ゾフルーザ錠20mg
添付文書情報2024年01月改定(第4版)
商品情報
- 警告
- 1.1. 本剤の投与にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討すること〔5.1、5.3、5.4参照〕。
1.2. インフルエンザウイルス感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤の予防使用はワクチンによる予防に置き換わるものではない。
- 禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
- 効能・効果
- A型インフルエンザウイルス感染症又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 〈効能共通〉本剤は細菌感染症には効果がない〔1.1、8.2参照〕。
5.2. 〈効能共通〉小児に対する投与については、低年齢になるほど低感受性株の出現頻度が高くなる傾向が示されていることから、学会等から提唱されている最新のガイドライン等を参照し、慎重に検討すること〔5.5、18.3.1参照〕。
5.3. 〈治療〉抗ウイルス薬の投与がA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の全ての患者に対しては必須ではないことを踏まえ、本剤の投与の必要性を慎重に検討すること〔1.1参照〕。
5.4. 〈予防〉原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者で、インフルエンザウイルス感染症罹患時に重症化のリスクが高いと判断される者(高齢者(65歳以上)、慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者、代謝性疾患患者(糖尿病等)等)を対象とする〔1.1参照〕。
5.5. 〈予防〉小児に対する投与については、流行ウイルスの薬剤耐性情報に留意し、他の抗インフルエンザウイルス薬の使用を考慮した上で、慎重に検討すること〔5.2、18.3.1参照〕。
5.6. 〈予防〉本剤のB型インフルエンザウイルス感染症に対する予防投与について、有効性を示すデータは限られていることを考慮した上で、本剤の投与を慎重に検討すること〔17.1.4参照〕。
- 用法・用量
- 通常、次の用量を単回経口投与する。
1). 治療
①. 成人及び12歳以上の小児(体重80kg以上):20mg錠4錠(バロキサビル マルボキシルとして80mg)。
②. 成人及び12歳以上の小児(体重80kg未満):20mg錠2錠(バロキサビル マルボキシルとして40mg)。
③. 12歳未満の小児(体重40kg以上):20mg錠2錠(バロキサビル マルボキシルとして40mg)。
④. 12歳未満の小児(体重20kg以上40kg未満):20mg錠1錠(バロキサビル マルボキシルとして20mg)。
2). 予防
①. 成人及び12歳以上の小児(体重80kg以上):20mg錠4錠(バロキサビル マルボキシルとして80mg)。
②. 成人及び12歳以上の小児(体重80kg未満):20mg錠2錠(バロキサビル マルボキシルとして40mg)。
③. 12歳未満の小児(体重40kg以上):20mg錠2錠(バロキサビル マルボキシルとして40mg)。
④. 12歳未満の小児(体重20kg以上40kg未満):20mg錠1錠(バロキサビル マルボキシルとして20mg)。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈効能共通〉10mg錠と20mg錠又は顆粒2%分包の生物学的同等性は示されていないため、10mgを投与する際には顆粒2%分包を使用しないこと(また、20mg以上の用量を投与する際には、10mg錠を使用しないこと)。
7.2. 〈治療〉本剤の投与は、症状発現後、可能な限り速やかに開始することが望ましい(症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない)。
7.3. 〈予防〉インフルエンザウイルス感染症患者に接触後2日以内に投与を開始すること(接触後48時間経過後に投与を開始した場合における有効性を裏付けるデータは得られていない)〔17.1.4参照〕。
7.4. 〈予防〉本剤を服用した日から10日を超えた期間のインフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は確認されていない〔17.1.4参照〕。
- 肝機能障害患者
- 8.1. 抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。
異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、①異常行動の発現のおそれがあること、②自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うこと。
なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている〔11.1.2参照〕。
8.2. 細菌感染症がインフルエンザウイルス感染症に合併したり、インフルエンザ様症状と混同されることがあるので、細菌感染症の場合には、抗菌剤を投与するなど適切な処置を行うこと〔5.1参照〕。
8.3. 出血があらわれることがあるので、患者及びその家族に次を説明すること〔11.1.4参照〕。
8.3.1. 出血があらわれることがあるので、患者及びその家族に対して、血便、鼻出血、血尿等があらわれた場合には医師に連絡するよう説明すること。
8.3.2. 患者及びその家族に対して、出血が投与数日後にもあらわれることがあることを説明すること。
9.3.1. 重度肝機能障害のある患者:有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
- 相互作用
- 10.2. 併用注意:ワルファリン[併用後にプロトロンビン時間が延長した報告があるので、併用する場合には、患者の状態を十分に観察するなど注意すること(機序不明)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(頻度不明)。
11.1.2. 異常行動(頻度不明):因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある〔8.1参照〕。
11.1.3. 虚血性大腸炎(頻度不明):腹痛、下痢、血便等の異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
11.1.4. 出血(頻度不明):血便、鼻出血、血尿等の出血があらわれることがある〔8.3参照〕。
- 11.2. その他の副作用
1). 過敏症:(1%未満)発疹、蕁麻疹、(頻度不明)そう痒、血管性浮腫。
2). 精神神経系:(1%未満)頭痛。
3). 消化器:(1%以上)下痢、悪心、(1%未満)嘔吐。
4). その他:(1%未満)ALT増加、AST増加。
- 高齢者
- 患者の状態を十分に観察しながら投与すること。一般に高齢者では生理機能が低下している。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(ラット、ウサギ)において、催奇形性は認められなかったが、ウサギにおける高用量投与で、流産及び頚部過剰肋骨が報告されており、また、ラットにおいて胎盤通過が認められている)。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ヒト母乳中への移行は不明だが、ラットで乳汁中への移行が報告されている)。
- 小児等
- 9.7.1. 低出生体重児、新生児又は乳児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.2. 小児に対しては、本剤を適切に経口投与できると判断された場合にのみ投与すること。
- 適用上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
- その他の注意
- 15.2. 非臨床試験に基づく情報ラットにおいて本薬投与によりプロトロンビン時間延長(PT延長)及び活性化部分トロンボプラスチン時間延長(APTT延長)が認められたが、ビタミンKとの併用時にはPT及びAPTTの延長は認められなかったとの報告がある。
16.1 血中濃度
16.1.1 65歳未満の成人患者及び12歳以上の小児患者
12歳以上65歳未満の患者及び健康成人1109例から得られたバロキサビル マルボキシル活性体の血漿中濃度データ(8310ポイント)を用いて母集団薬物動態解析を行った。この母集団薬物動態解析の結果を基に、国際共同第III相臨床試験(体重80kg未満は40mg、80kg以上は80mgを単回経口投与)における日本人患者343例の薬物動態パラメータ推定値を表16‐1に示す。
表16‐1 65歳未満の成人患者及び12歳以上の小児患者でのバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
16.1.2 12歳未満の小児患者
12歳未満の小児患者(105例)にバロキサビル マルボキシルを体重に応じて10~40mg単回経口投与したときのバロキサビル マルボキシル活性体の血漿中濃度推移を添付文書の図16‐1に示す。
バロキサビル マルボキシル活性体の血漿中濃度データ(328ポイント)を用いて母集団薬物動態解析を行い、得られた薬物動態パラメータ推定値を表16‐2に示す。
図16‐1 12歳未満の小児患者でのバロキサビル マルボキシル活性体の血漿中濃度推移
表16‐2 12歳未満の小児患者でのバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
16.1.3 65歳以上の高齢患者
16.1.1に示した母集団薬物動態解析の結果を基に、ハイリスク因子を有する患者を対象とした国際共同第III相臨床試験(体重80kg未満は40mg、80kg以上は80mgを投与)における65歳以上の日本人患者58例の薬物動態パラメータ推定値を表16‐3に示す。
