ポートラーザ点滴静注液800mg
添付文書情報2023年06月改定(第2版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
- 禁忌
- 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者。
- 効能・効果
- 切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺癌。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 本剤の術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない。
5.2. 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと〔17.1.1、17.1.2参照〕。
- 用法・用量
- ゲムシタビン及びシスプラチンとの併用において、通常、成人にはネシツムマブ(遺伝子組換え)として1回800mgをおよそ60分かけて点滴静注し、週1回投与を2週連続し、3週目は休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
(用法及び用量に関連する注意)
本剤投与により有害事象が発現した場合には、次の基準を参考に本剤を休薬・減量又は中止すること。
1). Infusion reaction:
①. グレード1のInfusion reaction:投与速度を50%減速する(減速した場合は、その後のすべての投与においても減速した投与速度で投与することが望ましく、また、投与時間は2時間を超えないこと)。
②. グレード2のInfusion reaction:グレード1以下に回復するまで中断し、再開する場合は、投与速度を50%減速する(減速した場合は、その後のすべての投与においても減速した投与速度で投与することが望ましく、また、投与時間は2時間を超えないこと)。
③. グレード3のInfusion reaction又はグレード4のInfusion reaction:直ちに投与を中止し、再投与しない。
2). 皮膚障害:
a. グレード3の皮膚障害:休薬する[a)6週間以内にグレード2以下に回復した場合、400mgに減量して再開する(①再開後、1コースの間グレード3以上の症状が発現しなければ、600mgに増量してもよい(600mgに増量後、1コースの間グレード3以上の症状が発現しなければ、800mgに増量してもよい)、②再開後、400mgでグレード3以上の症状が発現する、又は忍容性に問題がある場合は、投与を中止し、再投与しない)、b)6週間以内にグレード2以下に回復しなかった場合は、投与を中止し、再投与しない]。
b. グレード3の皮膚硬結又はグレード3の皮膚線維化:直ちに投与を中止し、再投与しない。
c. グレード4の皮膚障害:直ちに投与を中止し、再投与しない。
3). 低マグネシウム血症:グレード3の低マグネシウム血症又はグレード4の低マグネシウム血症:グレード2以下に回復するまで休薬する。
4). 前記以外の副作用:グレード3の副作用又はグレード4の副作用:休薬する[①6週間以内にグレード2以下に回復した場合、600mgに減量して再開する(a.600mgでグレード3又は4の症状が発現する場合は、400mgに減量する、b.400mgでグレード3又は4の症状が発現する場合は、投与を中止し、再投与しない)、②6週間以内にグレード2以下に回復しなかった場合は、投与を中止し、再投与しない]。
グレードは有害事象共通用語規準(Ver.3.0)に準じる。
- 生殖能を有する者
- 低マグネシウム血症があらわれることがあるので、投与開始前、投与中及び投与終了後は血清中電解質(マグネシウム、カルシウム、カリウム及びリン)をモニタリングすること〔11.1.3参照〕。
9.1.1. 血栓塞栓症又はその既往歴のある患者:心筋梗塞、脳血管障害、肺塞栓症等が悪化又は再発するおそれがある。
9.1.2. 間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者:間質性肺疾患が悪化又は再発するおそれがある。
妊娠可能な女性:妊娠可能な女性には、本剤投与中及び本剤投与終了後一定期間は、適切な避妊を行うよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. 動脈血栓塞栓症(2.5%)、静脈血栓塞栓症(5.4%):脳血管障害(虚血性脳卒中、脳虚血、脳梗塞)、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)等の動脈血栓塞栓症、肺塞栓症、深部静脈塞栓症等の静脈血栓塞栓症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.2. Infusion reaction(1.1%):アナフィラキシー、悪寒、潮紅、低血圧、呼吸困難、気管支痙攣等のinfusion reactionがあらわれることがあり、2回目以降の本剤投与時にもあらわれることがあるので、本剤投与中は観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤の投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
