デシコビ配合錠LT
添付文書情報2023年08月改定(第3版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- B型慢性肝炎を合併している患者では、本剤の投与中止により、B型慢性肝炎が再燃するおそれがあるので、本剤の投与を中断する場合には十分注意すること。特に非代償性B型慢性肝炎の場合、本剤の投与中止により、重症化するおそれがあるので注意すること〔9.1.1参照〕。
- 禁忌
- 2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. テラプレビル投与中の患者〔10.1参照〕。
- 効能・効果
- HIV-1感染症。
(効能又は効果に関連する注意)
本剤による治療にあたっては、患者の治療歴及び可能な場合には薬剤耐性検査(遺伝子型解析あるいは表現型解析)を参考にすること。
- 用法・用量
- 通常、成人及び12歳以上かつ体重35kg以上の小児には、次の用法・用量で経口投与する。投与に際しては、必ず他の抗HIV薬と併用すること。
〈リトナビル又はコビシスタットと併用する場合〉
デシコビ配合錠LT(エムトリシタビンとして200mg及びテノホビル アラフェナミドとして10mgを含有)を1日1回1錠経口投与する。
〈リトナビル又はコビシスタットと併用しない場合〉
デシコビ配合錠HT(エムトリシタビンとして200mg及びテノホビル アラフェナミドとして25mgを含有)を1日1回1錠経口投与する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 本剤はエムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミドフマル酸塩の2成分を含有した配合錠であるので、エムトリシタビンを含む製剤及びテノホビル アラフェナミドフマル酸塩を含む製剤と併用しないこと(また、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含む製剤についても併用しないこと)。
7.2. エムトリシタビンと類似の薬剤耐性、ウイルス学的特性を有しているラミブジンを含む製剤と併用しないこと。また、ラミブジン及びテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含む抗HIV療法においてウイルス学的効果が得られないで、HIV-1逆転写酵素遺伝子M184V/I変異が認められた場合、ラミブジン及びテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を本剤に変更することのみで効果の改善は期待できない。
7.3. 本剤投与後、クレアチニンクリアランスが30mL/min未満に低下した場合は、投与の中止を考慮すること〔8.4、9.1.2、9.2.1、10.2、11.1.1、16.6.1参照〕。
- 腎機能障害患者
- 8.1. 本剤による治療は、抗HIV療法に十分な経験を持つ医師のもとで開始すること。
8.2. 本剤の使用に際しては、国内外のガイドライン等の最新の情報を参考に、患者又はそれに代わる適切な者に次の事項についてよく説明し同意を得た後、使用すること。
8.2.1. 本剤はHIV感染症の根治療法薬ではないことから、日和見感染症を含むHIV感染症の進展に伴う疾病を発症し続ける可能性があるので、本剤投与開始後の身体状況の変化についてはすべて担当医に報告すること。
8.2.2. 本剤の長期投与による影響については現在のところ不明であること。
8.2.3. 担当医の指示なしに用量を変更したり、服用を中止したりしないこと。
8.2.4. 本剤は併用薬剤と相互作用を起こすことがあるため、服用中のすべての薬剤を担当医に報告すること。また、本剤で治療中に新たに他の薬剤を服用する場合、事前に担当医に相談すること。
8.3. 抗HIV薬の多剤併用療法を行った患者で、免疫再構築炎症反応症候群が報告されている(投与開始後、免疫機能が回復し、症候性のみならず無症候性日和見感染に対する炎症反応(マイコバクテリウムアビウムコンプレックス、サイトメガロウイルス、ニューモシスチス等によるもの)等が発現することがあり、また、免疫機能の回復に伴い自己免疫疾患(甲状腺機能亢進症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、ブドウ膜炎等)が発現するとの報告があるので、これらの症状を評価し、必要時には適切な治療を考慮すること)。
8.4. 本剤投与前にクレアチニンクリアランス、尿糖及び尿蛋白の検査を実施し、クレアチニンクリアランスが30mL/min以上であることを確認すること。また、本剤投与後も定期的な検査等により患者の状態を注意深く観察すること〔7.3、9.1.2、9.2.1、10.2、11.1.1、16.6.1参照〕。
