ピシバニール注射用1KE
添付文書情報2018年06月改定(第13版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 禁忌
- 1.本剤によるショックの既往歴のある患者。
2.ベンジルペニシリンによるショックの既往歴のある患者[本剤はベンジルペニシリンを含有している]。
- 効能・効果
- 1.胃癌<手術例>患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長。
2.消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸水・癌性腹水の減少。
3.他剤無効の、頭頚部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌。
4.リンパ管腫。
- 用法・用量
- 1.胃癌(手術例)患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長の場合:化学療法に併用し、各投与量(KE)を添付の生理食塩液で適宜懸濁溶解して、筋肉内、皮下又は皮内投与する。初回0.2~0.5KEより開始し、患者の状態を観察しつつ、連日又は隔日1回の投与で2~3週間かけて2~5KEまで漸増する。維持量は1回2~5KE、週1~2回とする。
2.消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少の場合:1回5~10KEを添付の生理食塩液で適宜懸濁溶解して、週に1~2回漿膜腔内投与する。
3.他剤無効の、頭頚部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌の場合:1回5~10KEを添付の生理食塩液で適宜懸濁溶解して、毎日又は数日に1回、腫瘍内又は腫瘍辺縁部に注入する。
但し、同日内に同一患者に対し、2経路による投与は行わない。
4.リンパ管腫の場合:本剤の投与に際しては、生理食塩液で適宜懸濁溶解して、0.05~0.1KE/mL濃度の懸濁溶解液を調製する。吸引リンパ管腫液量と同量の懸濁溶解液を局所に注入する。1回総投与量2KEを上限として、年齢、症状により適宜増減する。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
患者によって本剤に対する発熱などの感受性が異なるため、「消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸水減少・癌性腹水減少の場合」、「他剤無効の、頭頚部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌の場合」についても少量投与から始め、患者の状態を観察しつつ漸増することが望ましい。
- 慎重投与
- 1.心疾患・腎疾患のある患者[動物による毒性実験において、大量長期投与した場合に溶連菌感染症類似の所見(心障害、腎障害、アミロイドーシス等)がみられている]。
2.セフェム系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者。
3.本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質を有する患者。
- 重要な基本的注意
- 1.本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとる。
1).事前に既往歴等について十分な問診を行う。なお、本剤はベンジルペニシリンを含有しているので抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認する。
2).投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておく。
3).投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行い、特に、投与開始直後は注意深く観察する。
4).休薬期間を置いた後、投与を再開する場合には少量から慎重に投与する。
2.本剤は培地に増殖不能の生菌で、全菌体を生体に連続して投与する薬剤であるので、副作用等に十分注意する。
- 副作用
- 悪性腫瘍:総症例26,027例中8,312例(31.9%)13,092件に副作用
が認められた。主な副作用は、発熱6,019件(23.1%)、注射部位疼痛2,893件(11.1%)、注射部位発赤(硬結・腫脹を含む)1,198件(4.6%)、全身倦怠感848件(3.3%)、食欲不振789件(3.0%)等であった(副作用頻度報告終了時:1982.3)。
リンパ管腫:総症例352例中333例(94.6%)1,049件に副作用が認められた。主な副作用は、発熱303件(86.1%)、注射部位腫脹279件(79.3%)、注射部位発赤210件(59.7%)、CRP上昇80件(22.7%)、白血球増加64件(18.2%)、注射部位疼痛18件(5.1%)等であった(再審査終了時:2008.10)。
- 重大な副作用
- 1.重大な副作用
1).ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシーが現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行う。
2).間質性肺炎:間質性肺炎が発現又は間質性肺炎増悪することがあるので、観察を十分に行い、発熱、咳嗽、呼吸困難及び胸部X線検査異常等が認められた場合には、本剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行う。
3).急性腎障害:急性腎障害が現れることがあるので、観察を十分に行い、BUN上昇、クレアチニン上昇、尿量減少等が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行う。
- 2.その他の副作用:次のような副作用が認められた場合には、減量・休薬など適切な処置を行う。
1).過敏症:(頻度不明)紫斑、(5%未満)そう痒感、発疹[副作用が現れた場合には投与を中止する]。
