EOB・プリモビスト注シリンジ
添付文書情報2021年02月改定(第1版)
商品情報
- 警告
- 重篤な腎障害のある患者では、ガドリニウム造影剤による腎性全身性線維症の発現のリスクが上昇することが報告されているので、腎障害のある患者又は腎機能低下しているおそれのある患者では、十分留意すること〔9.2.1、9.2.2、11.1.2参照〕。
- 禁忌
- 本剤の成分又はガドリニウム造影剤に対し過敏症の既往歴のある患者。
- 効能・効果
- 磁気共鳴コンピューター断層撮影における肝腫瘍造影。
(効能又は効果に関連する注意)
ガドリニウム造影剤を複数回投与した患者において、非造影T1強調MR画像上、小脳歯状核、淡蒼球等に高信号が認められたとの報告や脳の剖検組織からガドリニウムが検出されたとの報告があるので、ガドリニウム造影剤を用いた検査の必要性を慎重に判断すること。
- 用法・用量
- 通常、成人には本剤0.1mL/kgを静脈内投与する。
- 腎機能障害患者
- 8.1. 本剤の投与にあたっては、気管支喘息等のアレルギー体質等について十分な問診を行うこと〔9.1.2-9.1.5参照〕。
8.2. ショック、アナフィラキシー等の重篤な副作用が発現するおそれがあるので、本剤の投与にあたっては、救急処置の準備を行うこと。また、類薬において投与開始より1時間~数日後にも遅発性副作用(発熱、発疹、悪心、血圧低下、呼吸困難等)があらわれるとの報告があるので、投与後も患者の状態を十分に観察すること。患者に対して、発熱、発疹、悪心、血圧低下、呼吸困難等の症状があらわれた場合には速やかに主治医等に連絡するよう指導するなど適切な対応をとること〔11.1.1参照〕。
9.1.1. 一般状態の極度に悪い患者:診断上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。
9.1.2. 気管支喘息の患者:診断上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと(類薬でショック、アナフィラキシーが報告されている)〔8.1、11.1.1参照〕。
9.1.3. アレルギー性鼻炎、発疹、じん麻疹等を起こしやすいアレルギー体質を有する患者〔8.1参照〕。
9.1.4. 両親、兄弟に気管支喘息、アレルギー性鼻炎、発疹、じん麻疹等を起こしやすいアレルギー体質を有する患者〔8.1参照〕。
9.1.5. 薬物過敏症の既往歴のある患者〔8.1参照〕。
9.1.6. 血清ビリルビン値が3mg/dLを超える患者:信号増強効果の減弱がみられた場合であっても、追加投与はしないこと(本剤は有機アニオン輸送担体により肝細胞に取り込まれるため、ビリルビンと競合すると考えられる)〔14.1.3参照〕。
9.2.1. 腎障害のある患者又は腎機能低下しているおそれのある患者:患者の腎機能を十分に評価した上で慎重に投与すること(排泄が遅延するおそれがある)〔1.警告の項、11.1.2、16.6.1参照〕。
9.2.2. 長期透析が行われている終末期腎障害、eGFRが30mL/min/1.73㎡未満の慢性腎障害(eGFR(estimated glomerular filtration rate):推算糸球体ろ過値)、急性腎障害の患者:本剤の投与を避け、他の検査法で代替することが望ましい(ガドリニウム造影剤による腎性全身性線維症の発現のリスクが上昇することが報告されている)〔1.警告の項、11.1.2参照〕。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明):ショック、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、咽頭浮腫・喉頭浮腫、じん麻疹、咳嗽、蒼白等)があらわれることがある〔8.2、9.1.2参照〕。
11.1.2. 腎性全身性線維症(Nephrogenic Systemic Fibrosis、NSF)(頻度不明):重篤な腎障害のある患者への使用後に、腎性全身性線維症を発現した症例が報告されているので、投与後も観察を十分に行い、皮膚そう痒、皮膚腫脹、皮膚硬化、関節硬直、筋力低下等の異常の発生には十分留意すること〔1.警告の項、9.2.1、9.2.2参照〕。
