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クレセンバ点滴静注用200mg

販売名
クレセンバ点滴静注用200mg
薬価
200mg1瓶 27860.00円
製造メーカー
旭化成ファーマ

添付文書情報2023年04月改定(第2版)

商品情報

薬効分類名
その他の主としてカビに作用するもの
一般名
イサブコナゾニウム硫酸塩注射用
規制区分
  • 特生
  • 特承
  • 覚原
禁忌
2.1. リトナビル投与中、コビシスタット含有製剤投与中、イトラコナゾール投与中、ボリコナゾール投与中、クラリスロマイシン投与中、リファンピシン投与中、リファブチン投与中、カルバマゼピン投与中、フェノバルビタール投与中、セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品摂取中(St.John’s Wort)、フェニトイン投与中、ホスフェニトインナトリウム水和物投与中、ロミタピドメシル酸塩投与中の患者〔10.1参照〕。
2.2. 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者。
効能・効果
次記の真菌症の治療:1)アスペルギルス症(侵襲性アスペルギルス症、慢性進行性肺アスペルギルス症、単純性肺アスペルギローマ)、2)ムーコル症、3)クリプトコックス症(肺クリプトコックス症、播種性クリプトコックス症(クリプトコックス脳髄膜炎を含む))。
(効能又は効果に関連する注意)
本剤を投与する前に、原因真菌を分離及び同定するための真菌培養、病理組織学的検査等の他の検査のための試料を採取すること。培養等の検査の結果が得られる前に薬物療法を開始する場合でも、検査の結果が明らかになった時点でそれに応じた抗真菌剤による治療を再検討すること。
用法・用量
通常、成人にはイサブコナゾールとして1回200mgを約8時間おきに6回、1時間以上かけて点滴静注する。6回目投与の12~24時間経過後、イサブコナゾールとして1回200mgを1日1回、1時間以上かけて点滴静注する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. カプセル剤と注射剤は医師の判断で切り替えて使用することができる。
7.2. 投与期間は基礎疾患の状態、免疫抑制からの回復及び臨床効果に基づき設定すること。
生殖能を有する者
8.1. 肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること〔9.3.1、9.3.2、11.1.2、16.6.2参照〕。
8.2. 急性腎障害、腎不全があらわれることがあるので、定期的に腎機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること〔11.1.3、16.6.1参照〕。
8.3. 本剤の投与に際しては、アレルギー歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと。
8.4. ラット及びマウスにおいて発がん性が認められているので、本剤を長期投与する場合は治療上の有益性と危険性を考慮して投与の継続を慎重に判断すること〔15.2.1参照〕。
9.1.1. 他のアゾール系抗真菌剤に対し薬物過敏症の既往歴のある患者:類似の化学構造を有しており、交差過敏反応を起こすおそれがある。
9.1.2. 先天性QT短縮症候群の患者:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与し、本剤投与前及び投与中は定期的に心電図検査を実施するなど、患者の状態を慎重に観察すること(QT間隔が短縮するおそれがある)〔17.3.1参照〕。
9.3.1. 重度肝機能障害患者(Child-Pugh分類C):治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与すること、やむを得ず投与する場合には、患者の状態をより慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること(本剤の血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれるおそれがあり、重度の肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない)〔8.1、11.1.2、16.6.2参照〕。
9.3.2. 軽度及び中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類A及びB):本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、副作用の発現に十分注意すること〔8.1、11.1.2、16.6.2参照〕。
