ワントラム錠100mg

添付文書情報2024年06月改定(第4版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 禁忌
- 2.1. 12歳未満の小児〔9.7.1参照〕。
2.2. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者〔9.1.6参照〕。
2.3. アルコールによる急性中毒、睡眠剤による急性中毒、鎮痛剤による急性中毒、オピオイド鎮痛剤による急性中毒又は向精神薬による急性中毒患者[中枢神経抑制及び呼吸抑制を悪化させるおそれがある]。
2.4. モノアミン酸化酵素阻害剤投与中又は投与中止後14日以内(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩、サフィナミドメシル酸塩)の患者〔10.1参照〕。
2.5. ナルメフェン塩酸塩水和物投与中の患者又はナルメフェン塩酸塩水和物投与中止後1週間以内の患者〔10.1参照〕。
2.6. 治療により十分な管理がされていないてんかん患者[症状が悪化するおそれがある]〔9.1.2参照〕。
2.7. 高度腎機能障害又は高度肝機能障害のある患者〔9.2.1、9.3.1参照〕。
- 効能・効果
- 非オピオイド鎮痛剤で治療困難な次記における鎮痛:
1). 疼痛を伴う各種癌における鎮痛。
2). 慢性疼痛における鎮痛。
(効能又は効果に関連する注意)
慢性疼痛患者においては、その原因となる器質的病変、心理的・社会的要因、依存リスクを含めた包括的な診断を行い、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。
- 用法・用量
- 通常、成人にはトラマドール塩酸塩として100~300mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。ただし、1日400mgを超えないこととする。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 初回投与量
本剤を初回投与する場合は、1日100mgから開始することが望ましい。なお、他のトラマドール塩酸塩経口剤から切り替える場合は、その経口剤の1日投与量、鎮痛効果及び副作用を考慮して、本剤の初回投与量を設定すること。
7.2. 投与間隔
本剤の定時投与(1日1回)はできるだけ同じ時間帯に服用すること。
7.3. 増量及び減量
本剤投与開始後は患者の状態を観察し、適切な鎮痛効果が得られ副作用が最小となるよう用量調整を行うこと(増量・減量の目安は、1日100mgずつ行うことが望ましい)。
7.4. がん疼痛患者における疼痛増強時の臨時追加投与(レスキュー・ドーズ)
がん疼痛患者における疼痛増強時の臨時追加投与(レスキュー・ドーズ):本剤服用中に疼痛が増強した場合や鎮痛効果が得られている患者で突出痛が発現した場合は、直ちにトラマドール塩酸塩即放性製剤の臨時追加投与を行って鎮痛を図ること(臨時追加投与の1回投与量は、定時投与中の本剤の1日量の1/8~1/4を経口投与すること、ただし、トラマドール塩酸塩としての1日総投与量は400mgを超えないこと)。
7.5. 投与の継続
慢性疼痛患者において、本剤投与開始後4週間を経過してもなお期待する効果が得られない場合は、他の適切な治療への変更を検討し、また、定期的に症状及び効果を確認し、投与の継続の必要性について検討すること。
7.6. 投与の中止
7.6.1. 本剤の投与を必要としなくなった場合は、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること。
7.6.2. がん疼痛患者において、本剤の1日の定時投与量が300mgで鎮痛効果が不十分となった場合、本剤の投与を中止し、モルヒネ等の強オピオイド鎮痛剤への変更を考慮すること。その場合には、定時投与量の1/5の用量の経口モルヒネを初回投与量の目安とすることが望ましい。また、経口モルヒネ以外の強オピオイド鎮痛剤に変更する場合は、経口モルヒネとの換算で投与量を求めることが望ましい。
7.7. 高齢者への投与
75歳以上の高齢者では、本剤の血中濃度が高い状態で持続し、作用及び副作用が増強するおそれがあるので、1日300mgを超えないことが望ましい〔16.6.3参照〕。
- 肝機能障害患者
- 8.1. 連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること〔11.1.4参照〕。
8.2. 本剤を投与した際に、悪心、嘔吐、便秘等の症状があらわれることがある。悪心・嘔吐に対する対策として制吐剤の併用を、便秘に対する対策として下剤の併用を考慮し、本剤投与時の副作用の発現に十分注意すること。
