ペメトレキセド点滴静注液100mg「SUN」
添付文書情報2024年07月改定(第2版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 1.1. 本剤を含むがん化学療法に際しては、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。適応患者の選択にあたっては、各併用薬剤の電子添文を参照して十分注意すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
1.2. 本剤による重篤な副作用の発現を軽減するため、必ず葉酸及びビタミンB12の投与のもとに本剤を投与すること〔7.1参照〕。
1.3. 重度腎機能障害患者で、本剤に起因したと考えられる死亡が報告されているので、重度の腎機能障害患者には本剤を投与しないことが望ましい〔9.2腎機能障害患者の項参照〕。
1.4. 多量の胸水又は多量の腹水が認められる患者では、体腔液の排出を検討すること(他の葉酸代謝拮抗剤で、胸水又は腹水等の体腔液の貯留が認められる患者に投与した場合、副作用の増強が報告されている)〔9.1.3参照〕。
1.5. 本剤の投与により、間質性肺炎があらわれることがあるので、本剤の投与に際しては、胸部X線検査等を行うなど観察を十分に行い、間質性肺炎が疑われた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと〔8.3参照〕。
- 禁忌
- 2.1. 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 高度骨髄抑制のある患者[骨髄抑制が増悪し、致命的となることがある]。
2.3. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。
- 効能・効果
- 1). 悪性胸膜中皮腫。
2). 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌。
3). 扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌における術前補助療法。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 〈効能共通〉術後補助療法における本剤の有効性及び安全性は確立していない。
5.2. 〈悪性胸膜中皮腫〉がん化学療法既治療例における本剤の有効性及び安全性は確立していない。
5.3. 〈切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌〉扁平上皮癌等の組織型ごとの結果及び化学療法既治療例での結果を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、患者の選択を行うこと〔17.1.5参照〕。
5.4. 〈扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌における術前補助療法〉臨床試験に組み入れられた患者の病期等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適宜患者の選択を行うこと〔17.1.6参照〕。
- 用法・用量
- 〈悪性胸膜中皮腫〉
シスプラチンとの併用において、通常、成人にはペメトレキセドとして、1日1回500mg/㎡(体表面積)を10分間かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1コースとし、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
〈切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌〉
通常、成人にはペメトレキセドとして、1日1回500mg/㎡(体表面積)を10分間かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1コースとし、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
