ハイゼントラ20%皮下注4g/20mL
添付文書情報2024年08月改定(第3版)
商品情報
- 禁忌
- 2.1. 本剤の成分に対しショックの既往歴のある患者。
2.2. 高プロリン血症1型又は高プロリン血症2型の患者[本剤に含有されるプロリンが通常の代謝経路では代謝されないため、血中プロリン濃度が高値になり、症状があらわれることがある]。
- 効能・効果
- 1). 無ガンマグロブリン血症又は低ガンマグロブリン血症。
2). 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)。
(効能又は効果に関連する注意)
〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の筋力低下の改善」に対して静注用人免疫グロブリン製剤を投与し有効性が認められたものの、症状の再発・再燃を繰り返している患者にのみ投与すること。
- 用法・用量
- 〈無又は低ガンマグロブリン血症〉
通常、人免疫グロブリンGとして50~200mg(0.25~1mL)/kg体重を週1回皮下投与する。2週間に1回投与する場合には、1週あたりの用量の2倍量(100~400mg(0.5~2mL)/kg体重)を皮下投与する。なお、患者の状態に応じて、1週もしくは2週あたりの投与量及び投与回数は適宜増減する。
〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)〉
通常、成人には人免疫グロブリンGとして1週あたり200mg(1mL)/kg体重を1日又は連続する2日で分割して皮下投与するが、患者の状態に応じて、最大400mg(2mL)/kg体重から投与を開始することもできる。なお、維持用量は200~400mg/kg体重で適宜増減する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈効能共通〉皮下注射にのみ使用すること。静脈内に投与してはならない。
7.2. 〈効能共通〉本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。本剤による治療開始後、医師により適用が妥当と判断された患者については、自己投与も可能である〔8.4参照〕。
7.3. 〈無又は低ガンマグロブリン血症〉静注用人免疫グロブリン製剤から本剤に切り換える患者において、本剤の1週あたりの投与量は、静注用人免疫グロブリン製剤を3週間間隔で投与していた場合はその1/3量、また、4週間間隔で投与していた場合はその1/4量から開始し、初回投与は静注用人免疫グロブリン製剤の最終投与1週間後に投与すること(2週間に1回投与する場合には1週あたりの2倍量とし、初回投与以降の本剤の投与量は、感染頻度や重症度など本剤による治療の臨床反応及び血清IgG濃度を参考に調節すること)。
7.4. 〈無又は低ガンマグロブリン血症〉人免疫グロブリン製剤による治療歴のない患者を対象とした本剤の臨床試験は実施されていない。無ガンマグロブリン血症で人免疫グロブリン製剤による治療歴のない又は低ガンマグロブリン血症で人免疫グロブリン製剤による治療歴のない患者に対して本剤による導入を行う場合は、感染頻度や重症度など本剤による治療の臨床反応と血清IgG濃度を参考に、投与量を慎重に調節し、また、1週もしくは2週あたりの投与量を数日に分割して投与するなど、投与間隔の調節も考慮すること。
7.5. 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉静注用人免疫グロブリン製剤から本剤に切り換える患者において、本剤の1週あたりの投与量は、静注用人免疫グロブリン製剤の投与量を考慮し、投与終了1週間後から開始すること。
7.6. 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉200mg(1mL)/kg体重で投与を開始し、臨床症状が悪化した場合、最大用量まで増量すること(推奨の最大用量は1週あたり400mg(2mL)/kg体重である)。
7.7. 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉400mg(2mL)/kg体重で投与を開始し、投与量の減量後に臨床症状が悪化した場合、減量前の投与量で治療を再開すること。
7.8. 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉最大用量で臨床症状の悪化が持続する場合、最大用量で本剤の投与を継続し、少なくとも4週間は経過観察を行った後、本剤の投与を中止し、静注用人免疫グロブリン製剤による治療を再開すること。
- 合併症・既往歴等のある患者
- 8.1. 〈効能共通〉本剤の使用にあたっては、疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際し感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、血液を原材料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを患者に対して説明し、理解を得るよう努めること。
