レトロビルカプセル100mg
添付文書情報2024年08月改定(第4版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 本剤の投与により骨髄抑制があらわれるので、頻回に血液学的検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること〔8.2、11.1.1参照〕。
- 禁忌
- 2.1. 好中球数750/mm3未満<HIV感染起因でHIV薬治療経験無しを除く>又はHb値7.5g/dL未満<HIV感染起因でHIV薬治療経験無しを除く>に減少した患者〔7.1、9.1.1参照〕(Hb:ヘモグロビン)。
2.2. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.3. イブプロフェン投与中の患者〔10.1参照〕。
- 効能・効果
- HIV感染症。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 無症候性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症に関する治療開始については、CD4リンパ球数及び血漿中HIV RNA量が指標とされている。よって、本剤の使用にあたっては、患者のCD4リンパ球数及び血漿中HIV RNA量を確認するとともに、最新のガイドラインを確認すること。
5.2. 本剤で治療経験無くHIV感染で好中球数750/mm3未満に減少又は他の抗HIV薬で治療経験無くHIV感染で好中球数750/mm3未満に減少又は本剤で治療経験無くHIV感染でヘモグロビン値7.5g/dL未満に減少又は他の抗HIV薬で治療経験無くHIV感染でヘモグロビン値7.5g/dL未満に減少したと判断される患者に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ、本剤の投与を考慮すること〔7.1、9.1.2参照〕。
5.3. HIVによる神経機能障害に対する有効性は確認されていない。
5.4. 投与前CD4リンパ球数500/mm3以上のHIV感染症患者については、有効性及び安全性は確認されていない。
- 用法・用量
- 通常、成人には他の抗HIV薬と併用して、ジドブジンとして1日量500~600mgを2~6回に分けて経口投与する。なお、症状により適宜減量する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 本剤投与中特に著しい好中球減少<750/mm3未満又は投与前値からの50%以上の減少>又は著しい貧血<Hb値7.5g/dL未満又は投与前値からの25%以上の減少>が認められた場合は、骨髄機能が回復するまで休薬する。これより軽度の貧血<Hb値が7.5~9.5g/dL>及び好中球減少<750~1000/mm3>の場合は、減量する。著しい貧血がみられた場合、休薬及び減量を行っても輸血の必要な場合がある。休薬又は減量後、骨髄機能が回復した場合には、血液学的所見及び患者の耐容性に応じて徐々に通常の投与量に増量する〔2.1、5.2、9.1.1-9.1.3参照〕(Hb:ヘモグロビン)。
7.2. 本剤と他の抗HIV薬との併用療法において、因果関係が特定されない重篤な副作用が発現し、治療の継続が困難であると判断された場合には、本剤若しくは併用している他の抗HIV薬の一部を減量又は休薬するのではなく、原則として本剤及び併用している他の抗HIV薬の投与をすべて一旦中止すること。
7.3. ジドブジンとして1日量が400mg(1回100mg、1日4回投与)による有効性及び安全性が認められたとの報告はあるが、1日量が400mg未満の用量による有効性は確認されていない。
7.4. HIVは感染初期から多種多様な変異株を生じ、薬剤耐性を発現しやすいことが知られているので、本剤は他の抗HIV薬と併用すること〔18.3参照〕。
7.5. 血液透析で病状を維持している重度腎疾患又は腹膜透析で病状を維持している重度腎疾患患者には1回100mgを6~8時間毎に投与することが望ましい〔9.2.1参照〕。
- 肝機能障害患者
- 8.1. 本剤の使用に際しては、国内外のガイドライン等の最新の情報を参考に、患者又は患者に代わる適切な者に、次の事項についてよく説明し同意を得た後、使用すること。
・ 本剤はHIV感染症の根治療法薬ではないことから、日和見感染症を含むHIV感染症の進展に伴う疾病を発症し続ける可能性があるので、本剤投与開始後の身体状況の変化については、すべて担当医に報告すること。