〈扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌における術前補助療法〉
ニボルマブ(遺伝子組換え)及び白金系抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはペメトレキセドとして、1日1回500mg/㎡(体表面積)を10分間かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1コースとし、3コースまで投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈効能共通〉本剤による重篤な副作用の発現を軽減するため、次のように葉酸及びビタミンB12を投与すること。
・ 〈効能共通〉葉酸:本剤初回投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5mgを連日経口投与し、なお、本剤の投与を中止又は終了する場合には、本剤最終投与日から22日目まで可能な限り葉酸を投与する。
・ 〈効能共通〉ビタミンB12:本剤初回投与の少なくとも7日前に、ビタミンB12として1回1mgを筋肉内投与し、その後、本剤投与期間中及び投与中止後22日目まで9週ごと(3コースごと)に1回投与する〔1.2参照〕。
7.2. 〈効能共通〉欧米の添付文書中には、次の減量基準の記載がある。
減量に関する推奨事項-次回コース開始時の用量調節は、前回投与コースでの最低血球数又は最大非血液毒性に基づき決定し、回復に十分時間をかけるため投与延期してもよく、回復時はガイドラインに従い再投与を行う(これらは本剤を単剤又はシスプラチンとの併用で使用の際いずれにも適用する)。
1). 〈効能共通〉[本剤(単剤又は併用)及びシスプラチンの用量調節-血液毒性]
①. 〈効能共通〉最低好中球数<500/mm3及び最低血小板数≧50000/mm3:本剤及びシスプラチンの用量(mg/㎡)は、前回の用量の75%[欧米の添付文書中の記載]。
②. 〈効能共通〉最低好中球数に関わらず最低血小板数<50000/mm3:本剤及びシスプラチンの用量(mg/㎡)は、前回の用量の75%[欧米の添付文書中の記載]。
③. 〈効能共通〉最低好中球数に関わらず出血を伴う最低血小板数<50000/mm3:本剤及びシスプラチンの用量(mg/㎡)は、前回の用量の50%[欧米の添付文書中の記載]。
患者にグレード3以上の非血液毒性が発現した場合には、投与開始前の値以下に回復するまで本剤の投与を控え、投与再開は[本剤(単剤又は併用)及びシスプラチンの用量調節-非血液毒性(米国国立癌研究所共通毒性規準(CTC)、神経毒性を除く)]のガイドラインに従うこと。
2). 〈効能共通〉[本剤(単剤又は併用)及びシスプラチンの用量調節-非血液毒性(米国国立癌研究所共通毒性規準(CTC)、神経毒性を除く)]
①. 〈効能共通〉粘膜炎・神経毒性を除くグレード3の非血液毒性又は粘膜炎・神経毒性を除くグレード4の非血液毒性:本剤の用量(mg/㎡)は、前回の用量の75%、シスプラチンの用量(mg/㎡)は、前回の用量の75%[欧米の添付文書中の記載]。
②. 〈効能共通〉入院を要する下痢<グレードは問わない>又はグレード3の下痢若しくはグレード4の下痢:本剤の用量(mg/㎡)は、前回の用量の75%、シスプラチンの用量(mg/㎡)は、前回の用量の75%[欧米の添付文書中の記載]。
③. 〈効能共通〉グレード3の粘膜炎又はグレード4の粘膜炎:本剤の用量(mg/㎡)は、前回の用量の50%、シスプラチンの用量(mg/㎡)は、前回の用量の100%[欧米の添付文書中の記載]。
神経毒性の発現時に推奨される本剤とシスプラチンの用量調節を次に示す。グレード3の神経毒性又はグレード4の神経毒性が認められた場合には投与を中止[欧米の添付文書中の記載]すること。
3). 〈効能共通〉[本剤(単剤又は併用)及びシスプラチンの用量調節-神経毒性]
①. 〈効能共通〉神経毒性<CTCグレード0~1>:本剤の用量(mg/㎡)は、前回の用量の100%、シスプラチンの用量(mg/㎡)は、前回の用量の100%[欧米の添付文書中の記載]。
②. 〈効能共通〉神経毒性<CTCグレード2>:本剤の用量(mg/㎡)は、前回の用量の100%、シスプラチンの用量(mg/㎡)は、前回の用量の50%[欧米の添付文書中の記載]。
