又は肺感染による免疫不全モデル(マウス、ラット)への非経口投与により、生存期間の延長が認められた。また、カンジダ属の播種性感染、並びに口腔咽頭及び消化器感染による免疫正常又は免疫不全モデル(マウス)への非経口投与により、生存期間の延長(C.albicans)又は標的器官からの除菌作用(C.albicans、C.glabrata、C.krusei、C.lusitaniae、C.parapsilosis、C.tropicalis)がみられた。
18.3 耐性菌
カンジダ属においてカスポファンギンに対して低感受性を示す株が報告されている。この感受性の低下にはグルカン合成酵素のFKSサブユニットの変異が関与しているとの報告がある。

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