8.2. 〈効能共通〉本剤の原材料となる血漿については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体及び抗HIV-2抗体が陰性であることを確認している。さらに、プールした試験血漿については、HIV-1、HBV、HCV及びHAVについて核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。また、ヒトパルボウイルスB19についてもNATによるスクリーニングを実施し、適合した血漿を用いている。
その後の製造工程であるデプスフィルトレーション、pH4処理及びナノフィルトレーションは、HIV、HBV、HCV等のエンベロープを有するウイルス及びエンベロープを有しないHAV、ヒトパルボウイルスB19をはじめとする各種ウイルス除去・不活化効果が確認されているが、投与に際しては、次の点に十分に注意すること。
血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること〔9.1.4、9.1.5、9.5妊婦の項参照〕。
8.3. 〈効能共通〉現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。
8.4. 〈効能共通〉在宅自己注射を行う場合、患者に投与方法及び製剤と医療機器の安全な廃棄方法の指導を行うこと〔7.2参照〕。
8.4.1. 〈効能共通〉自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、患者又は介護者が本剤投与による危険性と対処法について理解し、確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。自己投与適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させるなど、適切な処置を行うこと。
8.4.2. 〈効能共通〉在宅自己注射を行う場合、医療機器を再使用しないように患者に注意を促すこと。
8.4.3. 〈効能共通〉在宅自己注射を行う場合、製剤及び医療機器の安全な廃棄方法について指導を徹底し、同時に、使用済みの製剤及び医療機器を廃棄する容器を提供することが望ましい。
8.5. 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉本剤による慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の治療は原因療法ではなく対症療法であることに留意すること。
8.6. 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉臨床症状の観察を十分に行い定期的に継続投与の必要性を確認すること(また、継続投与の結果十分な効果が認められず、運動機能低下の再発・再燃等を繰り返す場合には、本剤の継続投与は行わず、他の治療法を考慮すること)。
8.7. 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制で本剤を継続投与した結果、運動機能低下の再発・再燃が認められなくなった場合には、本剤の減量又は投与中止を考慮すること。
9.1.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
9.1.2. IgA欠損症の患者:抗IgA抗体を保有する患者では過敏反応を起こすおそれがある。
9.1.3. 血栓塞栓症の危険性の高い患者:人免疫グロブリン製剤を使用した患者で血栓塞栓症の報告がある〔9.8高齢者の項、11.1.3参照〕。
9.1.4. 溶血性貧血・失血性貧血の患者:ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない(感染した場合には、発熱と急激な貧血を伴う重篤な全身症状を起こすことがある)〔8.2参照〕。
9.1.5. 免疫不全患者・免疫抑制状態の患者:ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない(感染した場合には、持続性貧血を起こすことがある)〔8.2参照〕。
- 相互作用