2回の減量後にグレード3の血液毒性若しくはグレード4の血液毒性あるいはグレード3の非血液毒性若しくはグレード4の非血液毒性が認められた場合又はグレード3の神経毒性若しくはグレード4の神経毒性が観察された場合は直ちに本剤の投与を中止[欧米の添付文書中の記載]すること。
7.3. 〈悪性胸膜中皮腫〉シスプラチン以外の抗悪性腫瘍剤との併用における有効性及び安全性は確立していない。なお、シスプラチンは本剤投与30分後に75mg/㎡(体表面積)を投与し、投与に際しては、シスプラチンの電子添文に従い腎毒性軽減のための処置等を行うこと。
7.4. 〈悪性胸膜中皮腫〉本剤を単剤で使用した場合の有効性及び安全性は確立していない。
- 生殖能を有する者
- 8.1. 発疹が高頻度に起こるので、発疹の発現及び重症化を軽減するため、副腎皮質ホルモン剤の併用投与を考慮すること〔17.1.1-17.1.5参照〕。
8.2. 骨髄抑制等の重篤な副作用が起こることがあるので、投与に際しては臨床症状を十分に観察し、頻回に臨床検査(血液学的検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行い、また、本剤の投与にあたっては、G-CSF製剤の適切な使用に関しても考慮すること〔9.1.1、11.1.1参照〕。
8.3. 間質性肺炎等の重篤な肺毒性が起こることがあるので、本剤の投与にあたっては、臨床症状(呼吸状態、咳及び発熱等の有無)を十分に観察し、定期的に胸部X線検査を行い、また、必要に応じて胸部CT検査、動脈血酸素分圧(PaO2)、肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)、肺拡散能力(DLCO)等の検査を行い、患者の状態を十分に観察すること〔1.5、9.1.2、11.1.3参照〕。
8.4. 重度腎機能障害患者で、本剤に起因したと考えられる死亡が報告されているので、本剤投与前に患者の腎機能を確認すること〔9.2.1参照〕。
9.1.1. 骨髄抑制のある患者〔8.2参照〕。
9.1.2. 間質性肺炎、肺線維症、又はこれらの疾患の既往歴のある患者〔8.3参照〕。
9.1.3. 胸水又は腹水が認められる患者:多量の体腔液が認められる患者では、本剤投与前に体腔液の排出を検討すること(胸水、腹水等体腔液の本剤投与への影響は不明であるが、他の葉酸代謝拮抗剤で副作用の増強が報告されている)〔1.4参照〕。
腎機能障害患者:本剤は主として腎より排泄され、腎機能障害の程度に応じて本剤の血中濃度の増加が認められている(クレアチニンクリアランスが45mL/min未満の患者は臨床試験では除外されている)〔1.3参照〕。
9.2.1. 重度腎機能障害患者〔8.4参照〕。
肝機能障害患者:臨床試験では除外されている。
生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮すること(動物実験で雄性生殖器に対する影響(マウス:精子形成能低下あるいは精細管変性、イヌ:精細管上皮変性あるいは精細管上皮壊死)が報告されている)。
- 相互作用
- 10.2. 併用注意:1). 非ステロイド性抗炎症剤(イブプロフェン等)[本剤の血中濃度が増加し副作用
が増強するおそれがあるので、併用療法を行う場合には、頻回に臨床検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること(他の葉酸代謝拮抗剤で副作用の増強が知られており、本剤においてもクリアランスの低下が認められている)]。
2). 腎毒性を有する薬剤又は腎排泄型薬剤(プロベネシド、ペニシリン等)[本剤の血中濃度が増加し副作用が増強するおそれがあるので、併用療法を行う場合には、慎重に投与すること(他の葉酸代謝拮抗剤で腎排泄を競合的に阻害することが知られており、本剤のクリアランスを遅延させるおそれがある)]。
3). 抗悪性腫瘍剤[骨髄機能抑制等の副作用が増強するおそれがあるので、併用療法を行う場合には、患者の状態を十分に観察すること(ともに骨髄機能抑制作用を有する)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 骨髄抑制:白血球減少(71.6%)、好中球減少(64.4%)、ヘモグロビン減少(54.2%)、リンパ球減少(51.1%)、血小板減少(46.2%)、貧血、発熱性好中球減少、汎血球減少症があらわれることがある〔8.2参照〕。