表16‐3 65歳以上の高齢患者でのバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
16.1.4 生物学的同等性
健康成人においてゾフルーザ錠20mgを1錠又は顆粒を1g(バロキサビル マルボキシルとして20mg)をクロスオーバー法にて空腹時に単回経口投与し、薬物動態を比較したときのバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータを表16‐4に示す。Cmax及びAUCの対数の平均値の差について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された。
表16‐4 20mg錠又は顆粒(バロキサビル マルボキシルとして20mg)の単回経口投与時のバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
16.2 吸収
健康成人男性に、バロキサビル マルボキシル40mgを空腹時(14例)又は普通食摂取後(14例)に単回経口投与したときのバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータを表16‐5に、平均血漿中濃度推移を添付文書の図16‐2に示す。空腹時投与と比べ食後投与でバロキサビル マルボキシル活性体のCmaxは48%、AUCは36%減少した。Tmaxの中央値はいずれも4時間であった。
表16‐5 単回経口投与時のバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
図16‐2 単回経口投与時のバロキサビル マルボキシル活性体の平均血漿中濃度推移
16.3 分布
In vitro試験の結果、バロキサビル マルボキシル活性体のヒト血清蛋白結合率は92.9~93.9%、ヒト血球移行率は48.5~54.4%であった。
16.4 代謝
16.4.1 バロキサビル マルボキシルは小腸、血液、肝臓中のエステラーゼによって速やかにバロキサビル マルボキシル活性体に加水分解され、血漿中にはバロキサビル マルボキシルはほとんど検出されなかった。
16.4.2 健康成人男性6例に[14C]‐バロキサビル マルボキシルを空腹時単回経口投与したとき、血漿中では主にバロキサビル マルボキシル活性体が検出され、その他、バロキサビル マルボキシル活性体のグルクロン酸抱合体及び酸化体が検出された(外国人データ)。
16.4.3 In vitro代謝試験の結果、バロキサビル マルボキシル活性体はUGT1A3によりグルクロン酸抱合体に代謝され、CYP3Aによりスルホキシド体に代謝されると推定された。
16.5 排泄
健康成人男性6例に[14C]‐バロキサビル マルボキシル40mgを空腹時単回経口投与したとき、投与された放射能の80%及び14.7%がそれぞれ糞中及び尿中へ排泄された。投与量の3.28%が尿中にバロキサビル マルボキシル活性体として排泄された(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者
中等度肝機能障害患者(Child‐Pugh分類B)及び肝機能正常者各8例にバロキサビル マルボキシル40mgを空腹時単回経口投与したとき、中等度肝機能障害患者でのバロキサビル マルボキシル活性体のCmax及びAUC0-infは、肝機能正常者のそれぞれ0.80倍及び1.1倍であった(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 In vitro試験
バロキサビル マルボキシルはCYP2B6、CYP2C8及びCYP3Aを、バロキサビル マルボキシル活性体はCYP2B6及びCYP3Aを濃度依存的に弱く阻害した。また、バロキサビル マルボキシルはP‐糖蛋白を阻害し、バロキサビル マルボキシル活性体はP‐糖蛋白及びBCRPを阻害した。バロキサビル マルボキシル及びその活性体はP‐糖蛋白の基質であった。
16.7.2 臨床試験
健康成人を対象に薬物相互作用を検討した。バロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態に及ぼす併用薬の影響を表16‐6に、併用薬の薬物動態に及ぼすバロキサビル マルボキシルの影響を表16‐7に示す(外国人データ)。
表16‐6 バロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態に及ぼす併用薬の影響
→図表を見る(PDF)
表16‐7 併用薬の薬物動態に及ぼすバロキサビル マルボキシルの影響
→図表を見る(PDF)
17.1 有効性及び安全性に関する試験
〈治療〉
17.1.1 国際共同第III相臨床試験(65歳未満の成人及び12歳以上の小児)