8.5. アジア系人種におけるエムトリシタビンの薬物動態は十分に検討されていないが、少数例の健康成人及びB型慢性肝炎のアジア系人種において、Cmax上昇を示唆する成績が得られているので、HBV感染症合併患者を含め、副作用の発現に注意すること。
8.6. エムトリシタビン製剤の臨床試験において皮膚変色が発現し、その発現頻度は有色人種で高いことが示唆されている。その原因は現在のところ不明である。
9.1.1. B型肝炎ウイルス感染を合併している患者:本剤の投与を中断する場合には十分注意すること。B型慢性肝炎を合併している患者では、本剤の投与中止により、B型慢性肝炎が再燃するおそれがある。特に非代償性B型慢性肝炎の場合、本剤の投与中止により、重症化するおそれがある〔1.警告の項参照〕。
9.1.2. 腎機能障害のリスクを有する患者:血清リンの検査を実施すること〔7.3、8.4、9.2.1、10.2、11.1.1、16.6.1参照〕。
9.1.3. 病的骨折の既往のある患者又はその他の慢性骨疾患を有する患者:十分な観察を行い、異常が認められた場合には、投与を中止する等、適切な処置を行うこと(非臨床試験及び臨床試験において、骨密度低下と骨代謝生化学マーカー上昇が認められ、骨代謝亢進が示唆された。また、抗HIV薬による治療経験がないHIV-1感染症患者に対し、テノホビル アラフェナミドフマル酸塩を含有する製剤が投与された臨床試験において、骨密度が低下した症例が認められた)。
9.2.1. 重度腎機能障害のある患者:エムトリシタビンの血中濃度が上昇する〔7.3、8.4、9.1.2、10.2、11.1.1、16.6.1参照〕。
- 相互作用
- テノホビル及びエムトリシタビン:糸球体ろ過と能動的な尿細管分泌により腎排泄される。
テノホビル アラフェナミド:カテプシンA及びP-gpの基質である〔16.7.1参照〕。
10.1. 併用禁忌:テラプレビル<テラビック>〔2.2参照〕[テノホビル アラフェナミドの抗HIV-1活性が低下するため、本剤の効果が減弱する可能性がある(テラプレビルのカテプシンA活性阻害作用によるため)]。
10.2. 併用注意:1). カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ホスフェニトイン、リファブチン、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort)〔16.7.2参照〕[これらの薬剤と併用することにより、テノホビル アラフェナミドの血中濃度が低下する可能性がある(これら薬剤のP-gp誘導作用によるため)]。
2). アシクロビル、バラシクロビル塩酸塩、ガンシクロビル、バルガンシクロビル塩酸塩[これら薬剤・テノホビル又はエムトリシタビンの血中濃度が上昇し、これら薬剤又は本剤による有害事象を増強する可能性がある(尿細管への能動輸送により排泄される薬剤と併用する場合、排泄経路の競合により排泄が遅延するため)]。
3). 腎毒性を有する薬剤〔7.3、8.4、9.1.2、9.2.1、11.1.1、16.6.1参照〕[併用は避けることが望ましい(腎毒性を有する薬剤は腎機能障害の危険因子となる)]。
- 副作用
- 次の副作用が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 腎不全又は重度の腎機能障害(1%未満):腎機能不全、腎不全、急性腎障害、近位腎尿細管機能障害、ファンコニー症候群、急性腎尿細管壊死、腎性尿崩症又は腎炎等の重度腎機能障害が現れることがあるので、臨床検査値に異常が認められた場合には、投与を中止する等、適切な処置を行うこと(特に腎機能障害の既往がある患者や腎毒性のある薬剤投与中の患者では注意すること)〔7.3、8.4、9.1.2、9.2.1、10.2、16.6.1参照〕。
11.1.2. 乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度肝腫大(脂肪肝)(頻度不明):乳酸アシドーシス又は肝細胞毒性が疑われる臨床症状又は肝細胞毒性が疑われる検査値異常(アミノトランスフェラーゼの急激な上昇等)が認められた場合には、本剤の投与を一時中止すること(特に肝疾患の危険因子を有する患者においては注意すること)。エムトリシタビン又はテノホビルを含む核酸系逆転写酵素阻害薬の単独投与又はこれらの併用療法により、重篤な乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度肝腫大(脂肪肝)が、女性に多く報告されている。
- 11.2. その他の副作用
