エムガルティ皮下注120mgシリンジ

添付文書情報2022年05月改定(第4版)
商品情報
- 禁忌
- 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴を有する患者〔11.1.1参照〕。
- 効能・効果
- 片頭痛発作の発症抑制。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 十分な診察を実施し、前兆のある又は前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、又は慢性片頭痛であることを確認した上で本剤の適用を考慮すること。
5.2. 最新のガイドライン等を参考に、非薬物療法、片頭痛発作の急性期治療等を適切に行っても日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与すること。
- 用法・用量
- 通常、成人にはガルカネズマブ(遺伝子組換え)として初回に240mgを皮下投与し、以降は1ヵ月間隔で120mgを皮下投与する。
(用法及び用量に関連する注意)
本剤投与中は症状の経過を十分に観察し、本剤投与開始後3ヵ月を目安に治療上の有益性を評価して症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮すること。またその後も定期的に投与継続の要否について検討し、頭痛発作発現の消失・軽減等により日常生活に支障をきたさなくなった場合には、本剤の投与中止を考慮すること〔17.1.5参照〕。
- 特定の背景を有する患者に関する注意
- 8.1. 本剤は、片頭痛の治療に関する十分な知識及び経験を有する医師のもとで使用
すること。
8.2. 本剤は発現した頭痛発作を緩解する薬剤ではないので、本剤投与中に頭痛発作が発現した場合には必要に応じて頭痛発作治療薬を頓用させること。投与前にこのことを患者に十分に説明しておくこと。
8.3. 本剤の自己投与にあたっては、次の点に留意すること。
・ 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。
・ 自己投与の適用については、その妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。
・ 自己投与適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理下で慎重に観察するなど適切な処置を行うこと〔11.副作用の項参照〕。
・ 自己投与を適用する場合は、使用済みのシリンジを再使用しないように患者に注意を促し、安全な廃棄方法について指導を徹底すること。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと〔8.3参照〕。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 重篤な過敏症反応(頻度不明):アナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹等があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を直ちに中止し、適切な処置を行うこと(重篤な過敏症反応は本剤投与数日後においてもあらわれることがあり、また反応が長引くことがある)〔2.禁忌の項参照〕。
- 11.2. その他の副作用
1). 感覚器:(1%未満)回転性めまい。
2). 消化器:(1%未満)便秘。
3). 注射部位:(1%以上)注射部位疼痛(10.1%)、注射部位反応(紅斑、そう痒感、内出血、腫脹等)(14.9%)。
4). 皮膚:(1%未満)皮膚そう痒症、蕁麻疹、(頻度不明)発疹。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(ヒトIgGは胎盤関門を通過することが知られている)、本剤はウサギ及びラットにおいて胎仔への移行が報告されているが、胎仔に有害な影響は認められなかった。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(本剤のヒトの乳汁中への移行及び授乳された乳児への影響は不明であるが、ヒトIgGは乳汁中へ移行することが知られていることから、本剤も授乳された乳児への移行の可能性が考えられる)。
- 小児等
- 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤投与前の注意14.1.1. 投与30分前に冷蔵庫から取り出し、直射日光を避け、室温に戻しておくこと。
14.1.2. 使用前に異物や変色がないことを目視により確認する(濁りや異物が認められる場合は使用しない)。
14.2. 薬剤投与時の注意投与時は次の点を注意すること。
・ 注射部位は、腹部、大腿部、上腕部、臀部とする。同じ部位の中で繰り返し注射する場合、毎回注射する箇所を変更すること。傷や発赤等のない部位に投与すること。
・ 本剤は皮下にのみ投与すること。
・ 本剤は1回使用の製剤であり、再利用しないこと(感染のおそれがある)。
・ 投与予定日に投与できなかった場合は、可能な限り速やかに投与し、以降はその投与日を基点として1ヵ月間隔で120mgを投与すること。
・ 240mgを投与する場合は120mgシリンジを2本皮下投与すること。
20.1. 凍結を避け、2~8℃で遮光保存すること。凍結した場合は使用しないこと。
20.2. 激しく振とうしないこと。