12歳以上65歳未満のインフルエンザウイルス感染症患者687例(日本人518例を含む)に本剤(バロキサビル マルボキシル40mg若しくは80mg)又はプラセボを単回経口投与したときの有効性及び安全性を検討することを目的とした、無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果は表17‐1及び添付文書の図17‐1のとおりであり、プラセボに対する本剤の優越性が検証された。主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(中央値)は、本剤群で53.7時間、プラセボ群で80.2時間であり、ウイルス型・亜型別では、本剤群及びプラセボ群でそれぞれ、A/H1N1pdm型では43.7時間(7例)及び141.0時間(7例)、A/H3型では52.2時間(392例)及び79.5時間(195例)、B型では93.0時間(38例)及び77.1時間(20例)であった。
表17‐1 国際共同第III相臨床試験でのインフルエンザ罹病期間※1
→図表を見る(PDF)
図17‐1 国際共同第III相臨床試験でのKaplan‐Meier曲線
副作用発現頻度は、4.4%(27/610例)であった。主な副作用は下痢1.8%(11/610例)であった。
17.1.2 国内第III相臨床試験(12歳未満の小児)
12歳未満のインフルエンザウイルス感染症患者に本剤を単回経口投与したときの安全性及び有効性を検討することを目的とした非対照非盲検試験のうち、体重10kg以上の被験者102例における結果は表17‐2及び添付文書の図17‐2のとおり、主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(中央値)は、10kg以上20kg未満で39.1時間、20kg以上40kg未満で45.6時間、40kg以上で60.9時間であった。ウイルス型・亜型別のインフルエンザ罹病期間(中央値)は、A/H1N1pdm型では164.2時間(2例)、A/H3型では45.2時間(86例)、B型では43.8時間(7例)であった。
表17‐2 12歳未満の小児を対象とした国内第III相臨床試験でのインフルエンザ罹病期間※1
→図表を見る(PDF)
図17‐2 12歳未満の小児を対象とした国内第III相臨床試験でのKaplan‐Meier曲線
副作用発現頻度は、3.8%(4/105例)であった。主な副作用は下痢1.9%(2/105例)であった。
17.1.3 国際共同第III相臨床試験(ハイリスク因子を有する患者)
ハイリスク因子注1)を有する12歳以上のインフルエンザウイルス感染症患者774例(日本人297例を含む)に本剤(バロキサビル マルボキシル40mg若しくは80mg)又はプラセボを単回経口投与時の有効性及び安全性を検討することを目的とした、無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果は表17‐3及び添付文書の図17‐3のとおりであり、プラセボに対する本剤の優越性が検証された。主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(中央値)は、本剤群で73.2時間、プラセボ群で102.3時間であり、ウイルス型・亜型別では、本剤及びプラセボ群でそれぞれ、A/H1N1pdm型では67.0時間(28例)及び192.1時間(17例)、A/H3型では75.4時間(180例)及び100.4時間(185例)、B型では74.6時間(166例)及び100.6時間(167例)であった。
注1)高齢者(65歳以上)、慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者、代謝性疾患患者(糖尿病等)等
表17‐3 国際共同第III相臨床試験でのインフルエンザ罹病期間※1(ハイリスク因子を有する患者)
→図表を見る(PDF)
図17‐3 国際共同第III相臨床試験でのKaplan‐Meier曲線(ハイリスク因子を有する患者)
副作用発現頻度は、5.6%(41/730例)であった。主な副作用は悪心2.2%(16/730例)、下痢1.2%(9/730例)であった。
〈予防〉
17.1.4 国内第III相臨床試験
インフルエンザウイルス感染症患者の同居家族又は共同生活者を対象に、本剤のインフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果(10日間)を、無作為化二重盲検並行群間比較試験で検証した。インフルエンザウイルス感染症患者の発症から48時間以内に、その同居家族又は共同生活者に本剤(年齢及び体重に応じてバロキサビル マルボキシル1mg/kg、10mg、20mg、40mg、若しくは80mg)又はプラセボを単回経口投与したとき、主要評価項目である症候性インフルエンザウイルス陽性被験者(発熱かつ呼吸器症状あり)の割合は表17‐4のとおり、本剤群で1.9%(7/374例注2))、プラセボ群で13.6%(51/375例)であり、プラセボに対する本剤の優越性が検証された。インフルエンザウイルス感染症患者のウイルス型・亜型別の症候性インフルエンザウイルス陽性被験者の割合は、本剤群及びプラセボ群でそれぞれ、A/H1N1pdm型では1.1%(2/176例注2))及び10.6%(19/180例)、A/H3型では2.8%(5/181例注2))及び17.5%(32/183例)、B型ではいずれも0%(それぞれ0/2例及び0/3例)であった。[5.6、7.3、7.4参照]