・ 本剤は相互作用が多く知られていることから、他院で処方された薬剤又は市販薬を服用中の場合は、すべて担当医に報告すること。
8.2. 本剤の投与により骨髄抑制があらわれるので、投与開始後3ヵ月間は少なくとも2週間毎に血液学的検査を行い、その後は最低1ヵ月毎の検査を行うこと〔1.警告の項、11.1.1参照〕。
8.3. 重篤な血液障害、うっ血性心不全、乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度肝腫大(脂肪肝)、てんかん様発作、膵炎があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと〔11.1.1-11.1.5参照〕。
8.4. 本剤の投与により、脂肪組織萎縮症があらわれることがあるので、脂肪組織萎縮症の徴候を判定するための検査を行うなど、脂肪組織萎縮症の徴候に十分注意するとともに、身体状態の変化について定期的に問診すること。
8.5. 本剤を含む抗HIV薬の多剤併用療法を行った患者で、免疫再構築症候群が報告されている(投与開始後、免疫機能が回復し、症候性のみならず無症候性日和見感染に対する炎症反応(マイコバクテリウムアビウムコンプレックス、サイトメガロウイルス、ニューモシスチス等によるもの)等が発現することがあり、また、免疫機能の回復に伴い自己免疫疾患(甲状腺機能亢進症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、ブドウ膜炎等)が発現するとの報告があるので、これらの症状を評価し、必要時には適切な治療を考慮すること)。
9.1.1. 好中球数750/mm3未満<HIV感染起因でHIV薬治療経験無しを除く>又はHb値7.5g/dL未満<HIV感染起因でHIV薬治療経験無しを除く>に減少した患者:投与しないこと(好中球数、ヘモグロビン値が更に減少することがある)〔2.1、7.1参照〕(Hb:ヘモグロビン)。
9.1.2. 好中球数750/mm3未満<HIV感染起因でHIV薬治療経験無し>又はヘモグロビン値7.5g/dL未満<HIV感染起因でHIV薬治療経験無し>に減少した患者〔5.2、7.1参照〕。
9.1.3. 好中球数750/mm3以上1000/mm3未満又はヘモグロビン値7.5g/dL以上9.5g/dL未満の患者:好中球数、ヘモグロビン値が更に減少することがある〔7.1参照〕。
9.1.4. ビタミンB12欠乏患者:貧血が発現するおそれがある。
9.2.1. 血液透析で病状を維持している重度腎疾患又は腹膜透析で病状を維持している重度腎疾患患者〔7.5参照〕。
9.2.2. 腎機能障害<血液透析又は腹膜透析で病状を維持している重度腎疾患を除く>のある患者:高い血中濃度が持続するおそれがある〔16.6.1参照〕。
9.3.1. 肝機能障害のある患者:高い血中濃度が持続するおそれがある。
- 相互作用
- 10.1. 併用禁忌:イブプロフェン<ブルフェン>〔2.3参照〕[血友病患者において出血傾向が増強することがある(機序は不明である)]。
10.2. 併用注意:1). ペンタミジンイセチオン酸塩、ピリメタミン(国内未発売)、スルファメトキサゾール・トリメトプリム、フルシトシン、ガンシクロビル、インターフェロン、ビンクリスチン硫酸塩、ビンブラスチン硫酸塩、ドキソルビシン塩酸塩[本剤の毒性作用が増強されることがある(機序は不明であるが、ともに腎毒性又は骨髄毒性を有するためと考えられている)]。
2). プロベネシド[本剤の全身クリアランスが約1/3に減少し半減期が約1.5倍延長したとの報告があるので、投与間隔を適宜あけること(本剤のグルクロン酸抱合が競合的に阻害され、また、本剤のグルクロン酸抱合体の腎排泄が抑制されることが考えられている)]。
3). フルコナゾール、ホスフルコナゾール[本剤の最高血中濃度が84%上昇するとの報告がある(本剤のグルクロン酸抱合が競合的に阻害されることが考えられている)]。
4). リトナビル[本剤の最高血中濃度が27%減少しAUCが25%減少するとの報告がある(本剤のグルクロン酸抱合が促進されることが考えられている)]。
5). リファンピシン[本剤の全身クリアランスが約2.5倍増加しAUCが約1/2減少するとの報告がある(機序は不明である)]。
6). フェニトイン[血中フェニトイン濃度が約1/2に減少するとの報告があり、また、血中フェニトイン濃度が上昇するとも報告されているので、血中フェニトイン濃度を注意深く観察すること(機序は不明である)]。