11.1.3. 低マグネシウム血症(26.4%):倦怠感、筋痙縮、振戦等を伴う低マグネシウム血症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤を休薬する等、適切な処置を行うこと(低マグネシウム血症が認められた場合には、必要に応じマグネシウムの補充等の適切な処置を行うこと)〔8.重要な基本的注意の項参照〕。
11.1.4. 間質性肺疾患(0.6%)。
11.1.5. 重度の皮膚障害(8.3%*):ざ瘡様皮膚炎(1.9%*)、多形紅斑(0.2%*)等の重度皮膚障害があらわれることがある。
11.1.6. 発熱性好中球減少症(0.8%)。
11.1.7. 重度下痢(1.1%*)。
11.1.8. 出血(5.1%):喀血(1.0%)等の出血があらわれることがある。
*)有害事象共通用語規準(Ver.3.0)のグレード3以上の副作用。
- 11.2. その他の副作用
次のような副作用が認められた場合には、症状に合わせて適切な処置を行うこと。
1). 眼:(5~10%未満)結膜炎。
2). 消化器:(10%以上)食欲減退、口内炎、(5~10%未満)嘔吐、(5%未満)嚥下障害、口腔内潰瘍形成、口腔咽頭痛。
3). 一般・全身及び投与部位反応:(5%未満)発熱。
4). 精神神経系:(5%未満)頭痛、味覚異常。
5). 皮膚:(10%以上)皮膚障害(発疹、ざ瘡様皮膚炎、皮膚乾燥、皮膚そう痒、皮膚亀裂、爪囲炎、手掌・足底発赤知覚不全症候群等)(78.5%)。
6). 腎臓:(5%未満)尿路感染、排尿困難。
7). 代謝:(5%未満)低カルシウム血症、低リン酸血症、低カリウム血症。
8). 肝臓:(5%未満)AST増加、ALP増加。
9). その他:(5%未満)体重減少、筋痙縮、静脈炎。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(本剤を用いた生殖発生毒性試験は実施されていないが、EGFRは着床、胎盤の発生、胚胎児期における正常な器官形成等に重要であることが報告されていることから、妊娠中の女性に対する本剤の投与は、胎児に対して有害な影響を及ぼす可能性がある)〔9.4生殖能を有する者の項参照〕。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(本剤のヒト母乳中への移行に関するデータはないが、ヒトIgGは母乳中に移行することが知られている)。
- 小児等
- 小児を対象とした臨床試験は実施していない。
- 適用上の注意
- 14.1. 薬剤調製時の注意14.1.1. 本剤は無菌的に希釈調製を行うこと。
14.1.2. 本剤は保存剤を含まないため、バイアル中の未使用残液は適切に廃棄すること。
14.1.3. 調製前に不溶性異物がないことを目視により確認すること(不溶性異物が認められる場合は使用しないこと)。
14.1.4. 他剤<日局生理食塩液を除く>又は電解質<日局生理食塩液を除く>と混和又は混注はしないこと。
14.1.5. 本剤の調製には日局生理食塩液のみを使用すること。ブドウ糖溶液との配合を避けること。
14.1.6. 本剤の投与時には必要量(通常800mg、本剤として50mL)を日局生理食塩液200mLと混和して用いる。
14.1.7. 本剤及び調製した注射液を凍結又は振とうさせないこと。
14.1.8. 調製後は、速やかに使用すること(なお、やむを得ず保存を必要とする場合、冷蔵保存(2~8℃)では24時間以内、室温保存(30℃以下)では4時間以内に投与を開始すること)。
14.2. 薬剤投与時の注意14.2.1. 本剤投与前に不溶性異物がないことを目視により確認すること(不溶性異物が認められる場合は使用しないこと)。
14.2.2. 本剤投与終了後は、使用したラインを日局生理食塩液にてフラッシュすること。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報15.1.1. 臨床試験において、本剤に対する抗体産生が報告されている。
15.1.2. 切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象とした海外第3相試験(SQUIRE試験)において、原因不明の心肺停止の発現率が、ゲムシタビン及びシスプラチンの併用投与群(0.6%)と比較して、本剤とゲムシタビン及びシスプラチンの併用投与群(2.8%)で高い傾向が認められた。本剤とゲムシタビン及びシスプラチンの併用投与群における死亡例15例中12例は、本剤の最終投与から30日以内に死亡した。
16.1 血中濃度
16.1.1 反復投与