1). 代謝及び栄養障害:(2%未満)食欲減退、高コレステロール血症、(頻度不明)体脂肪再分布/体脂肪蓄積。
2). 精神障害:(2%未満)異常な夢、不眠症。
3). 神経系障害:(2%以上)頭痛、(2%未満)浮動性めまい、傾眠。
4). 胃腸障害:(2%以上)悪心、下痢、放屁、(2%未満)嘔吐、腹部膨満、腹痛、上腹部痛、便秘、消化不良。
5). 皮膚及び皮下組織障害:(2%未満)発疹、(頻度不明)血管性浮腫、蕁麻疹。
6). 筋骨格系及び結合組織障害:(2%未満)骨減少症、骨粗鬆症。
7). 腎及び尿路障害:(2%未満)蛋白尿。
8). 一般・全身障害及び投与部位の状態:(2%以上)疲労。
- 高齢者
- 患者の肝、腎及び心機能の低下、合併症、併用薬等を十分に考慮すること。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物試験(サル)においてテノホビルの胎仔への移行が報告されている)。
授乳を避けさせること(テノホビル及びエムトリシタビンのヒト乳汁への移行が報告されており、なお、テノホビル アラフェナミドのヒト乳汁への移行は不明であり、また、女性のHIV感染症患者は、乳児のHIV感染を避けるため、乳児に母乳を与えないことが望ましい)。
- 小児等
- 低出生体重児、新生児、乳児、幼児、12歳未満の小児又は体重35kg未満の小児を対象とした臨床試験は実施していない〔16.1.6参照〕。
- 取扱い上の注意
- 開栓後は、湿気を避けて保存すること。
16.1 血中濃度
16.1.1 日本人健康成人被験者に、ダルナビル800mg及びリトナビル100mgと共にデシコビ配合錠LTを単回経口投与した時の、エムトリシタビン、テノホビル アラフェナミド及びテノホビルの薬物動態パラメータを表1に示す。
表1 ダルナビル、リトナビル及びデシコビ配合錠LT単回経口投与時のエムトリシタビン、テノホビル アラフェナミド及びテノホビルの薬物動態パラメータ
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16.1.2 日本人健康成人被験者に、ダルナビル・コビシスタット配合錠と共にデシコビ配合錠LTを単回経口投与した時の、エムトリシタビン、テノホビル アラフェナミド及びテノホビルの薬物動態パラメータを表2に示す。
表2 ダルナビル・コビシスタット配合錠及びデシコビ配合錠LT単回経口投与時のエムトリシタビン、テノホビル アラフェナミド及びテノホビルの薬物動態パラメータ
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16.1.3 日本人健康成人被験者に、デシコビ配合錠HTを単回経口投与した時の、エムトリシタビン、テノホビル アラフェナミド及びテノホビルの薬物動態パラメータを表3に示す。
表3 デシコビ配合錠HT単回経口投与時のエムトリシタビン、テノホビル アラフェナミド及びテノホビルの薬物動態パラメータ
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16.1.4 健康成人被験者に、エルビテグラビル150mg及びコビシスタット150mgと共にデシコビ配合錠LTを単回経口投与した時の、エムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミドの薬物動態パラメータを表4に示す。
表4 コビシスタット存在下におけるデシコビ配合錠LT単回経口投与時のエムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミドの薬物動態パラメータ
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16.1.5 健康成人被験者に、デシコビ配合錠HTを単回経口投与した時の、エムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミドの薬物動態パラメータを表5に示す。
表5 デシコビ配合錠HT単回経口投与時のエムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミドの薬物動態パラメータ
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16.1.6 12歳以上18歳未満で体重35kg以上の小児HIV‐1感染症患者を対象としたゲンボイヤ配合錠(エルビテグラビルとして150mg、コビシスタットとして150mg、エムトリシタビンとして200mg及びテノホビル アラフェナミドとして10mgを含有する抗HIV薬)の非盲検試験において、本剤含有成分の薬物動態を検討した。ゲンボイヤ配合錠投与時の小児患者におけるエムトリシタビン、テノホビル アラフェナミド及びテノホビルの薬物動態パラメータを表6に示す。[9.7参照]