妊娠可能な女性:妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
相互作用
イサブコナゾールは、CYP3Aで代謝される。また、CYP3Aを中程度に阻害、CYP2B6を誘導、P糖蛋白(P-gp)、有機カチオントランスポーター(OCT)2、多剤・毒性化合物排出蛋白(MATE)1、UDP-グルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyltransferase、UGT)を阻害する〔16.4、16.7.1、16.7.2参照〕。
10.1. 併用禁忌:1). リトナビル<ノービア>、コビシスタット含有製剤<スタリビルド、ゲンボイヤ、シムツーザ、プレジコビックス>、イトラコナゾール<イトリゾール>、ボリコナゾール<ブイフェンド>、クラリスロマイシン<クラリス、クラリシッド>〔2.1参照〕[本剤の血中濃度が上昇し作用が増強するおそれがある(これらの薬剤はCYP3Aを強く阻害する)]。
2). リファンピシン<リファジン>、リファブチン<ミコブティン>、カルバマゼピン<テグレトール>、フェノバルビタール<フェノバール>、セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort)、フェニトイン<アレビアチン、ヒダントール>、ホスフェニトインナトリウム水和物<ホストイン>〔2.1、16.7.2参照〕[本剤の血中濃度が低下し作用が減弱するおそれがある(これらの薬剤等はCYP3Aを強く誘導する)]。
3). ロミタピドメシル酸塩<ジャクスタピッド>〔2.1参照〕[ロミタピドの血中濃度が上昇する可能性がある(本剤はロミタピドの代謝酵素(CYP3A)を阻害する)]。
10.2. 併用注意:1). ロピナビル・リトナビル〔16.7.2参照〕[本剤の血中濃度が上昇し作用が増強するおそれがあるため、併用する場合は本剤の副作用発現に十分に注意すること(リトナビルはCYP3Aを阻害する)。ロピナビル・リトナビルの血中濃度が低下するおそれがあるため、併用する場合はロピナビル・リトナビルの有効性の減弱について十分に注意すること(ロピナビル・リトナビルの血中濃度が低下する機序は不明)]。
2). CYP3Aを阻害する薬剤等(ニルマトレルビル・リトナビル等)[本剤の血中濃度が上昇し作用が増強するおそれがあるため、併用する場合は本剤の副作用発現に十分に注意すること(これらの薬剤等はCYP3Aを阻害する)]。
3). CYP3Aにより代謝される薬剤(免疫抑制剤(タクロリムス、シロリムス、シクロスポリン)、ミダゾラム、フェンタニル、ベネトクラクス、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、シンバスタチン、アムロジピン等)〔16.7.2参照〕[これらの薬剤の血中濃度が上昇し作用が増強するおそれがあるため、併用する場合はこれらの薬剤の副作用発現に十分に注意すること(本剤はこれらの薬剤の代謝酵素(CYP3A)を阻害する)]。
4). エファビレンツ[相互に血中濃度が低下し作用が減弱するおそれがあるため、併用する場合は必要に応じてエファビレンツの用量を調節すること(本剤はエファビレンツの代謝酵素(CYP2B6)を誘導し、エファビレンツは本剤の代謝酵素(CYP3A)を誘導する)]。
5). シクロホスファミド[シクロホスファミドの血中濃度が低下し作用が減弱するおそれがあるため、併用する場合は必要に応じてシクロホスファミドの用量を調節すること(本剤はシクロホスファミドの代謝酵素(CYP2B6)を誘導する)]。
6). ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍剤(ビンクリスチン、ビンブラスチン等)、コルヒチン、エベロリムス[これらの薬剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、併用する場合はこれらの薬剤の副作用発現に十分に注意すること(これらの薬剤はCYP3A及びP-gpの基質であり、本剤はCYP3A及びP-gpを阻害する)]。
7). P-gpの基質となる薬剤(フェキソフェナジン、トルバプタン、抗悪性腫瘍剤(ニロチニブ、ラパチニブ)、ジゴキシン、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩等)〔16.7.2参照〕[これらの薬剤の血中濃度が上昇し作用が増強するおそれがあるため、併用する場合はこれらの薬剤の副作用発現に十分に注意すること(これらの薬剤はP-gpの基質であり、本剤はP-gpを阻害する)]。
