ベリナート皮下注用2000
添付文書情報2024年03月改定(第5版)
商品情報
- 禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
- 効能・効果
- 遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制。
(効能又は効果に関連する注意)
臨床試験において、侵襲を伴う処置による急性発作の発症抑制に対する有効性及び安全性は検討されていない。
- 用法・用量
- 本剤を添付の溶解液全量で溶解し、皮下投与する。
通常、1回体重1kg当たり60国際単位を週2回投与する。
(用法及び用量に関連する注意)
投与間隔は原則3~4日間隔とすること。
- 合併症・既往歴等のある患者
- 8.1. 本剤の使用にあたっては、疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際し感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、血液を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを患者に対して説明し、理解を得るよう努めること。
8.2. 本剤の原材料となる血漿については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体及び抗HIV-2抗体が陰性であることを確認している。さらに、プールした試験血漿については、HIV-1、HBV、HCV及びHAVについて核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。また、ヒトパルボウイルスB19についてもNATによるスクリーニングを実施し、適合した血漿を用いている。
その後の製造工程である60℃、10時間液状加熱処理及びナノフィルトレーションは、HIV、HBV、HCV等のエンベロープを有するウイルス及びエンベロープを有しないHAV、ヒトパルボウイルスB19をはじめとする各種ウイルス除去・不活化効果が確認されているが、投与に際しては、次の点に十分に注意すること。
血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること〔9.1.1、9.1.2、9.5妊婦の項参照〕。
8.3. 現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。
8.4. 肝炎ウイルス感染症等のウイルス感染症の危険性を完全に否定できないので、観察を十分に行い、肝障害があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
8.5. 頻回輸注した場合、患者の血清中にC1-インアクチベーターに対するインヒビター発生を完全に否定できないので、観察を十分に行うこと。
8.6. 在宅自己注射を行う場合、患者に投与方法及び製剤と医療機器の安全な廃棄方法の指導を行うこと。
8.6.1. 自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、患者又は介護者が本剤投与による危険性と対処法について理解し、確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。自己投与適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させるなど、適切な処置を行うこと。
9.1.1. 溶血性貧血・失血性貧血の患者:ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない(感染した場合には、発熱と急激な貧血を伴う重篤な全身症状を起こすことがある)〔8.2参照〕。
9.1.2. 免疫不全患者・免疫抑制状態の患者:ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない(感染した場合には、持続性貧血を起こすことがある)〔8.2参照〕。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明):頻脈、血圧上昇、血圧低下、潮紅、じん麻疹、呼吸困難、頭痛、めまい、悪心等が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと(なお、アナフィラキシーは遺伝性血管性浮腫の発作と同様の症状を示すため、観察を十分に行うこと)。
- 11.2. その他の副作用
1). 一般・全身障害及び投与部位の状態:(1%以上)注射部位反応(注射部位紅斑[18.7%]、注射部位疼痛[16.8%]、注射部位内出血[9.3%]、注射部位反応[8.4%]、注射部位硬結[6.5%]、注射部位腫脹[4.7%]、注射部位出血[3.7%]、注射部位血腫[3.7%]、注射部位そう痒感[1.9%]、注射部位発疹[1.9%]、注射部位分泌物[0.9%]、注射部位熱感[0.9%]、注射部位冷感[0.9%]、注射部位浮腫、注射部位じん麻疹)(43.0%)。
2). 免疫系障害:(1%未満)じん麻疹、(頻度不明)過敏症、そう痒症、発疹。
3). 感染症及び寄生虫症:(頻度不明)上咽頭炎。
4). 神経系障害:(頻度不明)浮動性めまい。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(生殖発生毒性試験は実施していない、また、本剤の投与によりヒトパルボウイルスB19の感染の可能性を否定できない(感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性がある))〔8.2参照〕。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
- 小児等
- 8歳未満の小児等を対象とした臨床試験成績は得られていない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤調製時の注意14.1.1. 本剤及び添付溶解液を冷所保存している場合、調製前に室温に戻しておくこと。
14.1.2. 本剤の溶解及び注射器への吸引は衛生的な環境で行うこと。
14.1.3. 添付の溶解液以外は使用しないこと。本剤に溶解液全量を加えた後、バイアルを静かに円を描くように回して溶解する(激しく振とうしない)。
14.1.4. 他剤と混合しないこと。