表6 ゲンボイヤ配合錠反復経口投与時のエムトリシタビン、テノホビル アラフェナミド及びテノホビルの薬物動態パラメータ
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16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
デシコビ配合錠HTを高脂肪食(約800kcal、50%が脂肪由来)摂取時に投与した場合、空腹時と比較して、エムトリシタビンのCmax及びAUCinfは、それぞれ27%及び9%低下し、テノホビル アラフェナミドのCmax及びAUCinfは、それぞれ15%低下及び75%上昇した(外国人における成績)。
16.3 分布
エムトリシタビン:ヒト血漿蛋白に対する結合率は、0.02~200μg/mLの濃度範囲において濃度に依存せず4%未満であった(外国人における成績)。
テノホビル アラフェナミド:テノホビル アラフェナミドのヒト血漿蛋白に対する結合率は77~86%であった(外国人における成績)。
テノホビル:テノホビルのヒト血漿蛋白に対する結合率は0.7%未満であった(外国人における成績)。
16.4 代謝
エムトリシタビン:ヒト肝ミクロソームを用いた各種検討において、2%未満の代謝物が検出された。14C‐エムトリシタビンを単回投与したところ、投与量の13%の代謝物がヒト尿中に検出された(外国人における成績)。
テノホビル アラフェナミド:経口投与後、末梢血単核球及びマクロファージのカテプシンA及び肝細胞のカルボキシルエステラーゼ1によりテノホビルに代謝され、その後、テノホビル二リン酸に代謝された。CYP分子種発現系酵素を用いた検討において、テノホビル アラフェナミドはCYP3Aでわずかに代謝され、その代謝速度は1.9pmol/min/pmol CYPであった(外国人における成績)。
16.5 排泄
エムトリシタビン:健康被験者にエムトリシタビン200mgを反復投与後14C‐エムトリシタビンを単回投与したところ、投与量の86%は尿中に、14%は糞中に排泄された。腎クリアランスが推定クレアチニンクリアランスを上回ったことから、糸球体ろ過と尿細管への能動輸送の両方による排泄が示唆された(外国人における成績)。
テノホビル アラフェナミド:健康被験者に14C‐テノホビル アラフェナミドフマル酸塩を単回投与したところ、投与量の47.2%が糞中に、36.2%が尿中に排泄された。その主成分はテノホビルであり、糞中の99%、尿中の86%を占めた。また、投与量の1.4%がテノホビル アラフェナミドとして尿中に排泄された。テノホビルは腎臓での糸球体ろ過と尿細管への能動輸送の両方により排泄された(外国人における成績)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
エムトリシタビン:クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の重度の腎機能障害を有する被験者における、エムトリシタビン200mg単回投与時のエムトリシタビンのCmax及びAUCは、クレアチニンクリアランスが80mL/min超の被験者に対し、それぞれ約30%及び約200%上昇した(外国人における成績)。[7.3、8.4、9.1.2、9.2.1、10.2、11.1.1参照]
テノホビル アラフェナミド:クレアチニンクリアランスが15mL/min以上30mL/min未満の重度の腎機能障害を有する被験者(非透析患者)における、テノホビル アラフェナミド25mg単回投与時のテノホビル アラフェナミドのCmax及びAUCは、クレアチニンクリアランスが90mL/min超の被験者に対し、それぞれ79%及び92%上昇し、テノホビルのCmax及びAUCは、それぞれ179%及び474%上昇した(外国人における成績)。[7.3、8.4、9.1.2、9.2.1、10.2、11.1.1参照]
16.6.2 肝機能障害患者
エムトリシタビン:肝機能障害を有する被験者における薬物動態は検討していない。
テノホビル アラフェナミド:軽度の肝機能障害(Child‐Pugh分類クラスA)を有する被験者における、テノホビル アラフェナミド25mg単回投与時のテノホビル アラフェナミドのCmax及びAUCは、肝機能正常被験者に対し、それぞれ11%及び8%低下し、テノホビルのCmax及びAUCは、それぞれ3%及び11%低下した。また、中等度の肝機能障害(Child‐Pugh分類クラスB)を有する被験者における、テノホビル アラフェナミド25mg単回投与時のテノホビル アラフェナミドのCmax及びAUCは、肝機能正常被験者に対し、それぞれ19%及び13%上昇し、テノホビルのCmax及びAUCは、それぞれ12%及び3%低下した(外国人における成績)。