8.3. 眠気、めまい、意識消失が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意し、なお、意識消失により自動車事故に至った例も報告されている。
8.4. 鎮痛剤による治療は原因療法ではなく、対症療法であることに留意すること。
8.5. 本剤は徐放性製剤であることから、急激な血中濃度の上昇による重篤な副作用
の発現を避けるため、服用に際して割ったり、砕いたり又はかみ砕いたりしないように指示すること。
9.1.1. 18歳未満の肥満、18歳未満の閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は18歳未満の重篤な肺疾患を有する患者:投与しないこと(重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがある)。
9.1.2. てんかん<治療により十分な管理がされていないてんかんを除く>のある患者、痙攣発作を起こしやすい患者又は痙攣発作の既往歴のある患者:本剤投与中は観察を十分に行うこと(痙攣発作を誘発することがある)〔2.6参照〕。
9.1.3. 薬物乱用又は薬物依存傾向のある患者:厳重な医師の管理下に、短期間に限って投与すること(依存性を生じやすい)。
9.1.4. 呼吸抑制状態にある患者:呼吸抑制を増強するおそれがある。
9.1.5. 脳器質的障害のある患者:呼吸抑制や頭蓋内圧上昇を来すおそれがある。
9.1.6. オピオイド鎮痛剤に対し過敏症の既往歴のある患者(本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者を除く)〔2.2参照〕。
9.1.7. ショック状態にある患者:循環不全や呼吸抑制を増強するおそれがある。
9.2.1. 高度腎機能障害のある患者:投与しないこと(高い血中濃度が持続し、作用及び副作用が増強するおそれがある)〔2.7参照〕。
9.2.2. 腎機能障害<高度腎機能障害を除く>のある患者:高い血中濃度が持続するおそれがある〔16.6.1参照〕。
9.3.1. 高度肝機能障害のある患者:投与しないこと(高い血中濃度が持続し、作用及び副作用が増強するおそれがある)〔2.7参照〕。
9.3.2. 肝機能障害<高度肝機能障害を除く>のある患者:高い血中濃度が持続するおそれがある〔16.6.2参照〕。
- 相互作用
- 本剤は主として肝代謝酵素CYP2D6及びCYP3A4により代謝される。
10.1. 併用禁忌:1). モノアミン酸化酵素阻害剤<リネゾリド・メチルチオニニウム塩化物以外>(セレギリン塩酸塩<エフピー>、ラサギリンメシル酸塩<アジレクト>、サフィナミドメシル酸塩<エクフィナ>)〔2.4参照〕[外国において、セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)を含む中枢神経系の重篤な副作用<攻撃的行動・固縮・痙攣・昏睡・頭痛>、呼吸器系の重篤な副作用<呼吸抑制>及び心血管系の重篤な副作用<低血圧・高血圧>が報告されているので、モノアミン酸化酵素阻害剤を投与中又は投与中止後14日以内の患者には投与しないこと(また、本剤投与中止後にモノアミン酸化酵素阻害剤の投与を開始する場合には、2~3日間の間隔をあけることが望ましい)(相加的に作用が増強され、また、中枢神経のセロトニンが蓄積すると考えられる)]。
2). ナルメフェン塩酸塩水和物<セリンクロ>〔2.5参照〕[離脱症状を起こすおそれがあり、本剤の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなる、呼吸抑制等の中枢神経抑制症状が発現するおそれがある(ナルメフェンを投与中又は投与中止後1週間以内の患者には投与しないこと)(ナルメフェンのμオピオイド受容体拮抗作用により、本剤に対して競合的に阻害する)]。
10.2. 併用注意:1). オピオイド鎮痛剤、中枢神経抑制剤(フェノチアジン系薬剤、催眠鎮静剤等)[痙攣閾値の低下や呼吸抑制の増強を来すおそれがある(本剤と相加的に作用が増強されると考えられる)]。
2). 三環系抗うつ剤、セロトニン作用薬(選択的セロトニン再取り込み阻害剤<SSRI>等)[セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)があらわれるおそれがあり、また、痙攣発作の危険性を増大させるおそれがある(相加的に作用が増強され、また、中枢神経のセロトニンが蓄積すると考えられる)]。
3). リネゾリド[セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)があらわれるおそれがあり、また、痙攣発作の危険性を増大させるおそれがある(リネゾリドの非選択的、可逆的モノアミン酸化酵素阻害作用により、相加的に作用が増強され、また、中枢神経のセロトニンが蓄積すると考えられる)]。