14.1.5. 本剤は溶解後速やかに使用することが望ましいが、すぐに投与しない場合は、バイアル内で室温保存(30℃以下)し、8時間以内に使用しない場合は廃棄する(本剤は細菌の増殖に好適な蛋白であり、保存剤を含有していない)。
14.2. 薬剤投与時の注意14.2.1. 注射器に吸引後、投与前に微粒子又は変色の有無を目視検査する(濁り又は沈殿のある薬液は使用しない)。
14.2.2. 本剤は腹部等に皮下投与すること。
14.3. 薬剤交付時の注意使用後の残液や医療機器は施設の指示に従い適切に廃棄すること。
本剤は特定生物由来製品に該当することから本剤を投与又は処方した場合は医薬品名(販売名)、製造番号(ロット番号)、投与又は処方日、投与又は処方を受けた患者の氏名、住所等を記録し使用日から少なくとも20年間保存すること。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報海外において、体外循環下の心臓外科手術の前後でのCapillary Leak Syndrome<承認外用法・用量>(毛細血管漏出症候群<承認外用法・用量>)を予防又は治療するために静注用C1-インアクチベーター製剤を投与した場合において、致死的血栓症を発現したとの報告がある(承認外用法・用量)。
16.1 血中濃度
日本人遺伝性血管性浮腫(HAE)患者9例における本剤60国際単位(IU)/kg週2回16週間皮下投与後の実測値に基づく定常状態でのC1‐インアクチベーター活性の薬物動態パラメータは次のとおりである。
→図表を見る(PDF)
本剤の薬物動態は母集団薬物動態解析を用いて検討した(外国人データ)。母集団薬物動態解析に基づく本剤60IU/kg週2回皮下投与後のC1‐インアクチベーター活性の薬物動態パラメータを次に示す。
日本人HAE患者の薬物動態は外国人と同様であり、人種は統計的に有意な影響を及ぼさないことが示された。
→図表を見る(PDF)
性別、人種又は腎機能障害や肝機能障害を有する特定の患者集団を対象とした薬物動態試験は実施していない。母集団薬物動態解析(年齢範囲:8~72歳)において体重は統計的に有意な共変量であったが、年齢及び人種は有意な共変量ではなかった。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相臨床試験
遺伝性血管性浮腫(HAE)1型又は2型の患者9例を対象とした多施設共同非ランダム化非盲検単一群試験において、主要評価項目の1つである期間で調整したHAE発作頻度(1ヵ月あたりのHAE発作回数)の平均(標準偏差)は、導入期の3.69(1.091)回/月から治療期(本剤60国際単位/kg週2回16週間皮下投与)において0.30(0.482)回/月に減少した。
副作用は、計3例に認められ、注射部位紅斑、注射部位反応、注射部位疼痛及び倦怠感各1例であった。
17.1.2 海外第III相臨床試験
遺伝性血管性浮腫(HAE)1型又は2型の患者90例を対象とした多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験(4通りの投与群注1)のいずれか1つに従い、連続する治療期1及び治療期2で本剤[40国際単位(IU)/kg注2)又は60IU/kg]又はプラセボ注3)を週2回16週間皮下投与)において、主要評価項目である期間で調整したHAE発作頻度の最小二乗平均(標準誤差)は、プラセボ投与の4.03(0.263)回/月から本剤60IU/kg投与で0.52(0.261)回/月に減少し、その差は統計的に有意であった(p<0.001)。本剤40IU/kg注2)投与では、プラセボ投与の3.61(0.327)回/月から1.19(0.327)回/月に減少した(p<0.001)。
副作用は、本剤投与期において86例中29例(33.7%)(40IU/kg及び60IU/kg投与期においてそれぞれ43例中14例[32.6%]及び43例中15例[34.9%])に発現し、プラセボ投与期において86例中22例(25.6%)に発現した。主な副作用は、注射部位紅斑(本剤40IU/kg[43例]、60IU/kg[43例]、プラセボ投与[86例]でそれぞれ7例[16.3%]、8例[18.6%]、12例[14.0%])、注射部位疼痛(7例[16.3%]、7例[16.3%]、9例[10.5%])、注射部位硬結(3例[7.0%]、4例[9.3%]、2例[2.3%])、注射部位内出血(2例[4.7%]、3例[7.0%]、5例[5.8%])、注射部位腫脹(1例[2.3%]、4例[9.3%]、4例[4.7%])、注射部位浮腫(5例[11.6%]、0例、3例[3.5%])であった。
注1)・プラセボ(0.12mL/kg)→本剤40IU/kg(0.08mL/kg)
・本剤40IU/kg(0.08mL/kg)→プラセボ(0.12mL/kg)
・プラセボ(0.08mL/kg)→本剤60IU/kg(0.12mL/kg)
・本剤60IU/kg(0.12mL/kg)→プラセボ(0.08mL/kg)
注2)本剤の承認された用量は60IU/kgである。
注3)本剤の添加剤及びアルブミンを注射用水で溶解(0.12mL/kg又は0.08mL/kg)
17.1.3 海外第III相臨床試験(長期投与試験)
遺伝性血管性浮腫(HAE)1型又は2型の患者126例を対象とした多施設共同ランダム化非盲検並行群間比較試験(本剤40国際単位[IU]/kg注4)又は60IU/kgを週2回最長52週間又は最長140週間[米国の被験者のみ]皮下投与注5))において、副作用は60IU/kg投与で70例中32例(45.7%)に認められ、主な副作用は、注射部位紅斑12例(17.1%)、注射部位疼痛10例(14.3%)、注射部位反応8例(11.4%)及び注射部位内出血7例(10.0%)であった。
注4)本剤の承認された用量は60IU/kgである。
注5)治療期1(固定用量期):24週間
治療期2(用量調整期):28週間
継続投与期(米国の被験者のみ):最長88週間
18.1 作用機序
C1‐インアクチベーターは分子量105kDaの糖蛋白であり、プロテアーゼC1r及びC1sを不活化することで補体活性化経路を阻害する。また、血液凝固第XIIa因子、血漿カリクレインに対して阻害作用を有する。本剤は遺伝性血管性浮腫において欠如しているC1‐インアクチベーターを補充することにより治療効果を示す。
18.2 血漿中補体活性への影響
ヒト又はラット血漿を用い、両受容体で被覆したヒツジ赤血球の溶解を指標としたin vitro試験において、本剤の補体阻害活性が認められた。
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