2).局所反応:(5%以上)腫脹<79.3%:リンパ管腫>、発赤<59.7%:リンパ管腫>、局所疼痛、(5%未満)硬結、熱感。
3).血液:(5%以上)白血球増加<18.2%:リンパ管腫>、(5%未満)血小板増加、貧血。
4).肝臓:(5%未満)AST上昇(GOT上昇)、ALT上昇(GPT上昇)、Al-P上昇[異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行う]。
5).消化器:(5%未満)食欲不振、悪心・嘔吐、下痢。
6).腎臓:(頻度不明)BUN上昇、クレアチニン上昇、尿量減少、(5%未満)蛋白尿。
7).その他:(5%以上)発熱<23.1%:悪性腫瘍、86.1%:リンパ管腫>、CRP上昇<22.7%:リンパ管腫>、(5%未満)全身倦怠、頭痛、CK上昇(CPK上昇)、関節痛。
- 高齢者への投与
- 一般に高齢者では生理機能が低下しているので用量に注意する。
- 妊婦・産婦・授乳婦等への投与
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない]。
- 取扱い上の注意
- 1.調製時:懸濁用溶解液は、ワンポイントカットアンプルであるが、アンプルカット部分をエタノール綿等で清拭してから、カットすることが望ましい。
2.投与時:1).筋肉内又は皮下投与により注射部位に疼痛、発赤、硬結をみることがある。筋肉内・皮下投与時繰り返し注射する場合には同一部位の反復注射は避ける。
2).リンパ管腫への投与にあたっては次記の点に注意する。
(1).リンパ管腫への投与にあたっては、腫脹等の局所反応、発熱、白血球増加等の発現が高頻度のため、投与後は患者状態を十分観察する。
(2).リンパ管腫への投与にあたっては、投与後の腫脹により、投与部位(特に頚部)によっては気管圧迫、喘鳴の可能性があるため、投与量は必要最小限度にとどめ経過観察を十分行う。
3.筋肉内注射時:筋肉内注射にあたっては、組織・神経等への影響を避けるため次記の点に注意する。
1).筋肉内注射時神経走行部位を避けるよう注意する。
2).注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位を変えて注射する。
3).乳幼小児に適用する場合は必要最小限度にとどめる。
溶解後の注射液は速やかに使用する。
- その他の注意
- 本剤の局所への大量又は漿膜腔内への大量投与により遅発性ショック(1~数時間後)が現れたとの報告がある。
1.化学療法との併用による生存期間の延長
(1)胃癌(手術例)
非治癒切除胃癌46例を解析対象とした無作為比較試験で、化学療法と本剤筋肉内投与(0.2KEより開始し、4週間かけて2KEまで漸増、以後2KEを週1回投与)の併用により、化学療法単独群に比較して生存期間の延長が認められた(添付文書の図1)。
図1:非治癒切除胃癌症例における生存曲線
(2)原発性肺癌
手術可能肺癌311例を対象とした無作為比較試験で、化学療法と本剤筋肉内投与(0.2KEより開始し2.0KEまで漸増。維持量は2.0KEを週1回)の併用により、化学療法単独群に比較し、生存期間の延長が認められた(添付文書の図2)。
また、非切除肺癌73例を解析対象とした無作為比較試験で、化学療法と本剤(筋肉内投与又は皮下投与、0.2KEより投与を開始し漸増。維持量2.0KE)の併用により、化学療法単独群に比較し、生存期間の延長が認められた。
図2:手術可能肺癌症例における生存曲線
2.癌性胸・腹水の減少
(1)消化器癌の進展、再発により腹水の貯留を来した症例134例に本剤を腹腔内投与したところ、76例(56.7%)で腹水の消失が、8例(6.0%)で腹水の減少が認められた。
(2)肺癌の進展により胸水の貯留を来した症例25例に本剤を単独又は化学療法と併用し胸腔内投与したところ、17例(68.0%)で胸水の消失が、6例(24.0%)で胸水の減少が認められた。
3.他剤無効の頭頸部癌、甲状腺癌
各種頭頸部癌52例、甲状腺癌10例に対し、本剤を初回5KE、以後10KEを維持量として週2~3回、腫瘍内及び腫瘍辺縁部に投与し有効性が認められた。
→図表を見る(PDF)
4.リンパ管腫
リンパ管腫症例に対し本剤0.5KE/10mL又は、1.0KE/10mLを20mLを上限として管腫内へ局所投与し、有効性が認められた。
→図表を見る(PDF)
1.実験腫瘍に対する効果
(1)自家誘発腫瘍に対する効果
マウスの自然発生腫瘍及びメチルコラントレン誘発腫瘍を用いた実験で、本剤を各々腫瘍内、筋肉内に投与することにより、腫瘍増殖の抑制効果が認められた。
(2)同系腫瘍に対する効果
マウス及びラットの同系腫瘍を用いた実験で、本剤を腹腔内に投与し、それぞれ延命効果、腫瘍縮小効果が認められた。更にモルモットの同系腫瘍に本剤を腫瘍内投与し、腫瘍縮小効果が認められた。
(3)化学療法との併用効果
マウスのL1210腫瘍に対し、本剤を抗悪性腫瘍剤であるフルオロウラシルと併用することにより、化学療法単独群に比較して延命効果が認められた。
2.作用機序
(1)腫瘍細胞に対する作用
本剤は腫瘍細胞に対する直接的増殖抑制作用が認められている。
(2)生体防御反応に対する作用
本剤の投与により好中球、マクロファージ、リンパ球数の増加(ヒト)、好中球(ラット)、マクロファージ(ヒト)、NK細胞(ヒト)の活性化及びCTL細胞の誘導(ラット)が認められた。更にこれら細胞の増殖、活性化に関与するIL‐1、IL‐2(マウス)、IL‐8(ヒト)、IL‐12(マウス)、IFN‐γ(マウス)、TNF‐α(ヒト)、G‐CSF(ヒト)、GM‐CSF(ヒト)等のサイトカインの産生が認められることから、主に本剤の投与によって賦活された種々の宿主の生体防御反応を介して、抗腫瘍効果を発現するものと考えられている。
(3)リンパ管腫に対する作用機序
本剤をリンパ管腫の局所に投与することにより炎症反応が惹起され、続いて炎症に関わるマクロファージ等の誘導や内皮細胞の透過性亢進作用を有するTNF等のサイトカインの産生が認められ、これらによりリンパ液の排出が促進され、管腔が縮小するものと考えられる(ヒト)。
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