アミカシン硫酸塩注射液100mg「明治」
添付文書情報2024年02月改定(第1版)
商品情報
- 禁忌
- 本剤の成分並びにアミノグリコシド系抗生物質又はバシトラシンに対し過敏症の既往歴のある患者〔8.1.1参照〕。
- 効能・効果
- 敗血症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎。
- 用法・用量
- 〈筋肉内投与の場合〉
通常、成人1回アミカシン硫酸塩として100~200mg(力価)を1日1~2回筋肉内投与する。小児は、アミカシン硫酸塩として1日4~8mg(力価)/kgとし、1日1~2回筋肉内投与する。
なお、年齢及び症状により適宜増減する。
〈点滴静脈内投与の場合〉
通常、成人1回アミカシン硫酸塩として100~200mg(力価)を、1日2回点滴静脈内投与する。小児はアミカシン硫酸塩として1日4~8mg(力価)/kgとし、1日2回点滴静脈内投与する。また、新生児(未熟児を含む)は、1回アミカシン硫酸塩として6mg(力価)/kgを、1日2回点滴静脈内投与する。
なお、年齢、体重及び症状により適宜増減する。
点滴静脈内投与の場合には、通常100~500mLの補液中に100~200mg(力価)の割合で溶解し、30分~1時間かけて投与すること。
(用法及び用量に関連する注意)
腎障害患者では、起炎菌の感受性、感染症の重症度、感染部位、腎機能障害の程度を考慮に入れ、投与量・投与間隔を調整すること〔8.2、9.2腎機能障害患者の項、16.6.1、16.8.1参照〕。
7.1. 1回投与量を調節する方法
腎障害患者では、体重及びクレアチニン・クリアランスを用い、添付文書の図1[8時間及び12時間ごと投与図]又は計算式より求めた初回量及び維持量を投与する。
[8時間ごと投与の計算式]
初回量(mg)=(D×W)×[(Ccr+132)の2乗-1700]÷(5.0×10の4乗)。
維持量(mg)=(D×W)×(Ccr+0.7)÷101。
[12時間ごと投与の計算式]
初回量(mg)=(D×W)×[(Ccr+125)の2乗-6700]÷(4.3×10の4乗)。
維持量(mg)=(D×W)×(Ccr+0.7)÷101。
D:腎機能正常者に対する使用量(mg/kg)、W:体重(kg)。
Ccr:クレチアニン・クリアランス(mL/min)。
7.2. 投与間隔を調節する方法
腎障害患者では、「血清クレアチニン値×9」時間ごとに通常量を投与する。
- 肝機能障害患者
- 8.1. 本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること〔11.1.1参照〕。
8.1.1. 事前に既往歴等について十分な問診を行う(なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認する)〔2.禁忌の項参照〕。
8.1.2. 投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。
8.1.3. 投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行う(特に、投与開始直後は注意深く観察する)。
8.2. 眩暈、耳鳴、難聴等の第8脳神経障害があらわれることがあるので慎重に投与すること(特に腎機能障害患者、高齢者、長期間投与患者及び大量投与患者等では血中濃度が高くなりやすく、聴力障害の危険性がより大きくなるので、聴力検査を実施することが望ましい)、アミノグリコシド系抗生物質の聴力障害は、高周波音に始まり低周波音へと波及するので、障害の早期発見のために、聴力検査の最高周波数である8kHzでの検査が有用である〔7.用法及び用量に関連する注意、9.2腎機能障害患者の項、9.8.1、11.1.2、16.6.1、16.8.1参照〕。
8.3. 急性腎障害等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、定期的に検査を実施するなど観察を十分に行うこと〔9.8.1、11.1.3、16.8.1参照〕。
8.4. 投与後は血中濃度をモニタリングすることが望ましい〔16.8.1参照〕。
8.5. 本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
9.1.1. 本人又はその血族がアミノグリコシド系抗生物質による難聴又はその他の難聴のある患者:難聴が発現又は増悪するおそれがある。
9.1.2. 重症筋無力症の患者:神経筋遮断作用があり呼吸抑制があらわれることがある。
9.1.3. 経口摂取の不良な患者又は非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者:観察を十分に行うこと(ビタミンK欠乏症状があらわれることがある)。
腎機能障害患者:投与量を減らすか、投与間隔をあけて投与すること(高い血中濃度が持続し、腎障害が悪化するおそれがあり、また、第8脳神経障害等の副作用が強くあらわれるおそれがある)〔7.用法及び用量に関連する注意の項、8.2、16.6.1、16.8.1参照〕。
肝機能障害患者:肝障害を悪化させるおそれがある。
- 相互作用
- 10.2. 併用注意:1). 腎障害を起こすおそれのある血液代用剤(デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン等)[腎障害が発現・悪化することがあるので、併用は避けることが望ましく、腎障害が発生した場合には、投与を中止し、透析療法等適切な処置を行うこと(機序は明確でないが、併用によりアミノグリコシド系抗生物質の血中への蓄積、近位尿細管上皮の空胞変性が生じるという報告がある)]。