11.1.2. 感染症:敗血症、肺炎等の重篤な感染症があらわれることがある。
11.1.3. 間質性肺炎(3.6%):肺毒性の発症あるいは肺毒性の急性増悪が疑われた場合には、直ちに本剤による治療を中止し、ステロイド治療等の適切な処置を行うこと〔8.3参照〕。
11.1.4. ショック、アナフィラキシー:呼吸困難、喘鳴、血圧低下、発疹、発赤、そう痒感等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.5. 重度下痢(1.3%)。
11.1.6. 脱水(1.3%):異常が認められた場合には、減量、休薬、補液、電解質投与等適切な処置を行うこと。
11.1.7. 腎不全:クレアチニン上昇(7.1%)、腎不全、クレアチニンクリアランス低下があらわれることがある。
11.1.8. 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)。
- 11.2. その他の副作用
1). 内分泌系:(5~20%未満)血糖値上昇、(5%未満)尿糖陽性。
2). 精神神経系:(5~20%未満)頭痛、めまい、感覚神経障害、(5%未満)味覚異常、感覚鈍麻、不眠症、傾眠、運動神経障害。
3). 眼:(5%未満)眼脂、流涙増加、眼球乾燥、結膜炎。
4). 循環器:(5%未満)血圧上昇、心嚢液貯留、動悸、不整脈。
5). 血管障害:(5~20%未満)ほてり、(5%未満)潮紅。
6). 呼吸器:(5%未満)しゃっくり、咳嗽、咽喉頭疼痛、鼻漏、呼吸困難、胸水、低酸素症。
7). 消化器:(20%以上)食欲不振、悪心、嘔吐、(5~20%未満)便秘、下痢、口内炎・咽頭粘膜炎、消化不良、(5%未満)口唇炎、胃部不快感、腹痛、胃炎、食道炎、(頻度不明)大腸炎。
8). 肝臓:(20%以上)AST上昇、ALT上昇、血中LDH上昇、血中Al-P上昇、(5~20%未満)ビリルビン上昇、γ-GTP上昇、(5%未満)尿中ウロビリン陽性。
9). 皮膚:(20%以上)発疹、(5~20%未満)皮膚そう痒症、(5%未満)皮膚色素沈着、脱毛症、多形紅斑、蕁麻疹。
10). 腎臓:(5~20%未満)アルブミン低下、電解質異常、尿潜血陽性、蛋白尿、総蛋白減少、BUN上昇、(5%未満)総蛋白増加。
11). その他:(20%以上)倦怠感、発熱、CRP上昇、(5~20%未満)疲労、体重減少、熱感、白血球増多、好中球増多、血小板増多、浮腫、(5%未満)関節痛、感冒様症状、顔面浮腫、眼瞼浮腫、悪寒、鼻出血、肺炎、単球増多、胸痛、アレルギー反応/過敏症、(頻度不明)放射線照射リコール反応、溶血性貧血。
- 高齢者
- 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下していることが多い)。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験(マウス)で催奇形作用が報告されている)〔2.3参照〕。
授乳しないことが望ましい(乳汁中への移行については不明である)。
- 小児等
- 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
- 取扱い上の注意
- 14.1. 薬剤調製時の注意14.1.1. 本剤は細胞毒性を有するため、調製時には手袋を着用することが望ましい。皮膚に薬液が付着した場合は直ちに石けんでよく洗浄し、粘膜に付着した場合は直ちに多量の流水でよく洗い流すこと。
14.1.2. 本剤の希釈には日局生理食塩液のみを使用すること。カルシウムを含有する溶液との混合により濁り又は沈殿が確認されているので、乳酸リンゲル液及びリンゲル液等との配合を避けること。また、他剤<日局生理食塩液を除く>との混注を行わないこと。
14.1.3. 投与量に応じて必要量を抜き取り、日局生理食塩液に混和して100mLとして用いる。
14.2. 薬剤投与時の注意必ず点滴静脈内投与とし、皮下、筋肉内には投与しないこと。
20.1. 製品の安定性を保持するため脱酸素剤を封入しているので、外包装(プラスチックバッグ)は使用直前まで開封しないこと。また、開封後は速やかに使用すること。
20.2. 外包装開封前に、酸素検知剤(ピンクの錠剤)が青紫~青色に変色している場合は使用しないこと。