4). メチルチオニニウム塩化物水和物<メチレンブルー>[セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)があらわれるおそれがある(メチルチオニニウム塩化物水和物のモノアミン酸化酵素阻害作用によりセロトニン作用が増強される)]。
5). アルコール[呼吸抑制が生じるおそれがある(本剤と相加的に作用が増強されると考えられる)]。
6). カルバマゼピン[同時あるいは前投与で本剤の鎮痛効果を下げ作用時間を短縮させる可能性がある(本剤の代謝酵素が誘導されるため)]。
7). キニジン[相互に作用が増強するおそれがある(機序不明)]。
8). ジゴキシン[外国において、ジゴキシン中毒が発現したとの報告がある(機序不明)]。
9). クマリン系抗凝血剤(ワルファリン)[出血を伴うプロトロンビン時間の延長・斑状出血等の抗凝血作用への影響がみられたとの報告がある(機序不明)]。
10). オンダンセトロン塩酸塩水和物[本剤の鎮痛作用を減弱させるおそれがある(本剤の中枢におけるセロトニン作用が抑制されると考えられる)]。
11). ブプレノルフィン、ペンタゾシン等[本剤の鎮痛作用を減弱させるおそれがあり、また、退薬症候を起こすおそれがある(本剤が作用するμオピオイド受容体の部分アゴニストであるため)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(頻度不明):呼吸困難、気管支痙攣、喘鳴、血管神経性浮腫等があらわれることがある。
11.1.2. 呼吸抑制(0.1%)。
11.1.3. 痙攣(頻度不明)。
11.1.4. 依存性(頻度不明):長期使用時に、耐性、精神的依存及び身体的依存が生じることがある。本剤の中止又は減量時において、激越、不安、神経過敏、不眠症、運動過多、振戦、胃腸症状、パニック発作、幻覚、錯感覚、耳鳴等の退薬症候が生じることがある〔8.1参照〕。
11.1.5. 意識消失(頻度不明)。
- 11.2. その他の副作用
1). 呼吸器:(1%未満)口腔咽頭不快感、発声障害、(頻度不明)呼吸困難、口腔咽頭痛、咽喉乾燥。
2). 循環器:(1%未満)血圧上昇、ほてり、血圧低下、動悸、起立性低血圧、高血圧、(頻度不明)不整脈、蒼白、胸内苦悶、頻脈、徐脈。
3). 血液凝固系:(1%未満)好中球増加、好酸球増加、リンパ球減少、ヘモグロビン減少、赤血球減少、白血球増加、(頻度不明)好酸球減少、ヘマトクリット減少、血小板減少。
4). 精神神経系:(5%以上)傾眠、浮動性めまい、(1~5%未満)頭痛、振戦、不眠症、(1%未満)譫妄、睡眠障害、感覚鈍麻、味覚異常、健忘、回転性めまい、耳鳴、悪夢、落ち着きのなさ、不安、活動性低下、異常行動、無感情、不快気分、(頻度不明)幻覚、鎮静、体位性めまい、不随意性筋収縮、記憶障害、ジスキネジー、眼振、疲労、気分動揺、うつ病、頭重感、激越、抑うつ気分、両手のしびれ感、ふらつき感、不快感、錯感覚、協調運動異常、失神、錯乱、精神運動亢進、錯覚、言語障害。
5). 消化器:(5%以上)悪心、嘔吐、便秘、食欲減退、(1~5%未満)腹部不快感、(1%未満)下痢、上腹部痛、口内乾燥、口内炎、消化不良、腹痛、胃炎、口唇炎、胃食道逆流性疾患、腹部膨満感、おくび、(頻度不明)口の錯感覚、胃腸音異常、イレウス。
6). 肝臓:(1%未満)AST増加、ALT増加、LDH増加、肝機能異常、ビリルビン増加、(頻度不明)Al-P増加。
7). 皮膚:(1~5%未満)多汗症、皮膚そう痒症、(1%未満)湿疹、発疹、全身性そう痒症、蕁麻疹、薬疹、冷汗、寝汗。
8). 腎臓及び尿路系:(1%未満)排尿困難、尿糖陽性、尿蛋白陽性、尿潜血陽性、クレアチニン増加、BUN増加、頻尿・夜間頻尿、尿量減少、膀胱炎、(頻度不明)尿閉。
9). 代謝異常:(1%未満)尿酸増加、(頻度不明)トリグリセリド増加。
10). その他:(5%以上)口渇、(1~5%未満)倦怠感、異常感、浮腫、(1%未満)無力症、CK増加、脱水、関節痛、四肢痛、筋骨格硬直、易刺激性、末梢性浮腫、胸部不快感、転倒、悪寒、発熱、冷感、視調節障害、心電図QT延長、体重減少、(頻度不明)熱感、視力障害、背部痛、疼痛、霧視、散瞳。
- 高齢者
- 高齢者:患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(生理機能が低下していることが多く、代謝・排泄が遅延し副作用があらわれやすい)。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(胎盤関門を通過し、退薬症候が新生児に起こる可能性があり、なお、動物実験で、器官形成に影響、骨化に影響及び出生仔生存に影響を及ぼすことが報告されている)。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(静脈内投与(国内未承認)の場合、0.1%が乳汁中に移行することが知られている)。