2). ループ利尿剤(フロセミド、アゾセミド等)[腎障害及び聴器障害が発現・悪化するおそれがあるので、併用は避けることが望ましい(機序は明確でないが、併用によりアミノグリコシド系抗生物質の血中濃度の上昇、腎への蓄積が起こるという報告がある)]。
3). 腎毒性及び聴器毒性を有する薬剤(バンコマイシン塩酸塩、エンビオマイシン硫酸塩、白金含有抗悪性腫瘍剤(シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン)等)[腎障害及び聴器障害が発現・悪化するおそれがあるので、併用は避けることが望ましい(両薬剤ともに腎毒性、聴器毒性を有するが、相互作用の機序は不明)]。
4). 麻酔剤、筋弛緩剤(ベクロニウム臭化物、A型ボツリヌス毒素製剤等)[呼吸抑制があらわれるおそれがあるので、呼吸抑制があらわれた場合には必要に応じ、コリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム製剤の投与等の適切な処置を行うこと(両薬剤ともに神経筋遮断作用を有しており、併用によりその作用が増強される)]。
5). 腎毒性を有する薬剤(シクロスポリン、アムホテリシンB等)[腎障害が発現・悪化するおそれがある(両薬剤ともに腎毒性を有するが、相互作用の機序は不明)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック(0.1%未満):初期症状として、不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、便意、耳鳴、発汗等があらわれることがある〔8.1参照〕。
11.1.2. 第8脳神経障害(0.1~5%未満):耳鳴・耳閉塞感・耳痛・眩暈・難聴等の第8脳神経障害(主として蝸牛機能障害)があらわれることがある〔8.2参照〕。
11.1.3. 急性腎障害(頻度不明):重篤な腎障害があらわれることがある〔8.3参照〕。
- 11.2. その他の副作用
1). 過敏症:(0.1~5%未満)発疹、(0.1%未満)そう痒、発熱。
2). 腎臓:(0.1%未満)浮腫、蛋白尿、血尿、血清クレアチニン上昇、BUN上昇、乏尿、(頻度不明)カリウム異常等の電解質異常。
3). 肝臓:(0.1~5%未満)AST上昇、ALT上昇、(0.1%未満)Al-P上昇。
4). 血液:(0.1%未満)白血球減少、好酸球増多。
5). 消化器:(0.1%未満)下痢、悪心・嘔吐。
6). ビタミン欠乏症:(頻度不明)ビタミンK欠乏症状(低プロトロンビン血症、出血傾向等)、ビタミンB群欠乏症状(舌炎、口内炎、食欲不振、神経炎等)。
7). 投与部位(筋注の場合):(0.1~5%未満)注射部位の疼痛、硬結。
8). その他:(0.1%未満)頭痛、口唇部のしびれ感。
- 高齢者
- 次の点に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
9.8.1. 本剤は主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがあり、第8脳神経障害、腎障害等の副作用があらわれやすい〔8.2、8.3、16.8.1参照〕。
9.8.2. ビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがある。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(アミカシン硫酸塩はヒト胎盤を通過するため、新生児に第8脳神経障害があらわれるおそれがある)〔16.3.1参照〕。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
- 適用上の注意
- 14.1. 薬剤投与時の注意14.1.1. 〈投与経路共通〉β-ラクタム系抗生物質製剤と本剤との混注により、両剤ともに不活性化されるとの報告がある(それぞれ別経路にて投与を行うこと)。
14.1.2. 〈筋肉内投与〉次記の点に注意すること。
(1). 〈筋肉内投与〉やむを得ない場合にのみ必要最小限に行うこと。
(2). 〈筋肉内投与〉筋肉内投与時同一部位への反復注射は行わないこと。
(3). 〈筋肉内投与〉筋肉内投与時神経走行部位を避けること。
(4). 〈筋肉内投与〉注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。
(5). 〈筋肉内投与〉注射部位に疼痛、硬結をみることがある。
14.1.3. 〈点滴静脈内投与〉副作用発生を防ぐため、必ず30分以上かけて投与すること。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報クエン酸で抗凝固処理した血液を大量輸血された患者にアミノグリコシド系抗生物質を投与すると、投与経路にかかわらず、神経筋遮断症状、呼吸麻痺があらわれることがある。
15.2. 非臨床試験に基づく情報15.2.1. 聴器毒性:モルモットにアミカシンを筋肉内投与した実験(40、100、200mg/kg、28日間)で、耳介反射消失を認めるとともに、ラセン器外有毛細胞消失が認められたとの報告がある。
15.2.2. 腎毒性:ラットにアミカシンを背部皮下投与した実験(25、100、400mg/kg、30日間)で、腎重量増加がみられるとともに近位尿細管内腔拡張、上皮扁平化が認められたとの報告がある。