- その他の注意
- 15.2. 非臨床試験に基づく情報遺伝毒性試験のうち、マウス小核試験において、小核試験陽性の結果が報告されている。
16.1 血中濃度
16.1.1 血漿中濃度
各種悪性腫瘍患者31例にペメトレキセドを300~1,200mg/m2注)の用量範囲で21日ごとに10分間点滴静注した。血漿中濃度は点滴終了直後が最も高く、その後速やかに消失し、消失半減期は2.74時間(範囲:2.28~3.62時間)であった。このときの血漿クリアランスは53.0~109mL/min、定常状態分布容積は10.6~14.8Lであった。第1コース及び第2コース間で血漿中濃度に差は認められなかった。
16.3 分布
16.3.1 組織分布
(参考)
マウスに14C標識体20mg/kgを単回静注したとき、肺等の広範な臓器・組織に速やかに分布した。投与1時間後には、尿、胆のう内胆汁、糞、腸内容物、腎臓及び肝臓に比較的高い放射活性が検出され、ペメトレキセドが投与後速やかに尿中及び胆汁中に排泄されることが示唆された。
16.3.2 蛋白結合率
ペメトレキセドのヒト蛋白結合率は約80%であった。また、ペメトレキセドのヒト蛋白結合率は腎機能障害による影響をほとんど受けなかった(in vitro)。
16.4 代謝
ペメトレキセドは主として尿中へ未変化体として排泄されることから、代謝をほとんど受けないと推察された。
16.5 排泄
各種悪性腫瘍患者31例にペメトレキセドを300~1,200mg/m2注)の用量範囲で21日ごとに10分間点滴静注した。ペメトレキセドは点滴静注後24時間以内に、その大部分が主に尿中へ未変化体として排泄され、投与後72時間までの累積尿中未変化体排泄率は75.2%(64.5~82.7%)であった。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
日本人患者と外国人患者の統合解析により、ペメトレキセドの薬物動態に与える腎機能の影響を評価した。日本人の腎機能低下患者(クレアチニンクリアランス45mL/min)にペメトレキセド500mg/m2を投与した場合、腎機能が正常な患者(クレアチニンクリアランス90mL/min)に比較して、ペメトレキセドの血漿クリアランスが32%低く、血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)が48%増大すると予測された。
16.7 薬物相互作用
葉酸とビタミンB12の併用は、ペメトレキセドの単剤投与時、あるいはシスプラチンとの併用投与時ともペメトレキセドの血漿クリアランスに影響を与えないことが示された。また、ペメトレキセドとシスプラチンは互いの薬物動態に影響を及ぼさないことが明らかとなった(外国人データ)。
注)本剤の承認された1回用量は、500mg/m2(体表面積)である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
〈悪性胸膜中皮腫〉
17.1.1 国内第I/II相試験
悪性胸膜中皮腫患者を対象に国内で実施した併用投与第I/II相試験注18)において、ペメトレキセド500mg/m2及びシスプラチン75mg/m2を投与された症例の奏効率は36.8%(19例中PR7例)であった。
本治療との因果関係を否定できない死亡例が全投与症例25例中1例に認められた。安全性評価対象25例中に認められた主な有害事象は、悪心(96.0%)、ヘモグロビン減少(96.0%)、食欲不振(88.0%)、赤血球減少(88.0%)、好中球減少(84.0%)、白血球減少(80.0%)、嘔吐(72.0%)、リンパ球減少(68.0%)、血中尿素増加(64.0%)、倦怠感(60.0%)、体重減少(60.0%)であった。[8.1参照]
17.1.2 化学療法未治療患者を対象とした外国第III相試験
悪性胸膜中皮腫患者(化学療法未治療)を対象に米国ほか20ヵ国で実施された第III相試験注18)における、ペメトレキセド500mg/m2及びシスプラチン併用投与群75mg/m2及びシスプラチン75mg/m2単独投与群(未承認)注1)の成績は、次表のとおりであった。なお、本試験は優越性を検証することを主要目的として実施した。
表1)外国第III相試験における悪性胸膜中皮腫患者に対する効果
