ヘブスブリン筋注用1000単位

添付文書情報2021年10月改定(第20版)
商品情報
- 禁忌
- 1.本剤の成分に対しショックの既往歴のある患者。
2.HBs抗原陽性者(但し、新生児に投与する場合でやむを得ない場合には、HBs抗原検査の結果を待たずに投与することが可能である)。
- 効能・効果
- 1.HBs抗原陽性血液の汚染事故後のB型肝炎発症予防。
2.新生児のB型肝炎予防(原則として、沈降B型肝炎ワクチンとの併用)。
- 用法・用量
- 1.HBs抗原陽性血液の汚染事故後のB型肝炎発症予防:本剤を添付の溶剤(日本薬局方注射用水)で溶解し、1回1000~2000国際単位を筋肉内に注射する。必要に応じて増量するか又は同量を繰り返す。小児には、体重1kg当たり32~48国際単位を用いる。HBs抗原陽性血液の汚染事故後のB型肝炎発症予防の場合、投与の時期は事故発生後7日以内とする(なお、48時間以内が望ましい)。
2.新生児のB型肝炎予防(原則として、沈降B型肝炎ワクチンとの併用):本剤を添付の溶剤(日本薬局方注射用水)で溶解し、初回注射量は100~200国際単位を筋肉内に注射する。新生児のB型肝炎予防の場合、初回注射の時期は生後5日以内とする(なお、生後12時間以内が望ましい)。また、追加注射には、体重1kg当たり32~48国際単位を投与する。
- 慎重投与
- 1.IgA欠損症の患者[抗IgA抗体を保有する患者では過敏反応を起こす恐れがある]。
2.溶血性貧血・失血性貧血の患者[ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない(感染した場合には、発熱と急激な貧血を伴う重篤な全身症状を起こすことがある)]。
3.免疫不全患者・免疫抑制状態の患者[ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない(感染した場合には、持続性貧血を起こすことがある)]。
- 重要な基本的注意
- 患者への説明:本剤の使用にあたっては、疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際し感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、血液を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを、患者に対して説明し、理解を得るよう努める。
1.本剤の原材料となる血液については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体陰性であることを確認している。更に、プールした試験血漿については、HIV-1、HBV及びHCVについて核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。本剤は、以上の検査に適合した高力価の抗HBs抗体を含有する血漿を原料として、Cohnの低温エタノール分画で得た画分からポリエチレングリコール4000処理、DEAEセファデックス処理等により抗HBs人免疫グロブリンを濃縮・精製した製剤であり、ウイルス不活化・除去を目的として、製造工程において60℃、10時間の液状加熱処理及びウイルス除去膜による濾過処理を施しているが、投与に際しては、次の点に十分注意する。
1).血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察する。
2).現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与する。
2.ショック等重篤な副作用を起こすことがあるので、注意して使用し、経過を十分観察する。
- 相互作用
- 併用注意:非経口用生ワクチン(麻疹ワクチン、おたふくかぜワクチン、風疹ワクチン、麻疹・おたふくかぜ・風疹の混合ワクチン、水痘ワクチン等)[本剤の投与を受けた者は、生ワクチンの効果が得られない恐れがあるので、生ワクチンの接種は本剤投与後3カ月以上延期し、また、生ワクチン接種後14日以内に本剤を投与した場合は、投与後3カ月以上経過した後に生ワクチンを再接種することが望ましい(本剤の主成分は免疫抗体であるため、中和反応により生ワクチンの効果が減弱される恐れがある)]。
- 副作用
- 総症例数1,366例中4例(0.29%)5件の副作用が認められた。その内訳は、発疹、悪寒、倦怠感、膨疹、疼痛の各1件(0.07%)であった(再審査終了時)。
- 重大な副作用
- 1.重大な副作用
ショック(頻度不明):ショックを起こすことがあるので、観察を十分に行い、悪寒、嘔気、発汗、腰痛等の症状が現れた場合には投与を中止し適切な処置を行う。
- 2.その他の副作用:次記のような症状が現れることがあるので、観察を十分に行い、発現した場合には、適切な処置を行う。
1).過敏症:(0.1%未満)発疹等、(頻度不明)発熱[このような場合には投与を中止し、適切な処置を行う]。