16.1 血中濃度
16.1.1 健康成人にアミカシン硫酸塩100mg(力価)又は200mg(力価)を筋注した場合、血中濃度のピークは30分ないし1時間後にあり、それぞれ5.8~8.5μg/mL(n=3)、13.5~15.0μg/mL(n=2)を示した。
また、健康成人(n=3)に100mg(力価)又は200mg(力価)を1時間で点滴静注した場合、血中濃度のピークは点滴終了時にあり、それぞれ7.5~8.6μg/mL、13.9~18.8μg/mLを示し、血中半減期(t1/2)は、1.7~2.2時間である(添付文書の図1)。
なお、健康成人(n=3)に200mg(力価)をCross overにより筋注及び点滴静注した場合、両者の血中濃度推移は添付文書の図2のとおりほぼ一致し、t1/2、血中濃度曲線下面積(AUC)もほぼ同一の値を示す。
図1 健康成人での点滴静注時の血中濃度
図2 健康成人での筋注・点滴静注時の血中濃度
16.3 分布
16.3.1 組織内移行
口蓋扁桃、咽頭扁桃、上顎洞粘膜、喀痰、臍帯血、羊水などへの移行が認められる。なお、乳汁中への移行は痕跡程度に認められるにすぎない。[9.5参照]
16.4 代謝
本剤は生体内で代謝を受けない。
16.5 排泄
健康成人に本剤100mg(力価)又は200mg(力価)を筋注した場合の8時間までの平均尿中排泄率はそれぞれ、70.3%、72.4%である。また、1時間点滴静注の場合、点滴終了後6時間までの平均尿中排泄率はそれぞれ64.4%、68.8%で、ともに速やかに尿中に排泄される。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎障害患者
腎機能の程度の異なる患者に100mg(力価)を筋注した場合、t1/2は腎機能障害の程度に応じて延長する。この様な傾向は点滴静注時においても認められる。[7.、8.2、9.2、16.8.1参照]
16.8 その他
16.8.1 血中濃度モニタリング
アミノグリコシド系抗生物質による副作用発現の危険性は、一過性であっても異常に高い最高血中濃度(ピーク値)が繰り返されるほど大きくなり、また、異常に高い最低血中濃度(谷間値-次回投与直前値)が繰り返されるほど大きくなるといわれている。本剤の場合は、第8脳神経障害や腎障害発生の危険性が大きくなるといわれている。腎機能障害患者、新生児、未熟児、高齢者及び大量投与患者などでは血中濃度が高くなりやすいので、初回投与時において、また長期間投与患者においても適当な間隔で最高血中濃度(A、A’)と最低血中濃度(B、B’)を測定し(添付文書の図3参照)、異常な高値を示す場合には、次回投与より投与量や投与間隔を調整することが望ましい。例えば、異常に高い最高血中濃度が繰り返されている場合は投与量を減量し、異常に高い最低血中濃度が繰り返されている場合は投与間隔を延長するなど調整を行う。[7.、8.2-8.4、9.2、9.8.1、16.6.1参照]
図3 筋注・点滴静注時の血中濃度の経時変化(模式図)
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内二重盲検比較試験
急性単純性膀胱炎の患者に対しアミカシン硫酸塩(AMK)及びベカナマイシン硫酸塩(AKM)それぞれ200mg(力価)を1日1回3日間、筋肉内注射にて投与する二重盲検比較試験において、AMK投与49例では著効38例、有効8例で有効率93.9%(46/49例)であり、本剤の有用性が示された。また、AKM投与56例では著効38例、有効15例で有効率94.6%(53/56例)であり、両群間に有意差を認めなかった。AMK投与群において副作用は3例に認められ、耳鳴(1/49例)、発熱(1/49例)、注射部位疼痛(1/49例)であった。
17.1.2 国内二重盲検比較試験
急性腎盂腎炎の患者に対しアミカシン硫酸塩(AMK)及びベカナマイシン硫酸塩(AKM)それぞれ200mg(力価)を1日1回7日間、筋肉内注射にて投与する二重盲検比較試験において、AMK投与21例では著効14例、有効7例で有効率100.0%(21/21例)であり、本剤の有用性が示された。また、AKM投与19例では著効11例、有効6例で有効率89.5%であり、両群間に有意差を認めなかった。AMK投与群において副作用は5例に認められたが全て注射部位疼痛(5/21例)であった。
17.1.3 国内二重盲検比較試験
膀胱・前立腺手術後(留置カテーテル抜去後)尿路感染症及び複雑性尿路感染症の患者に対しアミカシン硫酸塩(AMK)及びベカナマイシン硫酸塩(AKM)それぞれ200mg(力価)を1日2回7日間、筋肉内注射にて投与する二重盲検比較試験において、AMK投与31例では著効5例、有効16例で有効率67.7%(21/31例)、AKM投与37例では著効2例、有効12例で有効率37.8%であり、AMK投与群の方が有意差をもって有用であった。なお、AMK投与群において副作用は認められなかった。
18.1 作用機序
細菌の蛋白合成を阻害することにより細胞分裂の増殖のプロセスを阻止し、殺菌的に作用する。
18.2 in vitro抗菌作用
→図表を見る(PDF)
18.3 不活化酵素に対する安定性
アミノグリコシド系抗生物質を不活化する種々の酵素に対して強い抵抗を示す。
18.4 交差耐性
他のアミノグリコシド系抗生物質との間に交差耐性はほとんど認められない。
- 製造販売会社
- MeijiSeikaファルマ
- 販売会社
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