7). サニルブジン[細胞内におけるサニルブジン三リン酸化体が減少しサニルブジンの効果が減弱するとの報告があるので、本剤とサニルブジンとの併用療法は避けることが望ましい(本剤が細胞内におけるサニルブジンのリン酸化を抑制することが考えられている)]。
8). リバビリン[In vitroにおいてリバビリンとの併用により本剤の効果が減弱するとの報告があるので、本剤とリバビリンの併用療法は避けることが望ましい(本剤の細胞内におけるリン酸化が競合的に阻害されることが考えられている)]。
9). アトバコン[本剤のAUCが33%上昇し、本剤のグルクロン酸抱合体の最高血中濃度が19%低下したので、ジドブジン500又は600mg/日を3週間投与した場合では、本剤の血中濃度の上昇により、副作用の発現頻度が上昇する可能性は低いと考えられるが、アトバコンを3週間より長期に投与する場合には、十分注意すること(本剤のグルクロン酸抱合が阻害されることが考えられている)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 重篤な血液障害:再生不良性貧血、赤芽球癆、汎血球減少(いずれも頻度不明)、貧血(24.84%)、白血球減少(17.83%)、好中球減少(8.28%)、血小板減少(5.10%)〔1.警告の項、8.2、8.3参照〕。
11.1.2. うっ血性心不全(頻度不明)〔8.3参照〕。
11.1.3. 乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度肝腫大(脂肪肝)(いずれも頻度不明):乳酸アシドーシス又は肝毒性が疑われる臨床症状や肝毒性が疑われる検査値異常が認められた場合には、本剤の投与を一時中止すること(特に、肝疾患の危険因子を有する患者においては注意すること)。本剤を含むNRTIの単独投与又はこれらの併用
療法により、重篤な乳酸アシドーシス(全身倦怠、食欲不振、急な体重減少、胃腸障害、呼吸困難、頻呼吸等)及び肝毒性(脂肪沈着による重度肝腫大、脂肪肝を含む)が、女性に多く報告されている〔8.3参照〕。
11.1.4. てんかん様発作(頻度不明)〔8.3参照〕。
11.1.5. 膵炎(頻度不明)〔8.3参照〕。
- 11.2. その他の副作用
1). 血液:(頻度不明)リンパ節腫脹。
2). 消化器:(5%以上)食欲不振(6.37%)、腹痛(6.37%)、嘔気(12.10%)、(0.1%~5%未満)下痢、嘔吐、便秘、鼓腸、(頻度不明)消化不良、嚥下困難、口唇浮腫、舌浮腫、曖気、歯肉出血、直腸出血、口内潰瘍、胃炎。
3). 全身症状:(5%以上)頭痛(5.73%)、(0.1%~5%未満)発熱、倦怠感、(頻度不明)無力症、悪寒、感冒症状、背痛、胸痛、疲労感、体脂肪再分布/体脂肪蓄積(胸部脂肪増加、体幹部脂肪増加、末梢部脂肪減少、顔面脂肪減少、野牛肩、血清脂質増加、血糖増加)、全身痛、インフルエンザ様疾患。
4). 肝臓:(0.1%~5%未満)肝機能検査値異常(AST上昇、ALT上昇等)。
5). 腎臓:(0.1%~5%未満)頻尿、排尿障害、腎不全、(頻度不明)無尿、多尿。
6). 筋骨格:(頻度不明)筋肉痛、ミオパシー、関節痛。
7). 精神神経系:(0.1%~5%未満)眩暈、傾眠、(頻度不明)不眠症、手足のしびれ感、不安感、錯感覚、錯乱、筋痙攣、振戦、攣縮、痛覚過敏、うつ状態、情緒不安、神経過敏症、失神、健忘症、見当識障害、嗄声、ストレス反応、空間の広がり感。
8). 循環器:(頻度不明)血管拡張、心筋症。
9). 呼吸器:(頻度不明)呼吸困難、咳、鼻出血、咽頭炎、鼻炎、副鼻腔炎。
10). 過敏症:(0.1%~5%未満)発疹、そう痒感、じん麻疹、(頻度不明)ざ瘡。
11). 皮膚:(頻度不明)発汗、体臭変化、爪色素沈着・皮膚色素沈着・口腔粘膜色素沈着。
12). その他:(0.1%~5%未満)羞明、(頻度不明)味覚倒錯、弱視、難聴、霧視、女性化乳房、高乳酸塩血症。
発現頻度には使用成績調査の結果を含む。
- 高齢者