8). ミコフェノール酸モフェチル〔16.7.2参照〕[活性代謝物であるミコフェノール酸の血中濃度が上昇し作用が増強するおそれがあるため、併用する場合はミコフェノール酸の副作用発現に十分に注意すること(本剤はミコフェノール酸の代謝酵素(UGT)を阻害する)]。
9). メトホルミン〔16.7.2参照〕[メトホルミンの血中濃度が上昇し作用が増強するおそれがあるため、併用する場合は必要に応じてメトホルミンの用量を調節すること(メトホルミンはOCT2及びMATE1の基質であり、本剤はOCT2及びMATE1を阻害する)]。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)。
11.1.2. 肝機能障害:肝機能検査異常(13.7%)、肝機能異常(6.8%)、肝損傷(1.4%)、肝炎(頻度不明)があらわれることがある〔8.1、9.3.1、9.3.2、16.6.2参照〕。
11.1.3. 急性腎障害(1.4%)、腎不全(頻度不明)〔8.2、16.6.1参照〕。
11.1.4. ショック(頻度不明)、アナフィラキシー(頻度不明)。
11.2. その他の副作用
1). 血液及びリンパ系障害:(頻度不明)白血球減少症、好中球減少症、汎血球減少症。
2). 心臓障害:(5%未満)動悸、心室性期外収縮、(頻度不明)心房細動、心房粗動、徐脈、上室性期外収縮、上室性頻脈。
3). 耳及び迷路障害:(頻度不明)回転性めまい。
4). 内分泌障害:(5%未満)抗利尿ホルモン不適合分泌。
5). 胃腸障害:(5%以上)悪心、(5%未満)下痢、嘔吐、(頻度不明)腹部膨満、腹痛、便秘、消化不良。
6). 一般・全身障害及び投与部位の状態:(5%以上)注射部位反応、注射部位蕁麻疹、注入部位静脈炎、(5%未満)末梢性浮腫、(頻度不明)無力症、胸痛、疲労、倦怠感。
7). 肝胆道系障害:(5%未満)胆嚢炎、(頻度不明)肝腫大。
8). 免疫系障害:(頻度不明)過敏症。
9). 臨床検査:(5%未満)血圧低下、血小板数減少、血中クレアチニン増加、好中球数減少、心電図異常、体重減少。
10). 代謝及び栄養障害:(5%未満)高カリウム血症、食欲減退、低ナトリウム血症、(頻度不明)低アルブミン血症、低血糖、低カリウム血症、低マグネシウム血症。
11). 筋骨格系及び結合組織障害:(5%未満)筋力低下、(頻度不明)背部痛。
12). 神経系障害:(5%未満)異常感覚、感覚障害、感覚鈍麻、傾眠、味覚不全、痙攣発作、(頻度不明)脳症、頭痛、末梢性ニューロパチー、錯感覚、失神、痙攣。
13). 精神障害:(頻度不明)譫妄、うつ病、不眠症。
14). 腎及び尿路障害:(5%未満)血尿、腎機能障害。
15). 呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(5%未満)呼吸困難、口腔咽頭不快感、発声障害、(頻度不明)急性呼吸不全、気管支痙攣、頻呼吸。
16). 皮膚及び皮下組織障害:(5%未満)そう痒性皮疹、光線過敏性反応、湿疹、皮膚乾燥、薬疹、冷汗、(頻度不明)脱毛症、皮膚炎、点状出血、皮膚そう痒症、発疹。
17). 血管障害:(5%以上)ほてり、(5%未満)高血圧、(頻度不明)低血圧、血栓性静脈炎。
授乳婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(ラット及びウサギにおいて、それぞれ臨床曝露量(AUC)未満の曝露量で、胎仔骨格異常(胎仔催奇形性)が認められた)〔9.4生殖能を有する者の項参照〕。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ラットで乳汁中への移行が報告されている)。
小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
適用上の注意
14.1. 薬剤調製時の注意14.1.1. 溶解方法(1). 本剤は、保存剤を含有しないため無菌的に調製すること。
(2). 1バイアルに5mLの日局注射用水を加え、緩やかに攪拌してバイアル内の粉末を完全に溶解すること。
(3). 溶液は無色から帯黄色で、微粒子を認めないことを目視で確認する(異常を認めた場合には使用しないこと)。
(4). 溶解後は室温で1時間以内に点滴静注溶液を調製すること。
(5). 本剤は1回使い切りである(残液は適切に廃棄すること)。
14.1.2. 希釈方法(1). 溶解した溶液5mLをバイアルから抜き取り、250mLの日局生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液が入った点滴バッグに添加すること。希釈の際、半透明~白色のイサブコナゾールの微粒子が見えることがあるが、これは投与時にインラインフィルターによって除かれる。
(2). 微粒子の形成を低減するために、静かに転倒混和すること。