いずれの成分においても、重度の肝機能障害(Child‐Pugh分類クラスC)を有する被験者における薬物動態は検討していない。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 非臨床における薬物相互作用試験
エムトリシタビン:OAT3の基質である。
テノホビル アラフェナミド:P‐gp、BCRP、OATP1B1及びOATP1B3の基質である。また、テノホビルは、OAT1、OAT3及びMRP4の基質であり、OAT1に対する弱い阻害作用(IC50値:29.3μM)を示した。[10.参照]
16.7.2 臨床における薬物相互作用試験
健康成人に対し、本剤又は本剤の有効成分を含有する製剤と併用薬を投与した時の、本剤の有効成分又は併用薬の薬物動態への影響を表7~10に示す。
表7 併用薬投与時のテノホビル アラフェナミドの薬物動態パラメータ比
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表8 併用薬投与時のテノホビルの薬物動態パラメータ比
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表9 併用薬投与時のエムトリシタビンの薬物動態パラメータ比
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表10 テノホビル アラフェナミドフマル酸塩製剤、ゲンボイヤ配合錠又は本剤投与時の併用薬の薬物動態パラメータ比
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17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 海外第III相試験(292‐0104試験)
抗HIV薬による治療経験がないHIV‐1感染症患者を対象とし、スタリビルド配合錠(エルビテグラビルとして150mg、コビシスタットとして150mg、エムトリシタビンとして200mg及びテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩として300mgを含有する抗HIV薬)を対照とした無作為化二重盲検並行比較試験の結果を表1に示す(投与後48週時及び96週時)。なお、国内において組み入れられた被験者10例(ゲンボイヤ配合錠投与群4例、スタリビルド配合錠投与群6例)における投与後48週時のHIV‐1 RNA量が50copies/mL未満の被験者の割合は、ゲンボイヤ配合錠投与群及びスタリビルド配合錠投与群ともに100%であった。
表1 292‐0104試験の結果(投与後48週時及び96週時)
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副作用発現頻度は、本剤投与群で44.8%(195/435例)であった。主な副作用は、悪心11.0%(48/435例)、下痢8.7%(38/435例)、頭痛6.4%(28/435例)であった。
17.1.2 海外第III相試験(292‐0111試験)
抗HIV薬による治療経験がないHIV‐1感染症患者を対象とし、スタリビルド配合錠を対照とした無作為化二重盲検並行比較試験の結果を表2に示す(投与後48週時及び96週時)。
表2 292‐0111試験の結果(投与後48週時及び96週時)
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副作用発現頻度は、本剤投与群で39.9%(172/431例)であった。主な副作用は、悪心9.7%(42/431例)、下痢5.8%(25/431例)、頭痛5.8%(25/431例)、疲労4.4%(19/431例)であった。
17.1.3 海外第II相試験(299‐0102試験)
抗HIV薬による治療経験がないHIV‐1感染症患者を対象とし、ダルナビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドフマル酸塩配合錠(ダルナビルとして800mg、コビシスタットとして150mg、エムトリシタビンとして200mg及びテノホビル アラフェナミドとして10mgを含有する抗HIV薬)を対照とした無作為化二重盲検並行比較試験の結果を表3に示す(投与後48週時)。
表3 299‐0102試験の結果(投与後48週時)