- 11.2. その他の副作用
1). 過敏症:(0.1~1%未満)そう痒、発疹、(頻度不明)じん麻疹、紅斑。
2). 精神神経系:(0.1~1%未満)頭痛、めまい。
3). 循環器:(0.1~1%未満)血圧上昇。
4). 呼吸器:(0.1~1%未満)呼吸困難、(頻度不明)くしゃみ。
5). 消化器:(0.1~1%未満)悪心、嘔吐、下痢。
6). 感覚器:(0.1~1%未満)味覚倒錯、嗅覚錯誤。
7). 投与部位:(0.1~1%未満)注射部位反応(疼痛等)。
8). その他:(0.1~1%未満)血管拡張(熱感、潮紅)、錯感覚、(頻度不明)不快感、異常感、ビリルビン上昇。
- 高齢者
- 患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下している)。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、診断上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
診断上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている)。
- 小児等
- 生後2ヵ月超~18歳未満の小児を対象にした国際共同製造販売後臨床試験において、12例の日本人を含む52例のいずれの症例においても副作用は認められなかった。低出生体重児又は新生児を対象とした臨床試験は実施していない。
- EOB・プリモビスト注シリンジの取扱い方法
- 14.1. 診断上の注意14.1.1. 動物実験でリファンピシン類の投与により本剤の肝細胞への取込みが阻害され、肝実質の信号増強効果が低下することが示されている。
14.1.2. 血清フェリチン値が顕著に高い患者では、本剤による肝実質の信号増強効果が減弱する可能性がある(肝臓のフェリチンが磁化率効果を示す)。
14.1.3. 血清ビリルビン値が3mg/dLを超える患者において、本剤投与後の肝実質の信号増強効果が減弱したとの報告がある〔9.1.6、16.6.2参照〕。
14.1.4. 本剤をボーラス投与後にダイナミック撮像(動脈相、門脈相、平衡相)を行うことにより、造影パターンによる質的診断の情報が得られる。
14.1.5. 肝細胞造影相は、本剤投与20分後から撮影可能で、信号増強効果は少なくとも2時間持続する。
14.2. 薬剤投与時の注意14.2.1. 本剤は静脈内投与にのみ使用すること。
14.2.2. 静脈内投与により血管痛、静脈炎があらわれることがある。
14.2.3. 誤って血管外に造影剤を漏出させた場合には、発赤、腫脹、水疱、疼痛等があらわれることがあるので、注入時に十分注意すること。
14.3. 薬剤投与後の注意1回の検査にのみ使用し、余剰の溶液は廃棄すること。
①. 開封部よりシールをはがし、シリンジ本体を取り出す。
・ 破損や液漏れの有無、プランジャーがしっかり装着されているかを確認し、異常が認められた場合には使用しない。
・ 電子レンジ及び湿式・温水中での加温はしない。
②. キャップを添付文書の図の矢印の方向に回転させて取り外す(キャップは、翼状針等を装着する直前まで取り外さない)。
キャップが取り外しづらい場合は、キャップを深めに握って回転させる。
・ キャップを取り外す際、薬液が飛び散る可能性があるので、注意する。
・ 注入口付近が濡れるとルアーロック非対応の翼状針との装着が緩くなる。
③. 自動注入器用延長チューブを速やかに装着する。
・ 自動注入器用延長チューブ(ルアーロック式器具)にはシリンジ本体をしっかり保持した状態で装着する。
a. 自動注入器用延長チューブは、耐圧・ロック式のものを使用する。
b. 自動注入器への装着は、自動注入器メーカーの取扱い説明書を参照する。
[体重別用量換算](用法・用量:通常、成人には本剤0.1mL/kgを静脈内投与する)。
1). 体重30kg:用量3mL。
2). 体重35kg:用量3.5mL。
3). 体重40kg:用量4mL。
4). 体重45kg:用量4.5mL。
5). 体重50kg:用量5mL。