(3). 希釈後は、室温で6時間以内に投与まで完了すること(やむを得ず保存する場合は、希釈後直ちに冷蔵保存し(2~8℃)、24時間以内に投与まで完了すること)。
希釈した液は凍結しないこと。
14.1.3. 配合変化:配合変化の可能性があるため本剤の希釈には、日局生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液を使用すること(他の製剤<日局注射用水・日局生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液を除く>とは混合しないこと)。
14.2. 薬剤投与時の注意14.2.1. 投与前後に、ラインを日局生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液でフラッシュする。本剤は、他の製剤<日局注射用水・日局生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液を除く>と同一のラインから同時に投与しないこと。
14.2.2. 孔径0.2~1.2μmのメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して投与すること。
14.2.3. 注入に伴う反応のリスクを低減するため、全量を最低1時間かけて静脈内投与する。急速静注は行わないこと。
その他の注意
15.2. 非臨床試験に基づく情報15.2.1. マウスのがん原性試験(2年間投与)において、肝芽細胞腫増加及び肝臓血管腫増加が臨床曝露量(AUC)のそれぞれ0.6倍及び1.0倍以上の曝露量で認められた。ラットのがん原性試験(2年間投与)において、皮膚線維腫増加及び子宮内膜腺癌増加が臨床曝露量のそれぞれ2.6倍及び3.8倍の曝露量で認められた。なお、臨床試験においてヒトにおける本剤の投与と腫瘍発生との間に明確な関係は報告されていない〔8.4参照〕。
15.2.2. 本剤のコレステロール合成に関与するCYP51阻害作用に関連して、ラット反復経口投与試験において卵巣間質細胞空胞化が臨床曝露量(AUC)の2.2倍以上の曝露量、ラット及びカニクイザル反復経口投与試験において副腎皮質細胞肥大・副腎皮質細胞空胞化が臨床曝露量の1.1倍の曝露量で認められた。

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人健康成人男性に本剤(イサブコナゾールとして100注)、200、400mg注))を単回点滴静脈内投与した際、血漿中イサブコナゾール濃度は静脈内投与終了時にピークに達した後、緩やかに減少した。
イサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータ及び血漿中濃度推移は、表1及び添付文書の図1のとおりであった。
表1 日本人健康成人男性に本剤(イサブコナゾールとして100注)、200、400mg注))を単回点滴静脈内投与した際のイサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータ
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図1 日本人健康成人男性に本剤(イサブコナゾールとして100注)、200、400mg注))を単回点滴静脈内投与した際の血漿中イサブコナゾール濃度推移(投与後24時間)
注)成人における本剤の承認された用量は「通常、イサブコナゾールとして1回200mgを約8時間おきに6回、1時間以上かけて点滴静注する。6回目投与の12~24時間経過後、イサブコナゾールとして1回200mgを1日1回、1時間以上かけて点滴静注する。」である。

16.1.2 反復投与
日本人健康成人男性に本剤(イサブコナゾールとして200mg)を16日間反復点滴静脈内投与(初日及び2日目は1日3回、3日目以降は1日1回投与)した際、平均血漿中イサブコナゾールのトラフ濃度は1日目から2日目までは徐々に上昇し、3日目から16日目までは一定のトラフ濃度を維持した。
イサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータ及び血漿中濃度推移は、表2及び添付文書の図2のとおりであった。
表2 日本人健康成人男性に1回200mgを16日間反復投与(初日及び2日目は1日3回、3日目以降は1日1回投与)した際の定常状態におけるイサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータ
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図2 日本人健康成人男性に1回200mgを16日間反復点滴静脈内投与(初日及び2日目は1日3回、3日目以降は1日1回投与)した際の定常状態における血漿中イサブコナゾール濃度推移