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注1)シスプラチン単独投与群(未承認):21日を1コースとして第1日目に、シスプラチン75mg/m2を投与
ペメトレキセドとシスプラチンの併用投与群において、本治療との因果関係を否定できない死亡例が全投与症例226例中3例に認められ、いずれも葉酸及びビタミンB12が併用投与されていない症例であった。[8.1参照]
〈切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌〉
17.1.3 化学療法既治療患者を対象とした国内第II相試験
非小細胞肺癌患者(化学療法既治療)を対象に国内で実施した第II相試験注18)において、ペメトレキセド500mg/m2を投与された症例の奏効率は18.5%(108例中PR20例)であった。
ペメトレキセド(500mg/m2又は1,000mg/m2注4)投与)との因果関係を否定できない死亡例が全投与症例226例中1例に認められた。[8.1参照]
注4)本剤の承認された1回用量は、500mg/m2(体表面積)である。
17.1.4 化学療法未治療患者を対象とした外国第III相試験
非小細胞肺癌患者(化学療法未治療)を対象に米国等で実施された第III相試験注18)における、ペメトレキセド500mg/m2及びシスプラチン75mg/m2併用投与群とゲムシタビン1250mg/m2及びシスプラチン75mg/m2併用投与群の成績は、次表のとおりであった。なお、本試験は非劣性を検証することを主要目的として実施した。[8.1参照]
表2)外国第III相試験における非小細胞肺癌患者(化学療法未治療)に対する効果
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本試験における組織型別の部分集団解析の結果を次の表に示す。
表3)外国第III相試験における非小細胞肺癌患者(化学療法未治療)に対する組織型別の効果
→図表を見る(PDF)
17.1.5 化学療法既治療患者を対象とした外国第III相試験
非小細胞肺癌患者(化学療法既治療)を対象に米国ほか23ヵ国で実施された第III相試験注18)における、ペメトレキセド500mg/m2投与群及びドセタキセル75mg/m2投与群注12)の成績は、次表及び添付文書の図のとおりであった。なお、本試験は非劣性を検証することを主要目的として実施した。
表4)外国第III相試験における非小細胞肺癌患者(化学療法既治療)に対する効果
→図表を見る(PDF)
注12)ドセタキセル投与群:21日を1コースとして第1日目に、ドセタキセル75mg/m2を投与
図1)外国第III相試験における非小細胞肺癌患者(化学療法既治療)に対する生存率の推移
A群:ペメトレキセド投与群
D群:ドセタキセル投与群
本試験における組織型別の部分集団解析の結果を次の表及び添付文書の図に示す。
表5)外国第III相試験における非小細胞肺癌患者(化学療法既治療)に対する組織型別の効果
→図表を見る(PDF)
図2)外国第III相試験における非小細胞肺癌患者(化学療法既治療)に対する組織型別生存率の推移
A群:ペメトレキセド投与群
D群:ドセタキセル投与群
ペメトレキセド単独投与群において、本治療との因果関係を否定できない死亡例が全投与症例265例中3例に認められた。安全性評価対象265例中に認められた主な副作用は、疲労(34.0%)、悪心(30.9%)、食欲不振(21.9%)であった。[5.3、8.1参照]
注18)発疹の発現及び重症化を軽減するため、外国臨床試験では、ペメトレキセド投与の前日から投与の翌日までの3日間、デキサメタゾンを1回4mg、1日2回経口投与した。また、国内臨床試験では、発疹が発現した症例に限り、次回のペメトレキセド投与時から外国臨床試験の用法・用量を参考にデキサメタゾン等の副腎皮質ホルモン剤の投与を可能とした。[8.1参照]
〈扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌における術前補助療法〉
17.1.6 国際共同第III相試験