- 小児等
- 9.7.1. 12歳未満の小児:投与しないこと(海外において、12歳未満の小児で死亡を含む重篤な呼吸抑制のリスクが高いとの報告がある)〔2.1参照〕。
9.7.2. 12歳以上の小児:12歳以上の小児に対する有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.7.3. 肥満を有する小児、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を有する小児又は重篤な肺疾患を有する小児:投与しないこと(重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがある)。
- 適用上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意14.1.1. 本剤の投与にあたっては、具体的な服用方法、服用時の注意点、保管方法等を十分に説明し、本剤の目的以外への使用をしないように指導するとともに、本剤を子供の手の届かないところに保管するよう指導すること。
14.1.2. PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
14.1.3. 有効成分放出後の基剤(抜け殻)が糞便中に排泄されることがある。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報遺伝的にCYP2D6の活性が過剰であることが判明している患者(Ultra-rapid Metabolizer)では、トラマドールの活性代謝物の血中濃度が上昇し、呼吸抑制等の副作用が発現しやすくなるおそれがある。
16.1 血中濃度
16.1.1 健康成人
(1)健康成人男性10例にトラマドール塩酸塩徐放錠を空腹時に単回経口投与したとき、トラマドール及び活性代謝物モノ‐O‐脱メチル体(M1)の血漿中濃度は投与後9~12時間でCmaxに達した後、6~8時間のt1/2,βで低下した。血漿中トラマドール及びM1のCmax及びAUC0-∞はいずれも用量に比例して増加した。
トラマドール塩酸塩徐放錠を単回経口投与後のトラマドール及びM1の血漿中濃度推移
トラマドール塩酸塩徐放錠を投与したときの薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
(2)健康成人男性24例に、トラマドール塩酸塩徐放錠(200mg)を単回又はトラマドール塩酸塩カプセル(50mg)を1日4回、空腹時に経口投与したときのトラマドール及びM1の血漿中濃度推移を比較した。両製剤を投与したときのトラマドール及びM1のCmax及びAUC0-∞に差は認められなかった。
トラマドール塩酸塩徐放錠を単回経口投与又はトラマドール塩酸塩カプセルを1日4回経口投与後のトラマドール及びM1の血漿中濃度推移
トラマドール塩酸塩徐放錠又はトラマドール塩酸塩カプセルを投与したときの薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
(3)健康成人男性9例にトラマドール塩酸塩徐放錠(200及び300mg)を1日1回5日間食後経口投与したとき、投与2日目から最終投与日のトラフ値はいずれの用量においてもほぼ一定の値を示し、投与3日目には定常状態に達しているものと推察された。
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
(1)標準食
健康成人男性12例にトラマドール塩酸塩徐放錠(200mg)を空腹時及び食後30分に単回経口投与したとき、血漿中トラマドール及びM1濃度推移に差はなく、食事の影響は認められなかった。
(2)高脂肪高カロリー食
健康成人男性29例にトラマドール塩酸塩徐放錠(200mg)を空腹時及び食後に単回経口投与したとき、食後の血漿中トラマドール及びM1のCmaxは空腹時と比べて約50%上昇したが、AUC0-∞は変わらなかった(外国人によるデータ)。
16.3 分布
16.3.1 組織への移行
14C‐トラマドール塩酸塩を雄性ラットに30mg/kg経口投与した後、放射能濃度はほとんどの組織で投与後1~2時間で最高値に達した。投与後1時間の組織中濃度は肝臓、腎臓及び肺で高く、それぞれ血漿中濃度の約15、13及び11倍であった。脳内の放射能濃度は血漿の約2倍高かった。各組織からの放射能の消失は血漿と同様に速やかであり、放射能濃度は投与後24時間で最高値の10%以下に低下した。