- 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(本剤は、主として肝臓で代謝され腎臓から排泄されるが、肝機能又は腎機能が低下していることが多いため高い血中濃度が持続するおそれがある)。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(本剤はヒト胎盤を通過し、出生児の血漿中ジドブジン濃度は、分娩時の母親の血漿中濃度と同じであることが報告されている(外国人データ)、本剤が胎児臍帯血白血球のDNAに取り込まれたという報告がある(外国人データ))。ラットの受胎能及び一般生殖能試験(50、150、450mg/kg/日、1日2回投与)では、中及び高用量群に胎仔吸収率増加、高用量群に胎仔平均体重減少がみられ、サルを用いた試験で、胎仔ミトコンドリア障害(胎仔心筋ミトコンドリアミオパシー及び胎仔骨格筋ミトコンドリアミオパシー)が認められたとの報告がある。ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)を子宮内曝露又は周産期曝露された新生児及び乳児において、ミトコンドリア障害によると考えられる軽微で一過性血清乳酸値上昇が報告されており、非常にまれに発育遅延、てんかん様発作、他の神経疾患も報告されている。しかしながら、これら事象とNRTIの子宮内曝露、周産期曝露との関連性は確立していない。
本剤を投与された妊婦より出生した児に貧血があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど児の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
授乳を避けさせること。
経口投与されたジドブジン(200mg、単回投与)は、ヒト乳汁中に排泄され、血清中の濃度と同じであることが報告されている(外国人データ)。
ジドブジンの母体血漿中濃度に対する乳汁中濃度の比は0.4~3.2であることが報告されている(外国人データ)。
乳児の血清中のジドブジン濃度は24ng/mLであったとの報告がある(外国人データ)。
- 小児等
- 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
アルミピロー包装開封後は、湿気を避けて遮光して保存すること。
- その他の注意
- 15.2. 非臨床試験に基づく情報15.2.1. がん原性試験で試験末期に雌動物(ラット及びマウス)に膣腫瘍が発生したとの報告がある(マウス(20、30、40mg/kg/日、1日1回経口投与)及びラット(80、220、300mg/kg/日、1日1回経口投与)におけるがん原性試験で、膣扁平上皮癌(マウス高用量群5/60、ラット高用量群2/60)が認められた)〔15.2.2参照〕。
15.2.2. マウスにおける経胎盤曝露によるがん原性試験で次の報告がある。
・ 最大耐量(420mg/kg/周産期体重)を妊娠12~18日<妊娠中~末期>に投与された母動物からの出生仔において、出生1年後、出生仔肺腫瘍、出生仔肝腫瘍及び出生仔雌性生殖器腫瘍発生率の増加が認められた。
・ 母動物に最高40mg/kgを妊娠10日から分娩を経て離乳まで投与し、引き続き離乳後は出生仔に同量を生後24ヵ月まで投与したところ、投与期間末期に出生仔膣扁平上皮癌が認められた。この成績は前記のがん原性試験で認められた腫瘍の発生率及び発生時期と同様であった〔15.2.1参照〕。
15.2.3. 本剤の変異原性について次の報告がある。
・ Ames試験では変異原性は認められなかったが、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験において弱い変異原性を示し、in vitroの細胞形質転換試験陽性を示した。
・ ラットを用いたin vivo染色体異常試験では染色体の損傷は認められなかったが、ヒト培養リンパ球を用いたin vitro染色体異常試験、ラット及びマウスを用
いたin vivo小核試験で染色体異常誘発作用が認められた。また、11人のAIDS患者の末梢血リンパ球において、本剤服用患者は非服用患者と比較して染色体異常頻度が高かったとの報告がある。
・ 本剤が成人AIDS患者の白血球のDNA及びその胎児臍帯血白血球のDNAに取り込まれたとの報告がある。
16.1 血中濃度
16.1.1 反復経口投与
HIV感染症患者6例に対し、ジドブジン100mg1日4回注)とラミブジン150mg1日2回を25日間以上連続経口投与した時のジドブジン、ラミブジンの血漿中薬物濃度の推移を添付文書の図‐1に、薬物動態パラメータを表‐1に示した。ジドブジンは投与後0.8時間で最高血漿中濃度(Cmax)が平均0.55±0.26μg/mLに達し、半減期は平均1.1時間であった。
図‐1 血漿中薬物濃度の推移(平均値±標準偏差、6例)
表‐1 薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