2).注射部位:(0.1%未満)疼痛、(頻度不明)腫脹、発赤、硬結。
- 高齢者への投与
- 一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与する。
- 妊婦・産婦・授乳婦等への投与
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない;本剤の投与によりヒトパルボウイルスB19の感染の可能性を否定できない(感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性がある)]。
- 取扱い上の注意
- 1.投与経路:筋肉内注射にのみ使用する。決して静脈内に注射してはならない。
2.筋肉内注射:筋肉内注射にあたっては、組織・神経などへの影響を避けるため、次記の点に注意する。
1).同一部位への反復注射は行わない。また、低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児には特に注意する。
2).神経走行部位を避けるよう注意する。
3).注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位を変えて注射する。
3.調製時:1).溶解時に著しい沈殿が認められるものは投与しない。
2).本剤はチメロサールその他の保存剤を含有していないので、一度溶解したものは1時間以内に使用し、残液は再使用しない。
4.投与時:1).新生児の注射量が1mLの場合には、0.5mLずつ2カ所に分けて注射する。
2).沈降B型肝炎ワクチンを併用する場合には異なる注射部位とする。
5.アンプルカット時:添付溶剤の容器は、ワンポイントカットアンプルを使用しているので、丸印を上にして下方向へ折る。なお、アンプルカット時の異物混入を避けるため、エタノール綿等で清拭しカットする。
記録の保存:本剤は特定生物由来製品に該当することから、本剤を投与した場合は、医薬品名(販売名)、その製造番号(ロット番号)、投与した日、投与を受けた患者の氏名、住所等を記録し、少なくとも20年間保存する。
- その他の注意
- 本剤は、貴重な人血液を原料として製剤化したものである。原料となった血液を採取する際には、問診、感染症関連の検査を実施するとともに、製造工程における一定の不活化・除去処理を実施し、感染症に対する安全対策を講じているが、人血液を原料としていることによる感染症伝播のリスクを完全に排除することはできないため、疾病の治療上の必要性を十分に検討の上、必要最小限の使用にとどめる。
本剤を健康成人に投与し、抗HBs抗体価を経時的に観察した成績によると、抗HBs抗体価200国際単位/mLのもの10mLを筋肉内に注射した場合、投与後2日目で抗HBs抗体価が最高(PHA法で16~32倍)に達する。抗体価の血中半減期は約3週であった。
1.HBs抗原陽性血液の汚染事故後のB型肝炎発症予防
HBs抗体陰性の医療従事者でHBs抗原陽性血液汚染事故後の309例に本剤を10mL(一部は5mL)注射した。HBe抗原汚染が確実な48例を含む308例はB型肝炎の発症を免れた。HBs抗原陽転・発症例はただ1例であり、これは血液透析に従事している30歳の看護師で、汚染注射針による刺傷後72時間以内(51時間目)に本剤10mLを投与したが、33週でHBs抗原が陽転し、トランスアミナーゼの上昇を伴い、典型的なB型肝炎を発症した。
2.新生児のB型肝炎予防
HBs抗原陽性の母親から生まれた児818例に対し、延べ1,817回注射された。うち生後6カ月以上経過観察された735例中713例がHBe抗原陽性の母親から生まれた児で、うち25例は本剤単独投与、他はHBワクチンが併用された。
(1)生後6カ月以上経過観察された735例における成績ではキャリア化率3.3%、HBs抗原陽性率6.0%、感染予防率94.0%であり、本剤単独投与よりHBワクチン併用でより優れた成績を示した。
(2)HBe抗原陽性の母親から生まれた児713例に対する成績においてもキャリア化率3.4%、HBs抗原陽性率6.2%、感染予防率93.8%を示し、本剤単独投与よりHBワクチンとの併用でより高い有効率を示すことが証明された。
(3)本剤初回注射時期では、全体の86.7%が生後48時間以内に開始されたが、生後48時間以降に開始されたものとの間にキャリア化率、HBs抗原陽性率、感染予防率で差はみられなかった。HBV感染の成立時期を考慮すれば可能な限り早期に投与することが望ましいが、何らかの理由で投与が遅れた場合も投与を試みるべきであると考えられた。
血中に入ったB型肝炎ウイルス(HBV)は肝細胞に取り込まれ増殖する。本剤を投与すると、血中に存在しているHBVは肝細胞に取り込まれる前に血流中で抗HBs抗体により中和処理される。なお、HBVが肝細胞に侵入した後では、本剤を受動免疫として投与しても効果は期待できない。
- 製造販売会社
- 日本血液製剤機構
- 販売会社
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