20.3. 室温で保存する場合は30℃を超えない場所で遮光保存し、7日以内に使用
すること。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報抗薬物抗体の存在は本剤の薬物動態、有効性及び安全性に影響を及ぼさなかった。本剤を1ヵ月間隔で投与された患者において、抗薬物抗体陽性率は6ヵ月で7.8%(7/90)、18ヵ月で15.5%(9/58)であり、そのほとんどは中和抗体活性陽性であったが、抗体価は低かった。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人健康成人に本剤5~300mg注6)を単回皮下投与したときの血清中ガルカネズマブ濃度は次のとおりである。ガルカネズマブは、Tmax5~9日で吸収され、消失半減期は約23~30日間であった。
日本人及び外国人健康成人の薬物動態パラメータは同程度であり、Cmax及びAUC0-∞は投与量の増加と共に上昇した。
図1)日本人健康成人における単回皮下投与時の血清中ガルカネズマブ濃度(平均値+標準偏差)
表1)日本人健康成人における単回皮下投与時の血清中ガルカネズマブの薬物動態パラメータ
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16.1.2 反復投与
日本人反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者に本剤を初回に240mg皮下投与し、以降は1ヵ月間隔で120mg皮下投与したときの血清中ガルカネズマブのトラフ濃度は初回投与後に定常状態に到達し、投与後6ヵ月では反復性片頭痛患者で20400ng/mL、慢性片頭痛患者で21000ng/mLであった。
2309例(日本人患者420例を含む)のデータを用いた母集団薬物動態解析に基づくと、初回に240mgを皮下投与したときのガルカネズマブのCmaxは約31μg/mL(変動係数26%)であった。以降120mg又は240mg注6)を1ヵ月間隔で皮下投与したとき、定常状態におけるCmaxはそれぞれ約30μg/mL(変動係数32%)又は58μg/mL(変動係数29%)であった。5~300mg注6)投与時に、吸収速度に用量依存性は認められなかった。母集団薬物動態解析の結果同様、投与部位によって、ガルカネズマブの吸収は大きく変わらなかった。
表2)母集団薬物動態解析により推定したCGAN試験及びCGAP試験における日本人でのガルカネズマブの薬物動態パラメータ
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16.3 分布
母集団薬物動態解析に基づくと、ガルカネズマブの見かけの分布容積は7060mLであった。見かけの分布容積に用量依存性は認められなかった。
16.4 代謝
ガルカネズマブはIgG4モノクローナル抗体であり、内因性IgGと同様に異化経路によりペプチド断片及びアミノ酸に分解されると考えられる。
16.5 排泄
母集団薬物動態解析に基づくと、ガルカネズマブの見かけのクリアランスは約185mL/dayであり、半減期は26日であった。見かけのクリアランスに用量依存性は認められなかった。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者
肝機能障害患者における本剤の薬物動態に関する検討は行っていない。IgGモノクローナル抗体は、主に細胞外異化経路により消失し、肝機能障害はガルカネズマブのクリアランスに影響しないと考えられる。母集団薬物動態解析に基づくと、ビリルビン濃度はガルカネズマブの見かけのクリアランスに影響を及ぼさなかった。
16.6.2 腎機能障害患者
腎機能障害患者における本剤の薬物動態に関する検討は行っていない。IgGモノクローナル抗体の腎排泄は低いと考えられる。母集団薬物動態解析に基づくと、クレアチニンクリアランス(最小値~最大値:24~308mL/min)はガルカネズマブの見かけのクリアランスに影響を及ぼさなかった。
16.6.3 その他
年齢、性別、体重、人種、又は民族はガルカネズマブの見かけのクリアランス及び見かけの分布容積に影響を及ぼさなかった。
注6)本剤の承認された用法及び用量は、「初回に240mgを皮下投与し、以降は1ヵ月間隔で120mgを皮下投与する。」である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験(CGAN試験)
ベースラインの片頭痛日数が月4日以上の日本人反復性片頭痛患者459例を対象としたプラセボ対照二重盲検試験を実施した。本剤120mg(初回のみ240mg)、240mg注10)又はプラセボを1ヵ月間隔で皮下投与した。本剤投与群における1ヵ月あたりの片頭痛日数のベースラインからの変化量は表1のとおりであり、プラセボ投与群に比較して、統計学的に有意な改善が認められた。以下本剤120mg投与群の有効性及び安全性の主要な結果を示す。
表1)CGAN試験における1ヵ月あたりの片頭痛日数(日)のベースラインからの変化量
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副作用発現頻度は本剤120mg投与群で29.6%(34/115例)であった。主な副作用は注射部位紅斑14.8%、注射部位腫脹10.4%、注射部位そう痒感8.7%、注射部位疼痛6.1%であった。
17.1.2 外国第III相試験(CGAG/CGAH試験)