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副作用発現頻度は、本剤投与群で41.7%(43/103例)であった。主な副作用は、下痢13.6%(14/103例)、悪心9.7%(10/103例)、疲労8.7%(9/103例)であった。
17.1.4 海外第III相試験(311‐1089試験)
抗HIV薬による治療経験があり、ウイルス学的に抑制されているHIV‐1感染症患者を対象とし、エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含むレジメンから本剤を含むレジメンに切り替えた際の、本剤の有効性及び安全性を検討するために実施した、エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含むレジメン継続投与を対照とした無作為化非盲検並行比較試験の結果を表4に示す(投与後48週時)。
表4 311‐1089試験の結果(投与後48週時)
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副作用発現頻度は、本剤投与群で9.3%(31/333例)であった。主な副作用は、悪心1.2%(4/333例)、下痢1.2%(4/333例)であった。
17.1.5 海外第III相試験(292‐0109試験)
抗HIV薬による治療経験があり、ウイルス学的に抑制されているHIV‐1感染症患者を対象とし、エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含むレジメンからゲンボイヤ配合錠に切り替えた際の、ゲンボイヤ配合錠の有効性及び安全性を検討するために実施した、エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含むレジメン継続投与を対照とした無作為化非盲検並行比較試験の結果を表5に示す(投与後48週時及び96週時)。
表5 292‐0109試験の結果(投与後48週時及び96週時)
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副作用発現頻度は、本剤投与群で22.7%(218/959例)であった。主な副作用は、下痢2.6%(25/959例)、悪心2.3%(22/959例)であった。
18.1 作用機序
エムトリシタビン:エムトリシタビンは、シチジンの合成ヌクレオシド誘導体であり、細胞内酵素によりリン酸化されエムトリシタビン5’‐三リン酸となる。エムトリシタビン5’‐三リン酸はHIV‐1逆転写酵素の基質であるデオキシシチジン5’‐三リン酸と競合すること及び新生ウイルスDNAに取り込まれた後にDNA鎖伸長を停止させることにより、HIV‐1逆転写酵素の活性を阻害する。エムトリシタビン5’‐三リン酸のHIV‐1逆転写酵素に対する阻害定数(Ki値)は0.17μMであるのに対し、ヒトのDNAポリメラーゼα、β、ε及びミトコンドリアDNAポリメラーゼγに対するKi値は、それぞれ6.0μM、17.0μM、150μM及び6.0μMとなり、これらに対するエムトリシタビン5’‐三リン酸の阻害作用は弱い。
テノホビル アラフェナミド:テノホビル アラフェナミドは、テノホビルのホスホンアミド酸プロドラッグ(2’‐デオキシアデノシン一リン酸誘導体)である。テノホビル アラフェナミドは、血漿中の安定性が高く、細胞内透過性を有し、末梢血単核球及びマクロファージ中のカテプシンAにより加水分解を受けて細胞内にテノホビルを送達する。その後、細胞内酵素によりリン酸化を受け、テノホビル二リン酸となる。テノホビル二リン酸は、HIV‐1逆転写酵素の基質であるデオキシアデノシン5’‐三リン酸と競合すること及びDNAに取り込まれた後にDNA鎖伸長を停止させることにより、HIV‐1逆転写酵素の活性を阻害する。テノホビル二リン酸のHIV‐1逆転写酵素に対するKi値は0.21μMであるのに対し、ヒトのDNAポリメラーゼα、β及びミトコンドリアDNAポリメラーゼγに対するKi値は、それぞれ5.2μM、81.7μM及び59.5μMとなり、これらに対するテノホビル二リン酸の阻害作用は弱い。
18.2 抗ウイルス作用(in vitro)
エムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミドを細胞培養系で評価した結果、相乗的な抗ウイルス活性が認められた。
エムトリシタビン:ヒトTリンパ芽球様細胞株、MAGI‐CCR5細胞株及び末梢血単核球初代培養細胞を用いて、HIV‐1の実験室株及び臨床分離株に対するエムトリシタビンの抗ウイルス活性を評価した。エムトリシタビンのEC50値は、0.0013~0.64μMの範囲であった。