1日目から15日目の血漿中イサブコナゾール濃度は、本剤(イサブコナゾールとして200mg)投与開始前のみ示す

16.3 分布
イサブコナゾールは広く分布し、日本人健康被験者の平均分布容積(Vss)は180Lであった。
イサブコナゾールは血漿タンパクとの結合率が高かった(>99%)(外国人データ)。
16.4 代謝
イサブコナゾニウム硫酸塩は、血液中でエステラーゼ(主としてブチリルコリンエステラーゼ)により、活性体であるイサブコナゾールに速やかに加水分解され、イサブコナゾールは、主にCYP3A4及びCYP3A5により代謝される(in vitroデータ)。
健康成人に(シアノ‐14C)‐イサブコナゾニウム硫酸塩を単回経口投与した際、イサブコナゾールと共にいくつかの微量代謝物が認められた。健康成人に(ピリジニルメチル‐14C)‐イサブコナゾニウム硫酸塩を単回点滴静脈内投与した際、不活性分解生成物の代謝物と共にいくつかの微量代謝物が認められた。イサブコナゾール及び不活性分解生成物の代謝物を除き、投与薬物に関連する物質のAUCの10%を超える代謝物は認められなかった(外国人データ)。[10.参照]
16.5 排泄
健康成人に(シアノ‐14C)‐イサブコナゾニウム硫酸塩を経口投与した際、投与放射能の46.1%が糞中に、45.5%が尿中に排泄された。尿中に排泄されたイサブコナゾールは、投与放射能の1%未満であった。
不活性分解生成物は主に代謝により消失し、その後、代謝物が腎排泄を受ける。尿中に排泄された不活性分解生成物は投与放射能の1%未満であった。(ピリジニルメチル‐14C)‐イサブコナゾニウム硫酸塩を点滴静脈内投与した際、投与放射能の95%が尿中に排泄された(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
軽度(50≦クレアチニン・クリアランス≦80mL/min/1.73m2)、中等度(30≦クレアチニン・クリアランス<50mL/min/1.73m2)及び重度(クレアチニン・クリアランス<30mL/min/1.73m2)の腎機能障害被験者、並びに腎機能正常被験者に本剤(イサブコナゾールとして200mg)を単回点滴静脈内投与した際、イサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータは表3のとおりであった。非結合型イサブコナゾールのAUCinfの最小二乗幾何平均値は、腎機能正常被験者と比較して、軽度、中等度及び重度腎機能障害患者でそれぞれ1.21倍、1.55倍及び1.96倍であった。
末期腎不全(ESRD)被験者及び腎機能正常被験者に本剤(イサブコナゾールとして200mg)を単回点滴静脈内投与した際、イサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータは表3のとおりであった。非結合型イサブコナゾールのAUC72の最小二乗幾何平均値は、腎機能正常被験者と比較して、末期腎不全(ESRD)被験者で1.23倍であった。イサブコナゾールは血液透析で除去されない(外国人データ)。[8.2、11.1.3、13.1参照]
表3 腎機能障害の程度が異なる被験者におけるイサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータ
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16.6.2 肝機能障害患者
軽度(Child‐Pugh分類A)及び中等度(Child‐Pugh分類B)肝機能障害被験者、並びに肝機能正常被験者に本剤(イサブコナゾールとして100mg注))を単回点滴静脈内投与あるいは単回経口投与した際、イサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータは表4のとおりであった。非結合型イサブコナゾールのAUCinfの最小二乗幾何平均値は、肝機能正常被験者と比較して、軽度及び中等度肝機能障害患者でそれぞれ1.40~2.38倍、2.18~3.01倍であった。重度の肝機能障害患者(Child‐Pugh分類C)を対象とした試験は実施していない(外国人データ)。[8.1、9.3.1、9.3.2、11.1.2参照]
表4 肝機能障害の程度が異なる被験者におけるイサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータ
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16.6.3 高齢者
高齢者(65歳以上)に本剤(イサブコナゾールとして200mg)を単回経口投与した際のイサブコナゾールのAUCは、若年者(18~45歳)と同程度であった(外国人データ)。