ベースラインの片頭痛日数が月4日以上の外国人反復性片頭痛患者1773例(CGAG試験:858例、CGAH試験:915例)を対象としたプラセボ対照二重盲検試験を実施した。本剤120mg(初回のみ240mg)、240mg注10)又はプラセボを1ヵ月間隔で皮下投与した。本剤投与群における1ヵ月あたりの片頭痛日数のベースラインからの変化量(CGAN試験と同様、二重盲検期6ヵ月)はプラセボ投与群に比較して、統計学的に有意な改善が認められた。
CGAG試験における副作用発現頻度は本剤120mg投与群で36.4%(75/206例)であった。主な副作用は注射部位疼痛16.0%であった。CGAH試験における副作用発現頻度は本剤120mg投与群で27.4%(62/226例)であった。主な副作用は注射部位疼痛9.3%であった。
17.1.3 外国第III相試験(CGAI試験)
外国人慢性片頭痛患者1113例を対象としたプラセボ対照二重盲検試験を実施した。本剤120mg(初回のみ240mg)、240mg注10)又はプラセボを1ヵ月間隔で皮下投与した。本剤投与群における1ヵ月あたりの片頭痛日数のベースラインからの変化量(二重盲検期3ヵ月)はプラセボ投与群に比較して、統計学的に有意な改善が認められた。
副作用発現頻度は本剤120mg投与群で23.1%(63/273例)であった。主な副作用は注射部位疼痛5.9%であった。
17.1.4 国際共同第III相試験(CGAW試験)
ベースラインの片頭痛日数が月4日以上かつ他剤注3)で効果不十分の反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者462例(日本人42例を含む)を対象としたプラセボ対照二重盲検試験を実施した。本剤120mg(初回のみ240mg)又はプラセボを1ヵ月間隔で皮下投与した。本剤投与群における1ヵ月あたりの片頭痛日数のベースラインからの変化量は表2、3、4のとおりであり、プラセボ投与群に比較して、統計学的に有意な改善が認められた。以下本剤120mg投与群の有効性及び安全性の主要な結果を示す。
注3)バルプロ酸、プロプラノロール等
表2)CGAW試験における1ヵ月あたりの片頭痛日数(日)のベースラインからの変化量(全体集団)
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表3)CGAW試験における1ヵ月あたりの片頭痛日数(日)のベースラインからの変化量(反復性片頭痛部分集団)
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表4)CGAW試験における1ヵ月あたりの片頭痛日数(日)のベースラインからの変化量(慢性片頭痛部分集団)
→図表を見る(PDF)
副作用発現頻度は本剤120mg投与群で15.9%(37/232例)であった。主な副作用は注射部位紅斑3.4%であった。
17.1.5 国内第III相長期投与試験(CGAP試験)
継続投与試験として本剤の長期の安全性及び忍容性を検討した。CGAN試験を完了した246例の日本人反復性片頭痛患者及び新規参加の65例の日本人慢性片頭痛患者(計311例)に本剤120mg(CGAN試験のプラセボ投与群から移行した反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者は初回のみ240mg)又は240mg注10)を1ヵ月間隔で皮下投与した。反復性片頭痛患者では18ヵ月、慢性片頭痛患者では12ヵ月の片頭痛日数の継続的な改善が認められ、本剤の長期の安全性及び良好な忍容性が確認された。以下本剤120mg投与群の有効性及び安全性の主要な結果を示す。
図1)CGAP試験における片頭痛日数の経時変化
●反復性片頭痛:プラセボ投与群/本剤120mg投与群:CGAN試験でプラセボを投与されCGAP試験で本剤120mgを投与された62例
▼反復性片頭痛:本剤120mg投与群/本剤120mg投与群:CGAN試験で本剤120mgを投与されCGAP試験で本剤120mgを投与された58例
■慢性片頭痛:本剤120mg投与群:CGAP試験新規参加で本剤120mgを投与された32例
副作用発現頻度は反復性片頭痛患者の本剤120mg投与群で32.5%(39/120例)であり、慢性片頭痛患者の本剤120mg投与群で28.1%(9/32例)であった。反復性片頭痛患者における主な副作用は注射部位紅斑17.5%、注射部位そう痒感14.2%、注射部位腫脹8.3%であった。慢性片頭痛患者における主な副作用は注射部位そう痒感15.6%、注射部位紅斑9.4%、注射部位疼痛6.3%であった。[7.参照]
注10)本剤の承認された用法及び用量は、「初回に240mgを皮下投与し、以降は1ヵ月間隔で120mgを皮下投与する。」である。
18.1 作用機序
ガルカネズマブはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体であり、CGRP受容体を阻害することなくCGRPの生理活性を阻害する。ガルカネズマブはCGRPに高い親和性(KD=31pM)と選択性を有し、CGRP受容体やCGRP関連ペプチド(アドレノメデュリン、アミリン、カルシトニン及びインテルメジン)には明らかな結合性を示さない(CGRPに対する親和性はこれらペプチドに対する親和性の10000倍より大きい)。片頭痛患者では片頭痛発作の誘発に関連するとされるCGRPの血中濃度が上昇しており、ガルカネズマブのCGRP活性の阻害作用により、片頭痛発作の発症が抑制されると考えられる。
- 製造販売会社
- 日本イーライリリー
- 販売会社
- 第一三共
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