16.3.2 血漿タンパク結合
14C‐トラマドール塩酸塩の血漿タンパク結合率は、0.2~10μg/mLの範囲で19.5~21.5%であり、結合率に濃度依存性は認められなかった(in vitro)。
16.4 代謝
16.4.1 トラマドールの主な代謝経路は、O‐及びN‐脱メチル化(第一相反応)並びにそれらの代謝物のグルクロン酸又は硫酸抱合(第二相反応)であった。
16.4.2 トラマドールのO‐脱メチル化反応にはCYP2D6が、N‐脱メチル化反応にはCYP3A4が主に関与していた。
16.5 排泄
健康成人男性6例にトラマドール塩酸塩カプセル25、50又は100mgを空腹時に単回経口投与したとき、投与後24時間までの尿中排泄率に用量間で差はなく、投与量の12~16%が未変化体として、12~15%がモノ‐O‐脱メチル体(M1)、15~18%がM1の抱合体として排泄された。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
腎機能障害患者21例(クレアチニンクリアランス:80mL/min以下)にトラマドール塩酸塩100mgを静脈内投与したとき、血清中トラマドールのt1/2,β及びAUC0-∞は健康成人のそれぞれ最大で1.5倍及び2倍であった(外国人によるデータ)。[9.2.2参照]
16.6.2 肝機能障害患者
肝硬変患者12例にトラマドール塩酸塩カプセル50mgを経口投与したとき、健康成人と比較して血清中トラマドールのCmax及びAUC0-∞は顕著に増加し、t1/2,βは約2.6倍に延長した(外国人によるデータ)。[9.3.2参照]
16.6.3 高齢者
健康高齢者20例(66~82歳)にトラマドール塩酸塩カプセル50mgを経口投与したときの血清中トラマドール濃度は、健康非高齢者8例(22~47歳)の結果と同様の推移を示した。一方、後期高齢者(75歳以上、8例)では、前期高齢者(65歳以上75歳未満、12例)に比べ、血清中トラマドールのCmax、AUC0-∞及び尿中排泄量が30~50%増加し、t1/2,β及びMRTが約1時間延長した(外国人によるデータ)。[7.7参照]
17.1 有効性及び安全性に関する試験
〈がん疼痛〉
17.1.1 国内第III相試験
観察期中にトラマドール塩酸塩カプセル100、200又は300mg/日で疼痛コントロールされているがん疼痛患者121例を対象とし、観察期のトラマドール塩酸塩カプセルと同一の1日用量で本剤を1日1回又は対照薬(トラマドール塩酸塩カプセル)を1日4回、7日間(投与期)投与した第III相二重盲検並行群間比較試験の成績は次のとおりであった。
過去24時間以内の平均的な痛みの程度(VAS)を指標とし、主要評価項目である投与期終了日前3日間と観察期終了日前3日間のVAS平均値の変化量について、本剤群の対照薬群に対する非劣性が検証された。
VAS平均値とその変化量及び群間差
→図表を見る(PDF)
副作用発現頻度は、本剤群で18.0%(11/61例)であった。副作用は、悪心4.9%(3/61例)、嘔吐、浮動性めまい各3.3%(2/61例)、傾眠1.6%(1/61例)であった。
17.1.2 国内第III相試験(継続投与)
国内第III相二重盲検並行群間比較試験を終了したがん疼痛患者107例を対象とし、本剤100~400mgを1日1回、非盲検下で最長24週間投与した。本剤投与が継続可能な患者では、主要評価項目である疼痛コントロール状況は試験期間を通して概ね「良好」であった。
疼痛コントロール状況及び疼痛コントロール良好率
→図表を見る(PDF)
副作用発現頻度は、薬剤群で37.4%(40/107例)であった。副作用は、便秘13.1%(14/107例)、悪心9.3%(10/107例)、嘔吐4.7%(5/107例)、傾眠3.7%(4/107例)、浮動性めまい0.9%(1/107例)であった。
〈慢性疼痛〉
17.1.3 国内第III相試験
(1)変形性関節症と診断され、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の経口投与により十分な鎮痛効果が得られない慢性疼痛患者を対象に、非盲検下で1~5週間かけて100~400mg/日の範囲で適宜増減した後、二重盲検期への移行基準を満たした患者171例に、本剤又はプラセボをランダムに割り付けて4週間投与したとき(本剤群87例、プラセボ群84例)、二重盲検下での鎮痛効果不十分をイベントとしたイベント発生までの期間は、プラセボ群と比較し本剤群で有意に長かった(ログランク検定:P=0.0047)。
Kaplan‐Meier法による鎮痛効果持続率