日本人進行固形癌患者に本剤600mg又は800mgの週1回投与を2週連続し、3週目は休薬し、これを1コースとして投与を繰り返したときの血清中濃度推移及び薬物動態パラメータは次のとおりであった。
図1)ネシツムマブ単回及び反復投与後の血清中濃度(平均及び標準偏差、600mg1回目及び4回目投与後:例数=3、800mg1回目投与後:例数=6、800mg4回目投与後:例数=5)
表1)ネシツムマブ単回及び反復投与後の薬物動態パラメータ(幾何平均値及び変動係数%)
→図表を見る(PDF)
16.7 薬物相互作用
外国人における本剤とゲムシタビン及びシスプラチンとの相互作用試験の結果、本剤によるゲムシタビン又はシスプラチンの薬物動態に対する明らかな影響は認められなかった。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第Ib/II相試験(JFCM試験)
化学療法未治療の切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象に、第Ib/II相試験を実施した。第II相部分では、本剤及びゲムシタビン・シスプラチン療法(GC)の併用療法(GC+N)とGCを比較した。本剤は800mgを3週間を1コースとして1日目と8日目に投与し、GCはゲムシタビン1250mg/m2を各コースの1日目と8日目、シスプラチン75mg/m2を各コースの1日目に投与した。GCは両群とも最大4コースまでとし、GC+N群での本剤の投与はGCの中止又は終了後も疾患進行等の中止基準に該当するまで継続した。第II相部分における主要評価項目である全生存期間は、GC+N群でGC群と比較して延長した。
表1)国内試験(JFCM試験)における成績
→図表を見る(PDF)
図1)全生存期間のKaplan‐Meier曲線(JFCM試験)
なお、EGFRの発現状況別の部分集団解析結果は、Hスコア=0(GC+N群12例、GC群9例)でハザード比(95%信頼区間)=0.78(0.27-2.25)、Hスコア>0(GC+N群75例、GC群79例)でハザード比(95%信頼区間)=0.62(0.43-0.89)であった。
本剤が投与された安全性解析対象90例に認められた主な副作用は、皮膚障害95.6%(86/90)[ざ瘡様皮膚炎78.9%(71/90)、皮膚乾燥52.2%(47/90)、爪囲炎48.9%(44/90)、そう痒7.8%(7/90)、手掌・足底発赤知覚不全症候群6.7%(6/90)、皮膚亀裂5.6%(5/90)]、口内炎31.1%(28/90)、体重減少5.6%(5/90)、発熱4.4%(4/90)、嘔吐2.2%(2/90)等であった。[5.2参照]
17.1.2 海外第III相試験(SQUIRE試験)
化学療法未治療の切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象に、GC+NとGCを比較する第III相試験を実施した。GCは両群とも最大6コースまでとし、GC+N群での本剤の投与はGCの中止又は終了後も疾患進行等の中止基準に該当するまで継続した。主要評価項目である全生存期間は、GC+N群でGC群と比較して統計学的に有意な延長を認めた。
表2)海外試験(SQUIRE試験)における成績
→図表を見る(PDF)
図2)全生存期間のKaplan‐Meier曲線(SQUIRE試験)
なお、EGFRの発現状況別の部分集団解析結果は、Hスコア=0(GC+N群24例、GC群23例)でハザード比(95%信頼区間)=1.86(0.94-3.65)、Hスコア>0(GC+N群462例、GC群473例)でハザード比(95%信頼区間)=0.81(0.70-0.93)であった。
本剤が投与された安全性解析対象538例に認められた主な副作用は、皮膚障害75.7%[ざ瘡様皮膚炎15.1%(81/538)、皮膚乾燥5.9%(32/538)、爪囲炎5.8%(31/538)、そう痒5.6%(30/538)、皮膚亀裂4.5%(24/538)、手掌・足底発赤知覚不全症候群1.5%(8/538)]、嘔吐8.4%(45/538)、口内炎6.5%(35/538)、体重減少3.3%(18/538)、発熱3.0%(16/538)等であった。[5.2参照]
18.1 作用機序
ネシツムマブは、EGFRに対する抗体であり、EGFRに結合し、EGFRを介したシグナル伝達を阻害すること等により、腫瘍の増殖を抑制すると考えられる。
18.2 抗腫瘍効果
ネシツムマブは、ヒト扁平上皮非小細胞肺癌由来NCI‐H2170、NCI‐H226及びNCI‐H520細胞株を皮下移植したマウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した。また、NCI‐H2170及びNCI‐H226細胞株を皮下移植したマウスにおいて、ネシツムマブ、ゲムシタビン及びシスプラチンの併用により、ゲムシタビン及びシスプラチンの併用と比較して、腫瘍増殖抑制作用の増強が認められた。
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