表5 高齢者及び若年者におけるイサブコナゾールの血漿中薬物動態パラメータ
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16.7 薬物相互作用
16.7.1 In vitro試験
イサブコナゾールはCYP3A(CYP3A4及びCYP3A5)の基質である。イサブコナゾールは、CYP3A、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びUGT1A1の阻害剤である。また、イサブコナゾールは、P‐gp、BCRP、OCT2及びMATE1の阻害剤である。イサブコナゾールは、CYP1A2、CYP3A4、CYP2B6、CYP2C8及びCYP2C9の誘導剤である。[10.参照]
16.7.2 薬物相互作用試験
表6に薬物相互作用試験で認められた薬物動態への影響をまとめた(外国人データ)。[10.、10.1、10.2参照]
表6 併用による薬物動態への影響
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注)成人における本剤の承認された用量は「通常、イサブコナゾールとして1回200mgを約8時間おきに6回、1時間以上かけて点滴静注する。6回目投与の12~24時間経過後、イサブコナゾールとして1回200mgを1日1回、1時間以上かけて点滴静注する。」である。

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相試験(AK1820‐301試験)
日本人深在性真菌症患者を対象に本剤の安全性及び有効性を評価するため、多施設共同、非盲検試験を実施した。治験担当医師によりアスペルギルス症と診断された患者は、本剤群又はボリコナゾール群に2:1に割り付けられ(Cohort A)、ムーコル症又はクリプトコックス症と診断された患者はすべて本剤群のみに割り付けられた(Cohort B)。本剤(イサブコナゾールとして1回200mg)を約8時間おきに6回点滴静注内投与又は経口投与し、6回目投与の12~24時間経過後より1日1回、点滴静脈内投与又は経口投与した。ボリコナゾールは1回6mg/kg(点滴静注)又は300mg(経口投与)を約12時間おきに2回点滴静脈内投与又は経口投与し、2回目投与の12~24時間経過後より1回4mg/kg(点滴静注)又は200mg(経口投与)を1日2回、点滴静脈内投与又は経口投与した。投与期間の中央値はCohort Aでは両群で類似しており、本剤群84.0日、ボリコナゾール群85.0日、Cohort Bでは84.0日であった。本剤の主な有効性は、治験依頼者及び治験担当医とは独立した感染症の専門家からなる外部評価委員会が評価した(Cohort Aは盲検下にて評価)。
外部評価委員会による治療終了時の総合効果†(有効率)は、本剤群及びボリコナゾール群で、慢性肺アスペルギルス症ではそれぞれ82.7%(43/52例)及び77.8%(21/27例)、このうち単純性肺アスペルギローマは各群1例でいずれも100%(1/1例)であった。侵襲性アスペルギルス症では本剤群33.3%(1/3例)、ボリコナゾール群100%(1/1例)であった。また、本剤が投与されたムーコル症では33.3%(1/3例)、肺クリプトコックス症では90.0%(9/10例)であった。
†総合効果は、臨床症状効果、画像診断効果、真菌学的効果に基づき判定した。
副作用発現頻度は本剤群で60.3%(44/73例)であった。主な副作用は、肝機能検査値上昇8.2%(6/73例)、肝機能異常、悪心各6.8%(5/73例)、ほてり5.5%(4/73例)、高カリウム血症、下痢各4.1%(3/73例)、γ‐GTP増加、低ナトリウム血症、食欲減退、嘔吐、腎機能障害、筋力低下各2.7%(2/73例)であった。
17.1.2 海外第III相試験(9766‐CL‐0104試験)
アスペルギルス種又は他の糸状菌を起因菌とする侵襲性真菌症患者を対象に、無作為化、二重盲検、実薬対照非劣性試験を実施した。本剤(イサブコナゾールとして1回200mg)を約8時間おきに6回点滴静脈内投与し、6回目投与の12~24時間経過後より1日1回、点滴静脈内投与又は経口投与した。ボリコナゾールは1回6mg/kgを約12時間おきに2回点滴静脈内投与し、2回目投与の12~24時間経過後より1回4mg/kg(点滴静注)又は200mg(経口投与)を1日2回、点滴静脈内投与又は経口投与した。投与期間の中央値は両群で類似しており、本剤群45.0日、ボリコナゾール群46.5日であった。主要評価項目である投与開始後42日目までの全死因死亡率は、本剤群で18.6%、ボリコナゾール群で20.2%と同程度であった。層別因子の影響を調整後の群間差(本剤群-ボリコナゾール群:-1.0%)の95%信頼区間の上限値(5.683%)が、事前に規定した非劣性マージンの10%を下回ったことから、ボリコナゾールに対する本剤の非劣性が検証された(表1)。また、外部評価委員会により侵襲性アスペルギルス症の確定例または臨床診断例とされた被験者集団の42日目までの全死因死亡率は、本剤群18.7%(23/123例)、ボリコナゾール群22.2%(24/108例)であり、調整後の投与群間差(本剤群-ボリコナゾール群)は、-2.7%(95%信頼区間-12.893~7.542%)であった。