臨床病期IB(腫瘍径が4cm以上)、II又はIIIAの非小細胞肺癌の術前患者注19)358例(日本人患者68例を含む。ニボルマブ(遺伝子組換え)と白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法併用(N+C併用)注20)群179例、白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法群179例)を対象に、化学療法を対照として、N+C併用の有効性及び安全性を検討した。主要評価項目の一つである無イベント生存期間(中央値[95%信頼区間])は、N+C併用群で31.57[30.16~推定不能]ヵ月、化学療法群で20.80[14.03~26.71]ヵ月であり、N+C併用投与は化学療法に対し統計学的に有意な延長を示した(ハザード比0.63[97.38%信頼区間:0.43~0.91]、p=0.0052[層別log‐rank検定]、2021年9月8日データカットオフ)。
図3)国際共同第III相試験における非小細胞肺癌の術前患者に対する無イベント生存率の推移
ニボルマブ(遺伝子組換え)、ペメトレキセド及びシスプラチン注20)が併用投与された患者における安全性評価対象83例中61例(73.5%)に副作用が認められた。主な副作用は、悪心30例(36.1%)、便秘21例(25.3%)、食欲減退15例(18.1%)、倦怠感10例(12.0%)、発疹10例(12.0%)、好中球減少症9例(10.8%)、無力症9例(10.8%)であった(2022年9月6日データカットオフ)。[5.4参照]
注19)臨床病期はAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)/Union for International Cancer Control(UICC)病期分類(第7版)に基づく。
EGFR遺伝子変異陽性又はALK融合遺伝子陽性であることが確認されている患者は対象外とされた。
注20)扁平上皮癌に対しては、ニボルマブ(遺伝子組換え)1回360mg、ゲムシタビン1回1,000若しくは1,250mg/m2、シスプラチン1回75mg/m2を3週間間隔で最大3サイクル点滴静注、又はニボルマブ(遺伝子組換え)1回360mg、パクリタキセル1回175若しくは200mg/m2、カルボプラチン1回AUC5若しくは6(mg/mL・min)を3週間間隔で最大3サイクル点滴静注した。ゲムシタビンは各サイクル1日目及び8日目に点滴静注した。
非扁平上皮癌に対しては、ニボルマブ(遺伝子組換え)1回360mg、ペメトレキセド1回500mg/m2、シスプラチン1回75mg/m2を3週間間隔で最大3サイクル点滴静注、又はニボルマブ(遺伝子組換え)1回360mg、パクリタキセル1回175若しくは200mg/m2、カルボプラチン1回AUC5若しくは6(mg/mL・min)を3週間間隔で最大3サイクル点滴静注した。
なお、シスプラチンに対する忍容性がないと判断された場合には、シスプラチンをカルボプラチン1回AUC5若しくは6(mg/mL・min)に変更可能とされた。
併用投与時においては、ニボルマブ(遺伝子組換え)を最初に投与し、化学療法はニボルマブ(遺伝子組換え)の投与終了から約30分の間隔をおいて投与を開始した。
18.1 作用機序
ペメトレキセドは、複数の葉酸代謝酵素を同時に阻害することによりDNA合成を阻害して抗腫瘍効果を発揮する。ペメトレキセドは細胞内に取り込まれた後にポリグルタミン酸化を受け、チミジル酸シンターゼ(TS)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、グリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)などを阻害する。
18.2 抗腫瘍効果
18.2.1 In vitro試験
ペメトレキセドはヒト中皮腫細胞に対して抗腫瘍活性を示し、更にシスプラチンとの併用で抗腫瘍効果の増強がみられた。また、各種ヒト由来非小細胞肺癌株(細気管支肺胞上皮癌、腺癌、大細胞肺癌、扁平上皮癌)に対しても腫瘍増殖抑制作用を示した。
18.2.2 In vivo試験
ペメトレキセドは、皮下にヒト由来非小細胞肺癌(H2122腺癌)を移植した異所移植ヌードマウスの腫瘍増殖を有意に抑制した。また、同細胞株を左肺に移植した同所移植ヌードラットにおいて延命作用を示した。
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