- 10.2. 併用注意:非経口用生ワクチン(麻疹ワクチン、おたふくかぜワクチン、風疹ワクチン、麻疹・おたふくかぜ・風疹の混合ワクチン、水痘ワクチン等)[本剤の投与を受けた者は、生ワクチンの効果が得られないおそれがあるので、生ワクチンの接種は本剤投与後3ヵ月以上延期すること(また、生ワクチン接種後14日以内に本剤を投与した場合は、投与後3ヵ月以上経過した後に生ワクチンを再接種することが望ましい)、なお、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎に対する大量療法(200mg/kg体重以上)後に生ワクチンを接種する場合は、原則として生ワクチンの接種を6ヵ月以上(麻疹感染の危険性が低い場合の麻疹ワクチン接種は11ヵ月以上)延期すること(本剤の主成分は免疫抗体であるため、中和反応により生ワクチンの効果が減弱されるおそれがある)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. アナフィラキシー反応(頻度不明):びまん性紅斑を伴う全身潮紅、胸部不快感、頻脈、低血圧、喘鳴、喘息、呼吸困難、チアノーゼ等異常が認められた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.2. 無菌性髄膜炎症候群(頻度不明):無菌性髄膜炎(項部硬直、頭痛、発熱、羞明、悪心、嘔吐等)があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.3. 血栓塞栓症(頻度不明):脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓症等があらわれることがあるので、中枢神経症状(めまい、意識障害、四肢麻痺等)、胸痛、突然の呼吸困難、息切れ、下肢疼痛・下肢浮腫等の症状が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと〔9.1.3、9.8高齢者の項参照〕。
11.1.4. 肝機能障害、黄疸(頻度不明):著しいAST上昇、著しいALT上昇、著しいAl-P上昇、著しいγ-GTP上昇、著しいLDH上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.5. 急性腎障害(頻度不明):投与に先立って患者が脱水状態にないことを確認するとともに、腎機能検査値悪化(BUN値悪化、血清クレアチニン値悪化等)、尿量減少が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.6. 血小板減少(頻度不明)。
11.1.7. 肺水腫(頻度不明):呼吸困難等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
- 11.2. その他の副作用
1). 血液及びリンパ系障害:(頻度不明*)溶血。
2). 感染症及び寄生虫症:(頻度不明*)上咽頭炎。
3). 免疫系障害:(頻度不明*)過敏症。
4). 神経系障害:(1%以上)頭痛、(1%未満)浮動性めまい、片頭痛、(頻度不明*)振戦、精神運動亢進、灼熱感。
5). 心臓障害:(頻度不明*)頻脈。
6). 血管障害:(1%以上)高血圧、(1%未満)潮紅、(頻度不明*)低血圧。
7). 胃腸障害:(1%未満)悪心、腹部硬直、(頻度不明*)腹痛、下痢、嘔吐。
8). 皮膚及び皮下組織障害:(1%以上)発疹、皮膚そう痒症、(1%未満)皮膚不快感、(頻度不明*)じん麻疹。
9). 筋骨格系及び結合組織障害:(1%以上)筋骨格痛、(1%未満)関節痛、筋痙縮、(頻度不明*)筋力低下。
10). 全身障害:(1%以上)疲労、(1%未満)発熱、倦怠感、圧痛、(頻度不明*)悪寒、インフルエンザ様疾患、胸痛、疼痛、低体温。
11). 注射部位反応:(1%以上)腫脹、紅斑、疼痛、そう痒症、硬結、刺激感、温感、内出血、(1%未満)出血、不快感、炎症、発疹、腫瘤、(頻度不明*)潰瘍。
12). 臨床検査:(1%未満)血中クレアチニン増加。
*)頻度不明は市販後の報告及び17項の試験以外の臨床試験に基づく。
- 高齢者
- 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下している、また、一般に脳・心臓血管障害又はその既往歴のある患者がみられ、血栓塞栓症を起こすおそれがある)〔9.1.3、11.1.3参照〕。
- 妊婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(本剤の投与によりヒトパルボウイルスB19の感染の可能性を否定できない(感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性がある))〔8.2参照〕。
- 小児等
- 9.7.1. 〈無又は低ガンマグロブリン血症〉低出生体重児、新生児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.2. 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉18歳未満の患者は臨床試験では除外されている。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤調製時の注意14.1.1. 使用前に室温に戻し、室温に戻した後は、再び冷蔵庫に戻さないこと。
14.1.2. 他の製剤との混注は避けること。