成人HIV感染症患者にジドブジンを反復経口投与後のCmax及びAUCは、2mg/kgを8時間毎~10mg/kgを4時間毎注)の投与量範囲で投与量に比例して増加し、0.5~1.5時間で最高濃度に達し、半減期約1時間(0.78~1.93時間)で消失した(外国人データ)。
HIV陽性患者にジドブジン1回300mgを1日2回反復経口投与時の血漿中濃度は、投与1時間後に最高濃度2.59±0.52μmol/Lを示し、投与後12時間でほぼ消失した。同時に測定した細胞内三リン酸化体(AZTTP)は、投与後2~4時間で最高濃度を示し、投与後12時間では最高濃度のおよそ1/2の濃度であった(外国人データ)。
16.1.2 単回静脈内投与
ジドブジンを静脈内投与注)した場合、投与量1~5mg/kgの範囲で線形の薬物動態を示し、半減期は平均1.1時間(0.48~2.86時間)であった。全身クリアランス(CL)は1900mL/min/70kg、みかけの分布容積(Vd)は1.6L/kgであった(外国人データ)。
16.1.3 薬物動態パラメータ(単回経口投与および反復静脈内投与注))
参考までに、総説にまとめられた薬物動態パラメータを表‐2に示す。
表‐2 ジドブジンの薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
(1)HIV感染症患者8例に対し高脂肪食(脂肪50%、蛋白質28%、炭水化物22%、総カロリー945kcal)摂取直後にジドブジン100mg又は250mg注)を経口投与した場合、空腹時に比べCmaxが50%低下し、最高血中濃度到達時間(Tmax)が約3倍有意に遅延した(外国人データ)。
(2)HIV感染症患者11例に対し蛋白食(蛋白質25g)摂取直後にジドブジン200mgを経口投与した場合、Cmaxが68%に低下し、平均滞留時間(MRT)が1.2倍遅延したが、AUC、Tmax、終末相における半減期及び腎クリアランスに有意な変化は認められなかった(外国人データ)。
16.2.2 バイオアベイラビリティ
成人HIV感染症患者にジドブジン250~1250mg注)を4時間毎に経口投与した場合の生物学的利用率は平均65%(52~75%)であった(外国人データ)。
16.3 分布
16.3.1 髄液への移行
ヒトにジドブジンを投与したとき髄液中への移行が認められ、2mg/kg注)経口投与1.8時間後におけるジドブジンの髄液中/血漿中濃度比は0.15であり、2.5及び5.0mg/kg静脈内投与注)2~4時間後の髄液中/血漿中濃度比はそれぞれ0.20及び0.64であった(外国人データ)。
16.3.2 血漿蛋白結合率
In vitroにおけるジドブジンの血漿蛋白結合率は34~38%であった。
16.3.3 結合蛋白
In vitroにおけるジドブジンの結合蛋白はアルブミンと同定された。
16.4 代謝
ジドブジンは吸収後、主にUDP‐glucuronosyl transferaseによってグルクロン酸抱合をうけ、主代謝物3’‐azido‐3’‐deoxy‐5’‐O‐β‐D‐glucopyranuronosylthymidine(GZDV)に速やかに代謝される。また、副代謝経路として3’‐amino‐3’‐deoxy‐thymidine(AMT)及びそのグルクロン酸抱合体(GAMT)に代謝される経路も存在する。
静脈内投与後のGZDVのAUCは未変化体のAUCの約3倍であり、AMTのAUCは未変化体のAUCの1/5であった。
16.5 排泄
HIV感染症患者にジドブジンを経口投与後の未変化体及びGZDVの尿中排泄率はそれぞれ14.3%及び75.2%であった。ジドブジンの腎クリアランスは400mL/min/70kgと算出され、糸球体濾過及び能動的尿細管分泌による排泄機構が示唆される(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害者
腎機能障害を有する成人HIV感染症患者(平均クレアチニンクリアランス(Ccr)18±2mL/min)に、ジドブジン200mgを単回経口投与した時、腎機能が正常な患者での半減期が1.0時間であったのに対し、腎機能障害患者では1.4時間であり、AUCは正常患者の約2倍であった。また、GZDVの半減期は正常患者で0.9時間であったのに対して8.0時間に延長し、AUCは17倍であった(外国人データ)。[9.2.2参照]
16.6.2 小児等