副作用発現頻度は、本剤群で91.8%(212/231例)であった。主な副作用は、便秘63.2%(146/231例)、悪心59.7%(138/231例)、嘔吐30.7%(71/231例)、傾眠21.2%(49/231例)、浮動性めまい14.3%(33/231例)であった。
(2)帯状疱疹後神経痛と診断され、非オピオイド鎮痛剤(NSAIDs、プレガバリン他)の経口投与により十分な鎮痛効果が得られない慢性疼痛患者を対象に、非盲検下で1~5週間かけて100~400mg/日の範囲で適宜増減した後、二重盲検期への移行基準を満たした患者172例に、本剤又はプラセボをランダムに割り付けて4週間投与したとき(本剤群88例、プラセボ群84例)、二重盲検下での鎮痛効果不十分をイベントとしたイベント発生までの期間は、プラセボ群と比較し本剤群で有意に長かった(ログランク検定:P<0.0001)。
Kaplan‐Meier法による鎮痛効果持続率
副作用発現頻度は、本剤群で90.6%(221/244例)であった。主な副作用は、便秘67.6%(165/244例)、悪心45.5%(111/244例)、傾眠29.1%(71/244例)、浮動性めまい21.7%(53/244例)、嘔吐18.0%(44/244例)であった。
17.1.4 国内第III相試験(長期投与)
各種疾患(変形性関節症、腰痛症、関節リウマチ、脊柱管狭窄症、帯状疱疹後神経痛、有痛性糖尿病性神経障害、複合性局所疼痛症候群、線維筋痛症)に伴う慢性疼痛を有し、非オピオイド鎮痛剤(NSAIDs、プレガバリン他)の経口投与により十分な鎮痛効果が得られない患者171例を対象に、本剤を1日1回、100~400mgの範囲で適宜増減し、その後52週間投与したときのVAS値の平均値は、前観察期の61.4mmに対して、6週後には30.8mmに低下し、その後52週までほぼ一定の値で推移した。
副作用発現頻度は、本剤群で86.5%(148/171例)であった。主な副作用は、便秘48.5%(83/171例)、悪心45.0%(77/171例)、傾眠31.0%(53/171例)、浮動性めまい17.0%(29/171例)、嘔吐14.6%(25/171例)であった。
18.1 作用機序
トラマドール塩酸塩及び活性代謝物M1は、μオピオイド受容体の作動作用に加え、ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み阻害作用を併せ持つことで、侵害受容性疼痛及び神経障害性疼痛を抑制すると考えられる。
18.2 オピオイド受容体結合に対する作用
ラット脳を用いた受容体結合実験において、トラマドール塩酸塩はδ及びκオピオイド受容体よりもμオピオイド受容体に高い結合親和性を示した。M1塩酸塩のラットμオピオイド受容体に対する結合親和性は、モルヒネ塩酸塩に劣るもののトラマドール塩酸塩より高かった(in vitro)。
18.3 ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み系に対する作用
ラット脳を用いた取り込み実験において、トラマドール塩酸塩はノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み系を抑制した。これらの再取り込み系に対するM1塩酸塩の抑制作用は、トラマドール塩酸塩と同程度あるいは弱かった(in vitro)。
18.4 侵害受容性疼痛に対する抑制作用
18.4.1 マウス及びラットを用いたライシング法、ホットプレート法及びテールフリック法による侵害刺激実験において、トラマドール塩酸塩は経口、腹腔内又は皮下投与で鎮痛効果を示した。代謝物M1の塩酸塩をラットに静脈内投与した場合、テールフリック法による侵害刺激反応をトラマドール塩酸塩よりも低用量から抑制した。
18.4.2 マウスを用いたテールフリック法による侵害刺激法において、トラマドール塩酸塩を腹腔内投与した時の鎮痛作用はオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソン塩酸塩で抑制された。一方、α2‐アドレナリン受容体拮抗薬であるヨヒンビン塩酸塩及びセロトニン2型受容体拮抗薬であるリタンセリンは、マウスにトラマドール塩酸塩をくも膜下腔内に投与した時の鎮痛作用を抑制した。
18.5 神経障害性疼痛に対する抑制作用
ラットの坐骨神経を部分結紮した神経障害性疼痛モデルにおいて、トラマドール塩酸塩は経口投与で抗アロディニア作用を示した。
- 一包可:不可
- 分割:不可
- 粉砕:不明
徐放性製剤であることから、急激な血中濃度の上昇による重篤な副作用の発現を避けるため、服用に際して割ったり、砕いたり又はかみ砕いたりしないように指示する。
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