注2)体重20kg未満の小児をそれぞれ全体では19例、A/H1N1pdm型では8例、A/H3型では11例を含む。予防に関しては体重20kg以上の小児の用法・用量が承認されている。
表17‐4 国内第III相臨床試験での症候性インフルエンザウイルス陽性被験者(発熱かつ呼吸器症状あり)※1の割合
→図表を見る(PDF)
副作用発現頻度は、1.9%(7/374注3)例)であった。主な副作用は悪心0.5%(2/374注3)例)であった。
注3)体重20kg未満の小児19例を含む。予防に関しては体重20kg以上の小児の用法・用量が承認されている。
18.1 作用機序
バロキサビル マルボキシル活性体は、A型及びB型インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害する。キャップ依存性エンドヌクレアーゼは、宿主細胞由来mRNA前駆体を特異的に切断する酵素であり、ウイルスmRNA合成に必要なプライマーとなるRNA断片を生成する。バロキサビル マルボキシル活性体は、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を阻害し、ウイルスmRNAの合成を阻害することにより、ウイルス増殖抑制作用を発揮する。
18.2 薬理作用
18.2.1 In vitroウイルス増殖抑制効果
A型及びB型インフルエンザウイルスの実験室株又は臨床分離株(ノイラミニダーゼ阻害薬に対する感受性低下を示すNA/H274Y変異株を含む)を感染させたMDCK細胞(イヌ腎臓由来株化細胞)において、バロキサビル マルボキシル活性体はウイルス増殖抑制効果を示した。〔ウイルス力価を1/10に抑制する濃度(EC90)は、A型で0.46~0.98nmol/L、B型で2.21~6.48nmol/Lであった。〕
また、この効果は、H5N1又はH7N9亜型の鳥インフルエンザウイルス(ノイラミニダーゼ阻害剤に対する感受性低下を示すNA/H274Y、NA/R292Kの各変異株を含む)を感染させたMDCK細胞においても認められた。(EC90は0.80~3.16nmol/L)
18.2.2 In vivo抗ウイルス作用
A型及びB型インフルエンザウイルスの実験室株又は臨床分離株(ノイラミニダーゼ阻害薬に対する感受性低下を示すNA/H274Y変異株を含む)を接種したマウスモデルにおいて、バロキサビル マルボキシルは、投与翌日のマウス肺内ウイルス力価を用量依存的に低下させた。この効果は、免疫機能を抑制したマウスにA型インフルエンザウイルス株を接種したモデル、更に、鳥インフルエンザウイルス株(H5N1、H7N9)を接種したマウスモデルにおいても認められた。
また、A型及びB型インフルエンザウイルス株や鳥インフルエンザウイルス株(H5N1、H7N9)を接種したマウス致死モデルにおいて、バロキサビル マルボキシルは、致死率を改善した。この治療効果は、A型インフルエンザウイルス株を接種したマウスモデルにおいて、治療開始を遅らせても(ウイルス接種後24~96時間に投与開始)認められた。
A型インフルエンザウイルス株を接種したフェレットモデルにおいて、バロキサビル マルボキシルは、投与翌日の鼻腔洗浄液内ウイルス力価を低下させ、体温上昇を抑制した。
18.3 耐性
18.3.1 臨床試験
成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第III相臨床試験、ハイリスク因子を有する患者を対象とした国際共同第III相臨床試験、12歳未満の小児を対象とした国内第III相臨床試験の各臨床試験において、本剤が投与され、投与前後に塩基配列解析が可能であった被験者のうち、バロキサビル マルボキシル活性体の結合標的部位であるポリメラーゼ酸性蛋白質領域のI38のアミノ酸変異が認められた被験者の割合は表18‐1のとおりであった。
表18‐1 第III相試験別、型/亜型別、体重別のポリメラーゼ酸性蛋白質領域のI38アミノ酸変異の発現状況
→図表を見る(PDF)
いずれの臨床試験においても、本剤投与中にI38のアミノ酸変異を検出した患者集団では、本剤投与から3日目以降に一過性のウイルス力価の上昇が認められた。なお、成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第III相臨床試験の本剤が投与された患者で認められたI38のアミノ酸変異の有無別のウイルス力価の推移は添付文書の図18‐1のとおりであった。
図18‐1 国際共同第III相臨床試験におけるポリメラーゼ酸性蛋白質領域のI38アミノ酸変異の有無別のウイルス力価の推移(平均値±標準偏差)
インフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果の検証を目的とした国内第III相臨床試験において、本剤群374例中、予防投与前後に63例でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に10例でI38のアミノ酸変異ウイルス(A型インフルエンザウイルス感染症患者)が認められた。年齢別では、12歳以上では、本剤群303例中、予防投与前後に46例でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に7例でI38のアミノ酸変異ウイルスが認められた。12歳未満では、本剤群71例注1)中、予防投与前後に17例注1)でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に3例注1)でI38のアミノ酸変異ウイルスが認められた。12歳未満の体重別では、体重40kg以上では本剤群4例中、予防投与前後にインフルエンザウイルスが検出された症例はなかったが、体重20kg以上40kg未満では本剤群48例中、予防投与前後に10例でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に2例でI38のアミノ酸変異ウイルスが認められた。体重10kg以上20kg未満では本剤群19例注2)中、予防投与前後に7例注2)でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に1例注2)でI38のアミノ酸変異ウイルスが認められた。[5.2、5.5参照]
注1)体重20kg未満の小児を含む。予防に関しては体重20kg以上の小児の用法・用量が承認されている。
注2)予防に関しては体重20kg以上の小児の用法・用量が承認されている。
成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第III相臨床試験において、本剤が投与された患者で、投与前後に塩基配列解析が可能であった370例中2例にバロキサビル マルボキシル活性体の結合標的部位であるポリメラーゼ酸性蛋白質領域のE23のアミノ酸変異が認められた。ハイリスク因子を有する患者を対象とした国際共同第III相臨床試験において、同様に290例中1例にE23のアミノ酸変異が認められた。12歳未満の小児を対象とした国内第III相臨床試験では、本剤が投与された患者で、投与前後に塩基配列解析が可能であった77例中にE23のアミノ酸変異は認められなかった。
インフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果の検証を目的とした国内第III相臨床試験において、本剤群374例注3)中、予防投与前後に63例注4)でインフルエンザウイルスが検出され、このうち5例注5)でE23のアミノ酸変異ウイルスが認められた。
注3)体重20kg未満の小児19例を含む。予防に関しては体重20kg以上の小児の用法・用量が承認されている。
注4)体重20kg未満の小児7例を含む。予防に関しては体重20kg以上の小児の用法・用量が承認されている。
注5)体重20kg未満の小児1例を含む。予防に関しては体重20kg以上の小児の用法・用量が承認されている。
18.3.2 非臨床試験
A型及びB型インフルエンザウイルス実験室分離株を用いたin vitro耐性分離試験において、A型ウイルス株では、バロキサビル マルボキシル活性体に対する感受性が親株と比較して最大で約100倍低下したウイルス株が得られ、これらの株では、I38Tのアミノ酸変異が認められた。なお、フェレットにおいて野生型ウイルスとの競合条件下でI38Tのアミノ酸変異ウイルスの増殖性及び伝播性は野生型を上回らないことが認められた。一方、B型ウイルス株では、アミノ酸変異は分離されなかった。
また、リバースジェネティクス法により組み換えたA型インフルエンザウイルス株を用いたin vitro試験において、I38のアミノ酸変異は、バロキサビル マルボキシル活性体に対する感受性を最大で約50倍、E23のアミノ酸変異は、バロキサビル マルボキシル活性体に対する感受性を最大で約5.5倍低下させた。
- 一包可:不可
- 分割:不可
- 粉砕:不明
- 製造販売会社
- 塩野義製薬
- 販売会社
おくすりのQ&A
保険審査の内容で恐縮ですが、先日の業界紙において、「社会保険診療報酬支払基金は31日、高血圧症に対して初回から第一選択薬として「配合剤」を投与することは、...
Cost of Concerta (methylphenidate)?
I am curious to find the cost of a month's supply of methylphenidate for ADHD...
わからないことがあったら、
気軽にすぐ質問しよう!
このコミュニティは、各種法令・通達が実務の現場で実際にはどう運用されているのか情報共有に使われることもあります。解釈に幅があるものや、関係機関や担当者によって対応が異なる可能性のあることを、唯一の正解であるかのように断言するのはお控えください。「しろぼんねっと」編集部は、投稿者の了承を得ることなく回答や質問を削除する場合があります。