テノホビル アラフェナミド:ヒトTリンパ芽球様細胞株、単球/マクロファージ及び末梢血リンパ球初代培養細胞を用いて、HIV‐1の実験室株及び臨床分離株に対するテノホビル アラフェナミドの抗ウイルス活性を評価した。テノホビル アラフェナミドのEC50値は、0.1~15.7nMの範囲であった。
18.3 薬剤耐性
18.3.1 in vitro試験
エムトリシタビン:エムトリシタビンに対する感受性低下は、HIV‐1逆転写酵素のM184V/I変異と関連が認められた。
テノホビル アラフェナミド:テノホビル アラフェナミドに対する感受性が低下したHIV‐1分離株では、K65R変異が発現しており、K70E変異も一過性に認められた。
18.3.2 臨床試験
抗HIV薬による治療経験がないHIV‐1感染症患者:ゲンボイヤ配合錠の臨床試験(292‐0104試験及び292‐0111試験)において、ウイルス学的失敗と判定された被験者のうち、投与後96週時又は早期に試験中止となった時点の血漿中HIV‐1 RNA量が400copies/mLを超えた被験者から分離したHIV‐1を解析し、19例(2.2%、19/866例)の遺伝子型及び表現型解析結果が得られた。遺伝子型解析結果から、エムトリシタビン又はテノホビルの主要耐性関連変異が1つ以上認められたのは、10例(1.2%、10/866例)であった。認められた変異は、逆転写酵素領域のM184V/I(9例)、K65R/N(2例)及びK70R(1例)、インテグラーゼ領域のT66A/I/V(2例)、E92Q(4例)、Q148R(1例)及びN155H/S(2例)であった。また、表現型解析結果から、エムトリシタビンに対する感受性が野生株に対して28倍から117倍超低下したHIV‐1分離株が8例(0.9%、8/866例)に、テノホビルに対する感受性が野生株に対して3倍低下したHIV‐1分離株が1例(0.1%、1/866例)に認められた。
ダルナビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドフマル酸塩配合錠の臨床試験(299‐0102試験)において、ウイルス学的失敗と判定された被験者のうち、投与後48週時又は早期に試験中止となった時点の血漿中HIV‐1 RNA量が400copies/mLを超えた被験者から分離したHIV‐1株を解析し、6例(5.8%、6/103例)の遺伝子型及び表現型解析結果が得られた。遺伝子型解析結果から、エムトリシタビン又はテノホビルの主要耐性関連変異が1つ以上認められたのは、1例(1.0%、1/103例)であった。認められた変異は、逆転写酵素領域のK65K/R及びM184M/Iであった。また、表現型解析結果から、エムトリシタビン及びテノホビルに対する感受性に大きな変化はなく、エムトリシタビンに対する感受性の低下は野生株に対し2.5倍、テノホビルに対する感受性の低下は野生株に対し0.73倍であった。
抗HIV薬による治療経験があり、ウイルス学的に抑制されているHIV‐1感染症患者:ゲンボイヤ配合錠の臨床試験(292‐0109試験)において、投与後96週時で遺伝子型及び表現型解析の対象となった被験者のうち、3例(0.3%、3/959例)にエムトリシタビン又はエルビテグラビルの耐性変異が認められた。遺伝子型解析結果で認められた変異は、逆転写酵素領域のM184V/I(3例)及びインテグラーゼ領域のE92Q/G(2例)であった。また、表現型解析結果から、エムトリシタビンに対する感受性が野生株に対して3.8倍から117倍超低下したHIV‐1分離株が3例(0.3%、3/959例)に、エルビテグラビルに対する感受性が野生株に対して10倍低下したHIV‐1分離株が1例(0.1%、1/959例)に認められた。なお、テノホビルに対する感受性の低下は認められなかった。
18.4 交差耐性
エムトリシタビン:核酸系逆転写酵素阻害薬の間で交差耐性が認められた。エムトリシタビン耐性のM184V/I変異を有するHIV‐1株は、ラミブジンに対して交差耐性を示した。また、アバカビル、ジダノシン及びテノホビルの投与によりin vivoで出現したK65R変異を有するHIV‐1株では、エムトリシタビンに対する感受性の低下が確認された。
テノホビル アラフェナミド:K65R及びK70E変異を持つHIV‐1株は、アバカビル、ジダノシン、ラミブジン、エムトリシタビン及びテノホビルに対する感受性の低下を示すが、ジドブジンに対する感受性を維持する。T69S二重挿入変異又はK65Rを含むQ151M複合変異を持ち、核酸系逆転写酵素阻害薬に多剤耐性を示すHIV‐1は、テノホビルに対する感受性の低下を示した。
- 一包可:不明
バラ包装
- 分割:可能
- 粉砕:可能
- 製造販売会社
- ギリアド・サイエンシズ
- 販売会社
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