生後6ヵ月~12歳の小児HIV感染症患者に80~160mg/m2を6時間毎に静脈内投与注)した時、ジドブジンは二相性に消失し、終末相の平均半減期及び全身クリアランスは1.5時間及び30.9mL/min/kgであった。これらは該当する成人での成績とほぼ同じであった(1.1時間、27.1mL/min/kg)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 In vitro試験
アスピリン、インドメタシン等のグルクロン酸抱合により代謝される薬剤が本剤のグルクロン酸抱合を阻害したとの報告がある。
注)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人には他の抗HIV薬と併用して、ジドブジンとして1日量500~600mgを2~6回に分けて経口投与する。なお、症状により適宜減量する。」である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 海外第II相臨床試験(NUCA3001、NUCB3001、NUCB3002、NUCA3002の4試験)のmeta‐analysis
欧米で行われた4つの無作為化、二重盲検比較試験についてmeta‐analysisを行った。ジドブジン1回200mg1日3回にラミブジン1回150mg又は300mg1日2回を併用投与した群(ラミブジン併用群)における症例数は569例、ジドブジン1回200mg1日3回の単独投与又はジドブジンにザルシタビンを併用投与した群(比較対照群)は316例で、両群の患者背景には差を認めなかった。
試験期間中、CDC分類のB/Cあるいは新たなB/C症状に進展した患者数は計118例、また、Cへの進展は計28例に認められた。meta‐analysisの結果、ラミブジン併用群は比較対照群に比し、CDC分類のB/Cへの進展は49%減少し(p<0.0001)、CDC分類Cへの進展は66%減少した(p=0.003)。
17.1.2 海外臨床試験(Delta)
ジドブジン治療経験の無いCD4リンパ球数50/mm3以上のエイズ患者並びに350/mm3以下の症候性、無症候性HIV感染症患者2124例を対象とした無作為化、二重盲検比較試験において、ジドブジン1回200mg1日3回を単独(ジドブジン単独群700例)、ジドブジンにジダノシン1回200mg1日2回を併用(ジダノシン併用群718例)、又は、ジドブジンにザルシタビン1回0.75mg1日3回を併用(ザルシタビン併用群706例)で、30ヵ月間(中間値)投与した。ジダノシン併用群及びザルシタビン併用群の死亡率はそれぞれ42%、32%でジドブジン単独群に比較して有意に低かった(p<0.0001、p=0.003)。ジドブジン治療歴が少なくとも3ヵ月以上の患者1083例においては、ジドブジン単独群(355例)とジダノシン併用群(362例)若しくはザルシタビン併用群(366例)の死亡率には有意差は認められなかったが(p=0.14)、ジドブジン治療歴の有無に関わらず、全症例を対象に解析した結果、ジダノシン併用群及びザルシタビン併用群の死亡率はそれぞれ33%、21%であり、ジドブジン単独群に比較して有意に低かった(p<0.001、p=0.008)。
ジドブジン単独群に比較して、ジダノシンの併用又はザルシタビンの併用による新たな副作用の発現は認められなかった。
17.1.3 海外臨床試験(進行性エイズ関連症候群[ARC]患者、ジドブジンの投与量変更)
エイズ患者及び進行性ARC患者320例を対象とした二重盲検比較試験において、ジドブジン1回300mgを1日2回12時間毎(2回投与群162例)又は1回100mgを1日6回4時間毎(6回投与群158例)で48週間投与した。死亡症例数及び日和見感染症発症例数等について、両群間に差は認められなかった(表‐1)。
表‐1 死亡症例数及び日和見感染症発症例数等
→図表を見る(PDF)
副作用発現頻度について、両群間に差は認められなかった(表‐2)。
表‐2 副作用発現頻度
→図表を見る(PDF)
17.1.4 海外臨床試験(ジドブジンの減量投与法)
エイズ患者524例を対象とした無作為化、非盲検比較試験において、ジドブジン1回250mgを1日6回注)4時間毎(高用量群262例)又は1回200mgを1日6回注)4時間毎で4週間、その後1回100mgを1日6回4時間毎(低用量群262例)8.3ヵ月間(中間値)投与した。追跡調査を行った32.5ヵ月間における死亡症例数は高用量群188例、低用量群169例、また、推定生存率は高用量群52%(18ヵ月)、27%(24ヵ月)、低用量群63%(18ヵ月)、34%(24ヵ月)であり、低用量群においても有効性を認めた。