6). 体重55kg:用量5.5mL。
7). 体重60kg:用量6mL。
8). 体重65kg:用量6.5mL。
9). 体重70kg:用量7mL。
10). 体重75kg:用量7.5mL。
11). 体重80kg:用量8mL。
12). 体重85kg:用量8.5mL。
13). 体重90kg:用量9mL。
14). 体重95kg:用量9.5mL。
15). 体重100kg:用量10mL。
16.1 血中濃度
健康成人男子(6名)に本剤0.1mL/kgを静脈内投与したとき、ガドリニウム(Gd)は二相性で血中から消失した。(血漿中半減期:α相0.11時間、β相1.3時間)
16.5 排泄
健康成人男子(6名)に本剤0.1mL/kgを静脈内投与したとき、投与後4日目までに投与したGdの57%が尿中に、39%が糞中に排泄された。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
(1)血中濃度
程度の異なる腎障害患者に本剤0.1mL/kgを静脈内投与したとき、血液透析を必要とする重篤な腎障害のある患者では、健康成人に比べてAUC(0-∞)が6倍に上昇し、血漿中半減期が著明に延長した(外国人データ)。[9.2.1参照]
→図表を見る(PDF)
(2)排泄
末期腎不全の患者(2名)において、本剤0.1mL/kgを静脈内投与してから1時間後に血液透析を開始し、3時間透析することにより、投与量の約30%が除去された。また、本剤は投与後6日目までに投与量の52~62%が糞中に排泄された(外国人データ)。
16.6.2 肝機能障害患者
(1)排泄
程度の異なる肝障害患者各6例に本剤0.1mL/kgを静脈内投与したとき、軽度及び中等度肝障害(Child‐Pugh分類A及びB)患者では、糞中への排泄率は21%と健康成人の31%と比べて低かったが、有意な肝実質の信号増強効果の減弱はみられなかった。重度肝障害(Child‐Pugh分類C)患者では糞中への排泄率は6%まで低下した。血清ビリルビン値が3mg/dLを超えた患者では糞中排泄率は0.5%未満に低下し、肝実質の信号増強効果の減弱が認められた(外国人データ)。[14.1.3参照]
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相比較試験
造影CTを対照(群内比較)とした国内第III相比較試験において、悪性肝腫瘍又はその疑いの患者151例における本剤投与前後のMRIでの病巣検出能及び病巣鑑別能の結果は次のとおりであった。
(1)病巣検出能
肝切除部の病理診断と残存肝の術中超音波の組み合せ、又は肝動脈造影下CT(CTA)、経動脈性門脈造影下CT(CTAP)及び追跡MRI検査を組み合せた全肝の結果を参照標準(Standard of Reference:SOR)として、病巣検出の感度を算出した。
→図表を見る(PDF)
(2)病巣鑑別能(質的診断能)
病巣鑑別のSORとした、病理診断あるいはCTA及びCTAPを組み合せた結果(肝細胞癌)、病理診断(その他の肝悪性腫瘍)、病理診断又は画像診断法の結果(良性腫瘍)をもとに、病巣鑑別(病変タイプ)がSORと一致した比率を算出した。SORの総病巣の内訳は、読影医により、肝細胞癌85~86%、転移性肝癌6%、肝のう胞3%、腺腫様過形成3%他であった。
→図表を見る(PDF)
副作用(臨床検査値異常を含む)は178例中17例(9.6%)に認められた。主な副作用は、悪心3例(1.7%)、注射部位疼痛2例(1.1%)、そう痒2例(1.1%)等であった。
18.1 測定法
本剤中のガドリニウムイオン(Gd3+)は常磁性を示すため、磁気共鳴現象において水素原子核(プロトン)の緩和を促進し、緩和時間を短縮する。このため特にT1強調MR画像上でコントラストが増強する。本剤は血管及び細胞間隙に分布するだけでなく、エトキシベンジル基があるため肝細胞にも取り込まれる。このため、肝細胞機能を消失あるいは保有していない病巣は造影されず、肝実質と病巣とのコントラストが増強する。
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