外部評価委員会が盲検下で判定した深在性真菌症(確定例もしくは臨床診断例)に対する治療終了時の総合効果(有効率)は、本剤群35.0%(50/143例)、ボリコナゾール群36.4%(47/129例)、侵襲性アスペルギルス症の確定例または臨床診断例とされた被験者集団では、本剤群35.0%(43/123例)、ボリコナゾール群38.9%(42/108例)と同程度であった。
表1 投与後42日目までの全死因死亡率(9766‐CL‐0104試験、全投与開始例)
→図表を見る(PDF)

副作用発現頻度は本剤群で42.4%(109/257例)であった。主な副作用は、悪心7.4%(19/257例)、嘔吐5.1%(13/257例)、呼吸困難3.1%(8/257例)、低カリウム血症2.7%(7/257例)、γ‐GTP増加、頭痛各2.3%(6/257例)であった。
17.1.3 海外第III相試験(9766‐CL‐0103試験)
腎機能障害を有する侵襲性アスペルギルス症患者、もしくは稀な糸状菌、酵母または二形性真菌を起因菌とする侵襲性真菌症患者を対象に、非盲検、非対照試験を実施した。本剤(イサブコナゾールとして1回200mg)を約8時間おきに6回点滴静脈内投与又は経口投与し、6回目投与の12~24時間経過後より1日1回、点滴静脈内投与又は経口投与した。投与期間の中央値は94.0日であった。治験薬が投与された146例のうち、外部評価委員会によりムーコルのみが起因菌と分類された感染症に対する治療終了時の総合効果(有効率)は、31.4%(11/35例)であった。また、アスペルギルスのみが起因菌と分類された感染症では、34.8%(8/23例)であった。
本試験では、クリプトコックス症が9例組み入れられ、外部評価委員会による治療終了時の総合効果(有効率)は66.7%(6/9例)であった。疾患別(病変部位別)では、肺クリプトコックス症は83.3%(5/6例)、播種性クリプトコックス症(クリプトコックス脳髄膜炎を含む)は66.7%(4/6例)であった(3例は両病変を有していた)。
副作用発現頻度は41.1%(60/146例)であった。主な副作用は、悪心7.5%(11/146例)、嘔吐6.2%(9/146例)、下痢、γ‐GTP増加各4.8%(7/146例)、血中ALP増加、静脈炎各2.7%(4/146例)、脱毛症、食欲減退、傾眠各2.1%(3/146例)であった。
17.3 その他
17.3.1 QT間隔に対する影響(9766‐CL‐0017試験)
健康な外国人成人男性を対象に、本剤(イサブコナゾールとして200mg及び600mg注))を13日間反復投与(初日及び2日目は1日3回、3日目以降は1日1回投与)した際のQTc間隔は、投与2時間後に最小値となり、プラセボとの差は、それぞれ-13.1msec及び-24.6msecであった。イサブコナゾールはいずれの用量においてもQTc間隔を短縮した。[9.1.2参照]
注)成人における本剤の承認された用量は「通常、イサブコナゾールとして1回200mgを約8時間おきに6回、1時間以上かけて点滴静注する。6回目投与の12~24時間経過後、イサブコナゾールとして1回200mgを1日1回、1時間以上かけて点滴静注する。」である。

18.1 作用機序
イサブコナゾニウム硫酸塩の活性代謝物であるイサブコナゾールは、チトクロームP450依存性ラノステロール‐14α‐脱メチル化酵素の阻害を介し、真菌細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害することで抗真菌作用を示す。
18.2 抗真菌作用
イサブコナゾールは、深在性真菌症の原因となる真菌(Aspergillus属、ムーコル目、Cryptococcus属、Candida属等)に対し、抗真菌作用を示した(in vitro)。また、播種性及び侵襲性肺アスペルギルス症、並びにムーコル症の動物モデルにおいて、イサブコナゾニウム硫酸塩は臓器内生菌数を減少させ、生存率を改善した(in vivo)。
18.3 薬剤耐性
標的分子であるCYP51にアミノ酸変異を有する一部のAspergillus fumigatus株で、野生株と比較して、イサブコナゾールに対する感受性の低下が認められた(in vitro)。

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