低用量群ではジドブジンによる副作用のため投与中止した症例は77例と少なかった。貧血及び好中球減少の発現率は、低用量群は29%(77/262)、37%(96/262)で高用量群の39%(101/262)、51%(134/262)に比べ低かったが、頭痛の発現率は高用量群の68%(177/262)に比べ低用量群78%(205/262)で高かった。その他の副作用発現率に両群間で差は認められなかった。
17.1.5 海外臨床試験
無症候性HIV感染症患者(投与前CD4リンパ球数500/mm3以下)1338例を対象とした無作為化、二重盲検比較試験(ジドブジン500mg/日群453例、同1500mg/日群注)457例、プラセボ群428例)において、ジドブジン1回100mg又は300mg、又はプラセボを1日5回4時間毎(夜間を除く)41~52週投与した。その結果、両ジドブジン群において重症ARC又はエイズへの進行率(ジドブジン500mg/日群、同1500mg/日群、プラセボ群:3.8%vs4.2%vs8.9%)に有効性を認め、またCD4リンパ球数及び血清中p24抗原量にも効果がみられた。
貧血及び好中球減少の発現率はそれぞれジドブジン500mg/日群1.1%(5/453)、1.8%(8/453)、同1500mg/日群6.4%(29/457)、6.4%(29/457)、プラセボ群0.2%(1/428)、1.6%(7/428)であった。ジドブジンを投与した群において、有意に発現率の高い副作用は無力症、頭痛、倦怠感、食欲不振、便秘、嘔気、嘔吐、めまいであった。
注)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人には他の抗HIV薬と併用して、ジドブジンとして1日量500~600mgを2~6回に分けて経口投与する。なお、症状により適宜減量する。」である。
18.1 作用機序
ジドブジンはHIV感染細胞内でリン酸化され、活性型の三リン酸化体となる。ジドブジン三リン酸化体はデオキシチミジン三リン酸の代わりにウイルスDNA鎖に取り込まれて、DNA鎖伸長を停止させることによりHIVの複製を阻害する。また、HIV逆転写酵素を競合的に阻害する。ジドブジン三リン酸化体のHIV逆転写酵素に対する親和性は、正常細胞のDNAポリメラーゼに比べて約100倍高く、選択性の高い抗ウイルス作用を示す(ヒトリンパ球系H9細胞増殖に対するin vitroでのIC50値は267μg/mL(1000μM))。
18.2 抗ウイルス作用
ジドブジンのHIVに対するin vitroにおけるIC50値は、CD4リンパ球系細胞を用いた系では0.13μg/mL(0.49μM)以下であった。
In vitroでジドブジンとアバカビル、ラミブジン、ジダノシン等の抗HIV薬あるいはインターフェロンαとの相加又は相乗作用が認められた。
マウスにマウスレトロウイルス(Rauscherマウス白血病ウイルス)を接種し、接種4時間目より、ジドブジンを1.0mg/mLの割合で飲用水に混入して投与することにより、平均脾臓重量、脾臓細胞感染率、及び血中ウイルス力価が対照群に比し著しく低下した。また感染後生存日数も延長した。
18.3 薬剤耐性
ジドブジンを含むチミジンアナログに対する耐性は、HIV逆転写酵素の41、67、70、210、215及び219番目のアミノ酸の変異によって生じ、これらのうち41番目と215番目の変異あるいは4個以上の変異によってウイルスは表現型として耐性を示す。なお、これらチミジンアナログの変異を有するウイルスは高度の交差耐性を示さない。
また、62、75、77、116及び151番目のアミノ酸の変異、並びに69番目のアミノ酸のスレオニンからセリンへの変異とそれに加えて同じ個所への6塩基対の挿入により、ウイルスはジドブジンを含むヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤に対し多剤耐性を示す。
なお、in vitroにおいて、ジドブジン耐性臨床分離株にラミブジン耐性変異を導入すると、ジドブジンに対する感受性は回復することが確認されている。また、抗HIV薬の治療経験のない患者にジドブジンとラミブジンを併用することによりジドブジン耐性ウイルスの出現が遅延する。[7.4参照]
- 一包可:不可
- 分割:不可
- 粉砕:不明
- 製造販売会社
- ヴィーブヘルスケア
- 販売会社
- GSK
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