14.1.3. 本剤は開封後できるだけ速やかに使用すること。また、使用後の残液は、細菌汚染のおそれがあるので再使用しない(本剤は細菌の増殖に好適な蛋白であり、保存剤を含有していない)。
14.2. 薬剤投与時の注意14.2.1. 不溶物又は混濁が認められるものは使用しないこと。
14.2.2. 本剤は腹部・大腿部・上腕部・腰部側面等に皮下投与すること。投与量に応じて複数箇所からの投与を検討し、投与部位は少なくとも5cm離すこと。
14.2.3. 通常、投与速度の調節可能な注射器具(シリンジポンプ等)を用いて投与すること。
14.2.4. 投与速度(1). 部位あたりの投与量は、初回投与では20mL以下とし、以降の投与では患者の状態に応じて最大50mLまで増量することができる。投与速度は、初回投与では部位あたり20mL/時間以下とし、患者の状態に応じて最大50mL/時間まで徐々に増加することができる。
(2). 注射部位反応が報告されているので、推奨投与速度を守り、投与毎に投与部位を変えること。
14.3. 薬剤交付時の注意14.3.1. 最終有効年月日まで凍結を避けて冷蔵庫内で保存すること。
14.3.2. 光の影響を防ぐために、薬剤は外箱に入れた状態で保存すること。
20.1. 外箱開封後は遮光して保存すること。
20.2. 本剤は特定生物由来製品に該当することから本剤を投与又は処方した場合は医薬品名(販売名)、製造番号(ロット番号)、投与又は処方日、投与又は処方を受けた患者の氏名、住所等を記録し使用日から少なくとも20年間保存すること。
16.1 血中濃度
〈無又は低ガンマグロブリン血症〉
原発性免疫不全症候群患者を対象とした国内第III相試験において、本剤を毎週反復皮下投与し、定常状態に達した後(投与開始16週、20週又は24週)、25例中8例で測定した血清IgG濃度は、投与から次の投与までの1週間、安定した値を示した。1週間の平均投与量は76.16mg/kg体重で、最高血中濃度の平均値は7.63g/L、最高血中濃度到達時間の中央値は2.56日であった。
定常状態における1投与間隔の血清IgG濃度の中央値
(*)投与前、投与終了10分前、投与2時間後
IgG(g/L):総血清IgG濃度の中央値(及び第1四分位値、第3四分位値)
原発性免疫不全症候群患者を対象とした海外第III相試験において、本剤を週1回及び2週間に1回投与した結果、定常状態(週1回投与は投与開始6週時に測定、2週間に1回投与は投与開始12週時に測定)における本剤の血清IgG濃度パラメータ(Cmax、トラフ値及びdAUC)は両投与間で類似していた。
→図表を見る(PDF)
〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉
慢性炎症性脱髄性多発根神経炎患者を対象とした国際共同第III相試験において、本剤0.4g/kg体重又は0.2g/kg体重を週1回皮下投与したときの24週後のIgGトラフ値は、0.4g/kg体重群で20.4±3.24g/L、0.2g/kg体重群で15.4±3.06g/Lであり、24週まで持続してトラフ値が維持された。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
〈無又は低ガンマグロブリン血症〉
17.1.1 国内第III相試験
定期的に静注用人免疫グロブリン製剤(IVIG)の治療を受けていた原発性免疫不全症候群の患者計25例(3歳以上12歳未満:7例、12歳以上16歳以下:4例、17歳以上58歳以下:14例)が本剤で24週間治療された。本剤は週1回で合計584回投与され、有効性評価期間の平均投与量は87.81mg/kg体重であった。
有効性評価期間を通して、IgGトラフ値(平均IgG濃度7.21-7.53g/L)は維持された。試験中に行われたIVIGによる治療と比較して、IgGトラフ値は本剤に切り換えた後にわずかに上昇し、IgG値の幾何平均値の比は1.09を示した。重篤な細菌感染は認められず、非重篤な感染症の発現回数は2.98回/人年であった。感染症発現回数、入院日数、学校又は仕事を休んだ日数、抗生物質使用の年間割合は、IVIG及び本剤で同様であった。
副作用は25例中21例(84.0%)に175件認められ、主な副作用は、注射部位の局所反応20例(80.0%)で、本剤投与584回中160件(27.4%)であった。
17.1.2 海外第III相試験
3ヵ月以上安定して免疫グロブリン補充療法を受けていた原発性免疫不全症候群患者計25例(6歳以上12歳未満:8例、12歳以上16歳未満:3例、16歳以上18歳未満:4例、18歳以上:10例)がパート1で本剤を週1回12週間投与した(平均投与量:112.14mg/kg体重)。パート1に引き続いて実施したパート2では計24例が本剤を2週間に1回投与に切り替え最長52週間投与した(平均投与量:218.62mg/kg体重)。その結果、パート1における感染症は12例に16件発現した。週1回投与での感染症の年間発現回数は2.42回/人年であり、患者あたりの感染症の年間発現回数の平均値±標準偏差は2.43±3.15回/人年であった。また、パート2における感染症は13例に17件発現した。2週間に1回投与での感染症の年間発現回数は0.90回/人年であり、患者あたりの感染症の年間発現回数の平均値±標準偏差は1.22±1.64回/人年であった。パート1の副作用は25例中4例(16.0%)に認められ、主な副作用は局所反応で注射部位内出血、注射部位疼痛各1例(4.0%)であった。パート2の副作用は24例中3例(12.5%)に認められ、主な副作用は局所反応で注射部位紅斑、注射部位腫瘤各1例(4.2%)であった。
〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制〉
17.1.3 国際共同第III相試験における維持療法
国際共同第III相試験(多施設共同二重盲検試験)では、IVIGの前治療により慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の状態が安定化していた成人患者計172例(日本人患者11例を含む)を無作為化し、2用量の本剤(0.4g/kg体重[58例]又は0.2g/kg体重[57例])もしくはプラセボ(57例)が(自己)投与された。
投与期間中に慢性炎症性脱髄性多発根神経炎が再発(調整INCATスコアの1点以上のベースラインからの悪化)又は試験を中止した被験者の割合はプラセボ群の63.2%と比較し、0.4g/kg体重群で32.8%、0.2g/kg体重群で38.6%(それぞれp<0.001、p=0.007)であった。
慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の再発又はその他の理由により試験を中止した被験者数の解析結果(Intention‐to‐Treat解析対象集団)
→図表を見る(PDF)
副作用は0.4g/kg体重投与では、58例中20例(34.5%)、0.2g/kg体重投与では、57例中17例(29.8%)に認められ、主な副作用は0.4g/kg体重投与では、注入部位紅斑8例(13.8%)、注入部位腫脹6例(10.3%)、0.2g/kg体重投与では、注入部位腫脹5例(8.8%)、注入部位紅斑3例(5.3%)であった。
17.1.4 国際共同長期投与試験における維持療法
国際共同長期投与試験(第III相多施設共同非盲検48週継続試験、以降「継続試験」)では、国際共同第III相試験から移行した82例(日本人患者10例を含む)の慢性炎症性脱髄性多発根神経炎患者を組み入れた。継続試験では本剤の維持療法の長期の安全性及び有効性を2用量(0.2g/kg体重及び0.4g/kg体重)の週1回投与で検討した。有効性評価期間の平均値は、0.4g/kg体重群では196.1(範囲:1~330)日、0.2g/kg体重群では125.8(範囲:1~330)日であった。国際共同第III相試験を0.4g/kg体重投与で再発なく完了し、継続試験を0.4g/kg体重で開始した患者の再発率は5.6%(1/18)であった。継続試験で0.4g/kg体重の投与を受けたすべての患者の再発率は9.7%(7/72)であった。国際共同第III相試験を0.2g/kg体重投与で再発なく完了し、継続試験を0.2g/kg体重で開始した患者の再発率は、患者数は限定的ではあるが50%(3/6)であった。継続試験で0.2g/kg体重の投与を受けたすべての患者では47.9%(35/73)の患者が再発した。
副作用は0.4g/kg体重投与では、72例中17例(23.6%)、0.2g/kg体重投与では、73例中8例(11.0%)に認められ、主な副作用は0.4g/kg体重投与では、注入部位腫脹6例(8.3%)、注入部位紅斑3例(4.2%)、0.2g/kg体重投与では、注入部位腫脹、注入部位紅斑各3例(4.1%)であった。
18.1 作用機序
本剤の作用機序は完全には解明されていない。
18.2 抗体活性及びFc機能による作用
IgG機能は、Fab機能とFc機能が知られ、IgG分子のFab部分は抗体の特異性(Fab機能)を決定する。多価IgG製品が治療効果を有するためには生理学的に意味のある抗体特異性のスペクトルを持つことが必要であるが、本剤は、5つの異なる特異性を持つ抗体(抗HBs、抗ポリオウイルス1型、抗ジフテリア毒素、抗パルボウイルスB19、抗ストレプトリジンO)の存在が確認されている。
IgG分子のFc部分はエフェクター機能(Fc機能)の媒介となるが、本剤のFcエフェクター機能は他の市販されている人免疫グロブリン製剤と同等であることが確認された。従って、本剤は、広範な各種の細菌及びウイルス性因子に対して広いスペクトルのオプソニン作用及び中和作用を示し、適切なFcエフェクター機能を有することが示唆された。
18.3 脱髄性疾患モデルに対する作用
本剤はラット実験的アレルギー性脳脊髄炎モデルに対して症状の発現及び進行を抑制した。
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